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平凡な侍女の私、なぜか完璧王太子のとっておき!  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中
【おまけの物語】

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侍女になる

「あなた達は伯爵であり、王太子妃になられる方の侍女になるのです。そしてあなた方三人の中から一人が、上級侍女になる予定。しっかり仕事を覚え、コルネ伯爵を仕えるように。分かりましたか?」


 キリッとした口調でわたくし達、新米侍女を品定めするように見るのは、リーヴィエル侍女長だ。


 全侍女を統括するトップなだけあり、背筋もピンと伸び、隙がない。ブルネットの髪をお団子にして、三角フレームのメガネをかけたその姿は、伝統的なこの国の侍女の姿そのもの。ただしドレスは違う。ヒヤシンス色のドレスは侍女長にだけ許されている色でもあった。


「それではコルネ伯爵付きの侍女頭であるマルグリット夫人に部屋へ案内してもらいます。上級侍女には個室が与えられますが、皆さんはまだ新米扱いですから。各自の身分は承知していますが、相部屋です。では荷物を持ち、移動開始」


 リーヴィエル侍女長がパン、パンと手を叩き、新米侍女となるわたくし、侯爵令嬢のルベール嬢、子爵令嬢のモンクレルテ嬢は、素早くトランクを手に持つ。


 ルベール侯爵令嬢は赤茶色の髪に少しつり目で、緊張しているからか。上目遣いの怒ったような表情をしている。


 そんなルベール侯爵令嬢に対し、ややおどおどした感じなのは、モンクレルテ子爵令嬢。ブロンドに碧眼でとても小柄で、私と同い年のはずだが、年下に見えた。


 今回、コルネ嬢の侍女になれると聞き、てっきりわたくし一人を迎えるのかと思ったら、違っていた。


 コルネ嬢はつい最近まで宮殿勤めの侍女をしていたのだ。自身の侍女などいない。つまりレグルス王太子殿下の婚約者となり、伯爵になることで、急遽自身の侍女が必要になった。


 それでもその立場で侍女を募集すればすぐに埋まるだろう。しかしコルネ嬢は侍女選びを急がず、じっくり人選していた。おかげでわたくしにも彼女の侍女になれるチャンスが与えられたわけだけど。


 今回、いきなりわたくしを含めた三人を雇った理由。それは……わたくしのためだと思う。


 冬が終わり、春が始まり、心機一転とはなっても。わたくしの父親の事件の記憶はまだ新しい。そしてわたくしが一人、侍女として迎えられれば悪目立ちする。三人雇った侍女の一人にすることで、なるべく目立たないようにしてくれたのだと思う。


(そんな気配りが出来るのは、コルネ嬢が元は侍女をやっていたことも大きいわね)


 とにもかくにもルベール侯爵令嬢とモンクレルテ子爵令嬢は、わたくしにとっての隠れ蓑であり、同僚である。


(ライバルとは思わないわ。上級侍女に一人選ばれると言っていたけれど、その身分を考えたら、ルーベル侯爵令嬢が選ばれるはず。モンクレルテ子爵令嬢がとんでもなく有能なら、一発逆転があるかもしれない。でも今となっては平民のわたくしが上級侍女に抜擢なんて、あるわけがないわ)


 そのことに不満などなかった。もしコルネ嬢から侍女にと提案されなかったら、わたくしはあの修道院で一生を終えていた。コルネ嬢のその他大勢の侍女の一人にしてもらえただけでも僥倖だった。


 そんなことを思いながら廊下を進むと階段のところへやって来た。


「皆さんの部屋はこの宮殿の屋根裏部となります」

「えっ、屋根裏部屋!? ということは五階ですわよね!? このトランク、従者に運んで頂くことは出来ないのかしら?」


 マルグリット夫人に質問をするのはルーベル侯爵令嬢だ。


「ルーベル嬢。あなたは宮殿勤めをして、王太子の婚約者であるコルネ伯爵の侍女となるのです。ここでの扱いは侯爵令嬢ではなく、侍女、なんですよ。あなたは仕える立場になるのです。トランクを運んでくれる従者など期待せず、基本的に自分のことは自分でなさってください。こんな初歩的なことも、教えないと分からないのですか?」


 ピシャリと言われたルーベル侯爵令嬢は、顔を赤くし、そして──。


 わたくしのことを憎悪のこもった目で睨む。


(これは……完全に当てつけね。マルグリット夫人に呆れられたのは、自業自得。それなのにわたくしに怒りの矛先を向けられても……)


 こういうお門違いの感情を向けられた時は相手にしないに限った。よって向けられた視線を受け止めることなく、わたくしは階段の壁に飾られた風景画に目を向ける。


 その時だった。


「きゃあ」

「!?」


 決して運動神経が良いわけでもなく、騎士でも何でもない。だがモンクレルテ子爵令嬢が小柄な体格なのに、かなり大きなトランクを持っており、階段を上りながらバランスを崩したことにすぐ気がついた。


「危ないわ! トランクから手を離しなさい!」


 咄嗟に叫び、モンクレルテ子爵令嬢の腕を思いっきり掴む。


「きゃあ」


 ドタン、ガタン、バタン、ゴトン。


 モンクレルテ子爵令嬢は階段の途中で尻餅状態で、腕をわたくしが掴むことで転がり落ちることは免れた。しかしトランクは派手な音を立て、階段を転がり落ち、踊り場で盛大にひっくり返り、中身をぶちまけることになった。


「まあ、信じられないわ! 詰め込み過ぎよ!」


 ルーベル侯爵令嬢が叫び、マルグリット夫人が「大声を出さないこと」と注意をする。


「あなた方を部屋に案内しないと、私は次の用事へ向かうことが出来ません。ひとまず部屋に行き、その後にトランクと中身を回収してください。……モンクレルテ子爵令嬢、トランクに詰め込み過ぎはよくありませんよ。コルネ伯爵の荷物をトランクに詰める機会もあるでしょう。決してご自身の時のように、ぎちぎちに詰めてはなりませんよ」

「は、はいっ! 申し訳ありませんでした、マルグリット夫人!」


 モンクレルテ子爵令嬢が深々と頭を下げた。

お読みいただき、ありがとうございます!

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