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平凡な侍女の私、なぜか完璧王太子のとっておき!  作者: 一番星キラリ@受賞作続刊発売決定:商業ノベル&漫画化進行中
【おまけの物語】

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新しい道具

「さて。これがコルネ伯爵に頼まれ、作ってみた物なんだけど……」


 ティータイムを終え、テーブルを片付けると、鍛冶職人のお爺さんは暖炉のそばのロッキングチェアに座ったり、外のベンチに腰掛けパイプ煙草を吸ったりと、思い思いに過ごす。一方のジークと私は、ティータイムで使った席にそのまま残り、コルネ伯爵がオーダーした道具を見ることになった。


「これは太腿に巻き付けるホルスターで、持ち手(グリップ)は革製、このストラップは手首につけるようになっているのか」


 ジークがホルスターから取り出したのは、二十センチぐらいの金属棒である。


「その通り。ストラップはもしもの時に備えている。武器が手元からなくなると困るだろう。それで取り外し方だけど、ホルスターから下へ引き抜くようにするのさ。持ち手はこうやって持つ。この角度でこんな感じで振ると、棒の部分が伸びるようになっているんだよ」


 ダイアンの説明を聞いたジークは、そのまま金属棒の持ち手を握りしめ、誰もいない空間に向けて振り下ろす。


「あっ」と思わず声が出てしまう。


 取り出した時は二十センチほどだったが、振り下ろした時に伸縮し、その長さは五十センチほどになっている。


「なるほど。これはすごいな。棒の部分が伸びてロックされる。金属を使っているが重さはそこまでもない。男性からすると軽いぐらいだが、これはリエット用だ。であるならば、重量と言い、長さといい、ちょうどいいな。しかも携行しやすい。しかしこんな武器、初めて見たぞ」


 感嘆するジークにダイアンがこの道具……武器の正体を教えてくれる。


「コルネ伯爵によると、それは“警棒”というらしいよ」

「警棒か……。これまで王都警備隊の隊員はこんと呼ばれる長い棒を武器として所持していたが……。この警棒なら携帯をしやすくなるし、機動性がよくなるな。これまたコルネ伯爵の発明品だな」

「しかもさ、苦労したけど、ここ。この突起を押すと、元の長さに戻るんだよ!」

「! なるほど」


 一通り操作を確認したジークはニヤリと私を見る。


「リエット。これはすごい武器だぞ。剣に代わる武器になるし、もうナイフを何本も隠し持つ必要がなくなる」


 そこで差し出された警棒を私が受け取ろうとすると、ジークがひょいとずらす。


「ジーク!」

「その前にテストだ」

「!? 使ってもいないのにテスト!?」

「僕が動かすのを見ていたただろう?」

「!」

「新しい武器だ。マニュアルはない。作ったダイアンも知るのは基本構造だ。だが僕たち諜報部の人間は武器の知識がある。そこからこの警棒の正しい使い方を編み出さなければならない」


 悔しいがジークの言うことは正しい。初めて見る武器であるが、ここは頭の中にインプット済の武器と照らし合わせながら、答えることになる。


「普段、私が所持している武器はナイフや短剣で、近接戦向きです。ですがこの警棒は長さが五十センチ近くあります。敵との距離をとり、戦うことが可能です」

「うん。正解。他は?」

「構造的に剣や槍と違い、『突く』より『打つ』使い方が主流かと。防御では剣と同じように、受け流す、ブロックする形で使えると思います」


 私のこの答えを聞いた瞬間、ジークの口元にフッと笑みが浮かぶ。この笑みを浮かべる時のジークは実にご機嫌であり、何とも男の色気のようなものが際立つ。


「リエット。さすが僕がリクルートしただけある。だがあと二つあるぞ、分かるか?」

「あと二つ!?」


 そこで考え込み「あっ」と気づく。


「どの武器でもそうですが、武器を所持しているということで、相手を怯ませることができます。特にこの警棒は先程の一振りで長さが急に出るのです。見たことがない武器。伸縮自在な様子を見せつければ、敵を威嚇することになります」

「その通り。コルネ伯爵のことだから、警備隊の装備品にするつもりだろうが、普及するまでの間は知名度ゼロの武器になる。敵さんにインパクトを与えられることは間違いない」


 そこでジークが手をこちらへ向け、指でクイクイと合図を送る。


「もう一つは実践で見せよう」

「!」

「リエット、来い」


 そこでジークが工房の外へ飛び出し、私はその後を追う。ジークは素早く警棒を伸縮させ、私へと攻撃を加える。


(ジークは剣術が得意で、突きの攻撃に慣れているはず。でもこの警棒が打つため専用と分かると、一切突きの動きを行わない。……本当に、諜報部の副長官とは思えないわ! 騎士でさえ、こうもすぐにこの武器を扱えないと思うのに)


 そこでビュンと振り下ろされる警棒の威力に、一瞬背筋が凍り付く。


「リエット、感じたか?」

「はい。剣と違い、皮膚が裂け、肉が切れ、血が出ることはありません。ですがその警棒の打撃の威力……それは想像以上に強いと思います。そして私より力のあるジークだったら、何倍もダメージを出せるかと」

「そういうことだ。敵さんも最初は剣ではないし、切られる心配も突かれる危険もないからと、油断するだろう。そこで先制で一撃お見舞いできたら、大きなアドバンテージになる」


 確かにジークの言う通りだ。


「そしてこういう使い方もできる」

「!」


 いきなりの連続攻撃で鍛冶工房の壁際まで追い込まれる。


「うひゃあ、副長官殿、あんなに動けるんか!」

「まるで剣闘士のようじゃな! 劇に出てくる剣闘士じゃ!」


 パイプをくゆらせていた鍛冶職人のお爺さんは大フィーバーだが、私は「冗談ではない!」という状態。いきなりの本気モードのジークに、丸腰で戦えなんて無茶ぶり過ぎる。ナイフをとろうかと逡巡した時。


「!」


 壁に背中がついた状態になったところで、ジークが両手で警棒を持ち、私の首元に押し当てる。


「くっ」

「リエット、こういう使い方もできる。両手で警棒のそれぞれの端を持ち、体重をかけるように押し込む。壁際に追い込むもよし、地面に倒し、警棒を手にのしかかるもよし。そして今の体勢に持ち込めたら、リエットだったら……」


 そこでピンときた私はジークが答えを口にする前に、膝を動かす。


 ジークは間一髪で警棒と共に後退する。


「リエット! 今、本気で急所を当てに来ただろう!? 使い物にならなくなったらどうするんだ!? リエットとの可愛いベイビーが望めなくなる!」


 後半の言葉は聞かなかったことにして、キレ気味で私は答える。


「それ言うならジークこそ! いきなり丸腰の私に本気で攻撃しましたよね!?」

「そんなことはない。僕は部下の実力を知っている。この程度の攻撃ではくたばらない。現にほら、今、ピンピンしているだろう?」


 ここは「シャーッ」と猫のように威嚇したい気持ちになったが、時計塔の時刻を見て、ハッとする。


「ダイアンさん、こちらの武器、お預かりします。コルネ伯爵に渡しておきます!」


 私はジークから警棒を奪い返し、ダイアンにお辞儀する。


「ああ、そうしておくれ。でもすぐにオルリック嬢、あんたに支給されると思うけどね。それにしても二人ともすごかったよ! オルリック嬢、お前さんが諜報部に協力していると聞いた時、情報収集がメインかと思ったけど……あんたなら副長官殿と肩を並べられるよ!」

「ありがとうございます! ですがこの件はくれぐれも内密で!」

「ああ、わかったよ!」


 私は宮殿へ向け、駆け出した。


お読みいただき、ありがとうございます!

読者様に提案された武器を

ついにオルリック嬢がゲットしました☆彡

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