04.05.お尻
「また来ちゃったんだぞ〜」
「お早いお帰りですね、お嬢様」
「早速だけど〜、気持ち良くして欲しいんだぞ〜、あ〜んなとこや、こ〜んなとこまで」
一番最初の女の子だよね、この娘。話し方が特徴的だし、ツインテールが揺れてるもん。
「そういったご要望はこちらで承ってるんですけど?」
そうそう。そういうのは 得利稼の担当だから。
「え〜、ゴリラにされたら壊れちゃうんだぞ? 姫神さんがいいな〜」
「じゃあ、普通のマサージで」
さっきから凜愛姫が睨んでるし、『変なとこマッサージしちゃダメなんだからねっ』って言われてるしな。
「残念だけど仕方ないか〜。お尻が気持ちよかったから30分延長でお願いしちゃうんだぞっ!」
「他のお嬢様もお待ちなので無理……かな」
「(じゃあ~、今度プライベートでお願いねっ♪)」
耳元で囁いてくるお嬢様。同時に凜愛姫の目からビームが放たれた……ような気がした。
「いや、そういうのもやってないから」
凜愛姫に聞こえるようにお断りしてみたんだけど、どうかな……
……『ふんっ』って聞こえそうなぐらい思いっきり顔を背けられたよ。
「香取 一刃だそ♪ 宜しくね!」
「うん、よろしく……」
近いって、そんなに顔近づけないでよ。
「ん? 赤くなってる?」
「そんな事は……」
だって近いんだもん。こう見えても中身は男なんだから。それに、君が動く度にツインテールが揺れて、とっても可愛いんだもん。
「お嬢様、他のお嬢様の迷惑になりますので」
困っていると、凜愛姫が助けに来てくれた。
「メイドさんってことは……男の子? もしかして姫神さんの彼氏?」
「か、彼氏とか……、そんなんじゃないから」
「顔が真っ赤なんだぞ?」
うん、真っ赤だね、凜愛姫。
「これは……その……こんな格好してるからで、別に……」
「そうなんだ~、でも、すご~くお似合なんだぞ」
「そう……かな……。ありが……、えっ、ちょっと何を」
急に僕を突き飛ばすツインテールのお嬢様。そのまま凜愛姫に受け止められて、思わず抱きついて、凜愛姫に抱きしめられて……
「ほら、二人で顔赤くしちゃって。お似合ってのは二人の事なんだぞ♪」
顔が赤く……
だってしょうがないじゃん。凜愛姫はメイド服着てて、あの時のウィッグも着けてて……、女の子みたいなんだもん。
「透……」
女の子たちのざわつく声で我に返る。これは……嫉妬だよね。
「ごめん、伊織……」
みんな凜愛姫、というか伊織と武神さんの事見に来てるんだから。でも、そんな声も聞こえてないのか、凜愛姫は僕を抱きしめたまま離そうとしなかった。
「姫ちゃん、姉弟同士で抱き合ってないで仕事仕事」
「あっ、うん」
「な~んだ、姉弟なんだ。作戦失敗なんだぞ↓」
「作戦?」
「何でもないんだぞ~」
この娘、武神さん狙いなのかな? それとも連れの娘をからかったのかな?
凜愛姫に抱きしめられたとき、連れの娘から殺気を感じたような……
◇◇◇
「手、つなご」
高天原祭初日が終わり、帰りの電車の中。最近はこうやって凜愛姫の方から繋ごうって言ってくれる。
「うん♪」
僕はいつものように凜愛姫の手を取った。凜愛姫がその手を握りしめてくるのもいつもと同じ。いつもはこれで笑顔をみせてくれるんだけど、今日はちょっと違うみたい。
じっと僕を見つめて……
何か、顔赤い?
「あのね、透……」
「なに?」
「……」
何か言いたそうなんだけど、言葉が続かない。
気まずい……
「そうだ、今日はごめんね、抱きついちゃったりして。皆んな見てたのに、恥ずかしかったよね」
「……謝るとこ、そこなの?」
「……」
「ダメって言っておいたよね……、変なとこ触っちゃ」
ああ……、そのことか。ずっと睨んでたもんね。
「触ってないよ。得利稼じゃないんだから、そんな事しないって」
「触ってた!」
「触って――」
「触ってたのっ!」
「……」
ぎりぎりお尻じゃないと思うんだけどな……
「やっぱり女の子がいいよね……」
当たり前だよ。男のケツなんて触っても何の意味もない。って、触ってないからね。
「私じゃ……だめ?」
「凜愛姫の?」
「(声が大きい)」
「ごめん」
凜愛姫のお尻……
男になっちゃったけどお尻はお尻なわけで……、それは凜愛姫のお尻なんだから……
「いいの? 触って」
触っていいなら触ってみたいかな。
「えっ?」
「(凜愛姫のお尻、触りたい。伊織じゃなくて凜愛姫の)」
耳元で囁くと凜愛姫の顔がどんどん赤くなっていく。
僕は構わず繋いでない方の手をお尻へと伸ばす。
「いいんだよね、触って」
「だめっ、冗談だってば」
その手は凜愛姫に掴まれてしまった。
「えー、いいじゃん、ちょっとぐらい」
「ダメだってば」
「その気にさせたんだから責任とってよ」
「だから冗談なんだってば。ごめん、謝るから」
「やだ、絶対触る」
「もう、やっぱ大金さんと同じだよ」
「得利稼は男のお尻に興味ないもん」
「へー、透はあるんだ」
両手を取り合い、向かい合ったま触らせて、触らせないって言い合った。周りにはバカップルがじゃれ合っているように見えてるかもしれないけど、楽しいからそんな事は気にしない。
「(凜愛姫は特別だよ)」
「(じゃあ……、元に戻れたら触らせてあげる。勿論、透も元に戻らないとダメだからね)」
「……」
「約束だよ♪」




