06.04.男子借り物競争(2)
残り3枚となった封筒の前に対峙する凜愛姫とウザ男。
「さあ、引きたまえ」
ウザ男は凜愛姫に先に選ばせ、当たりだったら奪い取り、外れだったら残り2枚から選ぶつもりなんだろう。
凜愛姫はウザ男を警戒しつつ1枚を選び、ゆっくりと封を開ける。そして、ぽつりと呟く。
「ミス……」
そして、一瞬ウザ男を見た後、本部めがけて走り出した。僕に向かって……
「伊織ー、急いでー、後ろからウザ男がー」
凜愛姫が僕のカードを引いてくれた。このままここに来てくれれば……
「うわっ」
凜愛姫は後ろからタックルを受け、そのまま地面に転がった。ウザ男がその手から封筒を奪う。
「伊織っ」
「何処へ行くのです?」
監視人に腕を掴まれる。
「何処って、決まってるだろっ」
凜愛姫のところにいかなきゃ。
「残念だったね、偽りの彼氏君」
ウザ男は凜愛姫に向かってそう吐き捨てると、そのまま悠々とこっちに向かって歩いてくる。
「待たせたね、マイ・プリンセス」
「よくも……伊織に……」
ウザ男が得意げにカードを見せつける。
「さあ、我が腕に」
「……ミス上腕二頭筋はあちらですが」
監視人が冷たく言い放つ。
「何っ?」
ミス上腕二頭筋(お姫様抱っこされて)
ウザ男が掲げたカードにはそう書かれていた。
慌ててカードを確認するウザ男。そして、そのカードを捨て、残る2枚の封筒の所へと戻ろうとする。
「複数のカードを引いた者はその場で失格となります。他人に奪われた場合は除きますが」
「あたいに拒否権は?」
「その場合MVPポイントは加算されませんが、それでもよろしければ」
「しゃーない。こんな男、触るのもやなんだけどポイントは欲しいからね」
「止めろ、離せ」
「じっとしてなって。このまま絞め殺そうか?」
ミス上腕二頭筋はウザ男をお姫様抱っこしてゴールへと向かっていった。
凜愛姫は……、まだ倒れたままだ。行かなくちゃ。
「うっ、もう良いだろ、離してよ。伊織の所に……」
「彼はまだ諦めて無いようですが?」
「へっ?」
監視役の言った通り、凜愛姫は立ち上がろうとしていた。あちこちに擦り傷が出来てて、それに思いっきりタックルされてたのに……
そのまま2枚の封筒の所まで戻り、1枚を手に取ると、中を確認しないまま本部へと向かってくる。手渡された未開封の封筒。
「開けて、透」
「うん」
ミス高天原(お姫様抱っこ)
そこには、そう書かれていた。
「間違いありませんね。おめでとうございます。さあ、共にゴールへ」
凜愛姫が手を差し出す。
「でも……」
お姫様抱っこなんだよね。こんな傷だらけの凜愛姫に……
「おいで、透」
「……うん」
なんか凄く恥ずかしいけど、 僕は今、凜愛姫にお姫様抱っこされてゴールへと向かっている。ゆっくりと……
「ごめん、重いよね」
「平気だよ、全然。流石に走れないけど」
凜愛姫の首に抱きつく。
これは……、あれだよ、凜愛姫の腕に掛かる負担を減らそうとしてるのであって、別に不純な動機とかじゃないんだから。
でも……
「(ありがと、凜愛姫)」
「うん」




