雨宮男爵、登城する。国王陛下、罰を下す。
ちょっとざまぁな回です。
雨宮男爵side
国王陛下に呼び出された私は、スピードの出しすぎで乗り心地が最悪な馬車に揺られ、王宮へと向かっていた。
きっと、入学式後に行われる魔法属性の適性鑑定であれの才能を目にし、呼び出すことになったのだろうが………何故だか、嫌な予感が止まらない。本能が、「今すぐ逃げろ!」と訴えかけている様な…。
どちらにしろ、国王陛下からの呼び出しを無視する事はできない。何事もなく終わることを祈るばかりだ。
約1時間も揺れの凄い馬車に揺られ、ようやく到着した王宮。普段は到着後に30分以上は待たされるのだが、今回は10分も待たされる事なく、謁見の間に案内された。
こんなに早く案内されることなど、今まであっただろうか?義娘をあの孤児院から貰い受けたあの時の私の判断は、これ以上ないまでに正しかったようだ。壊さないよう、気を使い続けた甲斐があった。
これからいただくであろう、国王からの讃美などを思うと、だらしなく頬が緩んでしまいそうになる。
……………未だ、嫌な予感は消えていないし、謁見の間へ近づく度、より悪化している。でも、きっと気のせいだろう。私に刑罰が下されたり、叱責を受けたりするような理由は無いのだから。
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国王side
男爵が王宮へ到着したのは、桧璃嬢が登城して2日後の事だった。
桧璃嬢は、泣き疲れて眠りについて以来一度も目覚めていない。その事実が、長い間桧璃嬢へ酷い仕打ちをしていた雨宮家の者への私の怒りを加速させる。
執務中に訳もなく文官達を威圧してしまい、書類を受け取った彼らは皆逃げるように執務室を後にしている。
ようやく、今日の男爵登城の知らせを聞き、一気におどろおどろしい雰囲気になった私を見た不運な文官は、哀れにも気絶してしまったらしい。…後で、私の名で謝罪の品を持っていかせようと思う。
謁見の間に着き、次いで入って来た雨宮男爵へ向け、前置きを言わせる間も無く口を開く。
「雨宮男爵、義娘の桧璃嬢について、話がある」
あくまで不機嫌は内に隠し、普段通りをなんとか装う。だが、隠し切れていなかったらしい。雨宮男爵は、開口一番に、
「国王陛下、もしや、灰…ゴホンッ桧璃が、何か失態を犯してしまったのでしょうか?」
と、聞いて来た。
「いや、彼女はなんの失敗もしていない。」
私の返答に、男爵は怪訝そうな顔をした。
それ以外に、私が怒りを覚える理由がないと思っているらしい。可笑しくて、思わず笑いそうになった。そこまで、頭が悪い生き物だったとは…まったく、私を笑い殺すつもりか?
「雨宮男爵、私が王位を譲られる数年前に、ある、社交界の華と呼ばれた公爵令嬢が対立する家の公爵子息と駆け落ちしたことを憶えているか?」
雨宮男爵は、私の話が今回の呼び出しと繋がらないのか、しきりに首を傾げている。
「え、ええ、憶えてはおります。ですが、そのお話は今回の呼び出しとなんの関係が…?」
「彼らは、今から11年前の馬車の事故で亡くなるまで庶民として暮らし、亡くなる約5年前に一人の女の子を授かっている。その娘は両親を亡くした後、雨宮男爵領の孤児院へ身を寄せたらしい。」
ここまで告げると、なんの話か合点の言ったらしい男爵の顔に、焦りが浮かんだ。
「桧璃嬢は、5歳まで両親といたが馬車の事故で天涯孤独になり、孤児院に身を寄せていた。そして、かの社交界の華と呼ばれた公爵令嬢と似た容姿、色合いをしている。……公爵一家は、駆け落ちまでした彼女の名を未だ抹消しておらず、探し続けている。『生きていないのならば、せめて唯一の連絡で存在を知った忘れ形見だけでも』と、血眼になって、な。
さた、賢い雨宮男爵のことだ。ここまで言えば、何故自分が呼ばれたのか、何をしまったのか、理解はできただろう?」
言い終えて見た男爵の顔は、正に蒼白という言葉がぴったりだった。知らなかったとはいえ、爵位が圧倒的に上の存在である公爵家の探している御令嬢を家族全員で虐待、暴行してきたのだから、当然と言えよう。
桧璃嬢引き渡しの時に知られたら、社交界から爪弾きにされるどころか、多額の賠償金を支払うことになる。カツカツな雨宮男爵家では、到底払い切れないほどの金額を。
だが、そんなものでは終わらせない。
不正を犯したり民に重税を課して散財に耽ったりする腐った貴族が最近増えており、そんな奴らを一網打尽にするべく色々と証拠を集めていた。その証拠は、雨宮男爵の不正や悪行についても揃っている。他の貴族の証拠で揃い切っていないのもあり、まだその時期ではない、と機会を探っていたが、幼なじみの忘れ形見にされた所業を思うとそんな物はどうだって良くなった。
確かに、証拠が揃い切っていない今、雨宮男爵を処分すると、他の貴族の不正の証拠の守りが固く、より掴みにくくなるかもしれないし、被害者への賠償が仕切れなくなる可能性もある。それでも最低限処分が可能なレベルでは証拠を掴んでいるので、いきなり兵を突入させて家宅捜索に踏み切れば問題はないし、見つからなければ飴と鞭を駆使して聞き出せばいい。
一人納得し、迷いを消すと、
「桧璃嬢への賠償金は確定として、それ以外の話もある。
雨宮男爵領の西の森にある複数の桜の木の下から計7人、桧璃嬢の居た孤児院出身で雨宮家に養子になった子供の白骨遺体が発見された。
どうやら、結構な待遇だったようだな?まだ大事には至っていないようだが、死に至る類の呪いが、彼らの恨みから発生している。
近年、呪い対策の魔法具の効きが悪くなってきたのではないか?その苛立ちと死への恐怖から、桧璃嬢への虐待などがどんどん過激になっていったと聞いたぞ?高い金を払って買ったら効果が見込まれなかった時には、飾り用の物とはいえ真剣で背中を切りつけたとか。
クビになった使用人から聞いてはいたが、想像以上に救い用のないクズだな。最早、情状酌量の余地は無いぞ。
魔法具と領地と爵位を没収の上、地下牢で終身刑だ。勿論、その無駄に付けられた宝飾品は没収だぞ。死ぬまで出られんのに持っていても意味はないし、桧璃嬢へ払う賠償金の足しにしなければ、な。」
雨宮男爵は、国王の一方的な話に鯉のように口の開閉を繰り返すばかりで一言も発すること無く、騎士に身ぐるみを剥がされ、地下牢へ連行されていった。
「桜の木の下には死体が埋まっていて、桜の木はその血を吸って花弁に色をつけている」
っていう迷信が元ですかね。
…………………雨宮男爵って、意外とロマンチスト?
ありがとうございました。




