表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
78/110

06.13.密会

 「行ってきまーす」


 (とおる)の声だ。今日もこんなに早くから。

 ドアの閉まる音を確認してから私もリビングへと降りていく。何のためって、(とおる)が誰と会ってるのか確認しなきゃ。

 相変わらず(とおる)は私と目を合わそうとしない。家でも、学校でも、私が近づくと逃げていってしまう。


 「凜愛姫(りあら)? あなたも出かけるの?」


 「うん。ちょっとね」


 「朝ごはんは? 授業中にお腹鳴っちゃうわよ?」


 「時間ないから。途中で何か買ってく」


 朝ごはんなんか食べてたら(とおる)を見失っちゃうもん。


 「ふ~ん、頑張ってね♪」


 「何をよ……」


 「いろいろと♪」


 「はいはい。じゃあ、行ってくるから」


 お母さんに付き合ってる場合でもないのよ。(とおる)を追いかけなきゃ。


 急いで家を出て、(とおる)の後をつける。

 普通に駅に向かってるみたいだけど、ずっと俯いたままかな。気付かれないように隣の車両に乗ったけど、(とおる)はずっと俯いたままだ。別に誰かと逢うためとかじゃないのかな……、楽しそうじゃないもん。

 なーんだ、心配して損しちゃったじゃない。


 ……なんて思えたのも、学校につくまでだった。校門前であの車を見るまで。


 「会長……」


 そう、あれは会長の車だ。

 俯いたままだった(とおる)も、会長の車を見つけて駆け出していく。


 「会長と待ち合わせてたんだ、(とおる)……」


 セキュリティを解除して、中に入っていこうとする二人。誰もいない学校で何するつもり?

 私は……、私に邪魔する権利なんてあるのかな……

 でも、私の足は動いてしまっていた。二人を追いかけて。二人を見失わないようにと。


 (とおる)と会長が入っていったのは校庭脇の倉庫。屋外で使う体育用具とかが置いてある倉庫だ。


 「まさか、あんな所でするつもりなの?」


 (とおる)が会長と……


 「ううう、何考えてるんだろう、私。そんなこと……」


 ふと、普段の会長の言葉が頭をよぎる。


    『二人の愛の巣を用意してみたの』


 会長、(とおる)の事が好きなんだよね。

 でも、今の(とおる)は女の子なんだから、女の子同士でそんな……


    『私、可愛ければ性別は気にしないタイプなの』

    『中に入れば監視カメラの映像も確認できるわよ、私と姫神(ひめがみ)さんの秘め事のね』


 否定しきれない、会長だったら有り得るかも。それに、(とおる)だって女の子に興味あるんだよね……

 でも何て言って……、私に止める権利なんて……

 あるっ! 私は(とおる)の家族なんだから。こ、こんな不純行為は駄目に決まってるっ。だから……


    ギギー ガタンッ


 私は倉庫の引き戸を思いっきり開いた。そして叫んだのだ。


 「(とおる)、こんな所で何をっ……」


 キョトンとした表情でこっちを見る二人。着衣に乱れはないし、手には箒とゴミ袋?


 「えっと……、何してるの?」


 「何って……、見ての通り、これから校庭の掃除をする所なのだけれど……、姫神(ひめがみ)くんも手伝ってくれるのかしら?」


 朝早くから校庭の掃除? えっ?


 「何で?」


 「そうね、会長選が近いから、といえば納得してもらえるのかしら」


 「会長選……」


 確かにもうすぐだけど……、こんな誰も居ない時間帯じゃ何のアピールにもならないじゃない。


 「ちょっと無理が。それに、昨日は? 昨日も何処かの掃除をしてたんですか?」


 「ええ。昨日も校庭の掃除をしていたわ」


 「昨日の放課後は? 体育祭の後も校庭の掃除を?」


 「ええ。念入りにね」


 そんな事って……

 私が来たから慌ててそのへんにあった箒とゴミ袋を手に取っただけなんだ。本当はここで……


 「嘘です、そんなの……。私に何か隠してませんか、会長? ねえ、(とおる)、会長と二人で何してるの? 私には言えないようなこと?」


 「それは……」


 「答えてくれないんだ。(とおる)は会長と……」


 「……」


 俯くだけで何も答えてくれない(とおる)。ううん、これが答えか……


 「邪魔してごめん。私……」


 ここから消えなきゃ。(とおる)は会長を選んだんだから。(とおる)に背中を向け、倉庫から足を踏み出す。

 ここにいたくない。二人の前にいたくない。早くここを出なきゃ。

 私のそんな考えを否定するかのように腕を掴まれた。(とおる)……


 「待ちなさい」


 「会長……」


 (とおる)じゃなかった。何期待してるんだろう、私。そうだよね。


 「このまま行かせてしまったら大切なものを失うことになるわよ、姫神(ひめがみ)さん」


 大切な……、そっか、選挙が近いのは嘘じゃないもんね。こんなことしてるって広まったら……


 「大丈夫です。私、誰にも言いませんから」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ