第7話 合格祝い
「へぇ、まさかオイスタケを10ケしっかり採って来るとは大したものだなぁ」
ビーリアムおやじはナナシが採取したオイスタケを鑑定し感心した様子でそう言った。
「それじゃあ、冒険者試験は……」
「文句なしの合格だ。今日から兄ちゃんはブロマイトランクの冒険者だ」
「よっしゃぁぁ!!」
ナナシはガッツポーズをする。
その後、ビーリアムおやじはナナシに冒険者証を発行するとナナシが採取したオイスタケを換金し軽い説明をした。
かつては下級、中級、上級とランク分けされていたが現在では細分化されているらしい。
下からブロマイト、クロライト、ジェナイト、シルバイト、ゴールダー、ミスリルと6つの階級がある。
ブロマイトは駆け出し、クロライトは初級冒険者、ジェナイトは中級冒険者、シルバイトは上級冒険者、ゴールダーは超ベテラン冒険者、ミスリルは英雄レベルと言われている。
ランクに応じて受けることが許される依頼も変わってくる。
ビーリアムおやじから冒険者についての説明を一通り聞いたナナシは早速トリアに報告しようと酒場へ向かう。
「あっ、お兄さん合格したんだね。おめでとう」
「ありがとう。これ、オイスタケの換金分1400ゴルトだ。君に借りてる分の返済には足りないけど」
「あはは、真面目だねぇ。それじゃあ、これの分はお祝いとして差し引いておいたげるからお兄さんが持ってていいよ。ということでお兄さんがボクにしている借金は残り5万5600ゴルトになったね」
あまり減っていないがそれでも前進だと自分を納得させる。
「それじゃあ、お祝いしようか。流石にこれはボクの驕りでいいよ!」
すると大きな皿に盛られた料理が運ばれてきた。
「これは?」
「デッパドンは肉は固いんだけど料理次第では大きくなるんだ。パリパリに揚げて削ぎ切りにしたものを小麦粉で作った薄い生地に巻いた『バッケ』って料理だよ。まあ、食べてみてよ」
ナナシは言われた通り料理を口に運ぶ
「おおっ!少し癖のある匂いだが衣がそれをうまく緩和しているな。味はお世辞にも美味しいとは言えないがこの独特の食感がクセになりそうだ」
「わかってるねぇ。それじゃあボクも」
トリアも『バッケ』をモニュモニュと咀嚼する。
次に出たのはデッパドンの舌を煮込んで出汁を取ったスープ『ロンチェ』。
「おおっ、濃厚な旨みが口いっぱいに広がる!」
「うぇへへ森にデッパドンが出たって聞いて見に行って正解。お兄さんは無事合格できたし、美味しい食材は手に入ったからね」
「心配してくれたのか?」
「お兄さんが死んじゃったら貸してたお金の取り立てが出来ないからねぇ」
「そうか……でも、ありがとう。助かったよ」
ナナシがお礼を言うとトリアはニッコリ笑って応えた。
その後も二人は料理に舌鼓を打ちながら楽しい時間を過ごすのだった。
(これから俺の冒険者としての生活が始まるんだ。そしていずれトリアは俺が作るハーレムの1人になるんだ)
どうせ異世界転生をしたからにはハーレムを夢見るのは男の浪漫というもの。
自分を慕う美しい女性達に囲まれる生活。
そんな生活を思い浮かべながらナナシだが彼女の食べっぷりを見て思う。
(食費がとんでもないことになりそうだな。借金を返しつつ俺の成長と活躍を見せる内やがて俺に惚れ……ふっ、モテる男はつらいな)
「何か邪な事を考えてるでしょ?」
ナナシはギクリとしてトリアの顔を見る。
どうやら考えていることが顔に出やすいタイプらしい。
あるいはトリアの勘が鋭いのかもしれない。
どちらにせよ、ナナシは内心で慌てながら適当に取り繕う。
流石に『君をハーレムに入れる為狙ってます』などとは言えない。
「そ、そんなことないさ。ただ、トリアは美味しそうに食べるから良いなぁと思っただけだ」
「ああ、成る程ね。ボク、昔から食べるのが大好きなんだよね」
笑顔でそういうトリア。
それから少しすると二人は食事を終えた。
「あ、ところでお兄さん泊る所はどうする?」
「あっ……」
完全に失念していた。
そして宿に泊まるにせよお金はかかる。
「えーと……」
「それじゃあ、また貸しだね」
トリアはにっこりと笑うのであった。
ナナシの借金
元金 5万7000ゴルト
換金分 -1400
宿代 +4500
現在6万100ゴルト
所持金1400ゴルト




