05.01.元町へ
ちょっと早いけど誕生日プレゼントでも買いに行こうかなー。無くなっちゃったら嫌だしね。
でも、対策したのは校内だけ。校外で火無やウザ男に遭遇したらって考えるとちょっと怖いんだよね。
「透さん、今度の日曜なんだけど、よかったらぼくと一緒に……」
凜愛姫に付いて来てもらうわけにもいかないし、困ったな。
「あの、透さん?」
ん? 武神さん。そういえば、火無にスカート捲られたとき助けてくれたんだ。
一瞬の事で何が起こったのか判らなかったけど、武神さんてものすごく強いんだよね。
あの時も『実力行使に移らせててもらう』とか言ってたし、実家も何かの道場なんだよね。
「ねえ、武神さん、週末空いてる?」
「え、ああ、空いてるけど……」
「じゃあさ、ちょっと付き合って欲しい所があるんだけど、いいかなあ」
「それは、構わないけれど……」
「やったあ。火無とウザ男が怖くてさ、よろしくねっ武神さん」
「あ、うん」
「ん? どうかした?」
「いや、別に」
よし、これで安心だ。
「ぼくも観たい映画があったんだけど、付き合ってもらってもいいかな」
「映画?」
映画館は……みなとみらいにあったよね。
「いや、興味がないならいいんだ」
「そんなことないけど、もうチケット買っちゃってたり?」
「いや、透さんの予定を聞いてからと」
「じゃあ、みなとみらいに行こうか。僕が行きたいのは元町だしね」
僕の都合に付き合わせるだけじゃ悪いしね、映画ぐらいならいいか。
◇◇◇
そして、その日曜日。
僕と武神さんは朝の8時にワールドポーターズにある映画館に居たのだ。何故か8時半上映のチケットを取ってしまった武神さんの所為なんだけど。
ちょっと張り切りすぎなんじゃないかな。
「済まない。早すぎたかな」
「お店、閉まってるね」
映画館以外は10時半開店じゃなかったっけ……
まあ、ここには特に用もないし、映画が終わる頃には開いてるんだろうけど。
「それで、何観るの?」
「あ、ああ、これなんだけど」
「へえー、こういうの好きなんだ、武神さん」
確か、ラノベが原作でアニメ化もされてたラブコメの実写版だよね。
「どう、かな」
実写になるとキャラが違うと言うか、そもそも声が違う時点で違和感があるからな。でもヒロイン役の女優さんも可愛いし、武神さんが観たいなら……
「うん、いいんじゃないかな」
映画の後は、中華街で饅頭を買って、歩きながら食べる。日曜は結構混んでるし、ランチもやってないからなって父さんが言ってたからなんだけどね。
父さんは中華街で働いてたことがあるのだ。といっても、料理人ってわけじゃなくて、普通のITエンジニア。たまたまオフィスが中華街に有っただけなんだけど。
実際、父さんに言われた通りそこそこ混んでたし、あまり武神さんに付き合わせても悪いしね。
そして、いよいよ元町、というかジュエリーショップへ。
まだ売れていませんように……
「いらっしゃいませ……、あら、いつぞやの可愛らしいお嬢さん。今日は別の方とデートですか?」
「違いますって。最近変な男に付き纏われてて、まあ、ボディーガードってところかな」
「ボディー……ガード」
えっと、伝えてなかったけど、今日はそういうつもりで……
「まあ、大変ですね」
「それより、この前見せてもらったネックレスってまだありますか?」
「えーっと、どれでしたでしょうか?」
「ブルーダイヤのネックレス!」
大切な人の幸せを願うって思いが込められたネックレスなんだ。説明してもらった時、凜愛姫にプレゼントしたいって思ったんだ。
「ございますよ? 残り2本。どちらもお買上げですか?」
「いえ、1つでいいですけど」
「畏まりました。今お持ちしますね」
良かったー、まだ残ってた。
「ネックレスか、気に入ってるなら今日のお礼に僕からプレゼントという――」
「ううん、僕用じゃなくて、凜愛姫にプレ……」
うかれてつい凜愛姫の名前を……
「リアラ? 確か幼馴染だったよね、透さんの」
「う、うん、そうだよ、幼馴染。女の子だよ? 名前で判ると思うけど」
そうだった。そういう事にしてたんだった。
「大切なお友達なんだね。ブルーダイヤモンドには幸運を願うという意味が込められてるみたいだから」
知ってるんだ、武神さん。
「他にも、夫婦の絆を深める、とか、永遠に変わらない愛を約束するって意味もあるんですよ?」
「ふ、夫婦……」
夫婦に反応したのか硬直する武神さん。
「永遠の……」
それは僕も同じなんだけど。
「まあ、女の子同士には関係無いでしょうけど……、どうかされましたか? 宜しければ他のをご覧になって――」
「いえ、これ下さい。これが気にいってるので」
落ち着け、僕。
夫婦とか、永遠とか、関係ない。うん。そういうのもあるってだけで、僕と凜愛姫はそんなんじゃ……、そんなんじゃ……




