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ベリッシア・パエーゼ ~5人の美しき王子様。王妃に選ばれるのはあなた~

ゆるふわファンタジーです。


主人公はOLです。

彼女は男性に対して厳しい審美眼をお持ちのようです。

学歴、身長、収入、等々。

「背の低い男は人間じゃない」なんて、平気で言う女性です。

意に沿わない相手をディスりまくります。


そういう主人公が苦手な方はご注意下さい。



「はあーーっ、疲れたーーっ」


 今日も深夜の帰宅だ。


 仕事に一切の妥協を許さない性格が災いしてか、はたまた無能な部下を持ったせいなのか。


 部下たちの顔を思い出しただけで、疲れがどっと押し寄せてくる。


 部下が五人もいれば普通なら一人くらいはイケメンがいていいはずでしょうが。


 そろいもそろって低身長、大福顔だなんて……。高いのは学歴だけ。


 私って、つくづく男運がない女なんだわ。



 奥右恵瑠オウエルは仕事にも男にも一切妥協はしない。自分より背の低い者、給料の安い者、学歴の低い者はお断りだ。


 そんな恵瑠の唯一の生き甲斐が、乙女ブラウザゲームだった。



【ベリッシア・パエーゼ ~5人の美しき王子様。王妃に選ばれるのはあなた~】



 5人の王子とイベントを重ね、好感度の一番高い王子と結ばれるという、極めてオーソドックスな内容だ。


 王子たちは皆眉目秀麗、高身長で、高学歴、高魔力の持ち主で、個性もそれぞれ異なっている。


 美しき王国で繰り広げられる恋と冒険の日々。


 このゲームの世界で生きたいと、どれほど願ったことだろうか。


 低身長で大福顔の男なんてもううんざりだ。




 美しいものが好き。


 美しいものを愛でたい。


 美しいものに囲まれて生きたい。


 乙女の本能とも言えるこんなちっぽけな願いさえも、現実世界では叶えられることはない。遥か彼方の夢のまた夢である。


 だから今宵も乙女ブラウザゲームの沼にハマる恵瑠であった。




 モニタを眺めていると、急に視界が暗くなった。


(なに? 停電?)


 グラリと身体が傾いた。


(違う、停電じゃない、これは……)


「過労死」という言葉が、脳裏をよぎった。




 ◆ ◆ ◆ ◆




 ようこそ! 異世界の扉へ。


 あなたを待っていました。


 傾きかけた王国には、あなたの卓越した能力が必要です。


 王国の王妃になってその能力をいかんなく発揮して下さい。


 5人の美しき王子たちがサポートをいたします。




【ベリッシア・パエーゼに行きますか? YES or NO?】




 こ、これは、乙女ブラウザゲームのスタート画面。なぜそれが目の前に。


 そうか、私は死んでしまったんだ。だから人生をやり直さなければならないんだ。


 だったら答えはひとつ。


 ポチッ!




 ◆ ◆ ◆ ◆




 目を覚ますと見知らぬ天井だった。


 寝ているベッドは天蓋付きのやつだ。


 確か自宅で乙女ブラウザゲームやってたら、視界が暗転して。


 ガチャリ。


 ドアが開き、執事みたいな背の低い初老の男性が入ってきた。


「お目覚めになりましたか」


「あなたは?」


「私はセバスサン。王宮の執事を務めております。あなた様のお名前をうかがってもよろしいでしょうか?」


奥右恵瑠オウエルです、OLです」


「では、エル様と呼ばせていただきます」


「あの……、ここはどこなのでしょうか?」


「ベリッシア・パエーゼの王宮にございます」


 やっぱり。


 あれは過労死だったんだ。


 そして、乙女ブラウザゲームの世界に転生した。


 赤ん坊としてではなく、29歳の姿のままというのがいただけないのだけれど。


「王国には言い伝えがございます」


 セバスサンは言った。


「国傾きしとき、救国乙女来たりて、その卓越したスキルもて、再び王国に栄華をもたらさん」


 まんまゲームの中のセリフだ。


 セバスサンは尋ねた。


「エル様はどんな男性がお好みですか?」


「眉目秀麗で、学歴が高くて、高身長ですね」


 淀みなく答えた。日本であろうと異世界であろうと、妥協するつもりは一切ない。


「さようでございますか」


 セバスサンは愛想のよい微笑みを浮かべながら部屋から出て行った。




 異世界から転生した私は、ここでは「救国乙女」と呼ばれている。


 王宮の人々は皆礼儀正しくて、「救国乙女」への期待値の高さがうかがえた。


 ベリッシア・パエーゼの王宮でのおもてなしは手厚いものだった。


 料理は見たことがないくらい華やかで、味も悪くなかった。


 小柄なメイドたちが専属となり、かいがいしく世話をやいてくれたおかげで、ここでの生活にはすぐに慣れた。



 そして本日、ついに5人の王子たちと対面することになった。


 メイドに案内されて応接室に向かう。


 ドアの前に辿り着き、メイドが振り返って確認する。


「この中に5人の王子殿下がいらっしゃいます。エル様、よろしいでしょうか」


「は、はい!」


 ベリッシア・パエーゼの八頭身の美しき5人の王子がドアの向こうにいると考えると、心臓がうるさいほどドキドキと鳴った。


 トントントン。


 ノックをしてメイドがドアを開けた。




 アスガル、ベクタス、クレド、デリウス、イースト。




 ソファーに腰を下ろして談笑していたゲームの中の姿そのままの美しき王子たちが、いっせいに顔を上げてこちらを見た。


「救国乙女のご登場だ」

「はじめまして」

「ようこそ」

「見た目は普通だな」

「つったってないで、お入りよ」


「失礼します」


 王子たちの向かいの席まで歩いていく。


 うーーっ。


 緊張するぅーーっ。


 でも、ドアが開いた瞬間から感じている違和感。


 なんだろうこれ。


 王子たちが立ち上がった瞬間、その違和感の正体が判明した。


 え!? この王子たちって。まさか!



【ゆるふわファンタジー】ゆるゆるの設定とふわふわなストーリーのファンタジー。

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