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平凡な侍女の私、なぜか完璧王太子のとっておき!  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中
【おまけの物語】

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練習

「練習だと思って、私のことを口説いてご覧よ」


 ダイアンに口説くように言われ、いくら練習でもと尻込みしたものの。知り合いの令嬢なんてそういるわけでもなく。しかもダイアンのように練習させてくれる令嬢は……。


(ボルチモア家の血筋を絶やすわけにはいかない!)


 いざとなれば養子縁組という手もあるが、これまで一族は血族で続いている。僕の代でその伝統を崩すわけにはいかなかった。


(もし結婚し、子どもに恵まれないなら仕方ない。結婚もせずに養子を迎えるなんて、絶対にダメだ!)


 幼なじみを練習で口説くことに、不満など持つべきではないという結論に至る。


「分かった。……ダイアン、君を練習に付き合わせて申し訳なく思う。でも……頼む」

「ああ、構わないよ。どうせ練習なんだからさ」


 こうして僕はダイアンを練習で口説くことになる。


(せっかく練習するんだ。本格的にやろう)


 そう思った僕は椅子から立ち上がり、玄関の扉の前まで向かう。つまりは春市で向かったレストランで、気になる女性を見つけ、会話する流れに挑戦することにしたのだ。


 こうして一人で座るダイアンを見る。

 ダイアンも僕の意図が分かったのだろう。


 口元に笑みを浮かべ、こちらをじっと見ていた。


(きっとこうやって目が合ったら、脈ありなのだろう)


 ダイアンのところまで歩いて行き、そこで深呼吸をして尋ねる。


「お嬢さん、お一人ですか?」


 つまり一人なら一緒に食事をしませんか――という流れにするつもりだった。しかしダイアンは驚いた表情となり、爆笑を始める。


「何を言い出すのかと思ったら! 私が二人に見えたのかい!? 寝惚けているなら一度帰って出直しておいで!」


 これには今度は僕の方がビックリして、口をぽかんと開けることになる。


(練習だから、すんなり応じて会話スタートではないのか!?)


「ミハイル、さすがに練習でも、『お嬢さん、お一人ですか?』はないだろう?」

「ええっ、そんな!」

「気になる女性がいるなら、もっと真剣に誘わないと!」


 そんなふうに言われ、一体どう誘えばいいものか……と真剣に考える。


 見知らぬ女性に声をかけるのだ。冗談ではなく、本気で話したいと思っていると伝える必要があるだろう。


「あ、あの」

「なんだい、お兄さん」

「……レストランに入った瞬間、目が合いましたよね」

「? そうかい? 私はそんなつもりはないけど」

「……!」


 ダイアンはまったく取り付く島もない。


(というか実際、こんなけんもほろろな対応をされるのか……!?)


 すぐに気持ちは折れそうになる。でもきっとこれが現実なのだろうとも思う。


(よし。深呼吸をしよう。僕は医科アカデミーでも常に冷静に勉強に取り組んだ。様々な科目で何が求められているのか見極め、覚えるべき知識を頭に入れていった。それと同じようにやればいい)


 どんな言葉をかけたら、ダイアンは僕と話してもいいと思うのか。食事を一緒にしてもいいと感じてくれるのか。それを考えるんだ。


 しばし思案し、僕は深呼吸をして、改めてダイアンと向き合う。


「急に声をかけて、すみません」

「どうしたのかい、お兄さん」

「お店に入った瞬間、君の姿が目に留まりました」

「そう。私の顔に何かついていたかい!?」

「口元に食べかすが」

「! 本当かい!?」


 慌てた様子のダイアンは、さっきまでの余裕がなく、なんだか幼く感じる。いつもドンと構えているダイアンのこの表情は、とても新鮮だった。


「冗談ですよ」

「! 冗談だって!?」

「食べかすはついていないです。僕の目を引いたのはあなたの髪です」

「髪!? なんだい、今度は髪に落ち葉でものっていたかい?」


 僕はゆっくり首を振りながら「違います」と答える。


「あなたのその赤毛は、見事に紅葉した秋の森のように美しい。しかも優しく波打ち柔らかそうな触れ心地に思えます」

「お兄さん、歯が浮くような褒め言葉だねぇ。まさか赤毛の女だからって、簡単に遊べるとか思っているんじゃないのかい!?」

「! 風刺画や小説の中で、赤毛の女性を揶揄する表現があることは知っています。でもそれは根拠のない噂。赤毛の方は少ないので、どこか妬みもあり、そんなことが言われているのではないでしょうか」


 真摯に伝えると、ダイアンは自身の赤毛に触れ、ため息をつく。


「この髪のせいで昔から『気が強そうだ』とか『放埒ほうらつな女に違いない』と言われていたんだよ。……私だって年頃だし、見合い話が浮上したことがある。でも相手の男から『赤毛女の血筋はいらない。自分の一族はブロンドだから』と言われたんだよ」

「!? ダイアン、まさか縁談話があったのか!?」

「あったさ。でもすぐに立ち消えたから、ミハイルに話すまでもなかった」


 すぐに立ち消えた……きっと釣書だけ見て、会うこともなく終わったのだろう。


(でも、まさか、ダイアンに縁談話があったなんて……)


 僕は驚きと衝撃を隠せなかった。

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