07.02.選挙参謀
「で、どうすればいい? 得利稼」
「そんな事、選管の俺に聞くのかよ、姫ちゃん……」
何を訊いてるのかというと、何故か辞退が許されていない会長選で確実に落選する方法。
「得利稼なら人が思いつかないような碌でもない考え浮かびそうだし」
「ひでえな、それ」
「頼むよ、得利稼」
「そうだなあ、例えば、女子はオカッパ、男子は丸坊主とかどうよ」
「はあ?」
「公約だよ、公約。姫ちゃんが勝ったらとんでもねえことになるって公約をぶち上げりゃいいんじゃねえのか? 投票したくなくなるようなよ」
「なるほど。流石得利稼。で、他には?」
「他には……、女子のスカートは膝下10cm……、くっ、生き甲斐奪われて登校拒否になる男子が増えそうだな……」
「うんうん、で?」
「そうだな……」
そんな事があって、透が掲げた公約が校内に貼り出された。
女子はオカッパとする
女子のスカートは膝下20cmとする
男子は丸坊主(5mm以下)とする
男女が1m以内に近づくことを禁止する
男女を別々のクラスに分け、且つ、フロアも分ける
大金さんが言ってたのをほぼそのまま。誰にとっても嬉しくないだろうし、確かに透に任せたいなんて思えてこない。
実際、新聞部のアンケート調査でも、天照会長に投票するという人が80%、透は19%となっていた。こんな公約を掲げた透よりも人気がない人は取り敢えず置いておこう。
「いい感じだね、得利稼」
「まあ、俺様にかかればこんなもんよ」
透はアンケート結果に満足そうだし、大金さんも何だか得意げ。
でも、この公約が実現すると私達も別のクラスになっちゃうんだけど、そこはいいのかな、透。
◇◇◇
その日の昼休み。
選挙期間中は候補者並びに推薦者に校内放送を通じて演説の機会が与えられる。
そして、今日は透に割り当てられてるんだけど……
『姫神さんが掲げている公約について補足しようと思うのだけれど。現在彼女は風紀委員長として皆さんの安全の為に日々尽力してくれています。セキュリティシステムの脆弱性を指摘し、その対策を行ったのは勿論のこと、ストーカー被害者には相手の位置情報を通知する事で嫌な思いをすることの無いように配慮してくれています。これによって救われている生徒は少なくないでしょう』
流れてきたのは天照会長の声。
「会長、余計なことを(怒)」
だって、透はここで悔しがってるもんね。
会長の応援演説はまだまだ続く。
『しかし、校内で発生したスカート捲り、嫌がらせ事件など、セキュリティシステムだけでは皆さんを守り切れません。常日頃からこの事を憂慮していた姫神さんは根本的は改革が必要と考え、このような公約を掲げるに至っています。例えば、スカート捲りの対策として丈を長くしようとして掲げたのが膝下20cmや、1m以内の接近禁止であり、例えば、ストーカー行為の根本的対策がクラスとフロアの分離なのです。しかし、ご安心下さい。知っての通り、校則の改定には全生徒の3/4の同意が必要となります。また、クラス及びフロアの分離については学校経営に関わる問題であり、生徒会の一存で変えられるものではありません。言葉は足りていませんが、その覚悟を持って皆さんの学園生活を守りたいという意思の現れなのです。強い意思の現れであり、実際にこのような愚策を実現しようとしているわけではないのです』
「得利稼」
「やるな、会長。こうなったら……」
何をする気かしらないけど、会長の演説でアンケート調査の結果がに変化が現れた。
トップは相変わらず会長で、67%。透は33%となっていたのだ。
◇◇◇
よして、翌日。
今日は会長自らの候補者演説。
『これまで生徒会長として、生徒会執行機関の面々、各クラスの代表が集まる評議会の面々を見てきたのだけれど、その中で次期生徒会長に相応しいと感じたのは唯一人。そう、現在風紀委員長として日々皆さんの学園生活の為に尽力してくれている姫神 透さん。彼女以外に生徒会長の職を委ねられるのは居ないわね』
なんか……、昨日の続き?
『では何故私が立候補するのか。それは、後継者を育てる為。皆さんの中には自分が立候補しておきながら他人を推薦するという私の行為に疑問を抱いている者も少なくないでしょう。私が認めたように、皆さんが姫神さんを認め、そして、姫神に投票し、見事会長の座を射止めてくれるならそれが最も望ましい。その時は、副会長として私が姫神さんを支えていくことを誓いましょう。しかし、万が一にも、皆さんが姫神さんは相応しくないと判断し、別の誰かに投票するようなことになれば……。故に、私は立候補するのです。姫神さんを副会長とし、皆さんに相応しいと思ってもらえるような人物に育て上げるために。姫神さんが相応しくないと思うのであれば、私にその機会を与えていただければ幸いです』
「得利稼……、会長が……、会長が……」
「落ち着けって、姫ちゃん。策はあるっ!」
◇◇◇
更に翌日は……、透が可愛くてたまらない、愛しくてたまらないっていう気持ち悪い演説だったので省略するとして、一巡して再び透の番。そして、これが会長選前最後の演説となる。大金さんから原稿をもらい、必死に練習してたんだっけ。
「いいか、姫ちゃん。涙だ。涙で訴えろ。スピーカーの向こうで姫ちゃんが泣いてると思わせればこっちの勝ちだ。男なんて単純だからな」
「うん、頑張るよ、得利稼」
「よしっ、行ってこい!」
そんな感じで放送室へと送り出され、透の演説が始まる。
『ぐすん……』
えっと……、泣いてるつもり?
『僕には無理なんです。僕の父は飲んだくれで、家にお金を入れてくれなくて……。来年には家族も増えるのに、そしたら暫くは母も働けないのに……。だから僕が働かないと。僕が働かないと家族が生きていけないんです』
……お義父さん、相当悪者にされちゃってるんだけど。
でも、こんな感じで涙で訴える(?)演説が続き、会長が92%。透は8%というアンケート結果になっていた。




