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シンデレラのハッピーエンド  作者: 読み専
第三章 学園編 ー2学期ー
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風間桧璃、決意する。

速報【桧璃ちゃん、病む!】

速報【桧璃ちゃん、病む!】

速報【桧璃ちゃん、病む!】


…どうしてこうなった!?




 ガタガタと、学園へ向かう馬車が揺れる。

 既に荷物は寮へ送ってあるので、今は制服のみだ。


「お嬢様、何かございましたら、直ぐに私にお申し付けくださいね!お嬢様はなんでもお出来になるので、私の仕事を残してくださらないかも、と心配でなりません」


 エミーは、私に仕事を取られまくった1番の被害者だった。

 「あの時は減給の危機だったんですよ?」と、今でもちょくちょく言ってくる。


「分かってるわ。もうしないから」


 苦笑を浮かべ、エミーの小言に答える。「本当ですか?」と訝しむフリをするエミーへ「本当よ」と返し、雑談に花を咲かせる。今世初の友達との会話はとても楽しく、あっという間に学園へ到着した。



「お嬢様、到着しましたよ。今日から特別クラスへ編入ですから、前の教室と間違わないように、お気をつけくださいね」


 エミーが茶化すようにそう言って私の背中を軽く押し、校舎へと送り出す。緊張による体の強張りが、少しマシになった気がした。


「もう、私はそんなミスしません。そういうエミーも、寮室を間違わないようにね?」


「私だってそんなミスしませんよ。……多分」


 エミーはいわゆる『おっちょこちょい』な女子で、公爵家でもたまにやらかして叱られていた。やらかしやすい自覚はあるのか、『……多分』のところはこちらと目を合わせようとすらしなかったので、つい笑ってしまった。

 そんな私を、「お嬢様!」と、咎めるような声でエミーが呼ぶ。


「ふふふっ。なあに?」


 笑いが止まらないままそう言うと、エミーは少し泣きそうな顔をして、


「…いえ、なんでも御座いません。行ってらっしゃいませ」


 と、一礼して私を送り出してくれた。


「…行ってきます」


 私は私で、少し視界が歪んでしまっている。


 前世を含めて、今まで生きてきた中で、公爵家に引き取ってもらって以来が一番涙脆いと感じる。赤ちゃんの頃以上に、ちょっとした事で涙が溢れてしまう。もう、悲しくも辛くもないというのに。

 『嬉し泣き』という概念をいまいち理解していなかった私は、祖母からの何気ない一言でいきなり泣き出してしまった時、とても混乱して、それこそ赤ちゃんみたいに泣きじゃくってしまった。


 私は、私の存在を肯定するような言葉を、心配するような言葉を、『ありがとう』という感謝を、『いってらっしゃい』の一言を、長年求め続けていた。


 ひたすら勉強を頑張れば言ってもらえるかもしれない。

 愛し続ければ言ってもらえるかもしれない。

 尽くし続けていれば言ってもらえるかもしれない。

 みんな平等に与えられていた、無償の愛情を、真綿で包まれるような愛を、与えてくれるかもしれない。


 それらの『かもしれない』をひたすらに盲信して。

 気まぐれに与えられた愛情を、大切に少しづつ削るように消費して理性を保って。

 時折乙女ゲーム(作り物の愛)で足りなくなった分を補って。

 カツカツな中、ギリギリのやりくりを繰り返して。

 足りなくなったら、完全に逃避する術を身につけて。


 そしてようやく、私が居ても良い場所を見つけた。「居て欲しい」と言ってくれる人を見つけた。


 だから私は、その居場所を、居場所をくれた人たちを、悪役令嬢達()から守らなければいけない。

 私は、私を公爵家から引き離そうとする人達(王家)を、私の幸せを無視して陥れようとする人達(悪役令嬢達)を、私が使える力全てで以って排除しなければいけない。


 私がチート持ちで生まれたのは、きっとそのためだと思うから。




 「今日から特別クラスに編入いたします、風間桧璃と申します。至らない点も多いと思いますが、これからよろしくお願いいたします」


 教室へ入ると、精一杯の笑顔を作り(仮面を被り)、血の滲むような努力で手に入れたカーテシーを披露する。




 さあ、学園生活(決戦)の始まりだ。




ありがとうございました。

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