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プロローグ
空からは様々なものが降って来る。
雨や雪、雹に雷、隕石まで降ってくる。
「もう可愛くて仕方ないんですよ。あの子は我が家の天使です」
若い教員が興奮した様子で3歳になる娘の話をしている。
少し下腹が出た中年の教員はそれを聞きながら自分の娘の姿を思い出す。
小さかった娘も今は中学2年生だ。
反抗期真っ盛りで、あまり口を利いてくれない。
昔は『パパと結婚するんだもん』とか言ってくれたのに今や洗濯物を一緒にすると怒る始末だ。
「いずれ君も現実を知るだろうな」
少し意地が悪いかと思いつつ中年の教員は若い教員に言った。
「そうかもしれませんが、今はまだ夢を見させてくださいよ」
「ははっ、そうだな。すまんな、変なことを言ってしまって」
淹れたてのコーヒーを啜りつつ、窓の外を眺める。
いつもと変わらない景色だった。
窓の外、一瞬だけ視界に何かが映り、直後にドスッと鈍い音が聞こえて来た。
「先生、大変です。生徒が、生徒が!」
空からは様々なものが降って来る。
雨や雪、雹に雷、隕石まで降ってくる。
そしてもちろん、人間だって降って来るのだ。




