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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ゾンビの封印から100年後の物語

「なぁ、知ってるか? この街にはゾンビがいるんだってよ」

「なんだよそれ、嘘くせー」

「いやいや、マジなんだって。100年以上前から存在してるらしいんだよ」

  僕は、そんな嘘みたいな話を信じるわけがなかった。そりゃそうだろう、いきなりゾンビとか100年以上前からいるとか言われても嘘にしか思えない。

  でも、友達の舞斗(まいと)はその話を耳にたこができるくらい何回も話してくる。

  舞斗は、僕を怖がらせるためにでも言っているのだろうと思うが、もう聞き飽きた。

  それとも、忘れっぽいから自分が言ったこと忘れてるのかな?

  胸中でいつも通り舞斗のことを愚痴っているとまた話しかけてきた。いつもは、100年以上前からいるって言って話が終わるのに……。

「昨日な、家の中を探してみたのよ? そしたら、なんとビックリ! ゾンビに関しての資料が出てきたんだよ!」

「まじかよ……」

  言葉ではビックリしたような感じで言っているが、内心は「どうせまた、ネットの資料とかだろ」と呆れていた。

  その考えを見透かしたのか、舞斗は「信じてないだろお前!」と指摘してきた。

「あはは、バレた?」

  否定しても、何回も同じことを言われるので正直に答える。

「そんなに信じてないなら、今から家来いよ。見せてやるから!」

「あぁ。わかった……。でもその代わり、何も無かったら今後その話はもう辞めろよ? いい加減飽きたわ」

  僕は、今日は特に用事もなかったので舞斗の家に行くことにした。交換条件付きで……。


  僕は、学校から家に帰らずにそのまま舞斗の家に向かった。










「相変わらず、でかいな……」

  僕は舞斗の家をみて驚愕する。

「はは、何回も来たことあるのに反応変わんないなー!」

「そりゃそうだろ……こんなでかい家、舞斗の家しか知らねぇわ……」

  舞斗の先祖は昔、偉い人だったようでその家が今でも残っているのだ。だから家が物凄く大きい。スーパーより少し小さい感じをイメージして欲しい。

  いつ見ても、中々慣れないものだな……。そういや、この家は昔からあるって言ってたけど何年前ぐらいからなんだ? それによっては100年のゾンビの資料があっても不思議じゃないな……。

「なぁ、この家って何年前からあるんだ?」

「爺ちゃんが言うには、えーっと……150年ぐらい前かららしいぞ」

  僕はその答えを聞いて開いた口が塞がらなかった。

  そりゃ無理もない話だろう。こんな大きな家が150年も前からあって今も住めているのだから。どれだけ修理代とか工事代かかってんだと気になったが今はもうどうでもいい。

  僕は舞斗の案内に従って、リビングらしき所に来た。広すぎて迷ってしまうのでありがたい。

  そんなどうでもいいことは置いといて、

「おい、舞斗。そのゾンビの資料とやらをはやく見せてくれよ。まさか、ここまで来て嘘ですなんて無いよな?」

  からかうような口調で早く持って来させるように促す。

「待ってろよ? ビックリしすぎて腰抜かすなよ?」

  舞斗はニヤッと自信満々な笑みを浮かべる。

  いいからさっさと持ってこいやと言う意味を込めてジト目で見ると、そそくさと部屋を出ていった。

  あんな自信満々だったから、本当にあったのか? それでも舞斗は頭悪いから、偽物って可能性もあるけど……。

  それに、あったとして本当の事だったら今もどこかに存在しているって事になる。

  考え始めると、徐々に怖くなってきた。勿論、顔には出さない。舞斗にからかわれるからな。

  1分ぐらい経った時、舞斗が年季の入った1冊の本を抱えてきた。

  僕は、それを見た瞬間物凄く嫌な予感がした。ただの気の所為だと思うけど、全身に寒気が走った気がしたのだ。

  そんな事を知る由もない舞斗は

「ほら、これだよ! 物置の奥の方にあったんだよなぁー」

  そう言って、本の中身を見せてくる。それはどうやら日記のような物で、色々と文章が書いてある横には白黒の写真が貼ってあった。

「〜ッ?!」

  写真に写っているものをみて、僕は吐き気がした。

  その写真に写っていたのは、バラバラになった腕や指だった。まるで人間が獣にでも食い散らかされたかの様な惨状だった。

  似たような写真が何枚もあった。中には、頭の半分だけ喰われた様なもの、胴体と頭だけか残っており四肢がない死体。

  そんな写真が何枚も何枚もあった。横の文章には、『また、被害者が出てしまった。早くあの恐ろしいゾンビを見つけ出し()()()()で封印せねば……』と書き殴ってあった。

  文字だけなら、物語などの嘘の話だと思った事だろう。でも、この写真を見たら本当の事にしか思うことが出来なかった。

  普段僕は、なんでもかんでも信じるような人間ではない。だが、この瞬間に今までの自分を否定するようにあっさりと信じてしまった。

  信じるのも仕方がない。こんなに信じざるを得ない証拠があるのだから……。

  ページを飛ばして最後の方を読む。僕はそれを読んで、全身に鳥肌が立って穴という穴から冷や汗がダラダラと出てきた。

  そこには――『()()()()の力では100年程しか封印できない』その文字を読んだ瞬間、そんな馬鹿な事があるのかと思った。

  これが書かれたのは――『1921年』そして、今は『2021年』なのだから。

  1921年の100年後、それは2021年……。今年のいつかも分からない日に人食いゾンビの封印が解ける。

  僕と舞斗は、読み始めてから一切の会話をしていなかった。

  バッと勢いよく顔を上げると、丁度舞斗も顔を上げたのか目が合った。

  舞斗の顔は、青白く恐怖の色で染まっていた。僕も多分同じ顔だと思う。汗が顔を伝って床に落ちる。

  数秒、無言の時間が過ぎる。僕と舞斗の乱れた呼吸の音が広い家の中で響く。

  その静寂の時間を破ったのは、ゴトッと言う物音だった。

  僕達2人はその音にビックリして、跳ね上がる。

「な、なぁ舞斗……。この資料、勿論うそ……だよな……?」

「い、いや……俺もわかんねぇ……」

「さっきの物音って、なんだよ」

「し、知らねぇよ。まさか、今封印が解けたとか……?!」

「んな、まさか。こんな事が本当にあるわけ……」

  そう、本当にあるわけないのだ。そう信じたい。だが、舞斗が言ったように、今封印が解けたというのなら、この状況は非常にマズイ。

「だとしたら、封印する方法とか探さないとまずいぞ……」

  僕がこの話を信じたことに舞斗は少し驚いたような表情をしたが、すぐに真剣な表情になって「うん」と頷いた。

  それから、僕らは急いで日記を読み漁り封印方法を探した。






  探している時、またゴトッと音がした。さっきは、1回だけだったが今度は何回も聞こえてくる。

  僕達は、まだ封印する方法を見つけ出すことが出来ていない。

  どんどん音が近ずいてくる。

  それにつれて、僕達は焦り始めた。

  ページをめくる音と、足音の様なものが響く。



  急に、舞斗のページをめくる音と足音が止まった。

  僕は、なんだ? 早く見つけろよ! と思い舞斗の顔を見るとその顔は恐怖の色で染まっていた。

  舞斗の見ている方向、ドアの方向を見てみると――――そこには化け物が立っていた。

  とても人間とは思えない青白い肌。目は赤く充血していて、目の焦点が合っていないのか黒目は、左右バラバラの方向を向いていた。

「ヴぁ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」

  その化け物――ゾンビはニチャァと気味の悪い笑みを浮かべて呻き声を上げる。

  その口元は、昔人間を食べたからか乾いた血が付いていた。歯は人間の犬歯よりも鋭く、噛み付かれたら一溜りもないだろう。

  僕と舞斗は、恐怖で声も出せずに震えて身を寄せあった。

  なんだよ、この化け物! こんな奴がこの世にいるとか有り得ない! あってはいけないだろ!

  あぁ……僕らは食べられて死ぬのか。封印方法も結局見つける事は出来なかったし……。

  僕が絶望していると、舞斗は日記を慌てて取り僕に渡してきた。

「おい、日頃本読んでるお前の方が読むスピードはやいだろ?! はやく封印方法みつけてくれ!!」

「はぁっ?!」

  僕はこの状況でも、諦めていない舞斗の気持ちが分からなかった。

  もう何回もこの日記を読んだ。しかし、封印方法など書いてなかったのだ。

「おい早くしろ! 俺が足止めしとくから!」

  そう言って舞斗は、近くにあった椅子を持ち上げてゾンビに投げ付けた。

  しかし、ゾンビの身体に当たると椅子は粉々になった。

  ゾンビの体は木よりも丈夫らしい。

  その間にも間髪入れずに舞斗は部屋にある家具を使ってゾンビの歩みを止めようとしてくれている。

  それを見て、僕も覚悟を決めた。急いで、でも見落としがないようにしっかりと日記を読み直し始める。

  封印方法を探していると舞斗が隣まで吹っ飛んどきた。

「〜ッ?!!」

  ゾンビの位置を確認すると、もう手を伸ばせば掴まれる位置まで迫っていた。

  舞斗はゾンビに吹き飛ばされて脚を痛めたのか、足首を抑えて動けないでいた。

  ゾンビがヴヴぅ〜という呻き声を上げながら手を伸ばしてくる。

  あぁ……もう無理だ。もう食われて死ぬのか……。舞斗について来なければ良かった……。

  今日の出来事を頭で再生しながら後悔する。

  これが、夢ならどれだけ良かったか……。

  完全に生きる気力を無くし、ゾンビの手が顔に触れた時――頭にある文字が浮かんできた。

()()()()の力では100年程しか封印できない』

  もし、もしまだちゃんと100年経っていなかったら? 封印されたのが、1921年の12月だとしたら? 今はまだ2021年になったばかりの1月だ。その場合、あと1年は封印出来るはず……。

  それに、()()()()()()が指す物……それは――。



  僕は、最期の抵抗をするように年季の入った日記の本をゾンビの顔に押し当てた。

  すると、眩い光が発生した。

  ゾンビがヴあ゛あ゛あ゛ぁ?! と苦しそうな声を発するのを聞きながら僕と舞斗は同時に意識を手放した。












  目が覚めると、朝になっており、僕は自分の部屋のベッドにいた。

「はぁ〜……。なんだ、夢かよ」

  それにしても、リアルな夢を見たなぁーと思いながら自分の家を出て学校に向かった。

  その日、舞斗は学校には来なかった。

  ――それから数日経っても、舞斗は来なかった。






  この時僕はまだ知らなかった――リアルな夢などではなく本当にあった出来事なのだと……。







  僕が、舞斗の家の惨状を見たり、年季の入った日記の本を見つけたりするのはまだ先の事である……。

  そして、僕が見落とした、その本に書いてある大事な事も……。

『封印が100年経たずに解かれた場合は1人の犠牲。つまり、生贄で再封印せよ』
















  ――――再封印してから、数年後。ある町で大量の変死体が発見された。その死体は、頭がないものや四肢がなく顔と胴体だけのもの。

  まるで、獣のような――化け物にでも食べられたかのような死体だったという。

  そして、その変死体は今でも続々と発見されるという……。


友達が帰り道にゾンビの怖い話をしたのがきっかけでこれを書きました。

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― 新着の感想 ―
[良い点] Twitterから来ました! ゾンビというと、バイオハザードを思い出してしまいましたが、 この作品は、ゾンビを封印した100年後の世界。 短編で収まるのかなと思ったらいい感じに終わった(…
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