表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
平凡な侍女の私、なぜか完璧王太子のとっておき!  作者: 一番星キラリ@受賞作続刊発売決定:商業ノベル&漫画化進行中
【おまけの物語】

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

137/204

彼女と彼

 キリッとした一重のアクアグリーンの瞳。髪色はチョコレート色で、今日はその髪色に合わせたセットアップを着ている。いつも王都警備隊の隊服を着ている姿で会っていた。よって初めて見る私服姿のアルラーク隊長は、何だか新鮮だった。


「ルベール嬢、料理は大丈夫でしたか? お口に合ったでしょうか……?」


 そのアルラーク隊長は、ロイヤルブルーのコートを着た私をエスコートして歩きながら、さっきまでの会食の件を振り返る。


「ええ、とても美味しかったですわ。アンのお母様の手料理。野菜がたっぷりのポトフで体がぽかぽかになりました。そのポトフに黒パンはとっても合っていて、感動しましたわ。それにアンが作ってくれたジンジャーブレッドも上手に焼けていて、味も良かったです」

「そうでしたか。それは良かったです」

「何より、アンとそのお母様も、元気そうだったので安心しました。ただ、再会した瞬間にアンが大泣きになってしまったのは……。本当に驚いていしまいましたが」


 私の言葉にアルラーク隊長はその時のことを思い出したようで「ああ、あれはすごかったですね」と笑う。


「ただ、アンはずっとルベール嬢に申し訳ない気持ちで一杯だったのです。その想いが再会した瞬間に溢れてしまったのでしょうね。でもあれはあれでよかったと思います。たっぷり泣くことで、アンの中で溜まっていた感情は綺麗に吐き出すことができたはず。これからはもう過去の出来事として、前に向かって生きて行くことができると信じています。何より今晩は爆睡でしょうね。食事の最中から、ウトウトしていましたから」


 確かにアンは大好物だというポトフを食べながら、寝落ちしそうになっていた。あれだけ泣いたのだから、眠くなるのも納得だった。


「……このまま馬車で宮殿までお送りするのがマナーではあるとわかっています。ただ、少しばかり嬉しい知らせを受け、またルベール嬢に相談があり……。もしよろしかったらコーヒーを一杯、お付き合いいただけないでしょうか?」

「! ちょうど、コーヒーを飲みたいと思っていました。ぜひ、行きましょう!」


 コルネ伯爵とレグルス王太子殿下の婚約式で、奇しくも知り合うことになったアンとその母親。恐ろしい事件に巻き込まれてしまったが、過去と決別し、前に進むために。アンとは一度会った方がいいと思っていた。アンが良心の呵責に苦しんでいるなら「もう大丈夫よ。私は生きているし、終わったことだから」と慰めたい気持ちもあったのだ。そしてそれが今日、実現した。アルラーク隊長の仲介で、私はアンとその母親と再会し、二人の自宅で夕食をご馳走になったのだ。それはそれで大きな目的を果たすことができ、私は満足していた。


 その一方で、王都警備隊の中央部隊の隊長であるアルラークは、多忙を極める。これまで何度か彼の仕事終わりや夜勤前に食事をしたり、お茶をしたが、それはいつも慌ただしいものだった。でもアルラーク隊長は今日、仕事が休み。余裕をもってアンとその母親の家で会い、四人で食事をして、至る現在だった。


(私自身、もう少しアルラーク隊長と一緒にいたいという気持ちがあった。だからこのコーヒー一杯の申し出はとても嬉しいわ……!)


「では表通りを一本入ったところにあるのですが、庶民向けにしては実に美味しい一杯を出すコーヒーのお店へご案内します……少し歩きますが、大丈夫ですか?」

「それは楽しみですわ! そして歩くのは慣れていますので、大丈夫です。侍女というのは存外動き回っていることが多くて……。お気遣いありがとうございます」


 こうしてアルラーク隊長の案内でカフェに向かい歩いている時のことだった。


「……つけられていますね」

「!」

「王太子殿下と伯爵の婚約式が終わった直後までは、まだ治安がよかったのですが……。婚約式に合わせ、王都から逃げ出していた悪党が戻ってきているんですよ。もちろん、王都警備隊は引き続き警戒を続けています。ですが婚約式の前後に比べたら……」


 しっかり私をエスコートして、アルラーク隊長は歩いてくれている。だが誰かにつけられているという事実に心臓がドクドクしてしまう。


(まさかフェリクスに関係する人物だったりしないわよね……? 私が裏切った後、復讐しようとしているのでは……)


 私の不安を察知したのか、アルラーク隊長は静かに告げる。


「ルベール嬢。あなたのことは自分が必ず守ります。……信じてください」

「……!」


 そこで私は思い出す。彼は精鋭が揃う王都警備隊の中央部隊の隊長なのだ。


(アルラーク隊長は、この王都で五本の指に入る強さのはずよ! その彼が私を守ると言ってくれているのよ。大丈夫。冷静に対処しましょう)


 心の中でまさにそう言い聞かせた時。

 ドンと誰かがぶつかって来た。


 体がよろめくが、アルラーク隊長によって支えられていると思ったら、手にしている巾着袋を掴もうとする手が伸びてくる。


 悲鳴をあげそうになるが、私の声が出る前に、アルラーク隊長が動いた。


「うぐっ」

「ぐわっ」

「かはっ!」


 あまりにも鮮やかなアルラーク隊長の動きに、私は声も出ない。だが私の巾着袋を狙った強盗は、アルラーク隊長からキックとパンチを連続で食らい、あっという間にその場で膝から崩れ落ちた。


 さらに「ピーッ」「ピーッ」と笛の音が聞こえる。


 アルラーク隊長は今日、仕事が休みだった。だが警備隊が持つ笛は、ちゃんと持参していたようで、応援呼ぶために警笛を吹き鳴らした。


お読みいただき、ありがとうございます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【一番星キラリの作品を紹介】
作品数が多いため、最新作を中心にバナーを並べています(2025年12月の大掃除で・笑)。 バナーがない作品は、作者マイページタイトルで検索でご覧くださいませ☆彡

●紙書籍&電子のコミカライズ化決定●
バナークリックORタップで目次ページ
悪役令嬢に転生したらお父様が過保護だった件~辺境伯のお父様は娘が心配です~
『悪役令嬢に転生したらお父様が過保護だった件~辺境伯のお父様は娘が心配です~ 』

●これぞ究極のざまぁ!?●
バナークリックORタップで目次ページ
悪役令嬢は死ぬことにした
250万PV突破『悪役令嬢は死ぬことにした』

●新作スタート!●
バナークリックORタップで目次ページ
婚約破棄の悪役令嬢は全力ざまぁで断罪回避に成功!のはずが……まだ終わらないなんて聞いていません!
『婚約破棄の悪役令嬢は全力ざまぁで断罪回避に成功!のはずが……まだ終わらないなんて聞いていません!』

●出版社特設サイトはコチラ●
バナークリックORタップで出版社特設ページへ
婚約破棄を言い放つ令息の母親に転生! でも安心してください。軌道修正してハピエンにいたします!
80ページが試し読みできる特設サイトへ
『婚約破棄を言い放つ令息の母親に転生! でも安心してください。軌道修正してハピエンにいたします!』


●もふもふも登場!●
バナークリックORタップで目次ページ
断罪の場で自ら婚約破棄シリーズ
『断罪の場で悪役令嬢は自ら婚約破棄を宣告してみた』
日間恋愛異世界転ランキング3位!

●壮大なざまぁを仕掛けます!●
バナークリックORタップで目次ページ
婚約破棄された悪役令嬢はざまぁをきっちりすることにした
『婚約破棄された悪役令嬢はざまぁをきっちりすることにした』

●章ごとに読み切り!●
バナークリックORタップで目次ページ
ドアマット悪役令嬢~ドン底まで落ちたらハピエンでした!~
『ドアマット悪役令嬢はざまぁと断罪回避を逆境の中、成功させる~私はいませんでした~』

●商業化決定●
バナークリックORタップで目次ページ
悪役令嬢はやられる前にやることにした
『悪役令嬢はやられる前にやることにした』

●宿敵の皇太子をベッドに押し倒し――●
バナークリックORタップで目次ページ
宿敵の純潔を奪いました
『宿敵の純潔を奪いました』

●コミカライズ化も決定●
バナークリックORタップで書報ページへ
断罪後の悪役令嬢は、冷徹な騎士団長様の溺愛に気づけない
ノベライズは発売中!電子書籍限定書き下ろし付き
『断罪後の悪役令嬢は、冷徹な騎士団長様の溺愛に気づけない』


●妹の代わりに嫁いだ私は……●
バナークリックORタップで目次ページ
私の白い結婚
『私の白い結婚』

●[四半期]推理(文芸)2位●
バナークリックORタップで目次ページ
悪女転生~父親殺しの毒殺犯にはなりません~
『悪女転生~父親殺しの毒殺犯にはなりません~』

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ