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シンデレラのハッピーエンド  作者: 読み専
第二章 王宮呼び出し編
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雨宮桧璃、公爵家の一員になる。

パワフルなおばあちゃんと寡黙なおじいちゃんの正式な孫になる、という回です。




「雨宮様。本日は、午後から公爵家の方と面会の予定が入っております」


 晩餐会の翌日。メイドさんに隅々まで磨き抜かれ、いつもの倍はキラキラしている気がする自分の顔を呆然と眺めていると、予定を伝えにきた侍女さんからいきなり爆弾を投下された。


 驚きすぎて、その後どう返事をしたのか、予定の時間まで何をしていたのかの記憶が一切ない。

 が、今言えるのは、予定の時刻ちょうどに現れた、想像以上に溺愛気質の祖父母から揉みくちゃにされている、と言うことだ。


「あ、あの!苦し、です!ちょっと、離し、て、ください!」


 窒息寸前で、強く抱きしめてきていた祖母の腕をタップ。祖母は、名残惜しそうにゆっくりと腕を解いてくれた。


「ああ、ごめんなさいね、桧璃ちゃん。私ったら、孫に会えたのが嬉しくって、つい」


 テヘペロ★とでも言いそうな感じのとぼけ方を祖母がする。


「い、いえ、別に構わないのですが…もう少し、加減をして頂けたらな、と」


「ええ、次からはちゃんと気をつけるわ。

 …桧璃ちゃん、迎えにくるのが遅くなってごめんなさいね。雨宮男爵から酷い思いさせられてたって聞いて、いてもたってもいられなくって…。目覚めたばっかりなのに、無理させてないといいのだけれど」


 シュンとした表情をされると、今世であまり人と関わってこなかった分、どうしていいか分からなくなってしまう。


「えっと、あの、…お、おばあ様!と、お呼びしても…宜しいですか?」


 家族というものについては、前世含めよく分かっていないから、手探りで落とし所を見つけていくしかない。今、目の前で落ち込ませてしまった血の繋がった祖母に、元のように明るい雰囲気に戻ってもらうにはどうしたら良いのか必死に考えて、辿り着いたのが呼び方から歩み寄る、という事。これで喜んでもらえなかったら、私にはお手上げだ。私と顔を合わせてから難しい表情で黙り込む祖父に、丸投げするしかない。


「……『おばあ様』…良い!良いわね!そうして頂戴!!改めまして、桧璃ちゃん、これからよろしくね。

 今、あなたを引き取るための手続き中なのよ。終わり次第、私たちの屋敷に住んで欲しいのだけど、大丈夫かしら?何か、王宮内で約束とかしてない?あ、大丈夫なようなら、帰りに買い出しに行きましょう!あなたのドレスとか、用意したいのよ。本当は用意してから迎えに来たかったのだけど、サイズが分からないからオーダーメイドどころか既製品すら買えなかったの」


「お前……そのくらいにしておけ。桧璃嬢が困っているだろう」


 祖母のマシンガントークの勢いに気圧された私は、もう「はい」「大丈夫です」「そこまでしてもらう訳には…」と3パターンを小声で言うしかできなかった。それを見かねたらしい祖父が祖母を止めてくれなかったら、私はずっと、曖昧にゴニョゴニョと口を動かすだけの人形に成り果てていただろう。


「えー。もう、あなたってば酷いわ。私は桧璃ちゃんを困らせてなんかいませんよ。

 ねぇ、桧璃ちゃん?」


 こちらに話を振らないでほしかった。でも、ここで我慢するのも家族としては不正解だろう。


「…すみません。できれば、もう少しペースを落として話していただければ助かります」


 素直に意見を言うのは、まだちょっと怖い。でも、幼い頃に今世の母が教えてくれた優しさを覚えているから、雨宮家や前世のような家族が正しいものではないことは知っているから、なんとか()()ずに意見を言うことができた。


 厳しそうな印象が拭えない祖父だが、私の意見を聞いて機嫌を悪くする様子はない。祖母も、気を悪くしてはいないようだ。

 これでさえ、堕ちる堕ちないのギリギリのラインで綱渡りをしているようなもの。これ以上の自主性を見せられるのはいつになるか分からない。でも、今世の両親のおかげで、前世より十分マシな精神状態を保てていると思う。


「そう…ごめんなさいね。私、昔から興奮すると早口になってしまう癖があって。

 なるべく気をつけるけど、どうしても早口になってしまうことがあると思うの。その時は、桧璃ちゃんから言って止めてくれると助かるわ」


 申し訳ないが、今の私にとって非常に難しいことだと思うので、謹んで遠慮させていただきたい。でも、ここで断っても堕ちそうな気がする。八方塞がりとはこのことか。ここは、祖母を止められる唯一の人物らしき祖父にアイコンタクトで訴えるのが最善かもしれない。


 が、祖父にそっと視線を向けても、祖父がこちらを見ていないのでそれは不可能らしいことが窺い知れた。

 …腹を括るしかなさそうだ。でも、いい練習になると思えば、それも悪くないかもしれない。私のメンタルに対するリスクが高すぎるのが玉に瑕だが。


「…は、い。そうさせて頂きます。

 …これから、よろしくお願いします。おじい様、おばあ様」


 ぎこちなくだが、自然に頬が笑みを形取っているのが分かった。笑みの不恰好さが恥ずかしくて、顔を隠すように深く頭を下げる。

 そんな私に目線を合わせるように祖父が屈み込み、そっと私の肩に手を添える。


「これから桧璃嬢は、我が風間公爵家の一員だ。何か、困ったことがあったら言いなさい。できる限り力になろう。

 …きっと、桧璃嬢は王家に嫁として迎え入れられることだろう。前代未聞の魔力の強さを誇る貴女は、政治の駒として使われる。自由は、この学生の間しか与えられまい。短い学生生活で自由を満喫できるよう、精一杯援助する。遠慮なく甘えてもらって構わない。今まで辛い思いをさせた分、桧璃嬢の母(あの子)の分まで、幸せにしてみせる」


 祖父がずっと仏頂面だった理由が、ようやく分かった気がした。きっと祖父は、母が望んだ相手との結婚を却下したせいで、私の両親や私が不幸に見舞われる羽目になってしまったと思い、自分を責めていたのだろう。祖母も、どこか無理しているように見える明るすぎる笑みには、同じような理由があるのだろう。

 つまり祖父母は、母が若くして亡くなったのは私や私の父のせいだ、と責任転換しなかった。

 祖父母は、母の行い(かけおち)を恥と断じないでくれた。私への歓迎は、きっと偽りがない本心からのもの。


 私を、道具以外の、同じ人間として見てくれる人がいる。両親がいた頃には当たり前のことでも、今の私にとっては、他のどんな事よりも嬉しかった。


 祖父の瞳には、歪に微笑んだまま涙を流す私が映っていた。




ありがとうございました。


次回と次々回に閑話と登場人物紹介を挟み、本編に戻ります。


そろそろ予約投稿に追いつきそうでヒヤヒヤしている今日この頃です。冬休みに精一杯頑張ろうと思います。

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