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社交性ノイズ  作者: クルクル春青
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嫌いなものはシャットアウトして

聴覚過敏症


それが私に言い渡された病気の名だった。

中学2年生の春、私はその言葉に絶望した。


きっかけはきっといじめだ。

私はその頃はよく周りと話す子だった。

誰かに嫌われるとかそういうのも考えずに比較的に誰とでも話せた。

みんなが嫌いだという人にも、みんなが気持ち悪いという人にも私は迷いなく話しかけることができた。


私のその性格はクラスカースト1位だった女子を怒らせてしまった。


理由はその子の好きな人と仲良くしているのが気に食わなかったから。

恋は盲目なんて言うけど、ここまで来たらバカとしか言えない。


その日から私へのいじめはスタートした。

最初は肩をぶつけられたり、悪口を言われる程度だった。

だけど次第にいじめはエスカレートしていった。


「あんたなんて、死ねばいいのに。」


彼女の冷たい目から放たれた言葉は今でも私の中で響いている。


そんなことがあった日からしばらくして私は周りの声がよく響いて聞こえるようになった。

耳の中にキーンキーンと響く声に私は嫌気をさした。


それからしばらくして私は保健室登校をするようになった。もう、私はあの頃のように社交的に誰かに接しようなんて思えなかった。


高校2年生の春。


みんなはクラス替えなどで盛り上がっているが、まるで猿のようにうるさい。


私はヘッドホンをギュッと抑えて音が聞こえないようにと丸まった。


高校は中学校よりも遠い同じ中学校の人がいないところにした。


全てリセットしたかったからだ。


高校に入ってからはほとんどが保健室登校なのは変わらないが教室にも顔を出すようにはしている。


私に話しかけようとした人は、ほとんど1年生のうちに消えた。


私はヘッドホンをしていないとまともに生活ができない所まで症状は悪化していた。


最初は不思議がって話しかけていた人も、扱いの面倒くささに呆れて私から離れていった。


私にとっては1人の方が何倍も楽だった。


私から聞いたら誰の声もノイズでしかない。


小声で話してくれなければ私は聞き取れないからだ。


朝のホームルームが終わると私は立ち上がり荷物を持ち、保健室へと直行する。


私の楽園だ。


「先生おはようございます。」


「おはようございます。今日も学校これて偉いわね。」


保健室の心先生は小声で私に挨拶を返してくれる。


この学校で私を1番わかってくれる人だ。

この人だけは私に向き合って、私を見てくれる。


「今日の体調は大丈夫?最近無理はしてない?」


「大丈夫ですよ。」


私はヘッドホンを外しながら先生にそう返す。


保健室は私にとって家以外で数の少ないヘッドホンを外すことの出来る場所だ。


チャイムが鳴る時間にさえつけていればこの部屋で大声をあげる猿のような人もいない。


「2日間も休んでたなんて珍しいね。」


先生からここ2日サボっていた事を聞かれる。


学校に来ても勉強なんてほとんどできないのだから来る意味もあまりないのだが、先生と話すのも楽しいのでできるだけ毎日来るようにはしている。


「普通にサボりです。」


嘘をつく必要も無い。先生にはそれくらい私は心を許していた。


「あんまりサボりすぎるとサボり癖がついてしまうのであんまりしないように。」


「わかってますよー」


私はベットに潜り込む。


学校ってやっぱり退屈だ。


こんなつまらないところに閉じ込められていると、鳥籠の中の鳥はどれだけつまらない日々を送っているのだろう。


ベットの周りをカーテンで閉め切る。


これで1人の世界の完成だ。


私はヘッドホンを付け直すとスマホと接続する。

音量は1番小さくしてお気に入りのプレイリストを流す。


この曲、この部屋、この時間。

私の好きな物だけで彩られたこの質素な部屋が私は好きだ。


私は今日も嫌なものをシャットアウトした。

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