02.12.亀と猿と竿と
授業料が免除になるだけじゃなくて、教材費や課外学習の費用、それに修学旅行の旅費までも学校が持ってくれる。そんな制度を見つけて今の高校を受験した。
でも、ギリギリだ。何とか特選に入ることはできたけど、私の後ろにはルッチしか居ない。あー、ちなみにルッチの名前は猿田 琉花。琉花の “る” じゃなくて、“猿っち” から取ってルッチね。“猿っち” って呼ぶと嫌がるし。
ルッチとあーしは似たような境遇だ。あーしには父親がいないし、ルッチには母親が居ない。生活もギリギリで、入学早々バイトしないといけないところも。そう、似た者同士で転落候補だ。
特選に残るには順位を上げないといけない。下位二名は2組に降格。そうなったら授業料も半額自己負担。教材費や旅費は全額自己負担となる。あーしの家にそれを払う余裕はない。もともと高額だから。
なのに、呑気に弁当用の食材買い出しとか……
無駄に女子力高くて、周りからチヤホヤされて、隣なのにあーしの名前なんて覚えてもない。こんなのがあーしらより上に居るなんて……ムカつく。
「ねえ、ほんとにやるの、こんな事。信じるのかなぁ、こんなの」
「大丈夫よルッチ、ビッチの弟なんだから。それに、報酬だってもう払ったんだから。今更止める気はないわ」
「報酬って、まさかお前」
「何よ、自分の女にでもしたつもりだったの、御竿」
こいつは御竿 立也。順位は私の1つ上。あいつのセフレ募集の落書きさせるのに雇った縁でこうしてつるんでるんだけど、はっきり言って使えない。なのに報酬ばっか要求してくるし、挙げ句に他の男とは寝るなとか言いたいわけ? こんなことなら、最初から全部亮太に頼めばよかった。
「とにかく、あーしらが居ない間に亮太がばら撒く事になってるから、あーしらはあーしらのやる事をやるだけ」
何が何でも特選に残らないといけない。そのためだったら何だってする。他人がどうなろうと知ったことじゃないし、必要なら好きでもない男とだって寝る。
どんな顔するんだろうね、自分の所為で大事な弟が嫌な思いとかしちゃったらさ。そう、これは全部あんたの所為。あんたがとっとと学校辞めないから。
◇◇◇
ブートキャンプ初日の夜。
「(いい、あーしが塚田の気を引いてる間にあんたたちはアレを買ってきて)」
「(本気なの? ゆっきー。死んじゃったりするんじゃ……)」
「(死んでんのは1%みたいだから平気でしょ、若いんだし)」
正直、若いかどうかは関係無いんだろうけど、どうでもいい。死んでくれたら手っ取り早く1席確保できるしさ。
「(でも……)」
「(嫌ならルッチが塚田の足止めする? あーしだってあんなおっさんと寝たく無いしさ。いいよ、それでも)」
「寝るってお前、また――」
「(声がでかい、役立たずっ。あーしとヤりたかったら少しぐらい役に立ったらどうなの?)」
各クラスの見回りは担任の役割。だから、塚田さえ押さえれば他の奴が見回りに来ることはない。そのスキに途中にあった直売所みたいな所でマムシを買ってこさせる。それを1班のバッグに忍ばせればあいつの弟は……
他の奴ら? 関係ない。最近なにかとあいつの味方しようとしてるし、誰が噛まれても問題ない。全部お前の所為だ、姫神 透。
「(話は終わり。さっさと行ってきて)」
「(う、うん)」
「(解った……)」
さて、あーしもヤんなきゃ。さっきあいつを誘ってたみたいだけど、断られたんだろう。何か怒ってたからな。まあ、裸のJK居たら放っとかないと思うんだけど、おっさんなんて。
「先生……」
「どうした、亀島……、おい、何してる」
ほら。『何してる』とか言いながら視線はあーしの胸に釘付けだよ。まだ脱ごうとしただけなのにさ。
「あーし、先生の事が……」
「と、取り敢えず、入れ」
ふん、楽勝。上手くやれよ、ルッチ、御竿。




