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第5話 いきなり異世界ライフが終わりそうな件

「んほぅ、『骨付きバナナ』美味しいなぁ!!」

 

 先ほど食べたばかりだというのにトリアは既にギルド横の酒場で新たな料理、『骨付きバナナ』を食べていた。


「いつ見てもよく食べるなぁ」

 

 店員が呆れる中、トリアは頬を膨らませ抗議。

 

「えー、そんな事無いって。ボク、一応女の子なんだからね、そんな食いしん坊みたいに言わないでよね」

「ちなみに1日何食食べる?」

「えー?普通だよ。5食だよね?」

「いや、普通じゃねぇ。食いしん坊だ」

「えー?でも美味しい物は別腹だよ。女の子の常識だよね?」


 トリアが首を傾げながら尋ねると店員は軽く頷いて、


「あぁ、そ、そうだな……」

 

 と答えるしか無かった。

 そんな中、ビーリアムが困惑した表情で1枚の紙を持ってやってきた。


「なぁ、トリア。俺何だかおかしくなっちまったのかもしれねぇや」

「うぇ?どうしたの?」

「さっき坊主に見せた『オイスタケ』の絵。あれなんだがな」

 

 ビーリアムは紙を見せる。

 そこには本来描かれていたはずの『絵』がすっぱりと『消えてなくなって』いた。


「うぇ!?」

「確か絵が描いてあったよなぁ?それとも俺、あの坊主にほぼ白紙を見せちまったのかなぁ  

 ?」


 確かに絵の描かれてあった形跡、『紙』は残っているが、肝心の『絵』は全く残っていない。


「え?でもボクはちゃんと描いてあるのを見たよ?」

「……だよな。じゃあなんだこれは?」


 ビーリアムとトリアは2人で首を捻るしか無かった。

 トリアはナナシに初めて出会った時の『釣り針』の件を思い出した。


(やっぱり転生者としての『ギフト』だね。さて、使いこなせるか取り殺されるか」

 

 トリアは机の上に指を添わせぐるぐると円を描くようになぞる。


「これもまた、『一族の宿命』だなぁ。正直、こういうのってうんざりなんだけどなぁ」



 試験会場となっている『ソルチの森』はギルドのすぐ裏にある小さな森だ。

 森の中は木々が生い茂り、日中でも薄暗い。

 見た事の無い植物や小動物にナナシはワクワクしながら『オイスタケ』を探す。

 キノコ探しなどすぐに見つかる。何せゲームなどでは初歩的なクエストなのだ。

 そう思っていた時期が彼にもあった。


「むぅ、わからんなぁ」

 

 キノコというものは種類が多岐に渡り同じような見た目のものもある。

 現実世界でも食べられるキノコと思ったら毒キノコで、死ぬなんてよくある話だ。

 そう、ナナシは自然を甘く見ていた。


「確か傘の部分が……うーん……参ったなぁ」


 チラッと見た絵を思い出しながら探すが考えれば考える程、わからなくなっていく。

 実際の所、この試験の胆は自然はそれだけ厳しいという事を認知してもらうことにある。

 なので『オイスタケ』も10個採取が必須というわけではない。

 だが彼は当然そんな事は知らない。


「はぁ、やっぱりもっとちゃんと見ておくんだったなぁ」


 これは参ったものだと大きな木の幹の手をついて、手を離した時だった。


「あれ?」


 ナナシは異変に気付く。

 木の幹に、先ほどギルドで見た『オイスタケの絵』が『貼り付けられた』様に描かれていたのだ。


「なっ、何だこれッ!!?」


 さっき手を置いた時はこんな絵は無かった。

 断言できる。いきなり絵が浮かび上がったのだ。


「あ、あり得ない……けど、これは利用させてもらうぞ!!」


 ナナシは木の幹に張り付いた絵を参考に『オイスタケ』を1本見つけた。


「これだ、形なんかもこの絵と同じだ」


 そこからは簡単であった。

 正解の見本を手にした事で気づいたが甘くふんわりした独特な香り。

 その香りを頼りに探せば次々と見つける事が出来た。


「これが異世界かぁ、何だか夢みたいだなぁ」


 ナナシは木の幹に背中を預け、『オイスタケ』の香りを楽しみながらそんな事を考えていた。

 だが忘れていた。ここは異世界である。

 そして森の中には当然の如く野生の生物、その中でもとりわけ危険な『モンスター』と呼ばれる怪物がいるのである。


「ふぅ、これでクリアだな」


 手持ちの『オイスタケ』が合計10本になったところでナナシは立ち上がり、その場を後にしようとした時だった。

 ガサガサと茂みが揺れる音に反応し、ナナシは振り返る。

 そこには2m程の『セイウチ』がのそのそと、鼻を引くつかせながらこちらを見ていた。


「おー、セイウチかぁ。いやぁ、実物を見たのは初めてだなぁ………………………………………………ってセイウチ!!?」


 セイウチが目の前にいる、セイウチといえば海の生物のはずだがどうやら異世界では違うらしい。


「いや待て。見た目に騙されるんじゃあない。実は犬とかみたいに人間にフレンドリーな生き物かもしれない。よし、これも異文化コミュニケーションってやつだ。セイウチちゃーん、仲良くなりま……」

「グォォォオオ!!!」

「だはぁぁぁっ!やっぱり違ったぁッッ!?」


 セイウチはナナシに向かって突進。直撃は免れたもののその巨体故に衝撃波と共に地面が揺れ、ナナシは吹き飛ばされる。


「あぶなッ!?」


 すかさず受け身を取り体制を立て直すナナシだが、セイウチは既に次の行動へと移していた。

 セイウチは口に咥えた『岩』をナナシに向かって投げつけたのだ。


「うぉ!?死ぬっ!俺の冒険始まってすぐ終わっちゃうぅぅぅ!!!」


 ナナシの叫びが森にこだまするのであった。


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