執筆なう
月光が照らす森の中、本来ならば静けさ漂う世界に静寂とはかけ離れた若い男女が居る。男の名前は釘宮幸人、性格に若干癖はあるも一般的な日本人男性。それに対する女の名前は夜々、黒地に金の着物を身に纏い美しい銀髪を肩から流している絶世の美女。そんな2人が騒ぎ問答する内容はとても幼稚な内容だった。
「だから本当に私は神様だと言っているではないですか!」
先ほどから自分は神様だと主張する銀髪の女、夜々。しかし、その主張は相手にまったく理解されないどころか同情されている状況だった。
「夜々、俺達はまだ若い。それでも流石にそんな遊びをしていいほど幼くもないぞ?そういうのからは卒業した方がいいと俺は思うぞ?」
夜々も意外と強情だなぁ、まぁ今までの自分を否定される様で必死なのかもしれないな。少し可哀想だけどここは心を鬼にして否定してやらないと本人の為にならないからな、頑張ろう!
「だぁかぁらぁ、どうして信じてくれないのですかっ!?私は中二病の可哀想な女ではありません!」
幸人は夜々が不憫なあまり溜息が漏れる、どうすれば相手を構成させられるだろうと真剣に考え込んでいた。その行為に対して夜々が再び吠える。
「溜息をつかないでください!もうっ!もうっ!終いには私泣きますよ!?」
しょうがない、ここは妥協案をだして問う回しにいくか。
「そうは言ってもなぁ、もし本当に神様だって言うなら何か証拠を見せてくれよ。もしそれに納得出来るなら信じる、逆に駄目なら諦めて頑張ろう?俺も手伝うからさ!」
「もう!馬鹿にしてっ!わかりました、見せてあげますよ神様の力を!」
夜々はそう宣言すると勢いよく手のひらを空に掲げた、幸人はその様子を何をするのかと眺めていると自身の目を疑いたくなる現象が生じる。掲げられて手の先に小さな光が幾つも生まれ、次第に収縮していくそれは最後には光の球体となり落ち着く。その間夜々はどうだと言わんばかりにどや顔を幸人へ向けていた。
「どうですか!?こえでもう信じるしかないでしょう!」
、、、まじか。え?違うよな?きっと何か仕掛けが。
幸人は顔を引きつらせながらも否定をする。
「は、はは。夜々は手品が得意だったのかぁ、すごいなぁ」
「そうですか、意地でも信じないつもりですね?いいでしょう、いいでしょうとも。私の本気をお見せしましょう。ちなみに認めるなら早くするのをおすすめします、じゃないとまた死にますよ?今度は塵一つ残らずに」
夜々は不適に笑いながらも再び掌を空へ掲げた。そこには先ほどの光ではなく小さな塵の様な物が収縮している様に見える、それは次第に固まり拳大の石に形成されていく。収縮は止まらず石の大きさは増し直径一メートルを超えた程で勢いを増した。
「ふふ、釘宮幸人さん。ここからが本番ですよ?」
夜々が喋り終わると同時にもはや岩といえる物は掌を離れ、ゆっくりと上空へ上がっていく。その間も岩は大きさを増し続ける。数秒後には岩は山と言っても過言ではないほどの大きさとなり、空の月を覆い隠した。背後から月の光が漏れる様子は月食によく似ているそれを見上げる幸人、目の前で起きている現実に驚きのあまり開いた口が塞がらずにいる。
「信じないのが悪いのですからね?私は悪くありませんからね?ふふ、、ふふふふ」
不適に笑う夜々が掲げた手を前へと降ろす、その動きにつられ夜空に塊が前方へ落下を始めた。向かう先は現状を飲み込めずに居る男、そんな幸人も眼前に迫る死に正気を取り戻す。
ヤバイって!これは死ぬだろ!どうする、どうする、どうすればいい!?、、、、ん?なんかあの塊遅くないか?
幸人の気のせいでもなんでもなく、塊の速度はかなり遅かった。迫り来る迫力は大層な物だが速度に関しては人間の歩く速度と対して変わらない。
この速度なら問題ないだろ。
幸人は歩き出す。別段急ぐ事無く夜々へと向かうと塊の下を歩いて抜け、その行動に夜々は慌てだす。
「そ、それはなしです!ずるいです!」
夜々の眼前までたどり着いた幸人は相手の頭めがけてチョップで叱責する。
「こら、危ないだろうが。あんなの当たったら死んじゃうぞ?わかってるのか?」