06.14.告白っぽい何か
「このまま行かせてしまったら大切なものを失うことになるわよ、姫神さん」
失うって、僕はもう失くしちゃってるんだけど、これ以上何を……
「大丈夫です。私、誰にも言いませんから」
「ほらね」
ほらねって言われても……
「会長、離して下さい。二人の邪魔をするつもりはありませんから」
「邪魔?」
邪魔って、僕はネックレス探すの手伝って貰ってるだけだから……
「仕方ないわね、説明してあげるわ。姫神くんは私と姫神さんが特別な関係で、夜な夜な逢引してはあんな事やこんな事をしてるんじゃないかって思ってるみたいよ」
「えっ!! 何でそんなことに? あんな事やこんな事って、い……伊織……」
あんな事やこんな事……、あんな事……
凜愛姫が変なこと言うから会長とあんな事をしている姿を想像しちゃったよ。顔が火照ってくる。
「別にそこまで言ってないから……、でも、そうなんだ……、その顔。掃除じゃないんだ……」
「ええ、その通りよ」
会長っ、何を。まさか、バラす気じゃ……
「じゃあ、やっぱり二人はそういう関係で……」
「違うって。伊織が考えてるみたいなエッチな関係じゃなくて……」
「だから、私はそこまで言ってないから(怒)」
会長の手を振りほどき、出て行こうとする凜愛姫。
「永遠の愛を約束する、だったかしら、あのネックレス。正確にはブルーダイヤに込められた思いね」
「ちょっと、会長、な、何で急にそんな事を……」
凜愛姫に気付かれちゃうよ。
「透?」
「な、なに?」
「ネックレス……、してないの?」
「まさか。そんなわけ――」
「してないんだ……」
「違うくて、これには……」
「そうだよね。会長と付き合ってるんだもん。私のネックレスなんて邪魔だよね」
「付き合ってなんか無いよっ。会長は……、会長には……、ちょっと、涙? 凜……」
凜愛姫が泣いてる。
「困った人たちね。ブルーダイヤに特別な力でも宿っているとでも思っていたのかしら? 馬鹿馬鹿しい」
「馬鹿馬鹿しいって……、会長にはわかるはずありませんっ。私と透の置かれた境遇なんて……、わかるはず――」
「ええ、わかりたくもないわね。業界の思惑に踊らされてるだけで肝心な事が何も伝わってないじゃない」
「肝心なこと……」
「境遇、と言ったかしら。義理の姉弟よね、貴方たち。恋愛は禁止されていないと思うのだけれど」
「恋愛って、会長」
何言い出すんだよっ。
「ほらね、姫神さんは貴方の気持ちに気づいてないみたいよ」
ほらねって、凜愛姫、そうなの?
「透……」
「……」
ちょっと、何? これ。
「私、透の事が好き」
「それは……、僕も好きだよ」
「そうじゃなくて……、家族としてじゃなくて」
それって、つまり、そういうことだよね……
「でも、透は男の子と付き合う気は無いって。今でもそうなんでしょ?」
「そうだけど」
男とは無理だよ。例え本当は女の子だってわかってても。
「だから、せめてその時まで……、私でもいいって思ってくれるまで透との絆が欲しかっただけ。だからね、あのネックレスを見つけた時、これしか無いって思ったんだよね。透が同じネックレスをプレゼントしてくれた時、同じ思いなんだーって思えて、ずっと大切にしてたんだけど……、会長に言われた通り馬鹿だよね、こんな小さな石に頼るなんて。こんなの持ってたって……」
凜愛姫がチェーンを引きちぎろうとしてる。捨てるつもりなの? それまで無くなっちゃったら……
「待って!」
そんなの嫌だ。
「同じだから、僕も」
僕も同じ思いでプレゼントしたんだもん。
「……だから、その時が来るまで待ってて欲しい」
元に戻れたら凜愛姫に告白したい。告白して、恋人同士になりたいんだもん。
「その時が……」
「うん、それまで僕は誰とも付き合わない」
「誰とも……」
そう、二人が元に戻るまでは。
「その時がと言いながら、告白してるも同然なのだと思うのだけれど……、どうなのかしら」
「……」
それは……、確かにそう聞こえなくもない……かな。
「そして、私は暗に振られてしまったようなものなのだけれど……、告白もしていないのに」
「……」
それも……、確かにそういう事になるかも……って、会長僕の事を?
「でも、いいわ。姫神さんに付き合う気が無くても私が言い寄るのは自由よね」
「えっとー、それは……」
「楽しみね、その時、誰を選ぶのか」
それは……、凜愛姫だよ、勿論。
「透……」
そんな顔しなくても凜愛姫だってば。
「ネックレスはどうしたの?」
「えっ、それは……」




