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シンデレラのハッピーエンド  作者: 読み専
第一章 幼少期編
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雨宮桧璃、明日から学生になる。




 入学式前日の夜。


 寮に入った桧璃は、久々のベッドで寛ぎながら明日の入学式に想いを馳せつつ、今までを振り返っていた。



「明日からゲームスタートか……。このゲームが『主人公最強』タイプで本当に良かったわ〜。じゃなきゃ私、きっと貴族に引き取られて1年も持たずに死んでただろうし。」


 今までお世話になった魔法の数々を思い浮かべていると、ふとある事を思い出した。


「そういや、魔法の属性が判って使える様になるの、本来なら明日の入学式後なのよね…。ゲームの知識として属性は知ってたし、随分と活用してたから、『明日から魔法が使える様になる』って言われてもピンと来なかったけど…。

 既に使いこなしていることは隠した方がいいわね。適正の高さと魔力の制御は別だし、きっと誤魔化せるでしょ。

 それに、義兄(にい)様と義姉(ねえ)様は『私より自分が劣っている』なんて誰かから言われたら、きっと私を半殺しから下手すりゃ瀕死になるまで攻撃してくるだろうし。」


 以前に、家庭教師が行った抜き打ちテストで私の方が点数が良かった時を思い出す。


 あの時は、まだ義兄(あに)義姉(あね)の学力を把握し切れておらず、加減したつもりがまだ足りなかった様で、結果に10点程も差をつけて私が勝ってしまった。

 その日、私は家庭教師に褒められて、それを見ていた義兄(あに)義姉(あね)から、半年は満足に動けない程の大怪我を負わされた。


 その頃はまだ魔力の制御が不完全だったので、逆に悪化させてしまう可能性があり、回復魔法をかけられなかった。

 その為、背中に鞭で打たれた痕を始め、火傷や刃物で斬り付けられた痕が残ってしまっている。


 回復魔法は万能では無いので、一度自然治癒で治った後に残ってしまった痕を消すことは不可能だ。痕を消すならば、其処にもう一度何らかの傷を負わなければならない。


 魔法に「痛覚無効」はあるが、態々自分を傷つけてまで痕を消したいわけでは無いので、ずっと放置している。

 それに、消せない理由もある。


「流石に、あんま痕を残すのは嫌だけど、幾らか残しておかないと魔法が使えるのバレるし、結構あちこち傷跡塗れなのよね。おかげで、真夏でも長袖に踝までのロングスカート。暑いったらありゃしない。いい加減『自然治癒しました』って事にしたいけど、変態な義兄(にい)様が、定期的に下着姿を殴ったり鞭で打ったりしながらスケッチしてくるのよね。スケッチしつつ、『コレはあの時に僕がつけたヤツ』とか一々言ってくるし、急に痕が消えたら絶対に気づかれる。はあ、アイツらから離れられるまではこのままか……。」


 ゲーム内でのイベントで、「スケッチするシーンを攻略対象に見つかって男爵家での扱いを暴露する」なんてものがある。


 つまりは、学園内でも何処かに呼び出されてスケッチされるのが確定しているのだ。

 傷の位置と出来た時期、理由を全て記憶されているのに、傷痕が減ったのに気づかないわけが無い。少しずつ薄くも出来ず、傷を上書きして回復魔法を使ったら、一瞬でまっさらな肌になる。加減が出来ないのだ。

 よって、攻略対象に助けて貰うまではこのままとなる。


「傷はいいとして、問題は攻略対象を攻略できなかった場合よ!

 バッドエンドだと、男爵家を抜け出した後に露頭に迷って野垂れ死ぬか、屋敷で義兄(あに)から嬲り殺しにされるか、悪役令嬢に嵌められて処刑されるかの三択なのよね……。

 ノーマルエンドでも、豚みたいな貴族に嫁がされるか、一般市民になってホームレス一歩手前の生活を送りつつ娼婦の真似事で食い繋いで生きるか、超絶ブラックな貴族のメイドとして扱き使われるか、って感じだし。

 バッドエンドとの差が、エンド後に直ぐ死ぬかある程度生き長らえるか位しか無いとか、マジでふざけんなっ‼︎って感じだよ、もー!」


 ベッドの上で枕に八つ当たりしつつ文句を言う。


 ハッピーエンドは、私的にハッピーとは言い難いので、一番私にあっていると思わしきエンドがある隠しキャラルートに進むしかない。


 メインのルートのハッピーエンドは、成り上がりなだけあってヒロインが王妃になって「めでたしめでたし」となる。でも、「私はそんなキャラじゃない」という事は理解しているし、身の程も弁えている。

 それに対して、隠しキャラルートだとバッドエンドを除き、ヒロインが隠しキャラと隠居するところで「めでたしめでたし」となるのだ。こういう感じのエンドの方が私好みだし、今まで殺伐とした生活を送っていたので、せめて結婚後はスローライフとしゃれ込みたい。


 そんな私を嘲笑うかのように、隠しキャラルートの条件は鬼畜で、製作者の「簡単に幸せなんて掴ませてたまるか!」という意気込みが透けて見えるようだった。


 プレイ中、何度「お前ら、このヒロインに何の恨みがあるんだよ‼︎」「もしや、ドSなのか!?可愛い子には難易度高めの旅をさせたいタイプなのか!?」「攻略対象に理想詰め込みすぎてヒロインとくっ付くのに嫉妬か!?オイ!!」等と叫び、コントローラーを投げつけた事か‥‥‼︎思い出すと泣けてくる。


「それから私、このゲーム内に推しキャラ居ないんだけど!って言うか、推しキャラ自体居ないんだけど!好きでもないキャラを攻略とか嫌よ!だったら新規ルート開拓する方がずっとマシよ!」


 だが、悲しきかな、救われる可能性は新規ルートより、既存のルートの方が確実に高い。

 それでも、メインのアルカイックスマイルがデフォルトで「The王子様」な第一王子や、ツンデレでブラコンの第二王子、クーデレでブラコンの第三王子は好みでは無い。隠しキャラが追加されたらしいが、その頃には別ゲーのキャラを攻略中だったので情報が無い。


 攻略対象キャラか、新規ルートか。

 どちらを選べば良いのやら、さっぱりわからない。

 そもそも、前世であんな思いをしてきたし、今世でも親以外から好かれる事なく生きてきた私に、男の人を落とすことは可能なのだろうか?

 演技はこの生活で慣れたが、人に好かれるような演技はやったことが無いし、理想を言えば素の私を好きになってもらいたい。



 桧璃は、ウンウンと唸りながら眠りに落ちて行った。




ありがとうございました。


次回は、登場済みのキャラ紹介にする予定です。

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