06.01.憂鬱な体育祭
期末試験の結果が発表され、相変わらず凜愛姫と僕は評議委員のままとなった。
別に評議委員をやりたいわけじゃないんだけど、テスラは手放したくないもんね〜
『マスター、井川氏からミーティングの依頼です』
「空いてる所で調整お願い」
『かしこまりました』
このコがテスラ。夏休み中にあれこれ試して今みたいに日程調整ぐらいは出来るようにしたんだ〜。
一言で言えば、チャットボットみたいなものだね。最終的にはセキュリティシステムの監視とか、侵入者の追跡とか出来るようにしたいんだけど。
僕のスマホに現れてる美少女はただのアバターで、実体はセキュリティシステムの検証環境の中にある。だって、検証環境なんて殆ど使ってないんだから勿体無いじゃん。Tesla®を16基搭載したマシンが16台も遊んでるんだよ? 有効活用したくなるのは当然だよね。
ちなみに、Tesla®だからテスラ。声は記憶を頼りに凜愛姫に近づけてみたんだけど、微妙に違うかも。それに、抑揚もちょっと変だし。
アバターはStyleGANで生成した画像。義母さんから凜愛姫の中学時代の写真を借りて潜在変数を推定し、同じように好みの女優さんの写真から推定した潜在変数との間で連続的に変化させると生成される画像も連続的に変化する。モーフィングみたいにね。で、気に入った画像をピックアップしたのがテスラのアバター。凜愛姫と女優さんの中間的な可愛い女の子だよ♪ あと、表情も変えられるから笑顔も見せてくれるんだ。
「ごめんなさいなんだぞ、武ちゃん。私の所為で……」
「気にすること無いよ。それより、1組に残れてよかったね」
「うん、ありがとうなんだぞ♪」
そういえば、一刃ちゃん、最近武神さんと仲いいね。テスト勉強も一緒にしてたんだっけ。もちろん、水無も一緒だったみたいだけど。
「私が残れたのは伊織……くんのお陰。ありがと」
霊雷ちゃんは普段クールな感じなのに、“伊織” の前だとこんな風になっちゃうんだよな〜。
テスト勉強の時もずっと……
“伊織” に教えて欲しいって言ってきて……、プールでも助けてもらってっるから嫌って言えないし……。本当は凜愛姫と二人きりでしたかったのにな。
なぜか武神さんは順位下げて6位、水無が3位、得利稼が4位という結果となった。
「まあ、これが俺の実力さ。成績上位者同士、仲良くしようじゃないか」
お陰で火無が鬱陶しいことこの上ない。
「別に成績で付き合う相手を決めるつもりは無いんだけど」
「何を言う。付き合うからには姫神に相応しい男になるのは当然。これで壁を一つ突破したな」
付き合うって友人としてって意味なんだけど、まあいいか。勝手に壁を作って突破してればいいけどさ、絶対超えられない壁があるから、“男とは無理”ってね。
1組に残れなかったのは中木と三田村。そう、男色の三田村だ。いつも “伊織” の事じっと見てた三田村。特に接触してくるわけでもなくて、ただ気持ち悪かったんだけなんだけど。そんな三田村が居なくなってくれて、ちょっと安心かな。
そして試験明けの恒例イベント、新たに1組のメンバーとなる二人が紹介された。
ただ、今回はちょっと特殊みたいで、2組からの繰り上がりは一人だけ。
「草場 影久です。よろしく」
同じ匂いを感じるな、昔の僕とだけど……
暗くて、無口で、自己紹介っていっても名前だけ。そそくさと自分の席へと向かってしまう。
もう一人は他校からの転校生なんだとか。
「轟 静……です。葦原学園から転校してきました」
今にも消えてしまいそうな声でたったそれだけ言って自分の席へと向かう。物音一つ立てずにね。こっちも同じ匂いがするかも……
美形で色白で黒髪……、なんか幽霊みたいだな。女の子みたいに見えるけど、男子なんだよね、制服的には。うちのとは違う制服みたいだけど、 葦原学園のって事なのかなあ。
何かとうちの高校と張り合う事が多い高校で、間もなく始まる体育祭でも幾つかの部が練習試合を予定してるんだとか。
ううっ、体育祭……
考えただけで憂鬱だ。
元々足が早いわけでも、高く跳べるわけでも、球技が得意なわけでも……、まあ他にも色々得意じゃないんだけどさ、それだけじゃなくて、高天原祭のコンテスト受賞者は借り物競争に借り出されるんだとか。選手じゃなくて、文字通り借りられる方としてね。
いろんなミス○○と、ミスター○○が居たけど、ミス○○は男子競技の方に、ミスター○○は女子競技の方に借り出されるんだとか。しかも、それだけじゃなくてミス高天原争奪騎馬戦なんてふざけた競技もあるみたいなんだ……
そんな僕の気持ちを知ってか知らずか、MVPに選ばれた者には豪華賞品が用意されているという。
さすがにTesla®とまではいかないけど、高性能GPUを搭載したノートPCが貰えるんだよ。別に自分で買えない金額でもないし、テスラもいるから必要ないっていえばそれだけなんだけど……
選考基準は明らかにされてないけど、足が早ければいいってわけでも、高く飛べればいいってわけでもないみたいだから、僕にもチャンスがないわけでもない……と思う……。そう思わないとやってられない。
会長は、ミス高天原に選ばれると色々と忙しいって言ってたけど、忙しいだけじゃなくて、こんな嫌なことまでさせられるんだ……
もう、誰だよ、変な企画考えたの。
でも、今は友達もできたし、やっぱり僕も楽しみたい。中学の時は全然楽しめなかったからな、こういうイベント。




