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スマート主義な社会

作者: 雉白書屋

 こんにちは、私です。私ですよ。考える葦こと、私です。はあ、スマートフォンとはなんでしょう。あっ、これはクイズじゃないです。だから、その指を止めてくださいね。ええ、検索しなくても結構ですよ。

 どうやら、人類はスマートフォンなしでは生きていけない時代に突入してしまったようです。

 朝起きて最初にすることは、スマートフォンのアラームを止めること。そして、そのままSNSをチェックし、眠っている間に何が起こったのか確認します。どこか焦燥感に駆られているようですが、仮にその朝、世界が終わろうとしていても、窓の外ではなく、スマートフォンの画面越しに知ることでしょうね。もしかしたら、最期を看取ってくれるのもスマートフォンなのかもしれません。

 通勤電車では、ほとんどの人がスマートフォンに釘付け。まるでその小さな画面に全宇宙が詰まっているかのように、目を輝かせていますが、その光の正体はブルーライトです。誰もが自分の世界に没頭し、周りの人間など眼中にありません。電車が脱線しても、きっと気づかないでしょうね。

 ある若者は片手にスマートフォンを握り、もう一方の手でスワイプを繰り返していました。彼の指先は、まるでフィギュアスケート選手のように優雅に画面を滑り、時折華麗なジャンプを決めています。彼の視線はスマートフォンから一瞬たりとも離れず、まるで恋人を見つめるかのようです。しかし、それは片思いでしょう。あとで搾取されたと嘆いても、ゲームのサービス終了は覆りません。

 私の同僚もまた、スマートフォンに恋をしている一人です。彼は仕事中でもこっそりとデスクの下で、恋人を愛撫しています。彼の生産性はスマートフォンのバッテリー残量と反比例するようですね。

 人々はもはや、道具に使われている、そう、スマートフォンに支配されていると言っても過言ではないでしょう。依存が進み、人間関係は希薄になり、現実世界でのコミュニケーション能力は低下する一方です。ある研究では、スマートフォンを見る時間が長いほど孤独感が強まるという結果が出ています。皮肉なことに、繋がりを求めて手にしたはずのスマートフォンが、私たちを孤立させているのです。

 孤立したものはどうなると思いますか? ええ、そうです、食い物にされるのです。これは野生動物だけの話ではありません。その愛するスマートフォンは知らないうちに私たちの情報を収集し、見知らぬ第三者に売り渡しています。闇サイトのオークションにかけられていると思うでしょう? とんでもない、大安売りです!

 しかし、その事実を知ったとしても、次の通知を待ちわび、新しい「イイネ!」やコメントが来たかどうか、何度も確認するのです。デジタルの森を彷徨い歩くゾンビのようにね。

 テクノロジーはどんどん進化して、より小さく、より細くと、まるで過剰なダイエットを推進するようですが、それに振り回される人は健康的とは言い難いです。ええ、まったくスマートじゃありませんね!

 いくらこすっても、スマートフォンはあなたの本当の願いを叶えてくれる魔法のランプではないのです。その通知というアラームを止め、真の意味で目を覚まし、この現実を見る勇気を持てる人は今すぐにスマートフォンを置いてみてください。そうすれば、目の前の世界を見つめることができるでしょう。本当に美しいものを見たければ、空を見上げればいいんです。あなたが可愛いと言っている猫は、本当は立体なんですよ。

 そして、スマートフォンから解放されたとき、私たちは本当の意味で「スマート」になれるのです。


 ……ふふっ、もし今の言い回しをSNSに投稿したら、たくさんの「イイネ!」をもらえたでしょうね。しかし、私にはそれの何がいいんだか、さっぱりわかりません。まったく、隣に座るこの女性も何やら夢中で画面を見つめていますが、何がそんなに気になるんでしょうかね。



【早く駅に着かないかな。隣の人ぶつぶつ言っててキモい。チラチラこっちを見てくるし、ニヤついてるし、もはや怖い。それにデブすぎ。友達いないタイプのデブ。あの指じゃスマホ触りづらいだろうなあ】

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