---96--- 移動 ララファ竜人国を目指し 4
山脈山頂付近で不自然に西日に反射して黄金の軌跡が残像となって八の字を描いたり上下左右縦横無尽に飛び回っている。
「凄いの~シアキ殿は武器だけを向うに飛ばし、戦っておるのか!。
あれじゃと、シアキ殿は無傷で戦力と体力温存が出来、相手の戦力と体力だけを削る事が出来るのじゃな!。
しかし向う側に居る三名の中に、この種族と無関係の者が含まれていなければ良いのじゃがのぉ」
「フェンラお姉さんは心配性ですね。シアキお兄さんの頭の動き見てください。
少し不自然だと思いませんか?。 何かを追っている動きに見えませんか?。
あと人数は三名ではなく恐らく八名です。 先程七名分の悲鳴が聞こえましたし、今は金属音がぶつかり合うような音が一つありますので!」
よく観察すると確かに頭の動きから推測するに何かを追うように上下左右に少し頭が動いている。
「ホントじゃの、何かを追っているような動きじゃな。 かなりの距離があるのに目視で確認でもしておるのかの?。 流石シアキ殿と言ったところじゃな。
我等の戦術方法とは全く常識外な事過ぎて少し理解出来ぬが、これでこそシアキ殿と言った感じじゃな、あぁ~我はシアキ殿達と出会って本当に良かったのじゃ。
我の第二の人生がこんなに楽しく騒がしく過ごせて充実するとは思わなかったのじゃ」
袖を少し引っ張られ、振り向くと先程まで無邪気で明るい素振りでは無くなって少し暗い表情を見せながらエラルが小声で話し掛けてくる。
「所でフェンラお姉さん、少し良いですか、もう私これ以上元気を装うの無理です。
シアキお兄さんは本当に私の事嫌いになってないのでしょうか?。
何故あんなに普段通り私と接してくれるんですか?私こんなんにシアキお兄さんが好きなのにあんな事して相当嫌われるはずなのに何故私を罵らないんですか?。
もう私、私、耐えられません。一層罵ってくれたらこんなに不安にならないのに・・どう思います?」
かなり我慢して不安に押し潰されそうなそんな印象を受ける程、顔が引き攣っている。
この世界では、戦場で負けた相手を地面に顔だけ出させた状態にして埋め、態と軍馬の排尿行為を顔に受けさせたり、軍馬の糞を掛けたり、唾や痰等を吐き付けたり、考え得る汚物を相手の身に付着させ相手の尊厳を傷付け侮辱する事がよく使われている。 あともう一つ最も卑劣は行為として戦地で祝杯を挙げ酔った兵士達が態と嘔吐した吐瀉物を相手に向け吐き出す行為と言うモノがある。 その悪い習慣が悪い常識となり、この世界の者達の中で、相手に対しての「最大の侮辱行為」として定着しているのだ。
そして異性の前で嘔吐行為を見せるのにはもう日一つ別の意味をも含む。
それは相手の存在そのものを汚物以下だと侮辱し、吐き気を催す存在だと口にせず訴える行為に等しくそれ相応の解釈をされ、行為を受けた者は相手に激怒し罵られたりするのが一般的なのだ。
だが、先程までのシアキの行動は何も気にしていないし、何も侮辱行為を受けても不快にすら思っていないと容易に推測出来、このシアキと言う人物にはこの悪い常識は通用しないのだと確信をもって断言出来るとさえ思ったが、エラル自身未だに不安が拭えないのでフェンラに不安を打ち明けたのだ、いや声に出す事で胸の痞えを取り除きたかったのだ。
「エラル殿!それに関しては気にする必要はないのじゃよ、
確かに、本来ならあの行為は千年の恋で合っても、あの一回の行為で冷めるとさえ言っても過言ではないと思うのじゃ。
じゃが、事、シアキ殿に限ってはソレは全く通用せぬし、何も心配する必要はないと思うのじゃ。
まぁ~気休めになるか変わらぬが、あの場で我が同じ様に嘔吐していても、シアキ殿は同じ行動を取ってくれたはずじゃよ」
その言葉に反応するようにエラルの口を使いアイが喋る。
「フェンラ様の仰る事は正しいかもしれませんよエラル様。
シアキ様は我々の常識が通用しない方ですし、あの方の常識は私達の非常識と考える方が正しいと思いますよ。 「アイ様・・・でも私は見た目が獣ですし、最初から女性扱いされてないとも考えられませんか?、動物扱いされているならあの様に平気で処理されるのも納得出来るのですが・・(グスン)」
もう今にでも涙が零れ落ちそうになっている。
先程までの元気でいつも通りの振る舞いをしていたのは、いつも通りの元気な子を装って相当無理をしていたのだと知り、それに気付けなかった自分に少し腹が立つ。
あの時もう少しだけ心のケアーをきちんとしてあげていれば、こんな涙目を浮かべさせ不安に押し潰されそうな表情をさせずに済んだはずだと、過去の自分を殴ってやりたくなるフェンラであった。
その最低行為をしてしまったエラルは今、不安で不安で色々と考えてしまい、どうしても何か納得出来る理由が欲しくて仕方ないのだと思わる。
「不安なのは分かるのじゃが、シアキ殿はエラル殿を動物扱い等する訳が無いし、きちんと一人の女性とし見ておるのじゃよ。 そんなに自分を下げる発言はしなくていいのじゃ。 大丈夫心配する必要は何処にもないのじゃ!」
「・・じゃ~私のドコに女性として扱われる要素があるんですか?。 こんなに獣ですよ!フェンラお姉さんみたいに見た目人族ぽくも無いですし、魅力的な体つきでもないんですよ。 そうとでも考えないと私、心が折れそうになります」
恐らく此処で何を言っても自分ではこの不安を取り除いてあげる事は出来ず逆に不安を増す材料を与えるだけだと思う。
この不安を除けるのは、シアキの発言と態度だけなのは十分分かっているが、その本人は今戦闘中であるので出来れば邪魔はしたくはない。
もう少しだけ不安解消になるように自分が考えられるだけ一つ一つ不安に思った事を潰してやるべきだとの思いに至る。
「そんなのは簡単じゃ!今着ている服は女性物ではないか!。
その衣装はシアキ殿がエラル殿の為に用意してくれた物であろう。
尻尾のある女性特有の問題となる尻尾でスカートが捲れ上がり下着姿を異性に晒さぬようにと尻尾穴付の衣装を用意してくれておるではないか!。
衣装一つにとってもこの気配りをしている事からエラル殿は女性として扱われている証拠じゃよ。
それに先程我等の事を王妃であると翼竜人達に向け宣言しておったのじゃぞ、王妃とはシアキ殿の妻であると言う事じゃ。
シアキ殿が男性である以上、妻は必然的に女性であると公に他国の者の前で俺の女だと言われておるのじゃぞ」
「「エラル様、私は人族の繁殖方法は存じませんが、王妃とは女性である事で間違いないと思いますよ」 そ、そうですが、私を王族入りさせたのは、リムさんを専属奴隷にしたい為にとも考えられませんか?」
やはり何を言っても次の不安材料を見つけそれに答えられなければ、それを理由に心を閉ざし逃げる材料にしようとしていると思われた。
そして今の言動だけは逃げる材料に使う事は許せれない言葉であった。
「エラル殿!本気でソレを言っているなら我は怒るのじゃぞ!。
我等、いやシアキ殿は仲間の誰一人として道具扱いせぬし、そんな卑怯な考えを、あのシアキ殿がする訳が無かろう。
不安なのは分かるのじゃ、じゃが逃げる理由に仲間を使うのは間違っているのじゃ。
その様に負の感情に押し潰され、考えが間違った方向に進むのなら、直接シアキ殿に聞いてみるといいのじゃ!。
シアキ殿!答えてくれなのじゃ!エラル殿はシアキ殿に取ってどんな存在の女性じゃ!」
大声を上げられビクッと体躯を跳ね浮遊ボード前に前方に居るシアキは振り向く。 両者共真剣な眼差しを向け、しかもエラルは何故か半泣きだ。 鼓膜が破けた事が相当痛かったのではないかと思うと益々山脈に居る者が憎くなるのであった。
「は!エラルは俺の大切な仲間であり、俺の国の第六王妃で、いつも元気一杯明るい可愛いケモ耳の女の子だろうが!。
それより、エラルどうして泣きそうになってるんだ?まさか鼓膜の回復時相当痛かったとかじゃないだろうな?。
クソが俺の仲間に、涙を出させる程痛みを与えるとか、絶対に許しちゃおけない連中だなアイツ等!。 すまんが、槍の操縦は集中して見てないと操縦出来ないから、もし自己治癒だけで痛みが残ってるなら、遠慮せずルルを呼んでちゃんと治してもらえ、いいな!こんな事で遠慮とかするなよ」
このいつも通り声色でいつも通り言葉を聞かされただけにも関わらず、不安と言う名の黒い心の霧が一気に晴れて視界良好になった気分になる。
「・・シアキお兄さんは心が広過ぎです・・(グスン)・・すみません忘れてください今の私の姿!。 そうですよね!私は、いつも元気一杯明るい私に戻らないとですね。
よーし、何だか元気が出てきました、私頑張ちゃいますね」
「シアキ殿はこの件は気にせず、後は敵と対峙してくれなのじゃ」
「・・・何だか分からんが、二人がそう言うなら分かった!」
山頂に向き直り再度頭を上下左右に動かし武器を操作しているそんな素振りを見せている。
「どうじゃエラル殿、心はスッキリしたかの?」
「はい、もうすっかり心に痞えてたモヤモヤみたいなモノが取れちゃいました。
それに私はシアキお兄さんの中では「元気一杯明るい可愛い女の子」だって思われているのが聞けて凄く元気が出ました。 私、やっぱりシアキお兄さんの事大好きです」
「自身の評価が聞けた点は少し羨ましいの~我の事も聞いておくべきじゃったかの~」
「駄目ですよ~フェンラお姉さんはきっと凄く頭が良いし美人さんですから、聞くまでも無く高評価貰えるはずですよ」
楽しく女性特有の猥談寄りの雑談に発展しそうだったのでアイは先程から気になっていた事を口にする。
「それよりエラル様、フェンラ様、シアキ様の腕を吹き飛ばした、アノ翼竜人がまだ生きてますが、始末しなくて宜しいのですか?」
「・・・アノ者は確かに犯罪者じゃ、国王である者の身を傷付けたしの~本来なら始末してしまう方が良いのじゃが。
瀕死の状態で態と放置しておるし何か利用する為とも考えられるしの~困ったものじゃな」
「フェンラお姉さん、アイ様、私に一任してもらえませんか?。
アノ翼竜人は獣人でもしない見苦しい戦いをし、シアキお兄さんの身体にあれ程の事をして、まだ生きてるのは許せません」
「・・・まぁ~犯罪者は屠っても問題はないしの~、分かったのじゃ、ここはエラル殿に一任するのじゃ。」
「私はエラル様の決定に従いますよ。 「ありがとうございます。では、これよりマムラ王国国王であるシアキお兄さんへの身体損傷の罪に対する刑を執行しちゃいます」」
浮遊ボードから身を乗出し捕縛空間に捉えられている「く」の字で白目を剥いている翼竜人に邪眼の物体拘束を施し目線を上げ一気に地面に叩きつける。叩きつけられた事で絶命し心音が消えた事を確認する。
「刑は完了です。 「エラル様もう邪眼を自由に使えてますね、流石です」。
あ、はい、もう体の一部のように使えてます」
その一人二役で喋っているエラルを横目で確認し、浮遊ボードから身を乗出しフェンラは眼下の森の中に居る「く」の字に曲がった翼竜人を確認する。
あの状況では確実に絶命したと思わただろうと確信する。
眼下で凄い音がしたので見ると腕を切り落とした翼竜人が地面に叩きつけられた状態で絶命していた。
槍の俯瞰映像が煙幕による煙で何も確認出来ない状態になったので槍を停止させて、振り返りエラルに話し掛ける。
「どうした?エラル何も今すぐアイツを絶命させて罪を償わせなくても良かったんじゃないか?」
その発言は「後で屠る予定だった」と言う事であると知りフェンラは少しだけホッとする。
「いえ、シアキお兄さんにあんな酷い事をした犯罪者が一瞬でも生きているのは、私も王族として我慢出来なかったので、先に刑を執行させてもらいました」
「そっか、エラルも王族として自覚をもって行動してくれたんだな嬉しい事だ。
じゃ~一応その死体は捕縛空間に入れておいてくれ、あとで死体回収されて、事が何もなかったとか言われたらイヤだからな」
「あ!はい、分かりました、空間に入れておきます」
「それとエラル、山頂の奴の声とか何か音とか聴き取れないか?煙幕を焚かれて何も確認出来ないんだ!」
「え!はい、ちょっと皆さん静かにしてください・・「何だ・・・あの槍は・・・・!煙幕は・・・・・!絶対奴・・・・串刺しに・・・やる」
ごめんなさい少し風の音で所々しか聴き取れません。 あ!こっちに向かってくる様な風の音がします・・・」
そのエラルの発言を聞き山脈側に目を向けると煙幕を焚きながら一人の翼竜人が一直線にコチラ向かって飛んできていた。
こちら側からは、姿が丸見えであるので、シアキは槍を一度天高く上げ目視で煙幕の先に居る翼竜人を捉え捕捉する事に成功する。
捕捉出来ればあとは自動追尾を開始するだけだ。 急降下しながら槍はドンドン相手との距離を詰めていく。
槍が凄い勢いで自動追尾し追って命を刈取ろうとしているにも拘らず恐怖等を一切感じている様子で向かって来ている。
寧ろ何かしらの勝てる算段を備えた策があり確実に一矢報いる事が出来るとさえ感じさせる程闘志漲った捕食者特有の眼をしている。
策として考えられる手は単純に考えて実現可能なモノは四つ程だろう。
一つ目は、飛行してきている運動エネルギーをそのまま乗せて、鋭い爪で引掻き身体的に致命的な損傷を負わせ、治療している隙に逃げようと考えている。
二つ目は、一つ目の行動に加え、シアキを盾のようにして、後ろから自動追尾してきている槍に当てシアキの絶命だけを確実に狙おうと考えている。
三つ目は、完全に捨身を考え、シアキの身に爪を食い込ませ捕縛し、そのまま、後ろから自動追尾してきている槍に自身の身体事貫かせ、最後に駄目押しで至近距離での破壊の吐息を放ち共に絶命してしまおうと考えている。
四つ目は、仲間達を狙うという事だが、散々破壊の吐息を放って障壁で守られ攻撃が通らないと言う事を学習しているはずなので、どんな馬鹿でも戦術的不利でしかないと理解し手は出さないと考えられる。
この四つ目の考えを相手から完全除外出来るように、態々自身の腕を負傷させて防御力が薄いと思わせ、お膳立てをしたのだ。
どんな馬鹿でも戦術的最も勝算が高いと思わる、確実に壊せ相手に甚大な負傷を負わせられる確実性を取りその相手一点を狙い行動する捨身の行動に出るものだ。
こうなる事を予想していたので、ニターっと悪戯っ子がする嫌な笑みを浮かべてしまう。
仲間達は、その表情を見て此処まで思惑通りに進んでおり、相手がキッチリ策に嵌まった行動を取っているのだと感じ下手に手出しして邪魔だけはしないようにと少しの間は何もせず見守りつつも、いつでも迎撃出来る準備をしておく。
だが仲間の中で一人冷静ではない者が居る。
向かって来ている翼竜人は、自分が好意を持っている愛すべき者の腕を切り落とし酷い事をした憎き殲滅する種族として眉間に皺を寄せて睨みつけ、今にも飛び出し相手を滅殺したいのを我慢しながら、リムを膝枕しその頭を優しく撫で様子を見ている。
「シアキさん!私も攻撃に参加します。良いですよね?。あんな種族殲滅しないと私の気が収まりません。 腕も直りましたし、リムちゃんも落ち着いていますので、私も動きますから!」
チラッとラフェルの様子を見て、怒りでまた目の色が変わっているが、冷静に膝枕しならがら、リムの頭を優しく撫でているのを確認する。
ここで戦闘に参加などさせる訳にはいかない、もしそんな事をすれば色々面倒な根回し等の策を幾つも施さなければならなくなる。
今はどんな事があろうと、ラフェルには王位を取り戻しす際までは、犯罪者以外の如何なる相手に対しても力を使い攻撃を仕掛けてもらっては困るのだ。
「駄目だ!ラフェルはリムを見ててくれこの中で一番弱いのはリムだから、傍に居て守ってやってくれ。
ルル!すまんが念の為、二人でリムを守ってやってくれ」
「そんな!シアキさん。ルルちゃんが守るなら、私が戦って相手を殲滅しても何ら問題ないじゃないですか!」
何故リムを守るだけならラフェルだけで十分事足りるのに、自分も含めたのかを考え、これはただ単に暴走するかもしれないラフェルの御守役に自分が選ばれたと理解する。
「は~い、分かったよ~ラフェルちゃん諦めて今回は私達でリムちゃんの安全確保してよ~。
それとも~また策の読み違えをして「暴走ラフェルちゃん」になっちゃうのかな~。
今度暴走したら、しばらく口聞いてくれないかもよ~私は知らないよ~一応私は止めたからね~」
また策の読み間違えをして怒られ今度は口を聞いてもらえなくなる程嫌われるのだけは嫌だっと瞬時に事の重大さ理解し、首を激しく横に何度も振って動揺を隠しきれない様子で否定をする。
「え!・・・な!何言ってるのかな~ルルちゃん。
私はシアキさんの言う通り、リムちゃんを守るに決まってるじゃない、可笑しなこと言ううんだから~ぼ、ぼ、暴走なんてしないよ~私!ヤダな~も~高位魔族になったんだよ~自制出来るって~ははは、ルルちゃんは冗談も分からないのかな~ははは」
もうラフェルの扱いを心得ているルルは親指を立ててシアキに「大丈夫」っとサインを出してくる。
それを見て頷き、向かって来ている翼竜人がまだ接近して来るまで、もうしばらく時間が掛かりそうなので、エラルとフェンラにも指示を出しておく。
確実に、今回、エラルは自己判断で邪眼を使って物体拘束し相手を停止状態にしようと考え行動すると容易に予想できた。
まだ邪眼での物体拘束実験は静止物体か緩やかに動く物体等しか試した事が無い、あれ程の高速で動く物体を静止状態に一気にした場合相手の体に大きな重力負荷が掛かり全身骨折、最悪その場で風船が弾ける様に粉砕爆発する可能性もある。
そして何より邪眼使用者がその運動エネルギを全てを相殺し負担なく出来る保証はない。
最悪使用者にその運動エネルギーが眼球に負荷となり眼球全て破裂し脳迄損傷して絶命や、そうならなくても失明する危険性も考えられるので使用させない方が賢明だ。
「フェンラ!エラル!邪眼で高速移動してくるモノを絶対に物体拘束するな。
物体拘束で止められる負荷限界があるか判明してないから安全優先で絶対使用はするな、いいな!。
取敢えずお前達は何が起きてもその中で自分達の身の防護を最優先に考えて待機しててくれ!。
アイツは真直ぐ俺に向かって来るだろから俺が相手する、手出し無用だ」
「そうじゃな、邪眼はまだ分からぬ事が多いゆえ従うのじゃ、では我等はこの中で見学してるのじゃ」
「分かりました、私も使用せず待機してますので、シアキお兄さんにお任せします」
両者は素直に従い、障壁があるので打撃を撃ち放つ事も出来ないので、ただただ向かって飛んでくる翼竜人を眺める。
相変わらず方向はシアキに向かい真直ぐに飛んできている。
恐らくこのままではシアキに一撃を入れようと考えて行動していると仲間全員思うが、予想に反して、シアキの前で直角に角度を替え一気に急上昇し、フェンラ達が居る浮遊ボードを目指し飛行していき、防護用の障壁に無様に、ヤモリの様に張り付いた。
俯瞰映像で飛行の仕方等を確認する為態と追い込んで急上昇出来るか等の情報を確認し、ほぼ直角に近い急上昇等は出来ないと奴は演出していたのだと知り少し苛立ちを覚える。
この行動を相手から完全除外出来ていると思っていたのだが、予想に反して選択された事に一瞬この後どう出るかと考えてしまい、数秒の時が無駄に流れ呆然とその光景を見入ってしまう。
三者の目線が合い翼竜人は、嫌らしく自分を追尾してくる槍が直角に角度を変え急上昇して来るのを確認している。
中に居る者に向け、何も考えていない様子で歯を剥き出しにして実に嫌味な微笑を向けて来る。 この間たった数秒だが、このヤモリの様にへばり付く翼竜人種は本当に何の策も考えず、ただ己の強さを誇示し戦場で派手に死ぬ事しか考えていないのだと思わせる様な笑みだった。
さらに数秒後、槍がギリギリ迄迫って来るのをチラチラ確認し、障壁の膜を更に抱き抱えるようにし、羽根を少し犠牲にする形で素早く身だけを避けた。
羽根の中心を貫かれ、障壁に槍を当てた。 槍はそれ自体が高速振動と真空の刃を穂先を纏っている。そして追尾する事を止めないのでそのままを突き破ろうと進んでいる。
幾ら障壁の硬度がルル並にしていても一点に負荷を掛け続けた場合、容易に貫通はする。
案の定、数秒障壁で止まっていたが、見事に貫通し槍が中に居た者達目掛けて通過していく。
動体視力向上と回避上位を習得しているエラルは、高速で飛翔してきているが、殆ど飛んでくる槍は止まっているかのように感じ余裕で身を交わす。
そしてフェンラは避けるよりも咄嗟に槍の太刀打ち部分に打撃を叩き込み軌道を逸らした。 穂先に直接打撃を叩き込んでしまった場合、腕が切り飛ばされていただろうが、幸いにも真空の刃の方には触れていなかったので惨事は免れた。
だが槍はそれ自体が高速振動しながらしかも高速で飛んで来ていたので、そんな物に拳を当てた為、フェンラの右拳が引きずったような少し肉が削がれて痛々しい傷が出来ており、血が滴り落ちている。
此処までほんの瞬き数回分程度の数秒の間に起きた出来事だった。
「流石シアキ殿が放った武器じゃ。 太刀打ち個所に少し触れただけじゃのに、少し修行で強くなったはずの第三武装形態時の我の防御力をもってしても拳がこんなにボロボロじゃ。!あっぱれじゃな」
俯瞰映像で見ていたシアキは慌てて反対側に貫通した槍を上空で緊急停止させ、浮遊ボードの色を完全透明させ、中に居る者の様子を窺う。
あろう事か、仲間であるフェンラの右手から軽く鮮血がポタポタと床面になっている個所に落ちて小さな血だまりが出来ているのを目視確認し、これでもかと目を見開き驚いた表情をしている。
大切な仲間に対し自分が放った武器と魔法で怪我を負わせてしまったと事に対し凹み。
その負傷させる原因を作った翼竜人に対して怒りが込み上げプッツンしてキレてしまった。
足場を蹴り上げ一気に飛翔し距離を詰め、背中部分に飛乗る。両翼の付け根に手を掛け、躊躇なく魔素を羽根の付け根に集約させ一気に体重の二百倍の重力加重を掛ける。
付け根部分にそんな加圧を掛けたので、圧に耐えきれなくなり羽根は付け根から千切れて吹き飛ぶ。
千切られた個所から血が勢いよく噴き出したあと鼓動に合わせるように血が噴き出している。
断末魔の悲鳴を上げ、あまりの激痛だった為か防護用の障壁膜に張り付いていた手を離しそのまま落下していく。
空中でシアキは捕縛用の摩擦空間を展開し、その中で無表情のまま尻尾の付け根に魔素で同じく重力加重を掛けて千切り飛ばす。
「この腐れ戦闘馬鹿翼竜人族が!俺の腕だけなら、条件次第では許してやろうと思ったが!。
よくも俺の大切な仲間の体に傷を付けてくれたな。
しかもその傷を付けるのに使用した物が俺の放った武器を利用しやがって、もうお前達種族は全員生かして利用してやろうとか、もうどうでもいい!。
色々考えてた策は、もう全てどうでもいいぞ!。
そんなに戦場で死にたいなら、お前達翼竜人族種ただの一匹も残らず殲滅しこの世から絶滅させてやるから覚悟しろ」
攻撃を仕掛けた張本人の翼竜人の角の付け根に魔素で同じく重力加重を掛けて圧し折る。
折れた角を太ももに押し当て打撃を撃ち込む。加減を間違え太ももを貫通する。 痛みに耐え切れず叫び声を上げている。
「たかが羽根と尻尾と角が千切れただけだろうが!喚くな耳障りだ!少し黙ってろ!」
躊躇なく顔面に打撃魔法を使い拳を叩き込み、捕縛中の翼竜人達の下迄吹き飛ばす。
既に瀕死の状態で白目を剥いて気を失い辛うじて息をしてはいるが、虫の息と言う状態になっている。 捕縛中の翼竜人達は、虫の息と言う状態の自分達の隊長の姿を見て一斉に絶望の目をし後悔した表情を浮かべている。
摩擦空間で打撃を入れた為、少し威力が落ち一撃で仕留められなかった事をシアキは冷静に分析し次はもう少し威力を上げようと考えながら捕縛中の者達の下にゆっくり怒りの表情を浮かべながら降下していく。
「クソ、摩擦空間は、こう言う時不便だな、一撃で仕留めれなかったぞ!。 クソ!次は確実に一撃で仕留めてやる」
「シアキ殿がキレおった。これは流石に止めるべきじゃ」
「あのままでいいじゃないですか!シアキお兄さんの腕を落とした種族なんかこの世に要りません。
それにあの翼竜人達は、フェンラお姉さんをも傷付けたので、怒られて当然です。
あんな種族は命を持って報いを受けるべきです。 「そうですエラル様の言う通りですよ、フェンラ様。 シアキ様の大切な仲間であるフェンラ様の身を傷付けたのですよ、その報いを命で支払って当然です」」
「我の為に怒ってくれているのは凄くうれしいのじゃが、駄目なのじゃ!。
まだ思考するには、材料が足らな過ぎで考えが纏まらぬのじゃが、我の為に策を変更しては、シアキ殿が腕を切り落としてまで、やろうとしていた策が全部無駄になってしまう・・それだけは避けなければならぬのじゃ。
今は思考しておる時間が勿体ないのじゃ、
我は屠った者を蘇らせる事の出来るレレ殿を、いや・・ルル殿を説得・・いや、ココはシアキ殿を動揺させ、動きを一時的にでもこちらに向けるべきじゃな」
瞬時にフェンラなりに思考を終え、浮遊ボードから身を少し出して眼下に居るシアキの注意を引く様に大声を出す。
「シアキ殿~そんな連中を屠るのは後にしてはくれぬか!、
早くレレ殿を呼んでくれなのじゃ!我の手の治癒を親友であるレレ殿にお願いしたいのじゃ。
あ~シアキ殿、我の手が凄く痛い、痛いのじゃ!ほれ、見てくれシアキ殿、我の手が凄く痛むのじゃ」
態とらしく痛がって見せフェンラは注意を向けさせようとしている。
怪我の具合を確認する為、ルルがスッと上昇して来た。 負傷した手を確認するが、血は確かに止めどなく滴り落ちているが、竜人であれば大した傷ではないと思われた。
両者は目線を合わせる。 小声でフェンラは「二人共、お願いじゃ、シアキ殿をこれ以上暴走させてはならぬ、注意を引くため協力してくれなのじゃ」と言い協力を求める。
コクリと頷きルルはニターっと悪戯っ子がする嫌な微笑みを見せ、エラルもコクリと頷いた後、浮遊ボードから身を乗出しシアキに声を掛ける。
「・・・シアキお兄さん大変です!フェンラお姉さんの手から血が止めどなく流れてます。
早く、早く、ルルお姉さん、止血してあげてください。このままでは・・・あ!シアキお兄さん大変です、フェンラお姉さんが気を失って倒れちゃいました!」
倒れたと言われ慌ててフェンラは浮遊ボードの上で倒れ気を失ったフリをする。
小声でフェンラはエラルに向けて「コレはちとやり過ぎではないかの~エラル殿」っと呟く。ニコリとエラルが微笑んだように見えた。
目をキラキラと輝かせ今、悪戯をしている事を楽しんでいる様だ。
実際エラルは悪戯はされる方が多い為、こうして悪戯をしたことがないので、ここぞとばかり今悪乗りしているのだ。
「な!何~、気を失った!え!え!・・・ルル早く治療を!」
少し慌てふためている姿を見てルルは笑いそうになる。 展開されている障壁を片手で軽く払い破壊して中に入りフェンラの負傷した手に手を翳し止血をしようと術を掛けるが術が発動しない。 これは術の無効化が施されていると瞬時に判断し態とらしく大声をあげ状況を下に居るシアキに聞こえるように話す。
「あ~凄い手がボロボロ!中の神経系もズタズタに引き裂かれてるかも~これ私一人じゃ時間掛かるかもしれないよ~。
シアキ!取敢えずフェンラちゃんに施した術の無効化は解除して~じゃないと治癒術が発動させられないよ~。
それとレレちゃんを呼んで~今私、手で押さえて止血するので一杯一杯だから~代わりに念話でレレちゃんを呼んで~」
「っえ!あ!マジか!すまん、解除だなえと・・(魔聖素解除)・・解除出来たぞ、ルル!術で早くフェンラの止血をしてやってくれ・・・後はレレだな待ってろ・・」
怒りなど何処かに吹き飛んだ感じで、慌てた様子を見せるシアキの見て、リムは動揺を隠せず目を見開き浮遊ボードの障壁に手を当てて食い入るように見ている。
後ろからラフェルは腰に手を回し障壁が消えてしまった場合を考え軽く抱くようにして、事の成り行きを黙って見守る。
本来なら大切な仲間が怪我をしているので駆け寄りたいのだが、ルルの口調からして、それ程焦る必要もない事だと推測出来たので、此処で再度勝手に動いた場合を冷静に思考し待機を選択するのだった。
『レレ、すまん緊急事態だ来てくれ、俺の魔法で放った武器がフェンラに当たって、凄い負傷させてしまったんだ。 兎に角早く来てくれ、ルルが今止血してくれいるんだが、フェンラは意識無くして倒れてて。 あ~兎に角、後でどんな要求にも応じるから、お願いだ、フェンラが死んでしまうかもしれない。早く来てくれ』
もうシアキは仲間が負傷すると周りを冷静に見れなくなるので、事を大袈裟に捉えてしまう傾向がある。
『な!トカ・・・フェンラがですって~何をしているのですのお義兄様!分かりました今行きますわ』
浮遊ボート前にレレが転移してくる。 浮遊ボード内の床部分に姉が横たわっているのフェンラの手に手を翳しているのを発見し、目を丸く見開き驚いた表情をする。
再生成された浮遊ボードの障壁はルル、フェンラ、エラルの防御力を反映している為、容易に破壊して中に入れない状態だ。
破壊しようと力を込めるが、破壊の衝撃で中に居る者達に二次被害が出るといけないと瞬時に判断し、再度フェンラの横に転移して中に入った。
床に血だまりが広がっているが、お構いなしに横に座り、すぐさま親友であるフェンラの状態を確認しようと手を伸ばす。
意識を無くして気を失っているはずのフェンラが申し訳なさそうにニコリと微笑んで見せ、右手を少し動かし傷を見せてくる。 お互い無言で目を合わせ親友の行動と怪我の具合、姉が術を何も発動させず何処か笑いを堪えている表情から推測し、少し質の悪い悪戯をシアキに対して実行しているのだと理解しホッとした表情を見せ、すぐさま傷に対しての治癒を終え、小声で「もう少し寝てなさい」っとフェンラの耳元で囁く。
「あ~なんて酷い有様ですの!手がこんなにボロボロですわ!。
お姉様は引き続き止血をお願いしますわ・・私が内部を治癒していきますわ」
下に居るシアキはそれを聞き少し動揺する。 その動揺がリムに伝わり、不安そうにラフェルの腕にしがみ付く。 不安を取り除いてあげる為、ラフェルは優しく頭を撫でてあげながら優しく諭してあげている。 悪戯が成功している事を知りルルとレレはニターっと微笑みクスクスっと笑い。 する事が無くなったエラルは眼下で慌てているシアキを見て少し申し訳ない気持ちが生まれる。 そしてフェンラはコレでなんとか時間が稼げたと思い今の内に思考してしまおうと考える。
「ところで?何故お義兄様の武器でトカゲっ娘は、この様な傷を負ったのですの?」
小声でルルに事の成り行きを質問しながら辺り気配感知を状況を確認し、相当アタフタしているシアキの傍に劣等種が空中で捕縛されているのを確認する。
そっと眼下に居るシアキを確認し左腕部分の衣装が無い事に気付き、左肩当りに治療術の気配等の痕跡を目視だけで看破する。
「あれ!お義兄様の左肩どうかなされたのですの?お姉様の術が発動した気配を感じますわ。 お姉様何がありましたの?」
目線を戻しレレに見つめられる、その目は探求する者の目だ。 此処で嘘や誤魔化すとレレの性格上暴れだしてもおかしくないので、事実をそのまま伝える。
「えっと私も詳しくは知らないんだけど~下に捕縛されている翼竜人ってのがシアキの左腕を切り飛ばしたのよ。
その負傷したって感情を、リムちゃんが感情共有で気付いて~私に教えてくれたから~私が此処に転移してシアキの腕を接合治癒したんだよ~。
あとフェンラちゃんの傷は、羽根と尻尾と角が無くて瀕死の状態に成ってる子が居るでしょ~アレがシアキの武器を利用してフェンラちゃんを傷付けたんだよ~」
今まで悪戯をして凄く楽しそうな目をしていたレレの表情が一変し感情の籠っていない目になる。 エラルとアイはその変化に全く気付いていない。
これは肉親であるルルと、親友となったフェンラ、義兄であるシアキにしか今の所レレの表情の変化は分からないのだ。
他の仲間達ではレレはいつも無表情で氷く様な瞳をしているとしか思っていない。
「はぁ?・・・私少しだけ、お義兄様に用が出来ましたので、此処はお任せ致しますわ」
そう言い残すと転移で消えていった。そしてしばらくすると下から断末魔の悲鳴が次々と聞こえてくる。
下から断末魔の悲鳴を聞き、慌ててフェンラとエラルは浮遊ボードから身を乗出し眼下を見下ろす。
そこには、無表情で空間に捕縛されている翼竜人を次々捕縛空間から放り投げては羽根を毟り取っては、首を撥ねとばし絶命させているレレが居た。
構図が変わっただけで、殲滅作業が続けられている事を知りフェンラは浮遊ボードにある障壁にドンっと音を鳴らして手を当てた状態で愕然とする。
「なんて事じゃ!シアキ殿は何もせず、今度はレレ殿が殲滅しておるのじゃ」
時折恍惚な表情を見せながらレレは楽しそうに翼竜人達を屠っている。
「止めるはずが、強力な加勢を増やしちゃいましたね」
「全くじゃ。 はぁ~折角我はシアキ殿を止める為演技までしたと言うのに、今度はレレ殿とは・・・。 全くシアキ殿も冷静さを取り戻しておるのなら何故レレ殿を止めぬのじゃ!。
ここは頭脳として何とかこの状況下でも被害は最小限に抑える為、今我は試されておるのか?。 あぁ~分からぬが、このままでは、今までシアキ殿が行っておった誰も殺さぬと言う策が台無しになってしまい、要らぬ噂が流されて、ラフェル殿に多大な迷惑が掛かるのじゃぞ!。
あぁ~もう考えてる時間が勿体ない、ルル殿、すまぬのじゃが、レレ殿を力で押さえ込んで動きを止めてくれぬか!、我ではレレ殿を力で押さえ込めぬので頼むのじゃ。
押さえ込んでいる間に、我がレレ殿を説得してみるのじゃ。
エラル殿はシアキ殿を邪眼で拘束してこっちに引き上げて、しばらく動きを止めてくれなのじゃ。
我も最悪の場合となれば、邪眼は使うつもりじゃが、今日はシアキ殿に使用を禁止されておるので、取敢えずエラル殿頼むのじゃ」
的確な人選と指示内容だ。 コレで最小限の被害で済むと思わるが、ルルはレレの恍惚な表情を見て止める気にはなれない。 もしあの状態を途中で止めれば確実にレレの感知範囲内の全ての生者は死者に変えられ、死と混沌渦巻く地域と化すだろうと思ってしまう。
「う~んフェンラちゃん、あの状態のレレちゃんは流石に押さえ込めないよ~押さえ込むと逆に被害が拡大するよ~」
そんなやり取りはお構いなしにエラルは邪眼を使い、シアキを拘束し一気に自分の目線まで引き上げる。
「シアキお兄さん確保です」
全員の目線の高さまで一気に上げられ、気圧が変わり耳が痛くなるが、唾を呑み込み耳貫をする。
「・・(ゴクリ)・そっか!エラルがやったのか、邪眼をちゃんと使いこなせてるようだな、心配した魔素焼け等も疲労感もなさそうだな。どうだ実戦での使用感は!」
引き上げられた事等に一切驚いた様子を見せず、ココまで予想していた事が起きているっと思わせるような表情をしてエラルと楽しく会話をしている姿を見てフェンラは溜息をつく。
「はぁ~シアキ殿、お主はこうなる事をある程度想定しておったのじゃな!我が怪我をした事、レレ殿を呼び寄せた事、今レレ殿が暴れて居る事、全てお主の考え通りなのじゃな」
「ん!そうだな~少し思考した内容とは全然違う結果なんだよな~!。
あんな約束までして、レレが頭下げて来るとは思わなかったし、ましてや大切な仲間であるフェンラが怪我をするとか、全然予想してないかった事が起きて俺も少し頭が真っ白になったんだぞ。
本来はルルを呼んで腕治してもらったら、俺自身の腕の損傷を理由に静止を無視してある程度ルルが暴れ回るだろうな~ってのは思ってたんだが、約束した通り暴れなくて何もせずに居てくれたのも俺的には完全な読み違いだったんだよな~。ははは」
「へぇ~レレちゃんが頭下げてアレやってるんだ~じゃ~益々私が邪魔したら怒るから手を出さないでおこ~っと!」
急にシアキが上空に上がっていた事をレレは目線で追い敵の仕業であれば飛んで来そうな程に鋭く重たい視線を感じルルは楽しそうに手を振って見せる。
上空で楽しそうに会話しているのを確認し安全だと判断すると、レレは一切翼竜人見ず手刀でその首を撥ね飛ばす。
そして凄く怒っているそんな声色でラフェルは叫ぶ。
「エラルちゃん!、そのままシアキさんを拘束してて。ルルちゃん早く私達もそっち側に上げて!私少しシアキさんに言いたい事があるんです」
凄く怒っているそんな声色なのでルルは何も言わず、浮遊ボード内に転移してそのまま上昇してくる。
もう逆らうのは得策ではないと思える程、ラフェルの目は凄い冷ややかな目だった。
「シアキさん!私今凄く怒ってます!。
何故そうやって無茶ばっかりするんですか!、私決めました、シアキさんには少し反省してもらいます。
しばらくの間、ご飯はお野菜中心の食事にします。 食事中はシアキさんは私語を全面厳禁です。 また無茶したシアキさんと、私は、しばらく口を聞いてあげません。
そしてお風呂はお湯を入れた桶を部屋に持ち込んで、タオルで体を拭くだけの生活をしばらくしてもらいますから!」
そんな事が罰になるのかっと思うだろうが、このパーティー内で一度でもラフェルの料理を食べた事のある者は、ソレが食べれない事と一日の終わりにお風呂に入って疲れを癒すと言う行為を味わった者は、それらが出来ない事は、もう人生の!、いや!冒険者生活の半分以上を損したと思える程、精神的にキツイ事なのだ。
またシアキにとって一番キツイ事は、「お風呂に入れない事」と「仲間と楽しく会話をしながら食事が出来ない」という事だと仲間全員知っている。
それを知っているこの場に居る仲間全員心の中で「うわぁ~ヤダなそれ~・・でもお風呂以外はすぐ解除にされそ~」っと呟くのだった。
そう、私語厳禁やラフェル個人の無視はすぐにでも解除されるのは分かりきっている。
そんな楽しく無い食事風景に、ラフェル自身が耐えれないはずがないと容易に予想出来るのだ。
そして誰もシアキの擁護をして助ける者は居ない。
そう、仲間全員、瞬時に「シアキを擁護して助ける」と「お肉がある食事」を天秤に掛けお肉がある食事が勝ったのだ。
それに罰の内容が何処に落ち着くのかの成り行きを見守ってからでも擁護するのは遅くはないと思っている。
下手に今助けると、とばっちりで自分達の食事まで野菜中心にされ、しばらくお肉の無い生活になるのは嫌なのだ、色気より食い気が勝った瞬間である。 それ程ラフェルの料理は美味いのだ。
「いや待ってくれ、ご飯内容変更は致し方ない受入れるが、会話とお風呂が無い生活は流石にキツイぞ。な、な、それだけは勘弁してくれ!。
エラル!ラフェルが良いって言うまで拘束しててくれ、ホントすまんラフェルお願いだ、この通りご飯だけで勘弁してくれ、会話とお風呂は何とかならないか?お願いだラフェルもう無茶しないからその二つは勘弁してくれ~もう反省した、十分反省したから!な、な、な、お願いだ!」
「駄目です。お野菜中心で静かに食事し、部屋で体拭いて寝ちゃってください、それ位しないとシアキさんは、反省してくれませんので!」
このままラフェルとのやり取りも良いのだが、フェンラはレレの行動が気になる。
これ以上は本当に不味い状況しか生まないと思えるので、レレを止めると言う内容で話題を替えて、シアキに助け船を出す。
「シアキ殿!今回ばかりは無茶し過ぎじゃったぞ、我も流石に肝が冷やしたからの~、ラフェル殿の言う通り少しだけ反省するのじゃ。
それよりも、ルル殿、何とかレレ殿の動きだけでも止めてはくれぬか?」
眼下ではレレが翼竜人一人一人を捕縛空間から引きずり出し、逃げ惑うのを恍惚の表情を浮かべながら実に楽しそうに追い立てた後、首を撥ねたり胴体を真っ二つにしたりし死を弄ぶ行動を繰り広げている。
「無理、無理。アレがレレちゃんの本来の姿だしね~。
あんな楽しそうに生者の生命を刈ってるのを~邪魔なんてした日には、レレちゃんの感知範囲内に居る生者全て死者に変えられるかもよ~。
それにシアキに頭迄下げて、許可は取ってやってるんでしょ~其れって国王の許可済みって事でしょ~益々邪魔はしたくないよ~」
確かにどんな国でも王族の身に刃を当て身体を傷物にすれば、争いになっても国が滅亡しても文句は言えないだろう。
ましてや、争うのに十分な大義名分はこちら側にあるのだ。そしてその大義名分を正当化する為にシアキは国王としてレレに許可を出したと推測出来る。
だが今は優等国が名も知れていない劣等国であるマムラ王国の王族の身を傷付けた程度であると世界からは思われるだろう。
そして調べれば、マムラ王国の国王は人族が納める国だ、他種族の国の者から見れば、種族的劣等国が種族的優等国と争った国として問題視され、知らぬ間に他国の反感を買い戦争の火種にされかねない。
意図的にシアキが他国の者達に自国の存在と考え方の違いを知らしめる為に行動しているとも考えられるが、こんな中途半端な空族の国を相手にしても効果は薄いと思われる。
やはり的確に名を他国の者達に知らしめるなら、ラフェルがジルベル魔人国の王位を取り戻す際の魔族の国との争い事を利用する方が利点が大きいと思われる。
国の加護者である「ラ」の一族である者の名や、王族に「ラ」の一族である者「ア」の一族である者の名を目にする事になれば、迂闊にマムラ王国に手を出す国は少ないと思われるが油断は出来ない。同じ「ラ」の一族や「ア」の一族の者に目を付けられて、襲われる危険も十分考えられる。
色々要らぬ想像を巡らせ、思考が焼き付きそうになったので考えるのを止める。
そして今回は戦争はするべきではない、ただそれだけを考え被害を最小限にする為には、親友であるレレの行動を此処で止めなければならないとのやはり考えがそこに立ち返ってしまった。
だが、親友であるレレを見る限り、実に楽しそうで久々に身を動かしているそんな印象を受ける。あんな楽しそうにしているレレを止めると、きっと怒って口を聞いてくれなくなるかもしれないが、両者間で話し合った際に決めた「ラフェルがジルベル魔人国の王位を取り戻すまでは、如何なる理由でも犯罪者等以外、故意に他種族を殺めない」もし殺めていたらキチンと指摘し止める事と約束している。
力では到底レレを止める事は出来ないので、予め両者間で止める文言を決めているので、それを大声で叫ぶ。
「レレ殿!それはシアキ殿の策を全て打ち壊すのじゃ、今すぐその行為を止めて全員蘇らせるのじゃ。
もしそれ以上するのなら、我は親友の目を覚まさせる為、我の命を此処で終わらせるのじゃぞ!」
時すでに遅し、最後の一人の翼竜人の首に手刀を当てた所であった。 上から事前に決めた行動を完全抑制させる為のキーワードが投げ掛けられたので、フェンラと目線を合わせニコリと微笑んで見せる。
「トカゲっ娘、・・・すこし待っててくださいまし」
そう言うとニターっと悪戯っ子がするような微笑みを見せたあとスパーンっと躊躇なく首を撥ね飛ばして見せる。
「ん~この場の劣等種を狩り尽くしましたわ。 あ~なんて爽快なのでしょ、久々ですわ~この高揚感と爽快感は」
その場で伸びをして清々しい表情をしている。 手や顔衣装等に返り血をたっぷり浴びていなければ妖艶な美少女の伸びをした姿としてはかなり見ているだけで心が癒されるだろう。
「何故じゃレレ殿、我との約束を覚えておらぬのか!」
「安心してくださいまし、全て覚えていますわ。
トカゲっ娘の指摘が無ければ、危うくお義兄様に怒られるところでしたわ(ニコ)。
ですが、今回だけは、お義兄様の許可を頂いて行っておりますので例外ですわ。 お話は後にしましょう、数名山にも居るようなので、待っていて下さいましね」
一気に上昇し山脈目掛け降下を利用しながら飛んでいった。数秒後レレは満足そうな表情をして空間接続で戻ってきた。
戻ってきたレレの様子は、どことなくいつもの雰囲気ではない、そんな印象を受ける。
「くふふ、お待たせしました、お義兄様、完全に綺麗にしてきましたわ。
この種はまだ先の渓に多数巣くっていましたわ。 さぁ~場所は既に把握してきましたので、お義兄様行きましょ」
実に嬉しそうに、手を差し伸べてきている。 この行為に違和感を感じ問質そうとするが、その前にフェンラが少し冷静さを欠いた状態で話し掛ける。
「駄目じゃ、駄目じゃ、レレ殿これ以上は止めるのじゃ。
我との約束を覚えておるのじゃろ、幾らシアキ殿の許可を得ていても、これは流石に駄目なのじゃ。
今すぐ屠った者達を蘇らせ記憶を操作して欲しいのじゃ。
そうしないとラフェル殿に迷惑を掛ける事になってしまうのじゃ、お願いじゃ、レレ殿、今す・・」
口を尖らせ頬を膨らませて不機嫌であると言う態度をフェンラに見せた後、話が終わる前に語り出す。
「・・・まだイヤですわ!あの劣等種は、私の唯一の親友である貴女に手を上げ無礼を働いたのですわ。その報いは全種の命をもって償ってもらいますわ」
「駄目じゃ!レレ殿、止めるのじゃ」
「嫌ですわ、私は、止めませんわ」
両者は睨み合い、一歩も引かないでしばらく「止めろ」「止めない」と口論しあって喧嘩をしている。 他種族間である者同士価値観は様々だが、特にこの様な空族と神族が言い合う事はこの世の中探しても此処だけだろう。 そしてシアキはレレがフェンラと言い合っているが、手は上げずにいる事に感心している。
まだ仲間全員を策の利用対象としている時のレレであった場合、ハラハラして見ていただろうが、今はそうではないと分かっているので安心して見ていられる。
だがそろそろこの押しては引いてまた押してと進まぬ無駄な口論は止めさせて先に進もうと思うのであった。
「フェンラ、その位で良いじゃないか!。 あとレレも、その位にしておけ。 お前達の仲が良いのは分かったから、ソレ続けても時間の無駄だぞ」
その「仲が良い」との言葉を受けて、口論等していないと言わんばかりに両者共お互いの顔を見つめ合い嬉しそうな表情を見せる。
「レレ殿、聞いたかの、シアキ殿が我等の事を仲が良いと言っておるのじゃぞ、我等はシアキ殿が認める程の仲の良さじゃという事じゃ」
「ふふそうですわね、聞きましたわ確かに、私の、この耳でトカゲっ娘と、私の事を、お義兄様仲が良いと仰いましたわ。
何でしょう。たかだか言葉にされただけですのに、嬉しいものですわね」
「・・・二人共、まぁ~いいや、レレは今すぐ屠った者全ての肉片、血の一滴すら残さず回収して来い」
「くふふ、分かりましたわ、お義兄様、では少し待っててくださいまし」
恍惚な表情で奇妙な笑いを残して、急下降していき森に向けて手を翳すと、レレの体に付着していた臓物、返り血、死体となった者達、切り落とされた肉片、血液、骨、頭部、羽根等が一箇所に集約され、圧縮されていき、一つの塊になっていく。
その光景を見ているフェンラは未だ納得はしていない。この後シアキをどうやって説得し、今回一時的にでも諦めさせるかを考える。
「くふふ、お待たせしました」
しばらくして全てを圧縮し終わったのだろう、巨大な肉の塊を軽々と持ち恍惚の表情をしながらレレがゆっくり舌なめずりをしながら上昇してくる。
不正すると思われたくないのだろう、眼前で、空間に歪を生み亀裂を生じさせ無造作に巨大な肉の塊を放り込み空間を元に戻した。
「見て頂いた通り、空間に入れて保管ましたわ。 本当は私の負の生命量とし、糧にしたい所ですがお約束は守りましたわ。 私我慢できましたわ。
それと一つ余興を思い付きましたので、お義兄様には、これを機会に、私の戦い方を知って頂こうと思いますわ、くふふ」
約束内容は命を刈取っても必ず蘇らせると言う物だが、果たしてあの巨大な一つの肉の塊を元の翼竜人一人一人戻し、蘇生する事が出来るのかと念を押して聞いておきたい。
だが、ここで聞けば、レレを全く信用していないのと同等だと考え、グッと質問したい気持ちをシアキは我慢するのだった。
--- 96話目のみの後書き----------------------------------------
96話目最後まで読んでくださりありがとうございます。
どうでしたか?楽しんで頂けたならうれしいですが。
---余談---
少しこの世界の禁忌タブーに触れてみました。
エラルは少しその事でカラ元気だったのですが、不安に押しつぶされて心から溢れ出た毒をフェンラに吐いて、最後シアキからの心の栄養剤を貰い完全にスッキリしたようです。
そして何だかレレの様子が、殲滅後戻ってきてから少し様子がおかしい気がするのは気のせいでしょうか?。
では、次97話目で、お会いしましょう。




