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第4話 冒険者になるにも金がかかる

 ナナシというわかりやすくも不名誉な名前を貰った男はトリアの案内でワイアールの町の冒険者ギルドを訪れることに。


「おお、ここが冒険者ギルド」

 

 小ぢんまりとしているがクエストボードが置いてあり、受付に何人か人がいる。そして、酒場が併設されているようだ。

 本格的に異世界転生っぽくなってきたと男は興奮を隠せず、辺りを見渡す。


「お兄さん、登録受付はあっちだよ」


 男は期待で胸が高鳴る。

 冒険者ギルドの受付と言えば………そう、受付嬢である。 

 受付嬢は選ばれた美人かつ器量よしと相場が決まっている。

 可愛い受付嬢が超新星の如く現れ活躍する冒険者、即ち自分を見て『まあ、素敵』と頬を染めて言うのが相場だ。


(俺のハーレムに受付嬢をひとりは入れてもいいかもしれんな)

 

 いささかロクでもない事を考えながら、ナナシは受付に向かった。

 だが待っていたのは逆立ちをしている中年のおっさんであった。


「ようこそ冒険者ギルドへ! 私はこのギルドの受付を務めるビーリアムだ!」

「……」


 ナナシは思わず真顔になる。

 逆立ち、おっさんという要素でも十分ツッコミ満載なのだが……


「……何でパンツ一丁なんだ?」

 

 しかもブーメランパンツである。

 どうみても変態にしか見えない。


「やぁ、ビーリアムおやじ。元気だった?」

「その声はトリアか。まあ、元気かと言われると微妙だが、すこぶる調子はいいぜ」


 わけの分からない事を言いながらビーリアムが逆立ちを止めた。


「あ、あの……何で逆立ちを?」


 思わず聞いてしまう。


「趣味、かな……」

「………そ、そうですか」


 ナナシは頭を抱えた。

 可愛い受付嬢とのロマンスという夢は儚くも砕け散ったのだ。

 その後、何事も無かったかのようにビーリアムは話し始める。


「それで今日はどんな用件だい? クエストかい? それとも新規登録かな?」

「新規登録だよ。ボクが保証するから彼を登録させて欲しいんだ」

「うーん。『保証する』ってことはこの彼、身分を証明できる物が無いってことかぁ。本来は色々と手続きがあるんだが……まあ、トリアの紹介なら大丈夫だろう。よし、じゃあ早速書類を用意するぜ」

 

 そう言って差し出された書類に、トリアのサポートを受けながら書き込んでいく。

 あまり気にはしていなかったがやはりナナシはこの世界での読み書きに苦労はしないらしい。

 問題なく書けてしまう。


「ところで兄ちゃんよ。お前さん、トリアがそうやって世話を焼くって事はもしかして……」

(ふっ、このおっさん出来るな。やはりわかる人にはわかるものだな。そう、俺とトリアの間におそらく恋愛感情のようなものが芽生える可能性とやらをな)

「どれくらいトリアに借金があるかは知らんがめげずに頑張れよ」

「……………」


 ナナシのテンションは一気に下がった。

 どうやら借金の返済の為、無理やり冒険者として登録させ働かされる主従関係と思った様だ。


「ご飯は驕ってあげたけどお金は貸してないよ。まあ、今から貸すことになるけどさ」

「そうか。とりあえず簡単な試験を受けてもらう事になるが試験料が1万7000ゴルトだ」

「値上げした?ボクがライセンス取った時は1万ちょっとだったと思うけど……」


 ぶつぶつ言いながらトリアが懐から銀貨や銅貨を出す。


「まあ、ちょっとずつ値上げしていってるからなぁ」

 

 ナナシは何だか前世の日本でも同じような事が有ったような気がした。

 異世界でもやはり値上げの波という物は来るものらしい。


「それじゃあ、試験の受付は完了だが流石にその格好で受けるのはなぁ」

 

 ビーリアムが苦い顔をするとトリアもため息をつく。

 何せナナシはカッターシャツにズボンというスタイルだ。


「だよねぇ。お兄さん。ちょっとこっち来て」


 トリアに連れられギルド内のよろず屋に連れていかれる。


「とりあえず初級冒険者セットがあるからそれ買ってあげるよ」

「お、おう。すまないな」

「皮の鎧、ブーツ、ズボン、ポーチ、後は採取用のナイフ………合計で4万ゴルトかぁ」


 予想外に高い値段にナナシは驚く。

 初心者セットなどゲームなら200Gくらいあれば揃うものだとばかり思っていたからだ。


「思ったよりも高いんだな」

「武器や防具が安いわけないじゃん」

(これ、ちゃんと返済できるのかな……)

  

 こうして借金合計5万7000ゴルトを背負いナナシは装備を整えるとカウンターへ戻る。


「おっ、中々様になってるじゃないか。それじゃあ試験について説明するぞ。まあ、簡単な採取だ」


 ビーリアムが1枚の紙を差し出す。そこには貝に似たキノコの絵が大きく描かれていた。


「そいつは『オイスタケ』っていうキノコだ。これを試験会場の森で10ケ採取してくるだけだ。簡単だろ?」

「なるほど。いいだろう」


 絵を持っていこうとするとビーリアムが慌てて止める。


「おいおい、絵はおいていけ。しっかり特徴を記憶するんだぞ?ちょっと似てる毒キノコもあるからそこは間違えない様にな」

「マジか……ちなみに不合格する事って……」

「まあ、あるな。10人いたら2、3人は落ちる」

「ちなみに落ちたら?」

「再受験の為にお兄さんの借金が+1万7000ゴルトされるね」


 トリアが真顔で答える。


「……………」

「まあ、どうしても焦げ付いた時は短期間で稼げる知り合いのお店紹介するから安心して」

「安心できねぇ!!それってやばい仕事なんじゃ……」

「大丈夫。お兄さんみたいな男の人好きなおじさん達が集まる健全なお店だよ!」

「全然大丈夫じゃねし絶対健全じゃねぇッッ!!」

 

 ナナシは頭を抱えた。

 そんな店に行ったらそれこそ何をさせられるかわかったもんじゃないからだ。


(くっ、これは絶対に合格せねばなるまい!)


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