雨宮桧璃、神の理不尽に少し憤る。
神(いるなら多分作者の私が該当するのでは?)Fuck you! by桧摛
な回です。
「うおっ!?なんだこれ!!?まぶしっ!」
教師の声に、慌てて持ってきてもらったより高性能な水晶を近くの棚の上に置く。
割れた水晶にテンパっている教師が正気に戻る前に指示を出し、何とか魔法属性の適性検査を行うことができたが、これからが問題だ。
本来、属性を調べないと魔法は使えない。属性を調べ、自分が持っている事をきちんと認識しないと発動せず、暴発するのだ。
だから、私が彼の目の前で魔法を使ってしまったのはかなりまずい行為に当たる。
どうしようかと迷っていると、案を思いつく前に教師が正気に戻ってしまった。
「い、今お前、魔法使ってたよな?…それに、あの光、めっちゃ強かったし、七色だった……よな?
………………はっ、ははははは!!マジかよ!今年は規格外が4人もいるっていうのか⁉︎しかもこいつは全属性持ちときやがった!!それに、魔力量も一般的な水晶じゃ測れないなんて事が学生如きで起こるなんてな!!おい!お前、名前は雨宮桧摛って言ったよな?この事は陛下に報告する。近いうちに呼び出されるだろうから、準備しとけよ」
いや、まだ若干興奮状態にあったようだが、一頻り話終えると私を一人残し、教室を走り去ってしまった。
さて、私は自分の教室への道順を知らないのだが、どうしたものか?
ーーーーー
通りかかった人に道を聞き、何とか時間内に教室に着いた。ホームルーム開始5分前だったので、かなりギリギリになってしまった。
授業は初日の為かなり簡単な説明のみで終わるらしいので、教師の言っていた事について考えることにした。
「規格外が4人も」
この言葉の人数に、私は覚えがある。
私を抜いて3人。社交界に疎い私の耳にも入ってきていた、3人の令嬢の噂。
3人の王子達の婚約候補者で、この世界では悪役令嬢に当て嵌まる二人の侯爵令嬢と一人の公爵令嬢。
家柄や立ち居振る舞い、教養は完璧で、属性を調べる前から魔法が使え、性格にさえ目をつぶれば文句の付け所は一切無い才女達。
嫉妬深い王子に懸想する令嬢達に、「あの御方々ならば仕方ない」と言わしめさせ、認められた3人。
おそらく、悪役令嬢となる彼女達は、私と同じ転生者だ。しかも、全員がゲームのストーリーを知っているらしい。
ゲームの過去編で起こっていたはずの悪役令嬢達の「やらかし」が起こらなかった事や、自身の魔法の属性を調べる前から知っていた事から、確定しているも同然だ。
幸運なことに、生前に読んだことのある悪役令嬢に転生した少女が主人公の話に出て来るビッチなヒロインの様に、この世界の悪役令嬢は性悪であるらしい。噂を聞く限り、ゲーム内の彼女達と性格は一致している。
現に、彼女達がご執心な王子達3人は彼女達へ良い印象を抱いていないらしい、という噂を時折耳にする。
因みに、そこに漬け込もうとして王子に擦り寄った令嬢は、悉く不審な最期を迎えたり、身体の外から見える箇所に痕が残る様な傷を負ったりしているらしい。傷は、国が抱える治癒専門の光属性の魔法使いでも一度では治しきれず、痕が残るような重傷である、と噂好きな義姉が言っていた。
そうなると、最早傷を治す方法など私が魔法を使う以外に無い。それも、もう一度傷を上書きしてから行うので、痛みを伴うこととなる。
それに、傷が治ると3人に知られては、今度は命の危機が待ち受けるだろう。やめた方が良いのだ。
犯人につながるような証拠すら未だに見つかっていないが、王子達の婚約候補者である3人の仕業であろう。ヒロインに似たような事をするシーンがあったので、それを参考に、より証拠が残りにくい方法を考えたのだと思われる。
全く、神も厄介な存在を用意するとは、私はとことん嫌われているらしい。前世といい今世といい、いささか試練が多過ぎやしないだろうか?
そろそろ私も幸せになりたい。安心して惰眠を貪れる生活を送りたい。
切実に、きっと叶えてくれないであろう神へ、私はそう、祈りを捧げた。
ありがとうございました。




