第八章 テディベアのぬいぐるみと、五寸釘
第八章
鳥居の下、参道の真ん中に立ち迎え撃つのには意味がある
近距離まで来られたら、鳥居より背の高い存在をどうやって仕留めればいいのか
そうなる前に狙いを定めやすい道の中央に立つ必要がある
そいつは皮膚がはがされたように、赤い筋肉がまだら模様にむき出てしまっている
彼女は左手に巨大なテディベアのぬいぐるみを引きずり、右手に持ってるのはおそらく五寸釘だ
柵を吹き飛ばしたまま、参道の中央をわたしに向かい、本殿に向かって歩いてくる
進むのはゆっくりだけれど、一歩が大きくそして重い
石畳でできた参道に、足跡が増えていく
わたしは目をつぶった
ふたつめの鳥居が絶対防衛ライン
木花神社はまだ穢されていない
タリーズコーヒーに入るか迷った時と同じ、木々の葉がこすれる音がする
後ろから鳥が4回鳴いた
自分の存在をわたしに知ってもらうため
その鳥は、カラスだ
その子も味方になってくれてる
そのカラスは
八咫烏
導きの神、太陽の化身
でも今は夜中の3時。日の出まであと何時間あるか
そしてわたしは目を開けた
相手の距離が近づいてる
そいつには聞こえないと思うけど、一応言った
「清らかな場所に導く清らかな道に、これ以上あなたの
パクチーみたいなくさい足跡つけないでくれるかしら。石が腐って生ごみに出さなきゃ
いけないでしょう、ゴミ袋も有料なのよ」