---98--- キゴファ翼竜人国 滅亡
「くふふ、お義兄様、展開している全魔法を解除してくださいまし、このままでは全員を目的地へ運べませんわ」
先程からの行動と言動の節々に、いつもと違う違和感を感じながらも、転移するにも魔聖素で覆っていると確かに術が発動しないと考え、展開している全ての魔法を解除する。
解除したとたん落下の浮遊感が生まれるが、直ぐにフワリと自身の周りの重力だけが無くなったかのように宙に浮いた状態になる。 レレは両手で掻き集める様な動作をしこの場に居る仲間全員を自身の傍に集める。 集められお互い目線を合わせる中、何故かエラルだけはレレに対し不信感を持った感じで睨みつけているような印象を受ける。
「お義兄様、今からここより移動を開始しますが、絶対に魔法の無効化する術は使用しないでくださいましね。
あとケモノ娘!そうやって私を見つめても何もしてあげませんわよ。
どうせ余計な事を考えているのでしょうが、止めておきなさい。 貴女は何も考えず移動先に着いたら、まずその嗅覚と聴力を最大限に使い、周りの安全確保を最優先に考えなさい。 もし敵が潜んでいたら、お義兄様に知らせ、トカゲっ娘と共に戦闘態勢を取り着実にお義兄様の安全を確保しなさい、良いですわね」
「本当に今のレレお姉さんの事を信じていいんですよね?」
「くふふ、全く貴女のその嗅覚感知能力は、私との相性最悪ですわね」
恐らくやり取りからして嗅覚を頼りにされるとレレにとっては何かしら不味い状況なのだろう。
もしレレが仲間を裏切る為行動しているのであればもっと巧妙に事をなすはずで、悟られると言う致命的な策はしないだろう。
もう疑う事はしないと決めたが少し疑いの眼差しをむけてしまい。その表情を確認するとレレは落ち込んだ表情を見せるのであった。
「はぁ~全く貴女のせいで、お義兄様に少し疑われているではありませんの!。 安心しなさい、これはお義兄様に誓い、何も疑う必要はありませんわ。
貴女は何も疑わず、私を信じて行動しなさい、良いですわね。
本当に今後敵の中に、貴女のような者が居たら真っ先に潰しておかなければならないかもしれませんわね」
「あれ?もしかして私、レレお姉さんに遠回しに今?褒めらてたりしますか?」
「な!ち、ち、違いますわ、何故私が貴女を褒めなければなりませんの、私は劣等種等に興味はありませんでしたし、こうして行動を共にするなど考えられなかったので今後種族的特殊能力に対しても警戒をしてお義兄様の約束を守らなければならないので、仲間である貴女の種族的特殊能力に対し本当に蚤の垢程度の感心をしただけに過ぎませんので、余り勘違いはしないで下さいましね。
もし私が褒めるとするなら、その能力の有効性に気付き、先に友好関係を築いていたトカゲっ娘を褒めてあげますわ。
そして種族的特殊能力を長く戦力活用利用しようと考え仲間に取り込んだ、お義兄様の思考し手腕を振るっている事を褒め称えますわよ」
その照れ隠しのような発言を聞き、本音は褒めてくれていて、且、種族的なこの嗅覚を利用する能力を褒められている事に嬉しさが込み上げて来てくる。
そして尻尾は最も嬉しい感情の時に見せる、ブンブンと千切れんばかりに回転させている。
「レレお姉さんみたいな強い方に私達獣人達の嗅覚能力や聴力能力を褒めてもらえたと、皆が知れば大喜びして宴会を開いちゃいますね。あぁ~教えてあげたいです」
「あぁ~だから何でその様な事になるのですの!、私は種族そのモノを一切褒めてませんわよ」
「あ!良いんですそれで!。 じゃ~私はレレお姉さんの言葉を信じて、移動先に着いたら私の能力を使ってシアキお兄さんの身の安全と周囲の安全確保を最優先に行動しますね。
なんだか凄くやる気が出てきました」
能力を褒められる事は獣人の特性上、最高の褒め言葉であり、その褒めた相手が自身より強者で在れば在る程、喜びが倍増される事をレレはまだ理解していない。
そもそも仲間だからと言ってもフェンラには興味はあるがそれ以外は余り興味が無いので深く知ろうとすら思っていないのだ。
「はぁ~全く調子が狂いますわ。 私は、お義兄様の仲間の中で貴女と一番接したくありませんわ。
でも、お義兄様は流石ですわね、新天地なので極力感知術を使って敵に悟られないようにと考えて、人選し連れて来たのだと思うと、私感服致しましたわ」
少し羨望の眼差しを向けられるが、何のことかさっぱり分からない。
確かに今回の人選にエラルを選んだのには理由があるが、嗅覚や聴力を利用して敵の警戒をさせる為には連れて来ていないのだ。
何か勘違いしているようだがここは敢えて何も言わない方が良いのかもしれないと思う。
「・・・そっかそっかレレもついにエラルが実は凄い子だって分かったんだな。 それに気付いた事は喜ばしい事だな。 さぁ~三人共気持ち切り替えるぞ。 今日はこのままお喋りしてる時間は無いぞ。 日も大分暮れて来たし、本当に先を急がないと、夕食時間迄に間に合わなくなって、料理が冷めた頃に帰る羽目になるからな。
それに、確実に今日は遅れると、ラフェルに全員怒られるかもしれないし、レレ早く先を急ごう」
「くふふ、そうですわね、食事が冷めるのは勿体ないですわね。では行きましょう」
両手を前方に翳し空間に亀裂を生じさせる。 空間接続にも種類がありレレ程の強者で実力のある者が空間接続をすれば接続先が見えるモノなのだが、今回は全く何も見えない闇が揺らいでいるそんな低級から中級程度の実に荒い接続なのだ。 その事には誰も気づいていない。 その闇の揺らぎの中に全員を連れて入り空間を移動する。
数秒視界が暗闇に包まれた後、急に明るくなり眩しさのあまり全員目を瞑ってしまう。 瞼をあけ辺りを見渡すと先程と何ら変わらない緑溢れる森の風景が眼下に広がっている。
辺りを軽く見渡すと四方山脈取囲むようになっているので、山脈を越えたという事は分かるが他は眼下に国らしい人工的な城等の建造物は一切見当たらない。
唯一変わっているのは眼下には数ヶ所大地が大きく裂けて出来た様な深い渓が幾つか確認出来た。
渓底まで確認しようと視線を向けるが、夕暮れ時で日が大分落ちているので、底まで光が届かず不気味に闇が広がっていた。
「上空から見てるのに底が全く見えないってどれだけ深い渓なんだ!。まぁ~それよりレレ、どの裂け目がアイツ等の国なんだ?」
「丁度真下の渓の側面部分を横に掘って内部で蟻の巣のように巣くってますわ。くふふ、中は意外と綺麗ですわよ」
感知能力とはどこまで鮮明な映像として脳内で構築されるのか知りたくなる。
もし鮮明な映像として認識出来るならこれ程便利な物は無いだろう、言わば何所でも覗き放題と言う事になる訳だ。 男としては少し興味のある、いや大いに興味のある所だが聞くに聞けないと少しピンク寄りの考えをしならが遠くを見つめ難しい表情をする。
その明後日の方向を見ながら難しい表情をしているので、敵が居るのかと思い同じ方角を各々が出来る気配感知能力を使い周辺の気配を探るが警戒する様なモノは何も感知出来なかった。
「お義兄様何か向うの方角に居ますの?脅威となるようなモンスターは居ませんのでご安心くださいまし」
「そうじゃぞ、安心するのじゃ、そんなに難しい顔をしなくても安全じゃよ。 それか何か気になるモノでも居たのかのぉ?」
「シアキお兄さん、安心してください向こう側には中型程度のモンスターは居ますが地を這っている様なのだと思いますし、手前は小型のモンスターは多数居るようですが隠れる場所が無ければ小型のモンスターは襲って来る事は無いと思います」
少し気配感知で覗きをしているそんなピンクな妄想に耽っていたので、女性陣達三名に声を掛けられ慌てて言訳を考える。
「・・ん!あ!いや違うんだ、えっと、あ!そうか辺りは安全なんだなそれは良かった、じゃ~あの淵に降りようぜ」
少し何か卑猥な妄想でもしていたのではないかと、女性の勘と言うモノが敏感に働きそれを感じ取る女性陣達であった。
こういう時の女性の勘は鋭く、鉄壁の防具とされるモノで身を固めようとも、簡単に突き破り破壊し内部に侵入され、ほぼ見透かされてしまうのである。
そして女性と言う生き物は少し鎌を掛けてそれを炙り出そうと直ぐする生き物でもある。
「ふふふ、お義兄様も、やはり、そんな事を考えるのですわね~、くふふ」
「そっか~シアキ殿がの~」
「あはは、シアキお兄さんも考えちゃうんですね」
「ち、違うぞ!お前達の思ってような事は・・・」
その言葉を疑っている女子の前で言ってはいけない、反論すると最後の台詞へ繋がる起爆剤にされてしまうと言う事をシアキは女性との駆け引きの経験が乏しいので知る由もない。
「「「本当に考えてなかったと?」」」
女性陣三名がハモって考えてなかったと言われ真剣な眼差しを向けてくる。
ここで素直に罪を認め謝っておく方が良いと思わせるそんな冷たくてとても重く、疚しい心を全部見透かされているのではないかと思わせるそんな視線を向けられ耐えきれなくなる。
「あぁ~そうだよ、考えてた!感知能力でどこまで具体的に脳内で鮮明に映像化されるのかってな!、でもそれを悪用してお風呂を覗こうとかは決して考えてないから、信じてくれ」
「「へぇ~そんな事を考えて」たのですわね」たのじゃな」たんですね」
「あれ?え!もしかして俺今お前達に鎌を掛けれたのか?」
ニッコリ全員して頷いている。何も見透かされていなかった事を知り恥ずかしくなると同時に女性の恐さを実感するのであった。
「そうですわ。こんな単純な手に引っ掛るとは思いませんでしたわ。
もう少しお義兄様は女子の扱いを覚えないと、痛い目を見ますわよ。 嫁達はお義兄様の味方ですが、他は違うと考えてくださいましね」
「はぁ~それもそうだな!気を付けるよ。
あと三人共今の事は忘れてくれ、あとレレさっさと降りてくれ」
「ふふ、忘れる等勿体ないですわ。はぁ~今日は凄く良い日ですわ」
そう言いながらゆっくりと降下し渓の手前、少し森が途切れた個所に全員降り立つ。
既にキゴファ翼竜人国の領地内であると思われるが、不法侵入者であるあの特有の嫌な重みは一切感じない。
キゴファ翼竜人国は国登録をしていない国で国の加護者は存在しない、名ばかりの国なのかと思い、いつもの表情に戻り気持ちを切り替えて、フェンラに疑問点を訊ねる。
「フェンラ、少し確認何だが?「キゴファ翼竜人国」って国の登録をしてない国なのか?」
「ん?何を言っておるのじゃ。ちゃんと国登録はしておるはずじゃ。そうでないと国として名乗る事は出来ないのじゃ」
「そっかありがとう、少し疑問点が解消出来た!」
返答内容で内部だけに国境結界を張られていると推測出来た。 少し派手に周辺国へ噂が広がる効率の良い方法を考えようとしているとニターっと微笑みながら顔を覗き込みレレが声を掛けてくる。
「くふふ、お義兄様何を考えてらっしゃいますの?駄目ですわよ。 此処からは私一人で全て行うと約束したはずですわよね、絶対一切手を出さないで下さいましね、私の楽しみを奪うのは許しませんわよ」
「ん?あぁ~手を出すつもりはない、俺達は此処で見物してるから、お前は大いに暴れてイライラを解消して来い!」
「くふ、くふふふふ」
舌なめずりをして恍惚な表情を見せている。もう既に戦闘が始めているのではないかと思わせる様なそんな表情をしている。
「レレ殿、本当に無茶だけはしないでくれなのじゃ、あと絶対にキゴファ翼竜人国の国民以外の無関係な者を屠る事はしないでくれなのじゃよ」
真剣に両者は見つめ合い、しばらく無言の時が流れる。
「・・・・・・・くふふ、心配無用ですわ十分それは分かってますわ」
返答後、渓から武装形態を引き上げていない状態の翼竜人が飛び出して来た。
その飛び出て来た者に目を奪われ目で追う。
「・・・・・・・・あら一匹外に逃げて来ましたわね」
上空に上がっていった者は、レレの姿を確認するなり目を見開き驚き、すぐさま装備武器である双槍を躊躇なく構え、降下の勢いを利用し速度上げて向かってくる。
見事双槍はレレの背中から胸に掛けて貫ぬいた。
瞬きする間もない程の一瞬の出来事にも拘らず、冷静に自身の身を貫いている槍の穂先が親友のフェンラの身に当たらぬように素早く左手で貫き出て来た双槍の口金部位を掴み、右手でフェンラを軽く突き飛ばしている数歩下がらせた。
そのまま槍を握ったまま引き抜かせないように力をいれ、固定しつつ振り向きもせず吐血混じりで話をする。
「くふふ。手荒いお出迎えですわね、ゴホッゴホッゴホッ...」
最後聞き取れない程の小声で何かを話した後吐血をし激しく咳き込んだ。
必死に翼竜人は双槍を引き抜こうとするがビクリとも微動だにしないので、回収する事を諦め、そのままレレを蹴り後方に飛び退き、渓に急降下していった。
この世界最強者であるレレであれば、翼竜人が武装形態の第六状態になり、力を最大限底上げした状態で攻撃をされても、その身一つ掠り傷程度も負わせられない程の実力差がある。
もしこのように胸を抉られるとすれば、アノ翼竜人が転生組か他の存在が乗り移って、相手の職を強制剥奪し力を削ぐ事が出来る奴であるっと言う可能性だ。
職を剥奪されれば防御力は一瞬で低下する事は実験で把握済みなので、自分と同じ能力を持つ者の仕業だと決め警戒しつつ、レレの治療をしてもらう為、ルルを呼び出さねばと考え、念話を繋ごうとした瞬間、エラルがグッと横に引っ張りシアキを少し引き寄せこっそり耳打ちしてくる。
「シアキお兄さん、レレお姉さんから先程小声で伝言を預かりました。
ルルお姉さんは呼ぶ必要はないのでそのまま見ててくださいとの事です。
あと眼前のレレお姉さんの体からレレ姉さんの匂いが全くしませんし、呼気も先程の肉の塊の匂いしかしませんので、一応合わせてお伝えしておきます」
その囁きを聞き念の為、レレのステータスを確認するがステータスを開く事が出来なかった。
眼前に居るレレはレレに似せた何かだという事がこれで判明した。 いつからレレはこの得体のしれないレレ擬きになって居たかと思いながら一応敵の罠とも考えられるので、警戒しならが悟られない範囲で行動の観察をする事にする。
一人フェンラだけは眼前で起きた信じられない光景を前にし、我を忘れて渓に飛び出そうとしている。
胸に槍が刺さった状態で、口から血を垂れ流している、偽物のレレが、フェンラの腕を掴み行動させまいと止めている。
そして、口から血を流しながらニコヤカに微笑んで見せ、何事も無かったかのように話し出す。
「くふふ、もうトカゲっ娘は、早とちりし過ぎですわ。
貴女はお義兄様の傍を離れては、ゴホッゴホッゴホッ...」
途中で何度か吐血をし、言葉に詰まるっているが、尚もニコヤカに微笑んで話そうとしている。
「レレ殿、それ以上喋るでないのじゃ、シアキ殿!早くルル殿を呼んでくれなのじゃ、このままではレレ殿が死んでしまうのじゃ」
両者が話していると、再度渓から現れた翼竜人は今度は上空からレレ目掛けて引掻くように手を動かす。真空の刃がレレの首元を捉えた。
「その必要ありま・・」
会話の途中にレレの首がボトリと胴体から切り離され血液が噴水の様に吹き上がった後、体を痙攣させながら地面に崩れ落ちように倒れこむ。
また信じられない光景を目の当たりにしフェンラは目を見開き、胴体と頭が切り離された親友の姿を確認したあと、咆哮をあげ一気に第五武装形態まで引き上げた。
「ぅあぁ~・・レレ殿を~。よくもレレ殿を~絶対に許さないのじゃ、絶対我はお主達種族を絶対に許さないのじゃ~」
首無しのレレの胴体がモソリと何事も無かったか朝寝ぼけて起きるかのように起き上がり、地面に落ちている自身の頭部を片手で拾い上げて小脇に挟みながら、渓へ飛び出そうとしているフェンラの腕を掴み、渓とは反対方向の森の中に遠心力を利用し放り投げた。
この得体の知れないレレ擬きは、攻撃力も防御力も左程無いのか、数メートル後方に飛ばす事しか出来ないのだと、シアキは冷静に行動等を分析する。
「・・な!レレ殿・・そんな姿でも、まだ生きておるのか!よ、良かったのじゃ、シアキ殿、レレ殿の頭部と胴体を接合してもらう為に早くルル殿を!」
小脇に挟んでいた頭部を無造作に首元に持っていき位置を少し調整すると、端から首等切り離されて無かったかのように元通りに繋がる。
そして、レレ擬きは喉元に手を当てて声が出るかを確かめている。
「あ~あ~あ~・・・全く頭部だけでは声が出せませんわね。 さて・・・邪魔ですわねコレ!」
今だに胸に刺さっている槍に眼をやり、無造作に引き抜き地面に突き刺す。
「くふふ、もうトカゲっ娘、私の為に怒ってくれましたのね、でもその姿はお辞めなさい。
私との修行はまだ終わっておりませんわよ、第三迄は許しておりますがそれ以上は駄目と言いましたでしょ!今直ぐに第一状態のあの可愛い姿に戻りなさいですわ」
言訳無用と言う感じで仁王立ちになり少し口をとがらせている。
「・・わ・分かったのじゃ」
武装形態を第一状態になったその時、再び渓から二名の翼竜人が何かに脅え慌てて逃げて来たかのように急上昇し上空高く上がっていくが、上空で何故か内部から爆発したように弾け飛んでしまった。
弾け飛んだ肉片、血、骨等全て重力を無視しその場で停止したあと一箇所に吸い寄せられるかのように渓底目掛け飛んでいった。
「くふふ、あ~綺麗な生体花火が二つも弾け飛びましたわね、何て素晴らしい光景なのでしょ~私を久々にゾクゾクさせてくれますわ、あ~駄目ですわ。今ので軽く絶頂してしまいそうでしたわ」
上空を見上げ、胸元で手を小刻みに早く叩きながら、一度ブルっと身震いをして見せた後、恍惚の表情を受けべ舌なめずりをしている。
その偽物を見ていると、本物は今いったい何所で何をしているのだろうと気になり始める。これは考えるより、直接聞いて確かめる方が早い。
「な~レレ、今、お前の本体は何処で何をしているんだ?恐らくあの山から帰って来た時から入れ替わって先にココに来て暴れてたんだろ?。
一体何がどうなってるかだけでも説明してくれないか?」
上空に向けていた顔だけをこちらに向け、ニターっと悪戯っ子がするような微笑みを見せた後、話し出す。
「くふふ、流石お義兄様ですわね。今お義兄様達の眼前に居る私は、私の姿形に似せた偽物ですわ。
今私は、ココの国王の前に居ますの、察しの通りあの山頂に出向いた辺りでこの国に来てましたわ。
そして余興で次々と私を増殖させて、この私の親友に行った事への報いを受けさせるため劣等種の生者達の命を弄んでいる所ですわ。
はぁ~今凄く良い音色が沢山聴けて、くふふ、私、今とっても充実していますわぁ」
両手を天に掲げて恍惚な表情をしながらクルクル回り喜びを全身で表現している。
この光景だけ見れば大抵の者は心癒される光景だろうが、やっている内容がえげつない事だとは誰も思わないだろう。
「はやりか!そっかこの国の国王の前か!一応屠る前に国王だけは俺の前に引きずり出してくれるか。
それと増殖ってなんだ?偽物のレレが一杯居るって事か!・・・う~ん想像すると凄い光景だな」
恐らく死者となった者の肉片を、レレにそっくりの姿形にしソレを操り生者と戦わせ、その生者が死者に成れば、またレレそっくりの姿形になり、また生者を襲うと言う戦闘時の精神衛生上悍ましい光景が頭の中で想像できた。
増殖するのが、術者本人の姿をして攻めて来るのであれば、幾分戦闘時の精神衛生上敵として認識し戦闘意欲を保てるだろうが、姿をどんな形状にも出来き、肉親、知人、愛する者の姿で攻められるとしたら、これ程やりにくい敵は無いだろう。
もしかしたらその者達が生きているかもしれないと思い攻撃出来ず屠られたり、中には疑心暗鬼になって隣に居る仲間すら信じられなくなり無意味に殺し合う事だってあるだろう。
流石、確実に相手の嫌がる戦法を使い死を弄び、仕留める事を考えている「ア」の一族である神族だと感心する。
もし、自分や仲間達に対し同じ手法で攻められたら、かなり戦闘時の精神衛生上宜しくない、かなり苦戦と苦悩を強いられる戦いになるだろうと思うと少し背筋に冷たいモノを感じるのだった。
「くふふ、そうですわ!、そうですわ!。 今後「ア」の一族の神族との戦闘も予想されますし、一応この術の対抗方法をお教えしておきますわね。
これで少し私の事を信頼して頂けると嬉しいのですが・・・くふふ、はぁ~駄目ですわ・・そんな良い音色で鳴かれると、私の体が火照ってしまいますわ」
眼前の偽物のレレは自身の両肩に左手を右肩、右手を左肩に当てて腰をクネクネとさせなが恍惚の表情を浮かべている。
「ぁ!、はぁ~駄目ですわね。
くふふ、私とした事が、術の説明をする前に少し楽しんでしまいましたわ」
ピタリと止まり一度舌なめずりをした後、静かに語り出す。
「では、改めて説明いたしますわね。
この増殖させる術は、簡単に言うと死者の肉片等を利用し、体積と容姿等を思いのまま造形し、それに聖力を籠めて、知性を与えて自立行動させたり、本体からの思念受取り操り人形のようにしたりする義体操作術の一種ですわ。
一応今回のは殲滅作業をさせる為に最低限の知能を与えておりますが、全て本体となる私の意思一つで行動させる事が可能ですわ。
くふふ、そして今回はすべての義体の感情は本体が把握しているので今とても良い気分ですの。
はぁ~良いですわ~もっと良い音色で鳴いてくださいまし~。
あらまた、私とした事が、イケませんわ集中集中っと。
えっとですね、お義兄様。
殆どの「ア」の一族の神族の者は、この手の術をよく戦闘時に使用し、その者と最も親しい者の姿で襲ってきますので覚えておいてくださいましね。
そしてこの術で操れる数や増殖させられる数には限界がありますの、個人差は多少ありますが、最低一体~約千体前後ですので一緒に覚えておいてくださいまし。
因みに例外として、私は、一人で五千体を同時に同期させて操れますわ。
そこに置いて居るモノは、先程屠った者の肉片を利用し、私の意識等を全て同期させておりますので、会話も自由ですし、ある程度の術も使用可能なのですの、くふふ。
そしてこの術を断ち切る対抗攻略方法をお話しますわね。
方法は、ただ一つ簡単な事ですわ。 それは、本体となる術者本人を気絶させるか、その生命を絶てば、操っているモノ全て制御を離れ元の死体か肉の塊に戻りますわ。
くふふぁ、お義兄様には、一度術が発動して増殖している個所を御見せしたいですわね。
少々お待ちださいまし、同期させたモノを準備して、そちらに何体か素体を追い立てますので・・」
そう言い残すと楽しそうに偽者のレレは淵まで走って行き、渓底を覗き込み、体を左右にゆっくり振らし楽しそうにしている。
何の事情も知らない者がこの光景だけを目にした際、きっとこう思うだろう。
どこかの貴族の娘が渓底はどうなっているか気になり覗き込み好奇心を満たそうとしていると勘違いしてしまう事だろう。
眼前に居る者が、自分の知っているレレでは無く偽物であると本人の口から言われ、フェンラは何が何だか分からないといった表情をし思考が焼ついて頭から湯気が上がるのではないかと思える位、あわあわと慌てふためいている。
自分の手の内を晒している事に少し違和感を覚えるが、レレも仲間として何とか信頼してもらおうと必死なのだろうっとシアキは都合のいいように解釈する。
しばらく待っていると五人の翼竜人達が何かに追われるかのように渓から飛び上がって来た。
そして淵で覗き込んでいるレレの姿を見るなり躊躇する事なく顎を殴りあげそのまま地面に倒し、全員で双槍を倒れているレレの体に突き立て地面に縫い付ける。
五本の双槍に貫かれ地面に縫い付けられピクピク痙攣を起こしている姿を見たフェンラは、幾ら偽物と言われようとも、怒りが込上げてくる。
次の瞬間渓からニコヤカな笑顔をしながらもう一人の偽物のレレが飛び上がって来た。素早く翼竜人の一人が向きを変えて引掻く様に腕を動かす。
「くふふ、お待たせしま・・・」
右肩から腰へと斜めに体が引き裂かれボトリと地面に落ちた。
頭部がある方のレレはモソリと首を持ち上げ、自分の体の状況を確認しながら口から吐血する。
「・・(ゴボゴボ)・・あら・・・」
切り離された下半身部分は痙攣した後、肉の塊に戻り再成形され、小さなレレが新たに誕生した。
上半身も一度肉片に戻り再成形される。二等分された小さなレレが可愛い双子のように並んで立っていた。
「な!小さなレレ殿が二人も・・何と小さくて可愛らしいのじゃ」
「小さなレレお姉さん達、可愛いです」
可愛い双子がスカート部分を持ち軽く屈伸運動で挨拶をして見せ同時に感謝を述べた。
「「くふふ、ありがとうですわトカゲっ娘」」
五本の双槍に貫かれ地面に縫い付けられていたレレも、その場で槍などないかのように抜け出して近寄って来る。
「どうですか面白いでしょ。 それが増殖ですわ。 切断されれば、私の意思一つで、肉片に戻し再構成する事が可能なのですわ。
そして増殖対象が小さく成れば成る程に俊敏に動く事が出来るモノになるのですわ。
くふふ、ではもっと面白いモノを御見せいたしますわね。さぁ~おチビ達やりなさい」
そう言うと小さいレレが楽しそうにタタタタタっと地面を走り出し、一体の翼竜人の顔目掛け飛付き、口を強引に開かせ、口の中に片腕をねじ入れて、肉の塊に変化させ体内に呑み込まれて行く。 必死になって翼竜人は実に苦しそうに口の中に入って行く肉の塊を掻き出そうとしているが、一ミリも掻き出す事が出来ず喉をゴクゴクと鳴らし呑み込まれて行った。
「・・やべぇ、やべぇぼ~!(ゴクゴクゴク・・・ゴクリ)」
全てが体内に入ると翼竜人は激しく喉を掻き苦しそうに激しく体を痙攣させながら白目を剥き泡を噴いている。
しばらくして、痙攣が収まり、何事も無かったかのように口の泡を手で拭き肩で息をしながら辺りをキョロキョロ見渡している。
「ははは、俺達種族は他種族より胃の酸がきついから、見事消化されたか、ははは少し驚かせやがって、よしお前達この化け物の倒し方が分かったぞ、酸で溶けるぞ。すぐさま下に降りて仲間達に・・・」
偽者のレレを体内に取り込んだ翼竜人は小首を傾げニターっと悪戯っ子がする様な笑みを見せた後、少し偉そうに発言している翼竜人の後ろに目にも留まらぬ速さで移動し後ろから首元に噛み付いている。
「ぐは!・・・」
何か話そうとしたのを見て更にニターっと不気味に微笑んで、一気に首を食い千切り鮮血が噴き出したのを確認し傷口に吸い付き血を啜っている。
その悍ましい共食いを目の当たりにし、その場に居合わせた翼竜人達三名は、襲われないであろう微妙な距離を保ちながら様子を窺っている。
「くふふふ、私の術が胃酸程度で効力をなくす訳がありませんわ。本当に低能な劣等種でしかも生者は、これだから嫌いなのですわ」
血を啜られている方は、みるみる青ざめていき、目が虚ろになり眠る様に絶命する。
そして全ての血を吸い切ったのだろう、血を啜っている方の腹はもうパンパンに張って風船のようになっている。
タプタプのお腹をゆさゆさ揺らし口から少し血を垂れ流しならが、コチラにニターっと悪戯っ子がする様な微笑み見せながら口を大きく開けてみせる。
首がボコボコボコと何かが口に向かい這い上って来ている様な動きがあり、次の瞬間、口から極小のレレが無数「ケタケタ」と笑いながら飛び出して来て、一箇所に集まり、二等分された時の小さなレレの姿に戻っていく。
「どうですか?お義兄様とても面白い光景が見れましたでしょ、くふふ、あともう少し待ってくださいましね、もっと面白いのが見れますわ」
既に絶命した両者が地面にドサリと倒れた後、腹部がボコボコボコっと浪打はじめ、内部から弾け飛ぶようにして爆砕する。
本来なら放射状に肉片等が飛び散るモノだが、一切飛び散る事なく重力を無視した感じに空中の一か所に集約されていく。巨大な一つの肉の塊になるとボトリと地面に落ちる。
落ちた肉の塊は激しく浪打出しすと細胞分裂するかのように綺麗に均等に六個の肉の塊に分かれた後、新たに六名のレレが成形され誕生した。
肉の塊の質量的に本体の身長で統一した為か、この人数になったと思わる。
眼前でとてもグロイ惨状を目の当たりにしているが、この場に居るシアキ達は左程何とも思っていない。
この場にビデアが居れば確実に即気絶か、悲鳴をあげて森に走って逃げ出しているだろうが、この場に居るシアキ達は、同じ手をもし使用された場合、目鼻口全てを塞げばある程度防げるのか等と、どう対処すれば高確率で防げるかを考えている。
「う~ん面白いかって言われたら・・」
残りの翼竜人達三名は、シアキ達が雑談を開始しようとした一瞬の逃げる機会を見逃さず、躊躇なく地面を蹴り上げ上空高くに跳躍力と自身の飛行能力を最大限生かし一瞬で飛び上がって行った。距離にして約三十メートルは飛び上がっただろう、この世界で羽根の無いものであればこの高さに逃げられたらもうなす術なく、ただ飛び去って行くのを指を咥えて眺めるしかない状況だ。
「あ!アイツ等逃げたぞ!レレ誰一人として逃すなよ」
その光景を九名の偽物レレ達が見上げながら、ニヤリと実に不気味な微笑んでいる。
「分かっていますわお義兄様。
しかし本当に学習能力の低いのですわね、流石は劣等種と言ったところですわね・・さぁ~私達、アノ者達を始末し、殲滅作業に戻りなさい」
一体を残し八体の偽物のレレがコクリと頷き一斉に上空に高速で跳ね上がっていく。
そしてしばらくすると上空で三回大きな断末魔の悲鳴と破裂音が轟く。
コノ強烈な破裂音と断末魔の悲鳴は、山々に反響し遠方の周辺諸国迄轟き渡った。
これにより様々な憶測流れ、噂が語られ、噂に尾鰭が沢山付いて流れる最大のキッカケとなった事は言うまでもない。
盛大に上空で生体花火が上がり破裂に伴う元翼竜人の肉片、骨、血液、臓物等周辺に飛散したモノ全てが、一瞬重力に逆らうように停止し、渓底一点目掛け吸い寄せられるかのように集まり飛んでいく。 ソレを追うように増殖して増えた偽物のレレ達八体も殲滅作業に戻る為、渓へ落ちて消えていった。
「くふふ、あ~お義兄様どうしましょう~私今凄く興奮してますわ。 この興奮が冷めてしまうのは惜しいですので、ついでにお義兄様をこの手で一度屠らせてくださいまし。
すぐ、すぐに蘇らせますので!最後にお義兄様の悲鳴を・・・あ~想像すだけでゾクゾクしてきましたわ」
恍惚の表情を浮かべながら、完全に目が危ない人になっている。舌なめずりをし少し頬を赤らめながらゆっくりと近づいてくる。
蘇生してくれるなら、以前の状態であればリムの奴隷解放が出来ると手放しで喜び、喜んでこの身を差し出し屠られていただろう。
だが、今は状況が違う。幾ら自分が死のうと蘇生後またリムの専属奴隷契約を一からやり直す羽目になる。
戦場で敵の手に落ち命を刈取られてしまったと言う不可抗力で再契約する際は仕方ないが、故意に再度再契約をさせる事は、リムの精神負担を考えると正直したくない。
ゆっくりと両者の距離が縮まって行くのを見ていた、フェンラは素早く両手を広げた状態でシアキの前に出て庇うような態勢を取り、少し怒った口調で話しだす。
「レレ殿!、冗談でもその様な事を口にするのは止めるのじゃ。それに今回の事で我はレレ殿との親友である事を辞退しようと決意が固まったのじゃ」
その発言を聞き今まで恍惚の表情を浮かべていたレレの表情が一変し目を見開き目をキョロキョロさせて焦った表情になる。
「え!トカゲっ娘、何を言っているのですの!。
これは悪ふざけで、冗談ですわよ!。 今の私の表情を汲み取って分かるはずですわよね?。
事前に私の冗談が見分け付く様にと決めてあるでしょ、アレを忘れたのですの?。
何故ですの、何故、私達は種族間を越えた親友なのでしょ、何故その様な事を言うのですの、それだけは冗談でも、私は言ってほしくはありませんわよ」
「我は事前に話し合って決めた事は全て覚えておるのじゃ。
それは冗談で行っている事も全て分かっておるのじゃ!。 じゃが我はレレ殿を!、いや、親友のレレ殿が暴走した際、我の命と引き換えに止めきる自信が・・・今回の事で自信を無くしたのじゃ。
やはり我等では、ルル殿達のような関係になるのは到底無理じゃ。 今日・・いや今、ハッキリと痛感したのじゃ。
今後は悲しいが親友としてではなく、シアキ殿の仲間の一人の、仲が少しだけ良い友で居ようではないか・・」
「イヤですわ、私がお姉様とお義兄様以外で唯一心を許した生者は、空族で竜人族のフェンラ・ランドルン・マムラだけですわよ。
えっと、えっと少し待ってくださいまし、抑止力、私を止められる抑止力があればいいのでしょ・・抑止力、抑止力、そ!、そうですわ!良い方法がありますわ、くふふ」
何か悩み良いアイデアが出たのだろうパーっと明るい笑顔を見せ渓に向かって走り出す。
「くふふ、では、楽しまず、すぐ終わらせてきますわね、トカゲっ娘、少しだけそのままで待ってて下さいましね・・」
そう言い躊躇なく偽者のレレは渓へ身を投げ落下していった。
「フェンラ、少し偽者とは言え凄くレレが焦ってたぞ。 それにお前達は「ルル」と「ラフェル」のような関係を目指してたのか?」
「ん!そうじゃ、我は何故かレレ殿とは上手く行くそんな気がしておったのじゃ、じゃがやはり無理であると今日痛感したのじゃ。
我は、あまりにも弱すぎるのじゃ、レレ殿があのように本気を出しておらぬ、遊びの状態でも我は親友として何一つとして止める術を持ち合わせておらぬのじゃ。
もしルル殿が同じく悪ふざけで遊び感覚で暴走しててもじゃ、ラフェル殿であれば止める術を持っておろう?。
力じゃなくとも、アノ美味しい料理で胃袋は掴んでおるし、ましてやルル殿が今回の修行過程で高位魔族にし、力をも授けておるのじゃしの!。
その点、我はレレ殿を止める為に何も持っておらぬのじゃ、料理は下手なので到底胃袋など掴めぬし、遊びの暴走程度も止めるだけの力もありはしないのじゃ、ましてや、我の強みは言葉だけじゃが、説得も通用せぬと先程の事で判明したのじゃよ・・今日我は何も出来ぬ事を改めて知らされてしもうたのじゃ。
・・そう!ただ、我は神族と親友ごっこをしておっただけじゃったのじゃよ。
・・悔しいが我には何も出来ぬのじゃよ、シアキ殿・・(グスン)」
涙を浮かべながら心に溜まった毒を吐ききった為か、涙がボロボロと落ちている。 その姿を見ているだけで心がざわつく。 何かしてやらなければと思いそっとフェンラを引き寄せ自身の胸に顔を埋めさせ頭を優しく撫でてあげる。
「フェンラ少し悩み過ぎだぞ、お前が思っている以上にレレも同じ事を、さっき考えて焦ってたんじゃないか!。
それにお前は何か勘違いをしてるぞ、良いか、良く聞けよ。
確かに修行過程でラフェルは高位魔族にはなったが、それだけでルルを力で捻じ伏せたり、ましてや屠れる力は一切手には入れてないんだぞ。
ただな、ルルはラフェル個人を相当気に入ったから、自分の最大の弱点となる事をラフェルに惜しげも無く教えて、いざとなったらそれで屠って止めてくれって言って教えたんだ。
因みに俺もその内容は聞かされて知ってる。
それと高位魔族になった本当の理由はな、俺の暴走時を止める為なんだ。
どうも俺は人族の間で修行を完全に終えると高位魔族位の攻撃力が無いと屠れないらしいからな!。
ラフェルは俺を屠って止める要員って訳なんだ。
一応俺とルルの二人で密かに「ラフェルの高位魔族化計画」ってのを立ててだな、ラフェルを騙し討ちする形で高位魔族にしたって訳だ。
それがたまたま今回の修行過程でルルが実行したのが真相だ」
「な!・・誠なのかそれは!ラフェル殿はルル殿から自身を屠る事が出来る程の弱点を教わっておるのは・・。
いや、それよりも、シアキ殿は人族で高位魔族同等の力が無いと屠れない程に成ると言う方が、誠なのか!」
抱き寄せられていたフェンラは突っ撥ねて距離を取り、驚きで涙等とっくに止まったようで、目を見開き、それは、それは、驚いた表情をしながら真剣に見つめてくる。
「残念だがルル曰く、そうらしいんだ。
あのルルが嘘を言うようには思えないから真実だと思うぞ。
それにフェンラも、武装形態引き上げたら高位魔族にも対抗出来る力は発揮出来るんだろ?。 お前も俺を屠って止めれる要員の一人として頭数に入れてるからな!、俺が暴走して最終止める手段が何も無くなって、ルル、ラフェル、レレ等が周囲に居なかったら躊躇なく俺を屠って止めてくれな」
「はぁ~何じゃ我の思考が全く追いつかぬ先の話がされておるのじゃ。 そんな笑顔で頼まれても困るのじゃ。 我はお主の事を好いておるのじゃぞ。 暴走した程度で惚れた殿方を何故に屠らねばならぬのじゃ。 そうなれば我も一緒に暴れて共に修羅の道でも歩んだ方がまだマシじゃ。
じゃが暴走する前に我が何とかシアキ殿の特性を突いて、一度限りの恥ずかしい手じゃが、正気に戻す位の事は我にでも出来る自信はあるのじゃ、安心するのじゃ。
全く少し自信が無くなり落ち込んでおったのが馬鹿らしくなる程の凄い話を聞かされたのじゃ。
我が少しルル殿とラフェル殿の関係性を勘違いしておったのは大きな収穫じゃったが・・はぁ~どうしたら良いかの~、我は先程、レレ殿にとんでもなく失礼な事をしてしもうたのじゃ、親友として裏切りにも似た事をしてしもうたのじゃ。 どんな顔をして今から会えば良いのじゃ。
あ~我は何故もっと思考せぬかったのじゃ。 我は親友として失格じゃ、力の差で臆して安易に結論を急いでしもうたのじゃ~」
頭を抱えたフェンラを見ていると、あの拠点から動けず暮らしていた時の初期の頃のラフェルを思い出す。
そうラフェルも修行をしながら一度だけ、今後の事や他種族でこんなに仲良くして良いのかとフト思い口に出して頭を抱えて悩んでいた事がある。
その時考えの深みに嵌り、どんどん要らぬ方向に考えがいき、ついに考えが纏まらなくなり、このまま森を抜け出す力を手に入れて森を抜け出しても、どうせ自分ではルルを止めるだけの力は無い足手纏いなるだけだと本気で悩み、一層の事ここでルルの手で自分だけ屠られてしまった方が良いと変な発想の元、ルルが怒りそうな事をして口喧嘩を仕掛け挑発した事があったが、幸いルルはそんな挑発行為には乗らず、訳を聞き、一切の躊躇をする事なく自分の弱点になる事を教えて、いざとなったらソコを攻めて無力化してくれと笑って抱きしめ合って解決したのだ。
恐らくレレもルルと性格が根源は何処か似ているので、方法は違えど同じ事をする可能性はある。 あの少し悩んで結論を出した時の笑顔は本当に似ていたのだ。
そしてしばらく時が経ち、渓谷から悲鳴等が全く聞こえなくなったのと同時に、翼竜人一名と共にレレが転移で眼前に現れた。
「お待たせしましたわ、お義兄様、この国の民は肉の塊にして空間に放り投げてますので、後日必ず蘇らせますわ。 そしてコノ者が国王ですわ。 引き渡しますので後は好きにして下さいまし、屠るなら、この空間に放り込んでおいて下さいまし」
空間に歪を創り固定すると、もう心ココに有らずと言った様子でフェンラの前に駆け寄っていく。
「トカゲっ娘、お、お待たせしましたわ、さぁ~私に利き手側の手の平を向けて差し出してくださいまし、渡したいモノがありますの」
目を輝かせながら言われているので、利き手になる右手を差し出す。 その手の平の上に躊躇なくレレは自身の右手首を切り裂いて血液をドボドボと掛ける。
瞬く間に手の平一面血液で真っ赤に染まり、手の平から零れ落ちた血液でフェンラの足元や服の一部が真っ赤に染まっていく。
このままではレレが失血死するのではないか思える程勢いよく血液が流れ出ている。
この危険な行為を止めさせようと動こうとするが体がピクリとも動かない。 唯一動かせるのは目のみだけとなっていた。
「術が完成するまで、少しの間、全ての感覚が消失と体を暫らく動かせなくなりますが、少しだけ我慢してくださいましね、今から私への対抗手段を差し上げますわね。
術が完成すれば、私を瀕死の状態にする事が出来る様になりますので、これで、私との親友関係は続けられるでしょ」
信じられない発言にフェンラは抗議しようとするが喋る事が出来ない。 いや寧ろ体の組織一つ一つに神経を集中しないと、今息をしているのかそれすら分からなくなってきている。
そしてフェンラの瞳から光が消え虚ろな目になっていく。
「フェンラ!「フェンラ・ランドルン・マムラ」私の声が聞こえるでしょ!、何も考えずに目を瞑り呼吸をする事だけを今は考えなさい、ただ今は呼吸をする事だけを考えるのですわよ」
段々と意識が朦朧とし視界がブラックアウトしていく中、親友であるレレの声だけが鮮明に聞こえ、言われた通り何も考えずに呼吸をする事だけを考え全神経を注ぎ呼吸をする。
「はぁはぁはぁ、私も、そろそろ意識が朦朧としてきましたわ、ココが限界ですわね、これ程の失血量は久しぶりですわ」
血だまりの広さから相当な失血量と思われるので、目が霞んでいるのか何度も意識が落ちそうになっている。
そして目を瞑り荒くなった呼吸を整える為、数回深呼吸をした後、何重にも重なったかのような副音声のような声で呪文のように語り出す。
「『我が血において血の呪いを発動させる、血の契約者が望む時に我が身を屠れる程の力を代償無しに貸し与える。 血の契約者名はフェンラ・ランドルン・マムラ。この呪いは血の契約者が死する迄有効成り。 血の呪いを解除せし者に死よりも恐ろしい償いを与える』・・っかは・はぁはぁはぁ、ゴホッゴホッゴホッ・・ふぅ~久しぶりにすると喉が痛いですわね、はぁはぁはぁ、疲れましたわ」
肺に一気に空気が入ったかのようになっているのか咳き込んでいる。 全力疾走したかの様に大量に汗をかき肩で息を切らしながら、手首の傷口を瞬時に治癒し、意識が朦朧としてるのか何度も膝から崩れ落ちると思える程足をガクガクと震えている。 辛うじて踏ん張って立ちながら、フェンラの手の平に自身の右手人差し指を当て「呪縛」っと小さく叫ぶ。
すると足元に溜まっていた血液が意思を持つかのように血の文字となって這い上がっていく。 血の文字が血の文字の上にとどんどん重なり全身真っ赤になる。 そして足の先から順に体に吸収されるかのように血の文字が消えていく。
「はぁはぁはぁ、トカゲっ娘、しばらくは、はぁはぁ、はぁはぁはぁ、視界が・・あぁ~もう駄目ですわ。 視界が揺らいできましたわ、少し休まな・い・・と・・いけ・」
話の途中でレレは地面座り込みそのまま横に倒れ、猫のように丸まって寝息を立てながら眠りについた。 コレが逃げる絶好の機会だと思ったのかキゴファ翼竜人国の国王である翼竜人が上空に跳ね上がる。
それを見たエラルが腰を低く落としフ~っと一回深く息を吐いた後上空目掛け拳を突き出す。
物凄い風圧がキゴファ翼竜人国の国王の羽根目掛け飛んでいき見事は目の付け根に命中したらしく片羽根の付け根が変な方向に折れ曲がり、上空から錐揉み状態で森の中に落下していく。
素早くエラルは落下地点となる森の中に駆け出し森の中に消えていった。
「ちょ!一人で行ったら危ない・・・ん~まぁいいか!アイも居るしな!、エラル絶対無茶だけはするなよ~」
--- 98話目のみの後書き----------------------------------------
98話目最後まで読んでくださりありがとうございます。
どうでしたか?楽しんで頂けたならうれしいですが。
---余談---
シアキは女性陣達の女性の勘とは、とても敏感で、そして女性とは強かで、且、恐さを兼ね備えた生物だと思うのだった。
フェンラは自身の思考の深みに嵌り一人でドタバタするそんなキャラが定着?イヤイヤそんな事は無いですよね…。
レレはもうフェンラに対しデレ過ぎです。もうフェンラがやりたいと言えばどんな事でもやらせ、正しくない事でも正しいと言えば、それを正当化する様な勢いすら感じます。
今回の血の呪縛は血液一滴あれば成立するそんな術である。 ただ失血量で呪縛の強さが変わるので、今回レレは凄く無茶をしたようです。 後数秒遅れていれば気を失いそのまま失血死も有り得たでしょう。
エラルは単独で森の中に消えていきましたが、アイと共生中なので単独ではありません。
では、次99話目で、お会いしましょう。




