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十話:幼い少女

 奥に行くほど少しずつ幅が狭くなる通路をしばらく進むと、大人三人ほど入れる空間に出た。

 クリックは辺りを見回し、周囲を警戒する。廃墟と化した建物に囲まれた空間、薄汚れた窓枠やさび付いた水道管などが密集している。まさに秘密基地に最適な場所だ。


「こちらクリック、周囲に敵の姿はありません」

「…本当ですか?」

「ええ…あいつの言うことをあんまり当てにしない方がいいわね」


 クリックはクリーンライダーの所に戻ると連絡した後、再び細い壁の隙間に入ろうとした。

 だが、おかしなことにクリックの体が隙間に入らない。それもそのはず、隙間は最初入った時よりも狭くなっている。しかも徐々に壁が動き、入口がなくなっていく。

 異変に気付いたクリックは、すぐに飛行態勢をとる。しかし能力が発動しない。飛ぼうと思っても力が入らない。それどころか杖を振ってもビームが発射しない。

 クリックは慌ててクリーンライダーに連絡しようとしたが、テレパシーも使えず通信手段が経たれていた。


「クリーンライダー!クリーンライダー!」


 必死に叫ぶも向こう側にいる彼らには届かない。


「……ふざけんなよ!」


 クリックは窓を割って建物に入ろうとするが、いくら叩いても全くヒビが入らない。


「…なんなんだよ!くそ!くそ!」


 何度も何度も窓を叩く。だが次第に手が血で滲み出して、痛みを感じ始めた。

 今、この非力な状態では何もできないことを痛感し、窓に映る自分が凡人であることを恥じる。

 すると、後ろに人影がいることに気づいた。振り返る隙もなく、何者かがクリックの頭を掴み、首元に刃物を突き立てた。


 クリックが隙間に入ってから数分経った。連絡がないことにクリーンライダーが異変に思う。

 

「3分が経過しましたが連絡が来ませんね」

「クリーンライダーさん、もうここを破壊した方がいいんじゃないですか?」

「それはできません。騒ぎになれば民間人に気づかれます。できるだけ穏便に済ませないと」

「今まであんだけ暴れてきたのに、今さらコソコソしても仕方ないでしょ?」

「あの時は敵が巨大だったので…やむを得ずです。本来なら結界なんて張りませんからね」


 すると、つゆきが壁を触りながら商店街を一周してきた。


「どうした?」

「やっぱりねぇ…これ壁じゃなくて結界だよ」


 突然の発言に、二人は目を大きく開ける。


「は?」

「しかもかなり強力な結界だよ。こんなに頑丈なのは初めて。建物の外壁をぴったり覆ってる」


 つゆきは話しながら事の重大さに気づいた。


「…これじゃあ中に入ったら出られなくなる」


 クリーンライダーも状況に気づき、慌ててホウキを隙間に向けて、衝撃波を放つ。

 だが辺りは傷一つつかない。


「まずい!エレベーターさんを呼んで結界を破らせます!」

「そんなの待てないよ!」


 つゆきは隙間に体を無理やりねじ込み、中に入っていた。


「俊くん!再生能力や戦闘能力の使用許可を出して!」

「ちょっ、待てよ!」


 つゆきは体の皮膚を削りながら奥へと進んだ。

 

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