06.08.騎馬戦(2)
凜愛姫の元に駆けつけるには包囲網を突破する必要がある。3騎倒したとはいえ残り7騎による包囲網だ。
ウザ男と会長、それに強力さんにも気をつけないといけない。
「どけーっ」
霊雷ちゃんの気合だけで2騎が崩れ落ちた。戦闘放棄って感じかな。これで包囲してるのは5騎。そのうちの2騎の鉢巻を会長が後ろから奪い取った。
「なっ、なんで味方を」
鉢巻を奪われて驚きの声を上げる騎手。
「味方? 姫神さんを狙う不埒者を潰すのは当然の使命。私が共闘するとでも思っていたのかしら?」
じゃ、じゃあ――
「姫神さんを狙って良いのはこの私だけなのだけれど、誰も理解していないようね」
僕の味方ってわけでもないのか。他の人に奪われないように潰しただけなんだ……
でも残り3騎も今ので動揺したみたい。これなら凜愛姫の所に辿り着ける。
「死ねっ、三田村っ」
凜愛姫に迫る三田村に霊雷ちゃんが強烈な蹴りを放つ。ルール的には……、多分有りかな。警告されないみたいだし。
三田村が吹っ飛ばされたことで崩れ落ちる火無の騎馬。
「何やってんだよ、三田村。勝手なことしやがって」
ざまあみろ、凜愛姫に変な事しようとした罰だ。
「私にも警戒しないとね、透」
不意に凜愛姫の声が。
「えっ……」
「私も狙ってたんだから、これ」
凜愛姫の手にはくしゃくしゃになった八咫鏡(?)が握られていた。
「狙ってたって、伊織が僕の……」
凜愛姫は僕とキスしたいってこと?
「姫ちゃん、危ねえっ」
僕の意識が凜愛姫の手にする八咫鏡(?)に釘付けになっているすきに、背後から誰かが迫ってきていたようだ。
得利稼の警告で振り返ると、そこには僕らに向かって崩れてくる騎馬が。その後ろからはウザ男も迫ってきている。
武神さんも気付いていなかったのか、倒れかかってくる騎馬を躱すので精一杯だ。後ろから迫るウザ男には反応できそうにない。
「くっそう」
得利稼が僕らを押しのけてウザ男の騎馬に体当たりする。しかし、流石の得利稼も重量差には敵わないのか、ぶよぶよのお腹に撥ね返されてバランスを崩してしまう。
「伊織っ」
崩れ落ちる凜愛姫の騎馬。幸い、水無が受け止めてくれから凜愛姫には怪我はなさそうだ。
「透さん」
「うん」
武神さんが体勢を立て直し、ここぞとばかり襲い掛かってきていた2騎を霊雷ちゃんと一刃ちゃんが足蹴にする。ちょっと痛そうだけど、警告されてないから大丈夫っ。
「待たせたね、マイ・プリンセス」
「待ってねーしっ」
ウザ男の騎馬だ。
「ホテルも予約しておこう。朝まで楽しもうじゃないか」
にやけ面のウザ男の手には鉢巻が。
「まさか……」
頭に手をやるも、そこに鉢巻は無かった。取られてしまった。よりによってウザ男に……、取られてしまった。
「あら、自分が失格している事も分からずに “待たせたね” なんて言っているのだけれど、打ちどころが悪かったのかしら?」
「何っ? いつの間に……」
慌てて自分の頭を確認するウザ男。会長の手には鉢巻が握られていた。
「まあいい。この鉢巻を手にした者が願いを聞いてもらえるんだ。勝負なんかどうでもいいさ」
「打ちどころが悪かったのかと思ったのだけれど……、どうやら生まれついてのもののようね。願いを叶えられるのは騎馬戦の勝者。つまり、現時点では私と強力君のどちらかとい事になるのだけれど」
「そっか、取られた時点で確定するのは伊織に取られた八咫鏡(?)だけなんだ……。よかった〜、ウザ男も火無も失格してるよ〜」
「会長と添い寝したいんだ、透は」
顔が怖いよ、凜愛姫……
「えっ、そういうわけじゃ無いけど、ほら、あいつらの変な要求聞かなくていいと思うと――」
「添い寝したいんだ」
確かにちょっと魅力的ではあるけどさ……
「いや、そうじゃなくて……」
まだ会長って決まったわけじゃないしさ、強力さんが勝つかもしれないじゃん?
「折角その気になっているところ悪いのだけれど、私もここまでのようね」
会長の騎馬、空手部の精鋭は足を捻挫してしまったみたいだった。何でも、ウザ男が押し倒した騎馬を避けようとしたけど避けきれず、変な感じに踏んづけてしまったらしい。
「残念だったね、透」
「別に残念なんかじゃ――」
「あら、 姫神さんが添い寝しに来てくれるのは大歓迎よ、いつでもね」
「いつでも?」
「ええ、いつでも構わなくてよ」
「はぁ……」
「あっ、ちょっと、伊織」
凜愛姫はため息を残して行ってしまった。




