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平凡な侍女の私、なぜか完璧王太子のとっておき!  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中
 

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王都の北エリア

 今晩、レグルス王太子殿下は大使夫妻と晩餐会だった。


 日中は大使と謁見し、その後は大使夫妻を王都内のあちこちに案内していた。それに付き添ったのはスコット筆頭補佐官で、私はお留守番。


 夕方にはスコット筆頭補佐官が執務室に戻り、「今日はこのままお帰りいただいて大丈夫です」と伝えてくれる。


 この結果。


 私はお茶会の翌日、レグルス王太子殿下とほとんど顔を合わせることなく、この日のお勤めを終えることになった。そしてその足で向かうことになったのは……。


 王都の北エリアと呼ばれる、少し寂れた場所だ。


 北エリアには工場や工房が多数あるが、十七時になると、どこもその日の仕事を終える。十七時半にもなると、北エリアは人がいなくなり、閑散としてしまう。代わりでにぎあうのが、北エリアの隣にある飲食街で、ここは十七時以降大変活気があった。


 宮殿を出発し、賑わいを見せ始めている飲食街を馬車の窓から眺めながら、北エリアへと向かう。


「このままここで待機しておきますか? この時間になると、北エリアでは馬車もほとんど走っていません」


 御者にそう言われた私は待機料金を払い、そのまま北エリアの入口で待ってもらうことにした。


 飲食街のエリアには歩いていけないわけではない。十五分ほど歩けば到着するし、そこならいくらでも馬車は拾える。でも人がいない通りを女性が一人で歩くのはリスキー。馬車を待機させるのが正解だと思った。


 ということで馬車を下りると、北エリアの中へと入る。


 さすがに入口付近には居酒屋とレストランがあり、そこは営業しているが、そこを離れるとまだ日没前だがもう夜の帳が下りたように感じてしまう。


(どうしてテレンス公爵令嬢は、こんな場所に私を呼び出したのかしら?)


 そう、こんな場所に私が一人でくることになったのは、テレンス公爵令嬢からの手紙のせいだった。その手紙には、こう書かれていたのだ。


『アンジェリカ・リリー・コルネ侯爵令嬢


 先日のお茶会では大変お世話になりました。

 あなたの機転にはとても助けられたわ。

 どうして殿下があなたを侍女にしたのか。

 それも分かった気がする。

 ところで急なお願いになるのだけど

 今日のお勤めが終わったら

 この場所に来てくれないかしら?

 どうしても話しておきたいことがあるの。


 ルイーザ・マリー・テレンス』


 特に予定があったわけではない。そこで手紙に書かれた場所へ向かうことになったが……。


 これは……。


 北のエリアのさらに北の一画に向かうと、そこは大きな塀でぐるりと囲まれていた。守衛室もあり、そこに掲げられている看板を見ると『テレンス繊維工場』と書かれている。


(なるほど。テレンス公爵令嬢のお父様が経営する工場があったのね。この辺りには関係者以外は立ち入らないから、何か密談するにはうってつけと)


 守衛室を見ると、老人が一人中にいて、名前を告げると、門の脇の通用口の扉を開けてくれた。


 こうして敷地の中に入ると、等間隔で街灯があり、人気のない暗い工場と倉庫らしき建物がずらりと並んでいるのが見える。その建物群に入る手前に噴水があり、そこが待ち合わせ場所だった。


(こんな所に呼び出すなんて、余程人に聞かれたくない話をしたいようね)


 噴水を眺められるように配置されているベンチに座り、テレンス公爵令嬢の到着を待つことになった。


 微かに聞こえる秋の虫の鳴き声、そして噴水の水音以外は聞こえない中、無言で待っていると、時間の経過が分からなくなる。


「!」


 門の向こう側に馬車が見えてきた。


 どう考えてもあれにテレンス公爵令嬢が乗っている!


 馬車は守衛室のそばで止まり、通用門の扉が開く。


 ロイヤルパープルのドレスに、黒のフード付きのロングケープをまとったテレンス公爵令嬢が姿を現した。


「お待たせてしまい、ごめんなさいね」


 テレンス公爵令嬢はそう言いながら侍女を連れ、こちらへと歩いてくる。だが侍女は途中で立ち止まり、テレンス公爵令嬢だけが私のそばに来た。


「こんなところまで呼び出して申し訳なかったわ。でも宮殿だとどこで誰が見ているか分からないから、ここまで来ていただいたの」


 そんなにも機密性の高い話をしたいのかしら?と思いながら「そうなのですね」とひとまず応じる。


 テレンス公爵令嬢はベンチに座ると私と向き合うと、おもむろに口を開く。


「単刀直入に言わせていただくと、王太子殿下の婚約者候補の最有力、あなただと思うの」

「!? そんなわけがありません。私はただの侍女ですから」

「違うと思うわ。レグルス王太子殿下の目線はずっとあなたを追っていたわよ!」


 これには「えええええっ」と叫びそうになり、でもすぐに理解する。


「それは……私が給仕も兼ねていたので、きちんと動けているのか、その確認のため、見ていただけだと」

「それもあるかもしれないわね。でもあれだけ顔は無表情なのに。殿下の紺碧の瞳はあなたを見ている時だけ、輝いていたわ」

「……皆様と盛り上がる話題の提供を私がしていたので、次はどんなテーマを出すのか。気になっていただけだと思います」


 私の説明を聞いたテレンス公爵令嬢は肩をすくめる。


「あなた、完全に自覚できていないみたいね」


 これにはどう答えようかと考えていたら……。


「あなたが婚約者候補になればいいのに」

「そんな」

「そんなことはできませんと言うのなら、自覚していただきたいですわ。殿下が婚約者を今いる候補の中から選ぶには、あなたが邪魔だということを。殿下に幸せになって欲しいなら、身を引いてもらわないとダメだと思うのよ」

「それはつまり……」

「殿下の侍女、辞めてくださらない?」

お読みいただき、ありがとうございます!

次話は明日の8時頃公開予定です!

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