見ていた世界と気付きの世界
これから話すことは、僕がむかし考えたおとぎばなしだよ。もしかしたら、頭で理解することが簡単じゃなかったり、理解できないところがあるかもしれない。だけど、きっとこのお話を聞いたあとの君は、心が温かくなり、生きることに前より興味がでてくるだろう。
なぜなら、僕がこのおとぎばなしをすると、決まって心から温かいものが溢れ出てくるからね。ただ、大人になりすぎた君は、あまりにも夢物語すぎると思うだろうか。だけど僕は、この物語を誰かに伝え続けたい。これから新たな時代を生きる子孫たちのために。そして、何度も言うが、これはおとぎ話だよ。
だって、そう言わないと多くの人は鼻で笑うだろうからね。
これは二年前のある日のこと。私は祖母と一緒に旅行に来ていた。泊まっているホテルの近くには海があり、私はホテルの窓から海を眺めることが気に入っていた。時期はずれだから、そのホテルは人もそれほど多くなかった。
私はホテルから出て、誰もいない海を散歩していた。突然すごく強い風が吹いた。私は驚いて顔を腕でガードしながら立ち止まった。風はすぐに止んだが砂が目に入り、少しの間目を開けることができなかった。目をギュッと閉じていたら、目の痛みも治まってきたからまた歩いた。もう少しで暗くなりそうだ。私は人気のない場所に座り、夕陽に染まる海を見た。そしたらまた突風が私のもとへ来た。腕で顔をガードしながら風の強さを感じてた。あたりが静かになるのを見計らい、もうホテルに帰ることにした。風が強すぎて落ち着けない。それに少し寒くなってきた。
私はホテルに向かって歩きだした。夕陽をもう少し見たかったけど、目に砂が入るのはもう嫌だった。前から女の子が海の方に歩いている。もう少しで暗くなり周りが見えなくなるのに海に行くなんて驚いたが、顔に出さないように歩いた。なんだか女の子が私の方を見て少し微笑んでいる。知り合いかなと一瞬思ったが、こんなところに知り合いなんていないから不思議な気持ちになりながら私も女の子を見つめ返した。
「今日は風がすごいね」
女の子は優しく私に語りかけた。フレンドリーでとても感じが良かったから私の心はすぐに開いた。
「そうだね。私目に砂が入っちゃった。これから海に行くの?」
「おうちに帰るの」
海の近くに建物はホテルぐらいしかないから、私は女の子の言葉がよく理解できなかった。
「どこに家があるの?」
「ふふ、秘密」
女の子はくしゃっとした笑顔でそう答えた
「そっか、もう暗くなるからお互い早く帰ろうね」
私はそう言って女の子と別れようとした
「妖精って信じる?」
女の子は突然そう聞いてきた
私は普段妖精がいるかなんて考えていなかったから少し戸惑ってしまった。もしかしたらこの子は不思議ちゃんなのかもしれない。
「それはわからないけど、なんでそんな事を聞くの?」
「ふふ、だってあなた興味がありそうだから」
私は混乱した。いつどこで私が妖精に興味がある素振りを見せただろうか。それに初対面の私に妖精を信じるかどうか聞いて一体何になるのだろうか。私の頭の中は疑問しかなかった。
「確かに妖精は嫌いではないけど、特に興味もないよ。それより暗くなってきたから早く帰ったほうがいいよ」
私はこの不思議ちゃんとの会話をやめてホテルに帰りたくなった。
「私ね、実は妖精なの。あなたとってもいい匂いがする。私の好きな匂い。だから一緒に遊びたいな」
私は早く帰りたい気持ちが強くなり、この子との会話をやめることにした。
「ごめんなさい。私もう帰らなきゃ。さようなら」
そう言って早足でホテルへ向かった。後ろから女の子の声がしたが、聞こえないふりをした。
部屋に戻るとそのまま祖母とすぐにご飯を食べに行った。不思議な女の子のことはもう忘れることにした。私には何も関係がないことだ。明日は穏やかに過ごせますように。
ご飯も美味しくて、部屋に戻りシャワーを浴び終わると眠くなってしまった。
その夜私は不思議な夢を見た。なんと、あの女の子が夢に出てきたのだ。どれだけ私の中でインパクトが強かったんだ。女の子と私は何か笑い合ってたみたいだけど、朝起きたら会話の内容は忘れてしまった。