08.23.【徒話】示談その2
「またアンタか……」
「これも仕事でしてね。では、前置きは抜きにして、この金額でいかがでしょうか?」
提示されたのは500万。前回同様、不祥事を揉み消したいのだろう。
今回は伊織が拉致されたが擦り傷を負った程度、とはいえ、こんな事が何度も続くようでは……
「次はないと、約束できるのか?」
「無論ですとも。局部にあれだけダメージを負ったのです。当人たちも後悔しているでしょうから」
スタンロッドといかいったか、透が犯人の局部を焼いたんだとか。いい気味だ。
「それに、今後は常に居場所を把握できるよう、管理、監視を強化すると当主も申しておりますのでご安心下さい」
安心しろ……か。あてにならないがどうせ刑務所にぶち込む事なんて出来ないんだろうしな。せめて、この金だけでももらっとくか。
「わかっ――」
「その監視、ちゃんと出来てるって確認させてもらってもいいかなあ」
「では定期的にレポートを――」
「ううん、そんなの幾らでもでっち上げられるじゃん」
「では、どうしろと?」
「僕に直接確認させて」
「システムにアクセスさせろと……」
「そういうこと。ついでにちょっとだけマシンリソース使わせてもらったり? こんなことやらかした十六夜 グループのリソースだってのはいまいちなんだけど、逆に繁華街にそれなりの数の監視カメラが入ってるし、他にも十六夜 グループもセキュリティ入れてる所があるから、結構な範囲の情報が得られそうなんだよね~」
「なるほど。それで、入手した情報の利用目的は?」
ああ、そうだ。俺も気になる。透のやつ、そんな情報どうする気なんだ?
「別に犯罪に使おうとか考えてるわけじゃなくてさ、ほら、僕ってミス高天原だったりするわけじゃない。今回みたいに無理やり襲ったりってのは流石に無いんだけど、ストーカーされたり、待ち伏せされたりって事はよくあるんだよね。予めそういうのが分かってたら変な事件に巻き込まれなくて済むからさ」
「……いいでしょう。どの道、断った所で既に侵入されているのでしょうから、正式に契約を結んでおいたほうが安全でしょうからね、我々としても。聞けば、高天原高校のセキュリティシステムの管理をされているのだとか。我がグループともコンサルタントという形でいかがでしょうか? 勿論、システムの管理者権限はお渡しできるよう調整させていただきます。コンサルティング料の方はご期待に添えないでしょうが、Win-Winの関係ということで」
透の奴、マンション借りてくれとか言うからまさかと思ったが、俺より稼いでるんじゃないだろうな……
「管理者権限までもらえるのか。うん、それだけで十分」
「ただし、犯罪行為は無しでお願いしますよ」
「どの口が、って言いたいとこだけど、分かってるって。あくまでも自衛目的だから安心して」
「では、その件はまた後日ということで。示談の件も提示させて頂いた内容でよろしいでしょうか?」
「うん。問題ない」
まったく、転んでも只でも起きないってのはこういう事か。友達も出来なくて心配してたんだが、いつの間にか逞しくなりやがって。
「なろう」と「カクヨム」の両方にアップするのが面倒臭くなってきたので、「カクヨム」に一本化しようと思います。
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