莉樹と奏空の1日目
「お邪魔…します」
「そんなにかしこまらなくていいよ?今日からここが奏空くんの家になるんだから!」
「う、うん!じゃあ……ただいま?」
「おかえり!奏空くん!」
私は公園で少年、奏空くんを保護することを決めてすぐにうちに連れて帰ってきた。そして、改めて奏空くんを見て思う。
「かーわいいなーーーー!」
「わ、くすぐったいよー!」
「おっと、ごめんごめん。つい欲が…」
「だ、大丈夫だよ!ちょっとびっくりしちゃったけど気持ちよかったから…」
「そう?ならいいんだけど!」
思わず私の中のショタ欲が暴走してしまったのをなんとか抑えつつ、奏空くんの可愛さにやっぱり私はニヤニヤが抑えきれなかった。
「ところで奏空くん……」
と奏空くんに話しかけたところで、奏空くんに話を遮られた。
「あのね?できたらソラって呼んでほしいのと……お姉ちゃんの名前も教えて欲しいなって思ったんだけどダメ…かな?」
「あ……そうだ!!名前教えてなかったね!私の名前は、鷹宮莉樹だよ!改めて、よろしくね?」
「……リズ…お姉ちゃん?」
「Oh」
「お姉ちゃん、大丈夫?」
「だ、大丈夫。ちょっと興奮しちゃっただけだから」
「それは大丈夫なの…?」
(こ、これは私の心臓が持たないかも……)
私は、ソラの可愛さにドキドキが止まらなくなりながらもなんとか平静を装ってソラと今後について話をすることにした。
「ソラ、学校はどうなの?」
「それは、お母さんが学校の先生にお願いして転校の手続きをしてくれた!」
「戸籍とかはわかる?」
「えと……お母さんが言うには、市役所?に行って市役所の人に『天堂 未来の息子の件』って伝えたらなんとかしてもらえるって言ってた!」
「て、天堂未来!?」
「リズお姉ちゃん、なんでそんなに驚いてるの?」
「え?あー、ソラは知らないのかー。まあ、いつか知るだろうからその時でいいんじゃないかな?」
ソラはそれでも知りたそうにしていたけど、さすがに誰なのかを伝えられるほど私の肝は座ってなかった。そして確かにソラのお母さんならそういうことはねじ曲げられてもおかしくはないと思ったと同時に、その力があるならソラを守ることもできたんじゃないかとも思ったけど、確か天堂未来さんの旦那はこことは違う県の教育関係の重鎮だっていう話を聞いたことがあるから児童相談所もだめだったんだなと感じた。
「それとね?お母さんが、ボクを守ってくれる人に渡してって言ってた封筒があるんだ!」
「そうなの?」
「うん!これ!」
そう言ってソラが手渡してくれた封筒の中には……
「ちょ、これはヤバいよ」
「お姉ちゃん?」
「あ、ソラは気にしないで?」
そこに入っていたのは、お金だった。それだけなら養育費と考えたらいいんだけど、500万円も入ってるのを見て私は言葉を失ってしまった。
(ソラってもしかしなくてもすごい子?)
「?お姉ちゃん?」
「まあいっか!ソラ、今日からここがソラの家だよ!狭いとは思うけどそこは許して?ちょうど私明日は1日暇だからさ、一緒に必要なもの買いに行ったりとか色んな手続きとかしに行こっか」
「うん!リズお姉ちゃん…」
「なに?」
「ボクを拾ってくれてありがとう!」
次回は1話、叶家の話を挟んでから本編に戻ります。