表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/110

03.09勘違いの末に

 糞っ、終わらない。このままじゃ納期までに終わらないぞ。徹夜も覚悟する必要があるな。

 姫神(ひめがみ)は……、ふん、寝てるのか。この所毎日こうだ。

 偶然手に入れた姫神(ひめがみ)太原(たはら)部長の密会現場を押さえた写真。実際には仕様調整の打ち合わせなんだろうが、こうして見ると、只のパパ活にしか見えないぞ。この写真のお陰で噂が広まりつつ有る。

 会長も動き出したみたいで、姫神(ひめがみ)は連日会長の尋問を受けているとか。どうだ、プログラムを書く時間などあるまい。

 この勝負、俺の勝ちだ。


    ◇◇◇


 『ああ、その件ならだいぶ前に(とおる)ちゃんが納品してくれてるから、もう必要無いわよ? (とおる)ちゃんから聞いてないの? 同じ学校だっていうからてっきり……。そうだ、正清(まさきよ)君との打ち合わせなんだけど、暫く無しでいいかなあ。お願いしようとしてた案件もあったんだけど、(とおる)ちゃんが全部受けてくれるっていうからお願いすることにしたの。じゃあ、今(とおる)ちゃんと打ち合わせしてるからもう切るね』


 納期より少し遅れてしまったが、漸く完成した。それを井川(いかわ)さんに報告しようと思ったのだが……

 俺は無駄に徹夜させられてたというのか、あの女に。

 しかも、俺から井川(いかわ)さんとの逢引の機会を奪うとは……


 いや、待てよ……

 火神(かがみ)との恋路を邪魔し、今こうして井川(いかわ)さんとの恋路をも邪魔しようとしている。

 ……そうか、そうだったのか。だったら素直にそう言えば良いものを。

 嫌いではないぞ、お前のその容姿。その容姿なら元は男だったってことも無いんだろうしな。

 セフレ募集の件も、中木(なかぎ)に対する嫌がらせの件も、全ては亀島(かめしま)猿田(さるた)御竿(みさお)による陰謀だった事が示された。姫神(ひめがみ)はそんな奴じゃ無いんだ。まあ、俺は解っていたんだが。


 それより……

 俺は何ということをしてしまったんだ。俺を慕ってくれている女になんということを……

 急いで撤回せねば。この際、俺の勘違いだったって事でいい。お前の為に泥を被ってやろうじゃないか。


    ◇◇◇


 「姫神(ひめがみ)、ちょっといいか」


 「うげっ、火無(ひのない)……、勝負の事なら僕の勝ちだと思うけど?」


 「そうだな。まあ、そんな事はどうでもいいんだ。ちなみに、俺は正清(まさきよ)なんだが」


 そうか。俺の名を呼ぶのを恥じらって……、だから火無(ひのない)なんて呼んでたのか、こいつは……


 「じゃあ、お前の仕事を奪ったことか? だったら謝るつもりは無いから。お前の所為であんな思いを」


 ああそうだとも。俺の所為で辛い思いをさせてしまったな。


 「全部俺が悪かった。済まない」


 「……やけに素直だな。なんか気持ち悪いんだけど」


 解っているぞ。照れ隠しなんだろう。でも、もういいんだ。お前の気持ちは解った。さあ、飛び込んでこい、この胸に。

 俺は両手を広げ、姫神(ひめがみ)を迎える。


 「愛してるぞ、姫神(ひめがみ)


 「キモッ……」


 「人目を気にする必要はない。自分の気持に素直になるんだ。さあ……」


 一歩、姫神(ひめがみ)の方へと踏み出す。

 姫神(ひめがみ)は……、一歩後ずさるだと?

 もう一歩踏み出す。すると姫神(ひめがみ)も更に後ずさるではないか。そうか、人気のない所へ誘導しようというのだな。いいだろう、応じようじゃないか。この恥ずかしがりやさんめっ。

 俺は一歩、また一歩と姫神(ひめがみ)に迫る。まるで追い込んでいるような錯覚に陥るが、そうではない。これは姫神(ひめがみ)が誘導しているのだ。これは姫神(ひめがみ)の意思……


 「正清(まさきよ)さん、何をしているんだい?」


 武神(たけがみ)だ。何故か頬を引きつらせているが……、そうか、嫉妬というやつか。


 「見苦しいぞ、武神(たけがみ)姫神(ひめがみ)の事は諦めろ。こいつは俺が幸せにしてみせる」


 「何を言っているんだ君は……」


 青筋まで立てやがって、そんなにこの女の事が……、だが悪いな、武神(たけがみ)


 「(とおる)さんが嫌がってるのが解らないのか」


 「何を言っている、これはただの照れ隠しで……」


 言われてみれば姫神(ひめがみ)が怯えているようにも見えなく無いが……

 ああ、こんな表情までもが可愛く見える。

 だから、更に一歩、踏み出した。


 「貴様、(とおる)さんに何をっ!」


 ほんの一瞬だが、俺の体は重力から開放された。世界が回転し……、何回転したんだろうか。気づけば天井が見えていた。

 水色のストライプ……

 姫神(ひめがみ)、無防備すぎるぞ。俺の前だけにしとけ……よ……な……


    ……

    ……

    ……

    ……

    ……


 「黒のTバック……」


 「はぁ、私のパンツで興奮できるんなら大丈夫だろう。さっさと起きな」


 「水色のストライプはどうした」


 「最低だな、君は。(とおる)さんなら帰ったよ」


 「たーけーがーみー、お前もやり過ぎだぞ」


 「済みません、ついカッとなってしまい」


 このハイヒールは保健の――


 「うがぁ」


 「いつまで見てるつもりだ」


 「やめろ、顔を、ぐぉ、踏むな」


 「しかし、校内で堂々とスカート捲りとはなぁ。今時小学生でもやらんぞ。まあ、処分は覚悟しとくんだな」


 「俺が……、スカート捲りだと?」


 「自分で言ってたろ、水色のストライプってやつだよ」


 あれは単なる偶然で……

 何だ、周りの目が冷ややかだ。やったのか、俺が……、姫神(ひめがみ)のスカートを……


 「見損なったよ、正清(まさきよ)さん」


 武神(たけがみ)、そんな目で俺を見るな。俺は何もしてない……よな……


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ