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平凡な侍女の私、なぜか完璧王太子のとっておき!  作者: 一番星キラリ@受賞作続刊発売決定:商業ノベル&漫画化進行中
【おまけの物語】

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彼女の決意

 キラキラと輝くシャンデリア。


 室内の装飾は全て黄金であり、左右の壁は総鏡張りなので、実に広々とした空間に感じられる。


 国王陛下主催の晩餐会。


 爵位授与式の後の晩餐会で、実際に授与されたのは三名のみ。しかし百席ほどはこの国の重鎮、有力貴族たちにより埋め尽くされている。


 これには理由があった。


 新たに爵位を得て、貴族となった彼らを、既存の貴族たちにお披露目する場でもあるのだ。


 ここでは貴族たちによる洗礼……品定めがなされるが、爵位を授与されたのは錚々たる者ばかり。


 筆頭はスコット筆頭補佐官!


 彼が今まで爵位を賜っていなかったことに驚きだが、それは彼がまだ若かったからだ。だがレグルス王太子殿下の筆頭補佐官として、十分過ぎるほどの働きをしている。だからだろう。いきなりの子爵位の授与! 多分、ここからトントン拍子で侯爵位まで賜るのに時間はかからないだろう。テレンス嬢は侯爵令嬢……侯爵夫人になるはず。


(私なんかより苦労人のテレンス嬢よ。絶対に幸せになっていただきたいわ。スコット筆頭補佐官のこと、サポートできることがあれば、応援しないと)


 深緑色のテールコートを着て、ビシッと決めたスコット筆頭補佐官の隣に座るテレンス嬢は、ロイヤルパープルのイブニングドレス姿で、まるで王族の一人かのような貫禄に溢れている。こうなると彼女がかつて修道院にいたことなど……遠い遠い過去の話にしか思えないだろう。


 そんなテレンス嬢の隣に座るのが、今回男爵位を賜る宮廷医のボルチモア先生だ! 今日は黒の王道テールコートで、いつもの白衣姿とは違い、実に新鮮。これまで代々宮廷医を務めてきたボルチモア家であるが、医師いうのは外科手術もあり、それが荒仕事と思われ、その地位は職業的に低い。貴族で医師なんてこれまでいなかった。ゆえに彼が爵位を賜るのは実に画期的。


 ちなみにダイアンはこの話を聞いて『あたしに貴族なんて無理だよ! この婚約は解消しないと』とボルチモア先生に伝えたと言う。するとボルチモア先生は『ダイアンと結婚できないなら、爵位なんていらない。爵位の方を辞退する』なんて男気を見せた。これにはさしものダイアンも驚き、未来の男爵夫人になることを受け入れたという。


(そこまで愛されるなんて、女冥利に尽きるわよね。でもボルチモア先生、いつもテキパキと仕事をして、そんな言葉を言う熱い一面があるなんて……意外だわ!)


 ボルチモア先生から熱愛されているダイアンは、赤毛に合わせたスカーレット色のドレスで、大変美しい。本人は「ドレスなんてさ、あたし、似合わないよ……」なんて言っていたが、そんなことはなかった。女性的な体型をしているし、こうやってドレスを着ていると、まさか鍛冶職人だとは……きっとその手を見ない限り気づかないだろう。


(でもそのダイアンの手をボルチモア先生は何度も愛おしそうに撫で、キスをしている。きっと彼は職人であるダイアンの手も含め、愛しているのだわ……)


 そんなボルチモア先生がゾッコンのダイアンの隣に座るのが、アルラーク隊長だった。


 宮殿内で働くスコット筆頭補佐官とボルチモア先生は、貴族たちの中での知名度は抜群に高い。この二人に対し、王都警備隊中央部隊しかも隊長となると、背筋を伸ばしたくなる貴族の方が多い。


 王都警備隊は平民のために動く機会も多いが、もし貴族が逮捕されるなら、この中央部隊が動くことになる。そのトップが隊長なのだ。ゆえにアルラーク自身を知らなくても、その役職を知らない貴族はいない。


(アルラーク隊長とは、何かに備え、お近づきになりたいと考える貴族が多いはずよ。良くも悪くも注目を集めると思うわ。彼なら甘言にのせられることはないと思うけれど、性格がいいので騙されないか心配。だから私がしっかり、アルラーク隊長を守らないと!)


 あの日、パブリック・ハウスで、神妙な顔つきのアルラーク隊長から頼まれたこと。それは……。


『爵位の授与式は単身で参加です。ですがその後の晩餐会。同伴者が一名可となっています。自分は未婚です。このような場合は母親を同伴するそうですが、あいにく母親は早くに亡くなっており……。姉がいるのですが、まさに臨月です。一人で行けばいい……そう思うものの、その……王家主催の晩餐会という華やかな場に、気後れしてしまうというか……。普段このような行事の際は、宮殿の外で警戒ばかりしていましたのもので……。重鎮たちとの会食に参加するぐらいで、場慣れしていないのです。それに……』

『その名誉ある王家主催の晩餐会。私を同伴してくださいませ』

『!』

『そのような華やかな場から遠のいていましたが、経験がないわけではありません。それに侍女としてお勤めすることで、現在の貴族の皆様のお名前と顔はきっちり頭に入っています。どのような人脈を持ち、領地はどこでどんな商会をお持ちなのか……そう言った情報はすべて把握しておりますわ。アルラーク隊長を補佐する意味を含め、私をエスコートくださいませ』


 そう伝えた時のアルラーク隊長の表情は……。


(まるで少年のようにピュアだった。アクアグリーンの瞳をキラキラさせ、「ありがとうございます! ぜひ自分と一緒に晩餐会に参席してください!」と頭を下げた瞬間に、ホットチョコレートが運ばれてきて、給仕の男性はビックリしていたわよね。何事かと)


 そんなアルラーク隊長であるが、授与式を得て、その手には国王陛下から賜った男爵位の紋章が刻まれたシグネットリンクが輝いている。さらに儀礼用の黒の王都警備隊の隊服には、その勇気と王家への忠誠を示す赤のサッシュがアクセントとなり、実に素敵だった。


 もう見た目は完璧な貴族の一員なのに本人は……。


「ナイフもフォークも外側から……」と真剣な表情で呟いている。重鎮たちとの会食は、会食とは名ばかりで、食事より会話がメイン。出されるワインを飲みつつ、話に集中となる。貴族と本格的に食事をするのは、この晩餐会が初なのだから、テーブルマナーを確認したくなる気持ちはよくわかってしまう。


「アルラーク隊長……いや、ウォーデン男爵、でしたかな。こんな華やかな場では、気づまりではないかね」


お読みいただき、ありがとうございます!

何やら不躾な言葉を投げかけるやからが登場。

波乱万丈な予感……!

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