06.06.騎馬戦エントリー
ミス高天原争奪騎馬戦。
ルールは単純で、出場希望者によるバトルロワイヤル。最後まで残った1騎が勝者となり、ミス高天原に何でも1つ願いを叶えてもらえるという。勿論、公序良俗の許す範囲内に限られてるんだけど。こうなったら……
「僕もでるっ!」
武神さんの手を取り、目を見て訴える。
「ぼくで良かったら騎馬は引き受けるよ」
「やったー、ありがとう、武神さん♪」
「じゃ、じゃあ私も……。役に立たないかもしれないけど……」
「え……、伊織は……」
凜愛姫は格闘技とかやってるわけじゃないし……、それに、怪我でもされたら嫌だ。
「武ちゃんが出るなら私も出ちゃうんだぞっ!」
「ありがとう、一刃ちゃん♪」
「おっ、じゃああと一人は俺で決まりだな」
「え、遠慮しとくよ、得利稼……」
「何でだよっ」
「身の危険を感じるもん」
得利稼の腕に跨るとか絶対無理。何されるかわからないもん。
「だから、私が――」
「霊雷がいいんじゃないかな。武ちゃんと霊雷と私が居れば優勝間違いなしなんだぞ!」
「うん、そうだね、お願いしてもいい、霊雷ちゃん」
ふっふっふっ、運営の思惑通りにしてたまるか。
「伊織さん」
「水無さん……、私じゃ役に立てないか。勝ち残れそうだよね、透のチーム」
「……ごめん、伊織」
「ううん、頑張ってね透」
凜愛姫がしょんぼりしてるけど、僕は負けられないし、凜愛姫にも怪我をさせたくない。僕はこのメンバーでエントリーする為、本部へと向かう。
「マイ・プリンセス。落ち着いた雰囲気の居心地のいいバーを見つけたんだ。僕が勝利した暁には一緒に行こうじゃないか」
ダメだろ、飲酒は。ウザ男の騎馬はいつもの取り巻きみたいだ。
「姫神、優勝したら契ろうではないか」
火無は完全アウトだな。契ってたまるか。よくお前の騎馬やってくれる人居たな……、あ……、よく見れば、水野だ。あの体型、水無に付き纏ってた水野で間違いない。
それに、後ろに居るのは御竿だよ。すっかり忘れてたけど、僕に嫌がらせして処分された御竿じゃん。
もう一人は……三田村か……。
似たもの同士集めてきたってことなのか。
「女神さんも出るのか……」
「“ひ” が抜けてますけど」
「メンバーは武神、鹿島、香取……、手強そうだな。では、こうしよう」
その辺にあった適当な紙を千切って紙縒りを通し、僕の首にかける強力さん。
「八咫鏡だ」
「いや、紙だし」
「こいつを奪ったやつは女神さんに口付けしてもらえるって事で」
「余計なことしないでくださいよ」
「あー、勘違いの無いように言っておくが俺には女神さんにしてもらいたい事は無いし、その唇にも興味はない。これは競技を盛り上げるための演出だよ。女神さんとこの三人がそこに居るだけで怖気づいて皆エントリーしようとしてないみたいだからな。鉢巻よりは奪いやすそうに見えるだろ? 紙なんだから」
確かに鉢巻とこのボロい八咫鏡(?)と両方気にしなきゃいけなくなるから相手の鉢巻を取りに行きづらいかも。
「武神とは正々堂々と戦いたかったんだが、致し方ない。実行委員長なんでな」
強力さんのチームは全員が巨漢。こんなのが突進してくると思うと……
「武神さん……」
「大丈夫だよ、透さん。鹿島さんと香取さんが居るんだから。これぐらいのハンデがあって丁度いいんじゃないかな」
少し不安になって武神さんを見たんだけど、全然余裕そうだね。なんてほっとした瞬間、凜愛姫がエントリーシートに記入している姿を見つけてしまった。
「伊織、何で……」
「私……、負けないから」
僕が頼まなかったからなの?
「伊織……」
本部から立ち去ろうとする凜愛姫を追いかけようとしようとした所に、会長が割り込んできた。
「姫神さんにはそんな安っぽい円盤よりも私がプレゼントした首輪の方が似合うと思うのだけれど」
「会長……、会長も出るんですか?」
「勿論よ。賞品が魅力的なのだから。そうね……、添い寝、なんていいかもしれないわね。お揃いのパジャマを用意しておくから、泊まりに来るといいわ。それに、貴女にあんな思いをさせるのは可愛そうだから……」
「あんな思い?」
凜愛姫が気になるけど、あんな思いって何? 凄く気になっちゃう。
「昨年は私が貴女の立場だったの。そして、勝者は十六夜 葉月というくだらない男。懲りずにバーだとか言っているようだけれど、昨年は補導されかけたのよ。それに、僅かな時間と言えども、あんな男とは一緒に歩きたくもないのではなくて?」
ウザ男と並んで歩く……、考えただけで全身に震えが走る。
「透さん、震えているようだけど、心配しなくていいよ」
「うん……、ありがとう武神さん」
「まあ、そういうことだから、おとなしく私に負けることね」
会長の騎馬は全員男子。男子の上に跨るんだ、会長……
「鹿島さん、それに香取さんも、良く考えたほうがいいのではないかしら?」
「いくら会長でも正々堂々戦わないといけないんだぞ!」
「そう、では全力で行かせてもらおうかしら。私の騎馬は空手部の精鋭よ」
「問題ない。伊織……くんは私が止めてみせる」
会長の話じゃなくて?
「そうだね。でも怪我とかさせたく――」
「当然。伊織……くんは私が守る」
そんな、僕を睨まれてもね……




