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平凡な侍女の私、なぜか完璧王太子のとっておき!  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中
【おまけの物語】

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君に永遠(とわ)の……

「お嬢様、こちらもどうぞ!」

 

 フード付きのウールの白いロングケープ、手袋、首元には白の毛皮を巻き付けてくれる。

 

「ええっと、これは」

「外に出るのですから!」

「外に出るんですか!?」

「出ると思います!」

 

 侍女とメイドはなんだかニコニコしている。

 

(こんなふうにアトリア王国で雪が降るなんて、滅多にないことよ。もしかして子供が雪を見て大喜びなように、みんな雪が嬉しくて仕方ないのかしら!?)

 

 きっとそうなのだろうと思い、完全な防寒対策をした上で、レグルス王太子殿下のところへ向かう。

 

「あっ、おはようございます! コルネ伯爵!」

 

 前室にはトレイを手にしたスコット筆頭補佐官がいる。そして室内に漂う甘い香り。

 

「もしかしてココアですか?」

「そうなんです! 朝食は皆さんと食べるので眠気覚ましに用意してもらいました。コルネ伯爵も一緒にどうぞ」

「ありがとうございます!」

 

 トレイにはココアがたっぷり入っているポットとカップが三つ載せられている。

 

 いい香りを漂わせるスコット筆頭補佐官と共に、執務室へ入ると……。

 

「おはようございます、アンジェリカ」

《まだ早いから起こさなくていいと言ったのに。侍女が起こしてしまったのではないか!?》

 

 早速聞こえた心の声に私はすぐ応じる。

 

「外が銀世界になっていると知り、目が覚めてしまいました!」

「そうでしたか。ではココアで胃袋を温めてから、少し外に出ましょうか」

「はい! ぜひそうしましょう!」

 

 ココアを飲みつつ、一緒に出されたクッキーをかじり、その後はすぐに外へ出ることになった。

 

「雪は止んだようですね。雪かきが始まる前に、行きましょう」

《中庭だったら未踏のはずだ。わたしとアンジェリカで一番乗りだ!》

 

 厚手のウールのローブをまとったレグルス王太子殿下の表情は、なんだかうきうきしている。

 

(やはりここまで雪が降るのが珍しく、童心に帰っているのね)

 

 大変微笑ましい気持ちになってしまう。

 

「では」

 

 レグルス王太子殿下が私をエスコートして歩き出す。彼はロングブーツ、私はショートブーツで、宮殿の中庭へと足を踏み出す。

 

 新雪は歩き出すと、ぼふっ、ぼふっと音がして、すんなりと足が雪の中に沈む。しっかり足跡も出来て、振り返るとレグルス王太子殿下と私の歩みが見える。

 

(何だか寄り添った感じの二人の足跡。幸せの軌跡みたいで、ほっこりするわ……)

 

 私たちの足跡を消さないように、気を遣ったスコット筆頭補佐官が、サラン護衛騎士隊長らと共に距離をあけながらついて来ていた。

 

「王都でここまで積もるのはわたしが子供の時以来だと思います」


《あれは確かわたしが五歳の時だ。妹たちと雪だるまを作った。懐かしい》

 

(昔を思い出すレグルス王太子殿下の横顔は、見ていて何だか和むわ)

 

「確かにこれだけのまとまった雪は珍しいですよね。北部では雪が降っても、王都では雪が降らずに終わることが多いですし」

 

 私がそう伝えると、レグルス王太子殿下はうきうきした様子で応じる。

 

「ええ、その通りです。これはついていると思います」

 

 レグルス王太子殿下は実に嬉しそうに私を東屋ガゼボまで連れて行く。

 

「さあ、こちらへ」

 

 東屋に入ると、そこからは雪化粧した池が見えているのだけど……。

 

 真夜中から、ついさっきまで雪が降っていたのだ。しんしんと降り積もった雪は、池の表面に張った氷に柔らかく降り積もっていた。

 

 朝陽が射し込み始め、池の表面の透明な氷を淡く照らす。真っ白な雪と透き通るような氷と陽光の競演。東屋から見える景色はまさに雪の絶景だった。

 

「アンジェリカ」

「はい、殿下」

「ハーン帝国では初雪を愛する人と眺めると、その二人は永遠になると言われているんです」

「そうなんですか!?」

 

 レグルス王太子殿下はコクリと頷く。

 

《やはり子リスは知らなかったようだな。連れて来てよかった! いいサプライズになる》

 

「初雪はその年で一度きりです。その景色を楽しめるのはその時だけ。さらに雪の白さはとても象徴的。まさに純愛であり、二人の想いは永遠に清らかに続く──そう言われているんですよ」

「とっても……ロマンチックな風習なんですね」

 

 思わずうっとりしてしまう。

 

「ハーン帝国と言えば、名馬で知られる騎馬民族。一度戦になれば、女性も騎乗で槍を手に戦うと言われています。ゆえにこんなロマンチックな風習があるとはあまり知られていないのです」

「ということはその伝承を知っていれば……」

「ハーン帝国の皇族や貴族は大喜びでしょう」

 

(もしかしてこれも私の王太子妃教育のサポートの一環で、わざわざ実践で教えてくれたのではないかしら!?)

 

「殿下、ありがとうございます! ハーン帝国、アトリア王国からは遠く、あまりその文化を知らなかったのですが……。今回、たくさんのお土産、伝統衣装、そしてこの初雪で、ハーン帝国に興味を持てましたし、王太子妃教育はまた一歩前進出来ました!」

「アンジェリカ、まだ御礼は早いですよ」

 

 そう言うとレグルス王太子殿下が不意に私を抱き寄せる。ドキッとしながら見上げると、いつになく彼の顔が近いではないですか!

 

「初雪の誓いです、アンジェリカ」

「!?」

「君に永遠とわの愛を捧げます」

 

 そこでゆっくりレグルス王太子殿下の唇が、私の唇に重なり――。

 

 ハーン帝国の実はあまり知られていない風習。

 でも私はこの素敵な風習を絶対に忘れないだろう!




お読みいただき、ありがとうございます~

おまけの話で、ついにヾ(≧▽≦)ノキャー

次話は思いがけない人物のお話です~

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