06.12.見つからないネックレス
翌朝、約束通り会長は早朝の校庭に来てくれていた。
「間もなく日の出ね」
そう、日の出前に。
受ける光線の角度が変われば輝くかも知れないと昨日の捜索を中断し、生徒が登校する前にもう一度探す約束をしていたんだ。
実際、あのまま暗闇の中で探しても見つから無かっただろうし、朝日を浴びて輝いてくれれば……、そう期待を込めて。
でも、事はそう簡単に進まなかった。
邪魔な落ち葉やゴミを集めながらネックレスを探す。単に邪魔ってだけじゃなくて誰かに見られた時の保険も兼ねてるかな。生徒会の活動の一貫、的な。でもネックレスは見つからなかった。
そして最初の生徒が登校して来てしまった。このまま捜索を続ければ凜愛姫にも知られかねないかな。まあ、会長とゴミ拾いしてただけって事でいいんだけど、何で会長と二人でって突っ込まれちゃうよね。
「会長、ありがとうございました」
「気を落とすのはまだ早いわ。拾得物として届けられているかもしれないのだから」
「そうですね……」
会長と集めたゴミはほんの僅か。というのも、体育祭の後にちゃんと清掃も行っているからなんだけどね。
だから、誰かが見つけて届けてくれてる可能性は否定できない。そのまま持っていってしまっている可能性もあるんだけどね。
「仕方がないわね。拾得物の確認をして、見つからなければ放課後も付き合ってあげるわ。それで見つからなければ明日の朝もね。貴女が納得するまでいつまででも付き合ってあげるわよ」
◇◇◇
「姫ちゃんさぁ、今日はいつになく襟元のガードが硬くないか?」
「はあ? 何言ってるの得利稼。これは……、さ、寒くなってきたからだよ。そう、最近寒くなったよね」
いつもみたいに襟元開いてたらネックレス無いのがバレちゃうもん。何でそんな余計なこと訊くんだよ、得利稼。
「そうかもしんねえけどさぁ、鎖骨ぐらい見せてくれたっていいんじゃねえのか?」
「何でだよっ」
「別に胸を見せてくれって言ってるわけじゃないんだよ。鎖骨だよ、鎖骨、鎖骨でいいから拝ませてくれねえか。毎日それだけを楽しみに登校して来てるんだからよ」
「嫌だよっ」
「そう言わずにさあ〜」
しつこいよ、得利稼。
「視線が厭らしいと思ったら、そんな事を」
「水無ちゃんまで……、頼むからボタン締めないで」
軽蔑の眼差しを得利稼に向けながら、襟元のボタンを締める水無。
「きもいんだぞっ、裕人」
「最低だな」
「待って、一刃ちゃん、霊雷ちゃんまで……、武神っ、何とか言ってやれ。お前だって見たいよなっ!」
少し離れた所にいた武神さんを巻き込もうとする得利稼。
「止めないか、大金さん。皆んな嫌がっているよ」
「何でだよっ」
「そうだ、透さん――」
「伊織、伊織は見たいよなっ」
「私は……」
巻き込むどころか注意されてしまった得利稼は偶々通りかかった凜愛姫に声を掛ける。僕は呼び止められた凜愛姫と目が合ってしまい、僕は反射的に襟元を押さえてしまっていた。
「そんなに警戒しなくても覗いたりしないよ。っていうか、見られたくないならお風呂上がりにタンクトップでうろうろするの止めたら?」
不機嫌そうな凜愛姫。
「いや、これは……」
鎖骨なんて見られたってどうってことない、普段ならね。でも今は駄目なんだ。見られるわけにはいかないんだよ。
「タ……タンクトップ? 姫ちゃんそんな格好してるのか?」
「え、得利稼、顔が……」
キモいって。
「姫ちゃんがタンクトップで……、うへ、うへへへ」
バシバシッ
「うがー、何すんだ霊雷ちゃん」
「黙れ、変態」
空気が乾燥してきて霊雷ちゃんの静電気の威力も増してきてるみたいだ。
「透さん、ちょっと――」
「皆さんお静かに……。ホームルームを初めますよ」
何かを言いかけた武神さんだったけど、現れた担任に遮られてしまった。
◇◇◇
そして昼休み。
「透さ――」
「はい、これ。お母さんから」
僕に話しかけようとしていた武神さんとの間に割り込んで、ドンって乱暴に弁当を差し出す、いや叩きつける凜愛姫。
「あ、ありがとう」
「ん? 今日は姫ちゃんの手作り弁当じゃねえのか? 伊織」
「だったら何っ」
「いや……、別に……、そういう日もあるよな、うん……、そうだっ、俺、売店行ってこなきゃ」
得利稼が逃げていく。凜愛姫の顔が怖い。凄く不機嫌そうだよ。
「で、どうするの? 一緒に――」
「僕も生徒会室行かないと。会長に呼び出されてるんだよね」
「あっそう」
ごめんなさい、会長。こんな凜愛姫と二人でなんて無理。だから会長の所為にしちゃった。
◇◇◇
「校内では届けられていないようね」
「そうですか……」
誰かが拾って届けてくれてるんじゃって期待もしてたんだけど、だめか。
「そんな顔しなくても、今日も付き合ってあげるわ」
「ありがとうございます、会長」
でも、結局ネックレスは見つからなかった。




