06.07.騎馬戦(1)
いよいよ騎馬戦が開始となる。
エントリーしたのは全部で16騎。僕たちを中心に、取り囲むように15騎がこっちを向いて開始の合図を待っている。強力さんの思惑通り、皆んなこの八咫鏡(?)を狙ってるんのかな。意識過剰かもしれないけど、この布陣はそうとしか思えない。
「契るのが楽しみだな、姫神」
全然楽しみじゃないし。こんな奴無視だ。
「酔いつぶれてしまっても介抱してあげるから心配しなくてもいいよ、マイ・プリンセス」
余計心配だよ。こいつも無視無視。
「伊織……」
凜愛姫の騎馬は得利稼と水無、それに転校して来た轟さんだ。
得利稼は前に居て両手が塞がってるから何もできないし水無は女の子だからいいとして、
凜愛姫の股の下には轟さんの手があるんだよっ! そんな風にまたがって平気なの? 凜愛姫……
「絶対に負けない」
何でそこまでして……
「透さん、集中して」
「う、うん、ごめん武神さん」
僕の騎馬は前に武神さん、後ろに霊雷ちゃんと一刃ちゃん。
元々女の子だったとは言え、男子の手が股下にあるとか嫌だもん。なのに凜愛姫は……
ドドーン
太鼓の合図と共に、野郎共が動き出す。集中しなきゃ。
僕を取り囲んだまま少しづつ間合いを詰め、攻撃の機会を伺っているんだろうな。
そんな包囲網には参加するつもりがないのか、ウザ男、火無、強力さん、会長、それに凜愛姫は遠巻きに様子を伺っていた。
一歩、また一歩と囲いが狭められる。一斉に襲いかかられたら恐怖でしかないけど、最初の1騎は武神さん達に粉砕されるんだろうな。1騎馬じゃなくて数騎かもしれない。向こうもそれを警戒しているのか、なかなか襲いかかってこないみたいなんだけど。
「はあー、はあー、水無ちゃん、水無ちゃんがそこに居る。待っててね、今行くから」
包囲している10騎に気を取られていると、そんな声が聞こえて来た。火無が動き出したんだ。
「おい、水野、勝手に動くな」
水野が勝手に動き出したのか。
接近警報のお陰で水無は付き纏い被害を逃れている。ということは、水野は水無の姿を見ることさえ出来て無いわけで、溜まってた欲求が暴走し始めた感じなんだろうか。火無の言葉には耳を貸そうとせず、水無めがけてゆっくりと近づいて行く。後ろの二人も仕方なく水野に付いていっているみたいだ。
「うわあ」
「集中して」
「ごめん」
意識が水野へといっている間に、1騎が八咫鏡に手を伸ばしてきていた。幸いにも武神さん達の機動力によって難を逃れたけど、これが切欠になって他の9騎も襲いかかってきた。
「こらー! どさくさに紛れて姫神の胸掴んでんじゃねえぞ!」
なんて叫んでる火無の騎馬は僕じゃなくて凜愛姫の方へと向かてるんだけどね。
「姫神、勝ち残って土下座させてやるからな」
御竿は僕狙いか、進みたい方向が別々で騎馬が分解しそうになってる。っていうか、全員の要求に応じなくても良いんだよね?
「伊織くん……、待って、逃げないで」
どうやら三田村も暴走し始めたようだ。
水無に向かって突き進もうとする水野、逃げる凜愛姫を追いかけようとする三田村、この二人の目的が一致してしまっている。
「おのれ、変態っ!」
「霊雷っ、勝手な行動はダメなんだぞっ!」
三田村の行動に反応したのか、霊雷ちゃんが伊織の方へと向かおうとし、バランスが崩れる。
「透さん、右手を前にっ」
武神さんに言われた通り、ふらつきながらも右手を前に出すと僕の騎馬がふわっと不思議な動きをして、気がつけば相手の鉢巻を奪い取っていた。
「左手っ」
言われるがまま左手を前に出す。先程と同様にふわりと動き、僕の左手には鉢巻が握られていた。僕が差し出した手に応じて位置が調整され、何だかよくわからない間に鉢巻が奪い取れている。
「すごい、何これ武神さんっ!」
僕が一人で感動していると、当然だと言わんばかりに霊雷ちゃんが叫び声を上げる。
「邪魔だーっ!!」
「スキ有りなんだぞ」
霊雷の気合で怯んだ1騎の足を一刃ちゃんが払い、戦闘不能にしてしまう。
一瞬で3騎馬を倒されて警戒したのか、霊雷の気合にビビってるだけなのか、残りの騎馬が少し距離を取り始めた。
「行こう、伊織さんのところへ」
武神さんの判断だ。一人でも駆けつけちゃいそうだもんね、霊雷ちゃん。それに、凜愛姫を守れるならその方がいい。
「うん、行こうっ!」
凜愛姫のところへ。




