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我侭な元死刑囚は異世界へ  作者: 藤華 井近
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第一話 銀髪の和装美女

皆さん初めまして!藤華井近フジハナ・イチカです!零話からの一話!流石に零話よりは長く書こうかと思ってます!てか零話がみじか過ぎましたね(笑)なにわともあれ第一話、楽しいんで頂けたら幸いです!

夜空。日の無い空に三日月が浮かび、木々が所狭しと生える周囲の景色を薄っすらと照らしていた。そんな淡く静かな森の中、木々の隙間から月の光が差し込み地面に横たわる男を映し出す。そのまま何も無い時間が流れ数分後、男は身を包む夜と同じく静かに目覚めた。


「どこだ、ここは、、」


寝起きで重い身体をのそりと上半身だけ起こし、その場で胡坐を組む。周りを見渡せば木々ばかり、あとは地面にを覆う雑草位しか視界に映らない。男は記憶に無い景色に疑問を憶えはするが未だに寝ぼけたままの頭が上手く回ず、ただただ景色を首を動かし眺める。


「起きたのですね」


「うゎっ!!」


背後から唐突の声、予想だにしない事に思わず驚きの声が出る。男が後ろを振り返ると先ほどとは別種の驚きで言葉を言葉を失う。そこには黒と金で豪華な着物に身を包んだ美しい女が立っていた。無駄の無い細身な身体、完成された人形の様に整った顔に気が強そうに少し吊り上がっている赤みが掛かった瞳。染み一つの無い白い肌も目を引くが、何より魅力を感じるのは片方の肩から流している長髪。それはよく見る黒髪や茶髪ではなく混じり気の無い銀色で、月明かりが反射するその姿からは視線が外せない。


「あの、大丈夫ですか?」


銀髪の女は呆けている男を気遣い小首を傾げた、その言葉でようやく正気に戻り応える。


「ああ、大丈夫だ。少しぼおっとしていただけで問題ない」


「大丈夫なら何よりです。それでは釘宮幸人さん、早速ですがどこまで覚えていますか?」


銀髪の女の問の意味が分からない。男、釘宮幸人は首を傾げ考えるも答えが出ずに問い返した。


何のことだかさっぱりだ、というか名前読んだよな?こんな美人な知り合い居たか?


「わるい、質問の意味がわからない。憶えているって何のことだ?」


「何のことも何も、ここに来る前のことです。よく思い出してみてください」


「思い出す、ここに来る前?」


幸人は腕組をし考え始める。


そういえばどうして俺はここに居るんだ?確か俺は刑を執行されて。


「そうだ、俺は死んだ。死んだはずだ、、、え?じゃあ何で今生きてるんだ?」


自身の最後を思い出し戸惑う幸人、どれだけ記憶を手繰ろうと死んだことの先が思い出せない。疑問は焦りに繋がり、焦りが不安に変わった。額に手をやり蹲る、体中に嫌な汗が流れ始めた。


どうして、なんで、わからないわからない。いったいどうなってるんだ?俺は確かに死んだはずだ、なのにどうして、、、。


不安に溺れる幸人の頬に女が手差し伸べ、優しい声色で話しかける。


「落ち着いてください。思い出したようですね、確かに貴方は一度死にました。それでも今は生きている、まずその事を認め、認識してください」


女の言動に心が僅かに緩む、次第に落ち着き取り戻す。


こいつの手暖かいな、なんか落ち着く。そういえば今更だけどこの声何処かで聞いたような。


「落ち着かれましたか?」


「あぁ、ありがとう助かった。取り乱してごめんな」


「いえ気にしないでください、逆に自身が死んだことに取り乱さない方が変です。そおいう意味では貴方は随分と早く落ち着かれましたね、普通だったらもっと長く大げさに混乱する問もいます。流石は釘宮幸人さんですね」


「昔から反応が薄いとは言われたよ、そんな事より聞きたい事があるんだけど」


「そんな事って、自分が死んだんです?もう少し興味を持たれてもいいと思いますよ」


幸人の発言に対し銀髪の女は呆れ気味に応える。しかし幸人にしてみれば起こった事は仕方なく、尚且つ生きていたという事実だけで十分だった。何より悩んでどうにかなる問題ではないと考えた。


「それはもういいよ、生きてたってだけで儲け物だ。それよりさっきから気になってたんだけど、なんで俺の名前知ってるんだ?どこかで会った事ある?俺も物覚えは良い方じゃないけど、こんな美人と会えば流石に忘れないと思うんだけど」


「ふふ、美人だなんてお世辞でも嬉しいです。口がお上手なんですね釘宮幸人さん」


「別にお世辞じゃない、俺は嘘は嫌いなんだ」


「またお上手な事を、そうやって今まで騙してきたんですか?私も気をつけないといけませんね」


微笑みながら言う女の言葉に対し幸人は警戒を始め、いつでも動き出せる様に腰を浮かす。


この女、俺の名前や今の発言。もしかして俺が何なのか知ってるのか?


そんな幸人の様子に気付いたのか、女は慌てて喋りだす。


「勘違いしないでくださいね?私は別に釘宮幸人さんに危害を加えるつもりはありません。今のは誰かの話すのが久しぶりで楽しくて、思わず口を滑らしてしまいました。気に障った様なら誤ります」


本当に申し訳なさそうに謝罪する女、それでも幸人が警戒を解きはしなかった。警戒されているのがばれたならばと、目元を厳しくしながら問いただそうとする。


「いいからさっきと質問に答えてくれ、俺とお前は知り合いなのか?」


女は先ほどの発言を悔いているんか笑み失せ、申し訳ないという様な表情で問に答えはじめる。


「いえ、私と釘宮幸人が対面するのは今回が初めてです」


「ならどうして俺の名前を知ってる?さっきの発言だってそうだ、俺がどういう人間か知ってる様な口ぶりだった。それに俺はお前の顔に見覚えは無いが、その声には憶えがある。嘘をつかず正直に答えろ」


幸人は女の発言に警戒を強めた。


「いえ、面識が無いというのは本当です。声の憶えは一度会話をしたからだと思います」


「面識が無いのに会話をした事がある、電話か何かで話したみたいなことか?」


「機会などを通してではありませんが、本当に憶えていないのですか?確かに二三言葉だけでしたけど、かなり印象的な間面だったと思うのですが。少し悲しいです」


幸人の言葉に傷ついたのか先ほどとは別の意味で女は落ち込む、その様子に幸人は少しばかり罪悪感を感じながらも自身の記憶を再度探り始める。


機会を使わず対面もしないで話す、どういうことだ?糸電話とかは一様条件を満たすけど作ったことも無ければ、もちろん使ったことも無い。あとは長距離で叫びあうとかだけど、そんな第三者からみて面白すぎる事をした憶えも無いしなぁ。なんだか不思議な話しだ、、、ん?、不思議?


幸人は自身の思考中で浮かんだ、不思議という単語に引っ掛かりを感じた。


不思議、最近何処かで不思議な体験をしたような。あぁ何処でだったかな、もう少しで思い出せそうなんだけど。


思い出せそうで思い出せない、そんな思考をしていると先ほどまで無かった音が微かに流れている事に気づく。それはとても小さく聞きづらいで、形容するな小さな息を小まめに吸い込む様な音だった。疑問に思い視線を上げると、銀髪の女が今にも零れそうな涙を赤い瞳に溜め込んでいた。幸人は突発的且つ予想外の出来事に慌てる。


「お、おいっ。なんで急に泣いてるんだよ!?」


「ヒック、ッヒ。べ、別に泣いていません」


「いやいや、それの嘘は無理があり過ぎるだろ」


「嘘じゃないもんっ!」


もんて、さっきまでそんな喋り方じゃなかっただろ。いろいろと外道な事はやってきたけど、どうも昔から女の涙には弱いんだよなぁ。男相手なら何一つ気に留めないんだけど、まぁ気にしたらそれはそれで俺が気持ち悪いな。


「なぁ、俺が何かしたなら謝るから泣き止んでくれよ」


「ヒック。だから、ッヒ、、泣いてないっ!」


幸人は女の態度に思わず溜息が漏れるが、恐らく自分が泣かしてしまったという罪悪感からどうにかなだめようとする。


「はぁ、とりあえず理由を教えてくれよ。謝るにしても理由が分からなくちゃ謝りようがない」


「おもいヒックて、くれなかったッヒ」


「わるい、上手く聞き取れなかった。もう一度頼む」


「思い出してくれなかったからって言ったのっ!」


そういうこ事ですか、でもそんな事で泣くなよなぁ。はぁ、本当に女の涙はずるいよな男が不利すぎるだろ。、、、はぁ。


「確かにそれはわるいとは思うけどお前も」


幸人が弁明を始めようとすると突如女がその言葉を遮った。


「やや、、、ヒック、、」


「は?何だよ急に」


「ッヒ、夜々です。名前で呼ばれたいです」


「はぁ、別にどっちでも」


「夜々です、ちゃんと名前で呼んでほしいです」


またも幸人の言葉を遮る銀髪の女こと夜々、目尻には未だに涙を浮かべてはいるがその瞳は真剣だった。


「はぁ、わかったよ夜々」


「、、名前を読んでくれたのは嬉しいのですが先ほどから溜息ばかりして、それではまるで私と居るのが嫌みたいではないですか」


幸人は心の中で何度目か分からない溜息をつく。


はぁ、正直嫌ではないけど少し面倒だな。急に泣き出したり妙に名前呼びに拘ったり、夜々のテンポが独特で疲れはするな。すっかりペースが崩されて質問も進まないし、どうしたものかなぁ。、、、はぁ、面倒ではあっても夜々に合わせるのがやっぱり一番かな。はぁ、本当に面倒だ。


幸人は方向性が決まったことで心を入れ替える。目を閉じ心を平坦にし頭の中で愉快な表情の仮面を作り上げ自身に被せるイメージ、今までの経験で作り上げた技術を振るう。


「そんな事はない、夜々と話すのはなんだか刺激的で楽しいよ。それにこんな綺麗系なのに可愛い一面を持つ女性と接して喜ばない男はいないよ」


コツは嘘の中に本音や事実を混ぜること。使い古された手垢だらけの方法だが、だからこそ効きやすくばれ辛い。


夜々は幸人の豹変振りに一瞬戸惑うも、その言葉に涙は消え去り頬を染る。本人は隠そうとはしているが嬉し恥かしという様子が見て取れる。


随分と信じやすい良い性格みたいだな、よく見ると着物の質も良いみたいだし箱入りの御嬢様とかなのか?


「ま、またそんな口が上手い事を。まぁ、褒められて悪い気はしませんね、一様、その、、嬉しいです、、、」


それで隠しているつもりなのか?動揺しすぎだろ。それにしても、笑って泣いて怒って照れてと忙しい奴だな。まぁこれで機嫌が直ったなら本題に戻れるから良いか。


「少しでも気を良くしてくれたなら何よりだよ、それでさっきの話の続きいいかな?」


「はい、いいですよ。確か釘宮幸人さんが私のことを思い出してくれなうというお話でしたね」


夜々の表情が再び曇る。


気のせいか言葉に棘があるな、さっきの件を思い出してまた不機嫌になられても堪らないからな。まぁ正直その件に関しては思い出したんだけどな。


「それなんでけど、思い出したよ」


「本当ですか!?だとしたら私すごく嬉しいです!」


幸人の発言に先ほどまでの不機嫌は吹き飛び、満面の笑みに喜びと期待をのせている夜々。


「ああ、本当に思い出したよ。夜々と話したのは俺が死ぬ直前だろ?思い出すのが遅れてごめんな」


「正解です!思い出していただけで嬉しいです。それともう謝らないでください。今思えばあんな状況で憶えていろという方が無理な話で、完全に私の我侭でした。本当にごめんなさい、、、あんな態度をとっておいて何なんですが、あの、、嫌わないでください、、、」


満面の笑みから一変、不安げな表情でそう言うと返答を恐れてか俯いてしまった。幸人はそんな夜々の姿に何か感じる物が有り、思わず俯く頭に手を置きそのまま優しく撫でる。


なんかこいつ、犬みたいで可愛いな。ころころ変わる表情の無邪気さと感情を隠せない不器用なところ、何より今のこの様子とか主人に怒られるのを待つ犬そっくりだ。さっきは口先で可愛いなんて言ったけど、今は本心でそう思えるな。


「、、釘宮幸人さん?」


撫でられている夜々が不安が残る表情で幸人を見る。


「ああわるい、勝手に撫でて嫌だったよな?」


「いえそんな事はありませんが、むしろ大きな手が暖かくて、、でも少し恥かしいです」


「気を悪くしてないなら良かったよ」


そう言い手を離す幸人、夜々は離れる手を名残惜しそうに眺める今確認すべき事を優先して心を入れ替える。


「あの、私の事嫌いですか?」


不安げな問に対して幸人は優しく応る、それは先ほどまでの偽物ではなく本物の優しさだった。


「そんな心配そうな顔しなくても嫌いになんてなってないよ、安心して」


「本当に本当にですか?」


「本当にだよ」


「嘘だったら私がショックで死んでしまうかもしれませんよ?」


夜々のあまりの必死さに幸人は思わず笑いながらも肯定の言葉を贈る。


「はは、夜々は考えすぎだよ。第一嫌いな相手の頭を撫でたりなんてしないよ」


「そう、ですよね。ごめんなさい、私しつこく聞きすぎました」


「気にしてないよ」


夜々は感情の起伏がが激しくて面白いな、きっと尻尾があったら今はしゅんと下がってそうだな。なんだろ、本当に犬と遊んでるみたいで楽しい。まぁ嫌われるに事に対して敏感過ぎる気もするけど。


「じゃあ落ち着いたところで話しを戻してもいいかな?」


「はい、大丈夫です!なんども話しを止めてしまいすみませんでした」


「はは、夜々は謝ってばかりだな。」


幸人の言葉に自身でも自覚があったのか、恥かしそうに夜々は身を小さくした。


いちいち反応が可愛い奴だな、弄りがいがあって本当に楽しいな。


「じゃあさっきの続きだけど、俺と夜々との初めての会話は俺が死ぬ直前。ここまでは大丈夫だよね?」


「はい、問題はありません」


「ここらは俺からの新しい質問なんだけど、俺が死ぬとき近くには誰もいなかったはずだ、一番近いとしても別の部屋で刑の執行を開始するボタンか何かを操作した警察の人間くらいだろ。でもあの時の夜々の声は近かった、それこそ横に居たのかと思うくらいにね。夜々はさっき機会とかを使ってないって言ったけど、どうやって俺に話しかけたんだ?」


「この場所、永夜の森から魔法で話しかけました。本当はもっと早く、刑が始める前に話しかけようと思っていましたが準備にと戻ってしまって。流石に異世界へ力を及ばすのは初めてだったので、予想より時間が掛かってしまいました。私がもっと要領よくやっていれば、あんな土壇場にならずもっと落ち着いて話せたのに」


今、魔法とか異世界だとか言ったか?夜々は世に言う中二病患者なのか?どうしよう、夜々がすごく可哀想だ。


「どうして釘宮幸人さんはそんな可哀想な者を見る目を私に向けるんですか?もしかしてですけど、私をそちらの世界で言う中二病だと思っているんわけじゃないですよね?」


ああ、そちらの世界とか言ってる。そういう設定なんだな、ここは合わせた方が夜々を無駄に傷つけなくてすむかな?でも早く修正した方がいいだろうし、俺はどうすればいいんだろ。


「私の話し聞いていますか?私は嘘なんてついていませんよ?本当に魔法だって使えます!だから私は可哀想な子ではありません!無言でその目を見ないでください本当に私がイタイ子みたいじゃないですか!!これでも神の一柱なんです!!」


次は神様の設定か、きっと頑張って考えたんだろうなぁ。やばい、考えた涙が。


「止めてください!どうして泣いてるんですか!その理解してるみたいな頷きも止めてください!!」


よし、俺は決めたぞ!夜々を構成させよう、いい年して中二病なんてやっぱり可哀想過ぎる!


「夜々頑張って直そうな!?俺も出来ることは全力で手伝うからな!」


幸人は優しく言葉を贈ると夜々を抱きしめる、その瞳には慈愛が満ち溢れていた。


「止めてください!離してください!こんな優しさは嫌です!私の話しを着てくださいーーー!!!」


月夜の夜には銀髪の女の叫び声がむなしく木霊していた。

第一話楽しんで頂けたでしょうか?三千字前後で書こうと思ってんですが落としどころが見付らず予定の倍になってしまいました!第二話も出来るだけ早く出そうと思っていますので皆さん宜しく御願い致します!一話よりは少し短くなるかも、少しですよ!?(笑)

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