表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
94/110

08.07.【徒話】示談

 「こちらの金額で示談ということで、いかがでしょうか」


 何処で調べたのか、(とおる)の事件の加害者の代理人を名乗る男が訪ねてきた。提示されたのは100万。

 (とおる)は記憶まで失ったと言うのに……


 「ふざけるな。(むす)……()がこんな目に遭わされて、こんな金で無かった事にしろと言うのか」


 「ですから、こうして罰金の上限額の2倍を――」


 「罰金だと?」


 「ええ、迷惑防止条例違反の」


 「迷惑防止条例違反……」


 「衣服の上から、という事でしたので」


 「四人がかりで無理矢理連れ込んで殴る蹴るの暴行まで加えてるのにか」


 「無理矢理、というのはどうなのでしょう。合意が有ったかどうかは確認が取れない状態だと認識しておりますが」


 「貴様……」


 (とおる)の記憶が無いのをいい事に……


 「兎に角、示談金の相場は10万から100万とされている中、この金額を提示させていただいているわけですが、ご納得いただけないというなら3倍でいかがでしょうか。これなら強制わいせつの相場である10万から300万と照らし合わせても遜色ない額かと」


 「金が欲しくて言ってるんじゃ――」


 「まあまあ、父さん。落ち着いて」


 「(とおる)


 「くれるっていうんだから貰っとけばいいじゃない。証拠になりそうな物も無いんだし、私の記憶が無い以上難しいんじゃないのかなあ、有罪にするの。その辺りを見越してこんな提案してきてるんでしょ? おじさん」


 「流石は学年次席といったところでしょうか。こちらとしても長引くと色々と不都合がございまして。まあ、それはお互い様でしょうが」


 「そうそう。弁護士費用とか大丈夫なの? 父さん」


 「そんなもん、何とかなるだろうが」


 いや、ローンもあるからな……


 「で、幾らまで出せるの? 十六夜 (いざよい)グループって結構手広くやってるわよね〜」


 「これはこれは、そうですね、500万まででしたらこの場で即決する権限を頂戴しておりますが」


 「じゃあ、500万ね。あと、あいつらの顔は二度と見たくないんだけどさあ」


 「それについては既に葦原(あしはら)学園への転校手続きが完了しておりますので、ご心配はいりません」


 「そう。じゃあ決まりね。父さん、後の手続きとかはよろしくね」


 「(とおる)、何を――」


 「中間試験が近いんだよ。だから、こんなくだらない事に時間取られたくないの。お願い、父さん」


 「……」


 (とおる)の言う通り、ろくな証拠も無い上に被害者である(とおる)の記憶も無いから裁判したって勝てるかどうかも判らない。

 だが、これで納得しろだなんて……無理だ。


 「あなた」


 「春華(はるか)さん……」


 「私も(とおる)ちゃんにこれ以上嫌な思いをさせたく無いわ」


 (とおる)に嫌な思いを……か……


 「まあ、そういう事よ、父さん。折角忘れてるんだから、態々思い出したくはないかな」


 「……解った。示談に応じよう」


 それが一番いいのかもしれない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ