30日で消える君
今日もまた、婚約者のルーカスは朝食も食べずに引きこもっている。
「美味しいと評判の焼き菓子を頂いたのだけど、一緒にどうかしら?」
お菓子を頂いたなんて大嘘だ。本当は、一緒に食べたくて私が自分で買ってきた。
彼の好きなドライフルーツ入りのマドレーヌ。
「アンナ、ごめんね。切りのいい所まで進めたいから、僕は後で頂くよ」
ルーカスは少し困った顔で私を見ると、眼鏡の位置を直して仕事を再開した。最近、いつもこうだ。
彼は仕事ばかりしていて、ろくに会話をしていない。
「そう……分かったわ」
私は、なるべく音を立てないように静かに書斎のドアを閉めた。木製のドアが、分厚い壁のように感じる。
子供の頃は何でも話してくれたのに。
面白い話や好きな食べ物の事、悩みだって秘密だって何でも打ち明けてくれたのに。
互いに言いたい事を言って、玩具やお菓子を奪い合って、取っ組み合いのケンカだってしたのに。
最近、ルーカスの考えている事が分からない。
私の目を見てくれないのだ。表情を作るのが上手になって、彼の本心が分からなくなってしまった。
こんな状態で夫婦になんてなれるのかしら?
男爵家次男のルーカスは、子爵家の一人娘である私の婿になる。いわゆる政略結婚というやつだ。
両親は彼の事を気に入っているし、私もずっと昔から彼の事を気に入っている。
兄のように慕っていた彼を、異性として意識したのはいつ頃からだろうか?
でも、ルーカスはどうなんだろう?
婿に入るのって大変そうよね?
絶対に気を使うだろうし、覚えなければいけない仕事は山のようにある。
ルーカスは父の提案で、三ヶ月前から我が家に住んでいる。正式に結婚するのは一年後だ。
真面目で責任感の強い彼は、もちろん浮気なんて絶対にしないだろうし、婚約者としての役割も完璧にこなしてくれている。大切にされていると思う。
でもたぶん、彼は私の事が好きじゃない。
だってもう視線すら合わなくなってしまったもの。
◇
「これはあれだ、記憶喪失ってやつだね!」
叔父の言葉に気を失いそうになった。
「き、記憶喪失って、どういう事なの? 」
「最近、ルーカスが疲れているみたいだったから」
「疲れているみたいだったから?」
「スペシャルドリンクをプレゼントしたんだ」
「スペシャルドリンク……」
「そう! 魔力入りのやつだよ! やる気と集中力が強化されて眠気も吹き飛ぶ夢のようなエナジードリンク!そこにリラックス効果をプラスしてね、昨日ようやく試作品が完成したんだ!」
「ちょっと待って! まさか、その変な飲み物をルーカスに飲ませたの!?」
「変な飲み物だなんて失礼だな。ルーカスの愛用してる栄養剤にこっそり混ぜておいただけだよ」
「それを飲ませたというのよ! しかも騙し討ち!」
プンと幼な子のように頬を膨らませた叔父を思いっきり殴りたくなった。
父の異母弟である叔父は、幼い頃は神童と崇められるほど頭が良かったらしい。が、今はただの中年ニート。
仕事も結婚もせず、離れにこもって怪しい研究を続けている変人だ。
「つまり、そのエナジードリンク入りの栄養剤を飲んだせいで、ルーカスは記憶喪失になっちゃったの?」
「まぁ、そう言う事だね。正確に言うと、別の人格になったせいで記憶がなくなったんだけど」
「意味が分からないわ……」
「要するに、全く別人みたいになっちゃったけど、彼もルーカスの一部って事だよ」
悪びれる様子のない叔父を、また殴りたくなった。
ルーカスはニコニコしながら、私達を見ている。
眼鏡のない彼は久しぶりだわ。
こんな笑顔を見るのもいつぶりかしら?
「えーと、君はアンナ………だよね? 僕の婚約者だって聞いたよ?」
「そ、そうよ。私の事、覚えてない……のよね?」
「うん、ごめんね。言葉や文字は覚えているんだけど、自分が誰なのかも君の事も分からないんだ」
「まぁアレだ。別人みたいに感じるかもしれんが、彼もルーカスなわけだし、エナジードリンクの効果は30日で切れるから安心しなさい」
叔父は、なんて事ないようにそう言うと、あくびをしながら離れに戻って行った。
「えーと、ルーカス……って呼ぶのは、何だかおかしな感じがするから、貴方の事はルーと呼ぶわね?」
「うん、分かったよ。アンナ」
「えっと……ルーは、その、眼鏡はしないの?」
「眼鏡? 別に僕、視力は悪くないよ。眼鏡ってコレ? コレさ、度が入ってないね。伊達メガネってやつだ」
「え……そう…なの?」
「ねぇ、アンナ。それより、遊びに行こうよ?」
「で、でも、仕事はいいの?」
「仕事? そんなの、パパッと終わらせちゃうからさ」
そう言うとルーは、本当にさっさと仕事を終わらせてしまった。
そして、シャツのボタンを一つ外し、きっちり固められている髪をわしゃわしゃとかき乱した。
「アンナ、ピクニックに行こうよ!」
「ピクニック? うーん……それなら、敷地内に湖があるから、そこに行ってみる?」
「湖? いいね! 行こうっ!」
私達はサンドイッチを持って、湖まで歩いた。
その場所は昔、ルーカスとの遊び場だった。
「アンナ、ボートがあるよ! あ、釣竿もある!」
嬉しそうにはしゃぐルーを見て、私も嬉しくなる。
「とりあえず、サンドイッチを食べようか? 僕もうお腹ペコペコ!」
「そうね。ルーカスの好きなハムサンドを持ってきたんだけど………ルーも好きかしら?」
「ハムサンド? 大好物だよっ!」
美味しそうにサンドイッチをほうばるルーを見て笑いが込み上げてくる。
「ゆっくり食べないと、喉に詰まっちゃうわよ? 」
「そうだね。凄く美味しかったから、つい……」
恥ずかしそうに緑の瞳が揺らぐ。
眼鏡がないと、くるくる変わる表情がよく見える。
「ねぇ、アンナ………膝枕して?」
「えっ! ひ、膝枕?」
「………ダメ?」
「だ、ダメじゃないけど、でも………」
「僕はルーだけど、ルーカスでもあるんだよね。アンナの婚約者でしょ?」
「そ、そう……よね。わ、分かったわ」
私が頷くと、ルーは嬉しそうに膝の上に頭を乗せた。
サラサラの薄茶色の髪が風にそよいでいる。
こんなに近くで彼を見るのは、いつぶりだろう?
膝の上で揺れる髪に、つい触れたくなってしまった。
ルーは5分くらい横になって、ガバリと起き上がる。
「ねぇ、アンナ。次はボートに乗ろう!」
ルーは小さなボートに飛び乗って、私に手を差し出す。
「僕のお姫様。さぁ、どうぞ?」
いたずらっ子のような無邪気な微笑みは、まるで子供の頃の彼のようだ。
その後は、一緒に魚釣りをして、小さなカエルを追いかけて、野花で不恰好な指輪を作った。
そして手を繋いで屋敷に戻り、仲良く夕食を食べ、おしゃべりをしながら遅くまでカードゲームをした。
◇
「何だ………これは……?」
脱ぎ捨てられてた服に、散乱した書類。
長く寝過ぎてしまったみたいで、頭が重い。
書類を拾い集めて唖然とする。
手を付けてないはずの書類が終わっているのだ。
しかもこれは………間違いなく自分の筆跡だ!
身なりを整え、眼鏡をかけ、部屋を出る。
頭を捻りながらダイニングルームに入ると、アンナが笑顔で迎えてくれた。
「おはよう、ルー。よく眠れた?」
「…………ルー?」
「あら? 今日は伊達メガネをかけているの?」
「ど、どうして、伊達だって知ってるんだ!?」
「え……だって昨日、教えてくれたでしょ」
「教えた……? 僕が?」
「え………も、もしかして、ルーカスなの!?」
「そう……だが………?」
「わ、私……てっきりルーだと思って………」
「ルー? って…………何だ?」
その後、僕はアンナに話を聞いて愕然とした。
この体に別の人格が現れただって!?
そんな馬鹿みたいな話があるだろうか?
いや、でもアンナの叔父上ならやりかねない。
彼はロクデナシの変人だが、天才でもあるのだ。
ため息を吐きながら書斎に戻り、ドカリと椅子に座ると、机の上に置いてある封筒が目に入った。
『ルーよりルーカスへ』
封筒には自分の筆跡で、そう書いてある。
『初めまして、ルーカス。
僕はルー。どうやら、君の一部らしいよ。
ルーって名前は、アンナがつけてくれたんだ。
アンナって凄く可愛いよね。めっちゃタイプ。
今日は、敷地内の湖にピクニックに行ったんだ。
一緒にハムサンドを食べて、膝枕もしてもらった。 アンナってば、恥ずかしがって顔を真っ赤にしちゃってさ、もうヤバいくらい可愛かった!
それから、一緒にボートに乗って、釣りもして、夜遅くまでカードゲームをして遊んだんだ。
あ、手も繋いだよ。アンナの手ってちっちゃくて柔らかくて、なんかもう胸がドキドキした!』
「…………は? 何だ……コレは?」
僕は、手紙を握りつぶしてゴミ箱に投げ入れた。
ピクニック? 膝枕? ボートに乗って、手を握った?
それって…………………浮気じゃないのか?
アンナが、アンナが、僕以外のヤツとそんな事を!
アレ? いや、待てよ………?
ルーは僕の一部で、つまり僕って事か?
それなら、えーと、浮気じゃない……のか?
いや………でも、普通に悔しい。
自分だと言われても記憶がないのだ。
僕だってアンナと………ピクニックしたり、手を繋いだり、膝枕をしてもらいたいっ!
くそっ、何なんだよもう……………
結局、午前中は全く仕事が手に付かず、悶々としながらアンナの部屋を訪れた。
「アンナ、今からランチに行かないか?」
「ランチ? 仕事はいいの?」
「あぁ、店を予約したんだ。君の好きなフルーツタルトが美味しい店だよ」
そう言うと、アンナの顔がパッと輝いた。
うわ〜…可愛い。アンナのこんな顔を見るのは、ずいぶん久しぶりな気がする。
予約した店は、少しお高めなコース料理の店。
最近、令嬢に人気だと噂に聞いたのだ。
店内は可愛らしい装飾がされており、店員も丁寧でとても感じが良い。
食事の後はオペラを聴きに行き、帰りに薔薇の花束をプレゼントした。アンナの好きなピンク色の薔薇。
そして夜は、遅くまでチェスをして遊んだ。
アンナはずっと楽しそうに笑っていて、僕の胸は幸せでいっぱいになった。
◇
「……………ん?………あれ?」
僕は、大きなあくびをして頭をかく。
何だかやけに頭が重い。
ふと枕元に目をやると、白い封筒が目に入った。
『ルーカスよりルーへ』宛名にはそう書いてある。
『初めましてルー。僕はルーカス。君の本体だよ。
アンナが可愛いのは昔からだ。アンナは赤ちゃんのころから、ずっとめちゃくちゃ可愛いんだよ。
それと、彼女に軽率に触れるな。 彼女はこの僕の婚約者なんだからな?
今日、僕はアンナとデートをした。
オシャレな店でランチをして、彼女の好きなオペラを聴いて、百本の薔薇をプレゼントしたぞ。
そして夜は、ホットミルクを飲みながら眠くなるまでチェスをして遊んだ。
おやすみのハグをしたら、アンナは耳まで真っ赤になって、キスしたくなるくらい可愛かった!』
「やるなぁ、ルーカス……」
僕はベッドから飛び起きると、さっさと仕事を終わらせて、アンナの元へ走った。
「アンナ! 今日は街に行こうよ!」
「街へ? えーと……大丈夫かしら?」
「大丈夫だよ。ほら、早く!」
アンナの小さな手を引っ張ると、彼女は仕方ないわねと眉を下げて笑った。
街の大通りには、色々な露店が並んでいる。
クレープ、串焼き、揚げ菓子、飴細工。
僕は、美味しそうな物を片っ端から買って、アンナと二人で半分こして食べた。
しばらく歩くと、雑貨屋さんの露店があった。
ブローチやネックレスや腕輪など、キラキラしたアクセサリーが並んでいる。
ふとアンナを見ると、綺麗な小物に目が釘付けだ。
「ねぇ、アンナ。どれが好き?」
「えーと、そうね………どれも可愛いと思うわ」
「そうなの? じゃあ、これは?」
小さな緑色の石の付いたリボンを指差すと、アンナの顔がふにゃりと綻んだ。
「これ、アンナに似合うと思うんだ。僕の瞳の色の石が付いてるしさ………プレゼントしたら使ってくれる?」
途端に頬がポッと赤く染まる。めっちゃ可愛い。
僕は店主に代金を払い、髪留めをアンナに手渡した。
彼女は、嬉しそうに受け取ると「ありがとう。大事にするね」と天使の笑顔で囁いた。
◇
早朝、僕は散らかっている部屋を見て舌打ちする。
机にはまたルーからの手紙が置いてあった。
自分の目の色をした装飾品をプレゼントしただと?
想像しただけでムカムカしてきた。
あ、いや、でも……ルーの目の色って事は、僕の目の色でもあるんだよな? なんか、複雑な気分だ。
ダイニングルームに向かうと、緑色の石の付いた髪飾りのアンナが目に飛び込んできた。
僕の目の色と全く一緒の色じゃないか………!
これはまぁ、悪くない。だって、凄く似合っている。
ルーカスはその日、アンナを乗馬に誘った。
もちろん、朝食も昼食も夕食も一緒に食べた。
次の日はルーがアンナを誘い、そのまた次の日はルーカスがアンナを口説く。
そしてお互い手紙で自慢し、文句を言い合った。
◇
「最近ね、ルーとルーカスはよく似てるんだなって思うようになったわ」
私がつぶやくと、叔父は大きく頷いた。
「そりゃそうさ。ルーもルーカスも、どちらも彼なんだから。たぶん少し前のルーカスは、立派になろうとするあまり、心に鍵をかけていたんだろうね」
「そう……かもしれないわね」
少し前の私達はギクシャクしていた。
でも、ルーが現れてからは、ルーカスは昔のように笑ってくれるようになった。
ルーはまるで、子供の頃のルーカスだ。
天真爛漫なルーと真面目で誠実なルーカス。
私は、ルーもルーカスも、どちらの彼も大好きなのだと改めて思った。
楽しい時間は、あっという間に流れていく。
ルーが現れてから20日が過ぎた。
そして、少しずつ状況が変わっていった。
ルーが現れる時間がどんどん短くなってきたのだ。
「ねぇ、アンナ? そんなに悲しそうな顔をしないでよ。叔父さんも言ってたでしょ? 30日で元に戻るって」
「でも、ルー……私、そんなの……」
「僕はね、消えるんじゃなくて戻るんだ。だから悲しくなんてないんだよ? 本音を言うならさ、もっとアンナといっぱい遊びたかったな〜…なんてね!」
そう言って笑うルーを見て、胸が締め付けられる。
やっぱり貴方は、子供の頃のルーカスにそっくりよ。
表情を作るのが下手っぴだわ。だってほら、悲しそうな瞳が全く隠せていないもの。
「ルーカスは本当にアンナの事が大好きだよ。僕は彼の一部だから分かるんだ。だからね、大丈夫。君はきっと幸せになれる。大好きだよ、アンナ」
そう言ってルーは、私の手を握ったまま消えた。
30日目の彼は、ほんの数分間だけだった。
◇
「あれ?……寝てた…のか……?」
どうやら、ソファーで居眠りをしていたらしい。
隣にはアンナがいて、何故か手を握っていた。
「………アンナ? ど、どうしたんだ?」
「………何でも……ないの」
「でも、泣いてるじゃないかっ」
「違うの、大丈夫。さっき、ルーとお別れをしたの」
「……………ルーとお別れ?」
「そう。でもね、ルーは消えるんじゃなくて、元に戻るんだって。だから大丈夫なの」
アンナはそう言うと、真っ赤な目をして微笑んだ。
痛々しいほどの悲しい笑顔。
忌々しくて邪魔だと思っていたルー。でも、アイツのおかげでアンナと昔みたいに仲良くなれた。
早く消えてしまえばいいと思っていたのに、本当にいなくなってしまうと……素直に喜べない。
文句の手紙を書いても、もう読まれる事はないのか。
書斎に戻り、シャツのボタンを一つ外す。
10日前あたりからルーは手紙を書かなくなった。
ルーは、どんな気持ちで消えたのだろうか?
そんなの………考えなくても分かる。
だってアイツは、僕でもあるのだから。
アンナの綺麗なウエディングドレス姿……絶対に見たかっただろうな。
書類を整理していると、小さなメモ用紙が出てきた。
そこには僕の筆跡で何か文字が書いてある。
『ルーカス、アンナを泣かせるなよ!』
思わず、メモ用紙をぐしゃりと握り潰す。
それはこっちのセリフだ。
アンナを泣かせたのはお前だろ? ルー!
やりたい放題やって、勝手に消えやがって!
僕は部屋を飛び出して、離れへ走った。
アイツに文句を言わなければ気が済まない。
本っ当に憎たらしくて腹立たしい奴だ!
離れにある研究室の扉を勢いよく開ける。
叔父さんが驚いた顔でこちらを見ているが、そんなのはどうでもいい。
このまま消えるなんて、絶対に許さないからな!
僕は、エナジードリンクの瓶を一気に飲み干した。
叔父さんの慌てる声が…………遠くで聞こえる。
これで、ルーは戻って来れるだろうか?
もしかしたら、僕の方が消えてしまったりして?
でもまぁ、それもいいかもしれない。
僕はルーでもあるのだから。
アンナが笑ってくれるのなら、それでいい。
◇
青白い顔で眠るルーカスを前に、私は叔父を責めた。
ルーカスはもう3日も眠り続けている。
「まさか、原液を飲むとは思わなかったんだ」
「……ねぇ、ルーカスはどうなってしまうの?」
「正直、分からない。ルーカスとして目覚めるかもしれないし、ルーとして目覚めるかもしれない。……最悪の場合、このまま目覚めない可能性も……ある」
叔父の言葉に、頭が真っ白になる。
全部私のせいだ。私が泣いたりなんてしたから!
ルーカスは私のために、ルーを戻そうとしたんだ。
このまま目覚めなかったら、どうしよう。
どうして私は、二人を別の人間のように思ってしまったのだろう。ルーもルーカスも彼なのに。
このまま目を覚ましてくれなかったら?
足元が崩れるような感覚に襲われてゾッとする。
「お願い、目を覚まして……神様、お願いします……」
ぐったりと横たわる体にすがって泣いていると、温かくて柔らかい何かが頭に触れた。
「………ア……ンナ……?」
掠れ声が心配そうに私の名を呼ぶ。大きな手が戸惑うみたいに優しく髪を撫でる。
「……よ、よかった……目を覚まして…くれたのね!」
私は彼に抱きついて号泣した。
彼は少し驚いて、でも嬉しそうに微笑む。
穏やかに笑うその顔は、ルーのようでもありルーカスのようでもある。私の大好きな人の笑顔だった。
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