07.08.任務終了
「よいしょっと」
「ありがとう……」
「どうしたの?」
「別に、なんでも……」
透は風紀委員長を更迭され、成績改竄事件の調査からも退くこととなった。勿論、私もだけど。透が居ないのに私が居る意味ないから。
だから、こうして透が私の荷物を運ぶのを手伝ってくれている。
「さてと、今夜からのんびり寝られるね♪」
何でそんなに嬉しそうなの? 私と一緒じゃリラックス出来なかった? 私、邪魔だったの?
調査から外れたから監視する必要も無くなっちゃったんだけど……、そんなに迷惑だったのかなぁ……
お風呂だって色々話せて楽しかったのに……
「ん?」
「いえ……、透は悔しくないの? システムに侵入されて、あんな動画まで流されたのに。会長だって……、取られちゃうかもしれないのに」
「別に会長とは何もないし、それならそれでいいんじゃないの? そもそも、彼女いたよね、彼には」
「確か……、楓さんっていったっけ」
「そんな感じだったね」
透とズーラシアに行ったときにばったり出会ったんだ。ううう、あの男、彼女の胸を……、思い出したら寒気がして来た。
「ねえ、怪しいと思わないの?」
「何が?」
「あの男よ。タイミングが良すぎない? そもそも、前に侵入しようとしたのって彼なんでしょ?」
「証拠はないけどね」
「調べてみない? 二人で」
私には何もできないかもしれないけど、このままってのは嫌だよ。
「でもねー、セキュリティ・システムは彼の管理下にあるんだよ? 調べようにも手段がないというか、下手なことすれば逆にこっちが犯人にされちゃうんじゃないかなあ」
「それは……、そうかもしれないけど」
「それにさあ、SOLには契約切られてないんだ♪ 何もしなくてもお金貰えちゃうんだよ? このままでもいいかなーって思わない?」
「元々ほとんどすることないって言ってたじゃない」
「そうだけどさ、全くなかったわけでもないからね。アラートで起こされる心配がなくなっただけでものんびりできるんだよね~」
「はぁ……」
駄目だ。全然やる気なしか。
「じゃあ、僕はやることがあるからね。また後で」
「やる事?」
「仕事、仕事。SOLから開発案件もらってきたんだ~、元々僕はこっちの方が向いてるしね」
「そう……」
テスラも居なくなっちゃったのに全然平気みたい。
「あら、同棲生活はもう終わりなの?」
「同棲って、そういうのじゃないからっ」
「で、成果はあったの?」
「だからそういうのじゃないんだってば」
もう、お母さんったら。
◇◇◇
「ご一緒してもよろしいですか?」
「水無、武神さんと一緒じゃないの?」
「最近何だか様子がおかしくて……、でも一人で居ると彼が、ね」
視線の先に居たのは水無さんにストーカーしてた水野って人。
透が更迭された影響はこんな所にも出ていた。
透が作ったシステムは全部止められちゃって、ストーカーの位置情報が通知されなくなったしまった。それでも以前ほどではないのは、こっちの位置情報も漏れてないってことなのかな。
「そういうことなら仕方ないね、伊織」
「そう……だね。一緒に食べようか、水無さん」
「ありがとうございます、伊――」
「こんな所に居たのかい、マイ・プリンセス。随分と探してしまったよ」
「げっ……」
当の本人も影響受けてるんだけどね。あーあ、二人きりのランチのはずだったのに……
◇◇◇
数日後、透宛に大きな荷物が送られてきた。
「伊織、運ぶの手伝ってもらえるかな」
「いいけど……、何なの? これ」
箱に入っていたのは金色っぽいの直方体。見た目はパソコンに見えなくはないけど、ちょっと大きいかな。
「テスラの新しい体」
「テスラの?」
「そう。流石にTesla®を16基というわけにはいけないけど、この中に4基搭載されてるんだ~。個人で買う人はそうそう居ないけどね、結構するからさ」
「テスラが4基?」
何言ってるのかわからないけど、SOLに名義を借りて買ったんだとかで、この後、透のスマホにはテスラが戻ってきたみたい。
結局、セキュリティ・システムの保守案件は学校側、というか、風紀委員長代行の鏡音からSOLに解約が伝えられたみたいで、透もSOLから解約され、違約金がしっかり入ったんだとか。
副会長任命を免れ、更迭処分の余波で風紀委員会への出席も認められず、授業が終わるとさっさと家に帰って開発案件に精を出す。
何だか前より生き生きとしてるんだけど……




