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---89--- オオサ帝国 本当に忙しく飛び回る奴だ

 長袖シャツに長ズボン、傷一つ無い高級生地を惜しげも無く使用したと思われるフード付きローブを纏い。小物類である靴、ベルト、靴下等も傷が一切なく贅を尽くした物で身形を整えた貴族階級と思わる男が、自分に向かい歩いてきていると、ラナ王国のカイ・テテラは勝手に推測する。

 そして後ろに控え付き従う者の身形も相当良い物を身に纏っている。シンプルなエプロン付きメイドが良く着る様な服だ。 その衣装から察するに職業をメイドであると推測出来る。


 何故この様な場所に態々貴族がメイド一人を連れて出てきているのかが疑問ではあるが、この貴族の趣味で護衛兵の衣装を偽装させる為に着せているのだと推測し強引に不自然な状況を納得する。


 だが何故徒歩で貴族の者が関所付近までと言う疑問だけは考えても理解出来ない。

 よって貴族と言う生物は常識など全く通用しない別の生物だと割切り考えるのを止める。

 極稀に警護護衛の移動中に「一人で歩いてみたい」と難題を言ったりし護衛の静止を無視して馬車等を降りる事はあるので、この男もソレだと思い後方に馬車が居ると思い確認する為目を後方に向けるが何処にも残りの護衛、馬車等は見受けられない。

 もしかしたら河原に移動用として馬車を既に用意されているのかもしれないと考え、一応この関所に来る際、周辺に何も無い事を確認済みではあるが、再度辺りを見渡し確認するが一切何も見受けられない。


 移動手段が無い所を確認し終え、こちらに向かって来ている貴族と思われる男は、恐らく貴族でも底辺の貧乏貴族と言われる者であると勝手に使者のカイ・テテラは推測結果を導き出した最終結論を出し思考を終了する。


「何かこの国に用ですか?」


 話し掛けて来た貧乏貴族と結論付けた者の顔を確認するとは昨晩話し掛けて来た王族の女性と密会していた男だった。

 あの嫌な目をする王族の女性は、恐らくこの男を利用し国王暗殺を企てていると思考する。この男は貧乏貴族である為、恐らく領地の授受を約束でもされているが、用が済んだら口封じされる様な人物で係われば要らぬ戦火の素になる可能性があると勝手に思い込む。

 ここは係わらない方が良いと判断し胸を張り話し出す。


 このカイ・テテラと言う者は自国て各国要人の暗殺をしてきた為、こう言った黒い発想にすぐ結び付けるのだ。


「私は我国「魔法戦術国家、ラナ王国」国王で在らせられる「リンテ・ラナ」国王陛下より、御国「全種族間交流国家、マムラ王国」マムラ・シアキ国王陛下宛に、伝令クリスタルを届けるべく参上した使者である。


 急ぎ御国国王に、我国王の伝令を伝えなければならない身である。関所がまだ開いておらぬ故、至急衛兵を呼んでもらいたい」


「衛兵を呼ぶ必要は無い。そこで、その伝令内容を聞かせてくれるかな」


 暗殺を企てているかもしれない貧乏貴族に話せるわけがない。

 一国の国王から伝令を預かった使者は貴族より権威は上なのだ、この国の貴族の質に少し苛立ちを覚えるが、係わらない方が良いと思っているので、無礼な対応を我慢する。


「これは両国国王同士が聞く内容であり、その身形は貴族階級の者と御見受けする。

 私は我国「魔法戦術国家、ラナ王国」国王で在らせられる「リンテ・ラナ」国王陛下から直々に伝令クリスタルを預かった者である。


 その様な侮辱は控えて頂きたい。その侮辱行為は我国王陛下を侮辱する行為に相当するモノと思って頂きたい。

 身分を理解して頂けただろう、至急、この関所に衛兵を呼んでいただきたい」


 眼前の使者は相手の素性を調べず勝手に貴族であると思い込んでいるようだと知る。


「だからその必要は無いと思うよ。俺は、この国の国王だから、その伝令内容をココで聞かせてくれればいい」


 再度侮辱するかのような発言を聴き使者のカイ・テテラは激高する。


「この移動手段に馬車一つ使えない貧乏貴族め!。国王がこの様な個所にそのような女一人引き連れただけで来る訳がない。

 よくもそう言う嘘を思いつき吐けるものだ。


 貴様は私の話を聞いてなかったのか!。


 私はお前の秘密を既に握っているのだぞ!

 お前が昨日国外で王族の女と密会し国王暗殺計画を目論んでいるという事をバラされたくはないだろう?。


 私も他国の内情等興味は無い、忘れてやってもいい。


 私はただ、この伝令クリスタルを御国国王に届けるのが無事に使命を果たしたいだけだ。

 もしこれ以上、私の邪魔をするなら御国国王に暗殺を企てている事を伝令と一緒に伝えても良いんだぞ。


 貴様が今する事はこの伝令クリスタルの内容を奪い内容を知る事ではない。

 貴様がしなければなら無い事は、この関所に衛兵か衛兵隊の隊長を呼んで来る事だ。さ~貧乏貴族でも事態位理解は出来るだろ、さっさと呼びに行ってこい」


 やはりこの世界はどんな国でも衛兵や使者等権力に興味のある者は相手の素性を身形だけで思い込んだりすると相手の素性や、ましてや名前の確認すらしない傾向があるのだと改めて痛感する。


 それに何で自分が自分に暗殺されると言う発想の話が出来ているのか理解に苦しむ。

 あと王族の女とは誰だっと気になる点は幾つもあるが、自国の王族の女で自分の命を狙っている人物で真っ先に思い浮かぶのはレレ辺りだろう。

 コレは考えても無駄な事だと判断し考えるのを止める。


 だが実に面白い、移動手段の馬車が無いだけで貧乏貴族と判断されるのかと知れただけで大きな収穫だ。今後この手は少し使えそうだと思うのだった。

 そしてこの者が、眼前に居るのがその国王だと知った際、この今の対応を戦争の口火が斬られたと思い込むだろうか?等と色々黒い算段をシアキは心の中でしながら、素性を明かす事なく相手が思い描いている筋書きに乗って話を続ける。


「はぁ~、そっか見れないか残念だ。えっと衛兵団の隊長をこの関所に呼べばいいのだな。


 「ザンバ・ガオラス隊長」「ググ・べアド隊長」「テンテ・ガオラス隊長」「ヒ・カキリ隊長」「ガ・イブリ隊長」「エ・ティティ隊長」、あとダンさんも連れて、全員北側の関所に来てくれ~。

 使者が来てるんだ~国王にお目通りしたいそうだ。王の間に案内してあげて欲しいんだ~。


 これで、衛兵団の隊長六名ともう一名含め計七名が来ると思うから、その者達に城まで案内してもらうといいよ。


 じゃ~リム行くぞ、少し移動手段があった方が良いっぽいから、カミンの所まで飛んで行くぞ」


 そう言い残し、貧乏貴族の男と従者か護衛と思われる女が、頭を下げ挨拶等することなく横を素通りし無礼な対応で河原方面へ出ていく。

 しかも叫ぶだけで衛兵団隊長達六名が来るかのような発言と、あまりにも見下したような喋り方、そして何より人族が魔法で空を自由に飛べるかのような発言したこの貧乏貴族の男に苛立ちを覚える。

 魔法を行使する者が、魔法で空も飛べないのかと罵られ侮辱を受けるような不快過ぎる発言についに耐えきれなくなり「魔法を舐めるな」と文句を言おうと、河原に出て行った貧乏貴族の男の方に振り向き、息を飲む。


 貧乏貴族の男の足元に突如、煙栗色の浮遊するボードが出現し浮き上がったのだ。

 従者か護衛と思われる女を貧乏貴族の男の前に乗せ、一気に上昇し森の上を北東の方角に飛んでいった。


 恐らく浮遊系の高位魔法と思われるものを人族が使用して見せた事に驚き言葉を失ってしまい呆然と飛んでいった方向を見ている事しか出来なかった。


 しばらくすると獣人族と思わらる者が三人、昆虫人族と思われる者が三人、何処かで見た記憶のある様な人族と思われる者が一人北関所前に現れた。

 そして人族と思われるゴリゴリの男が北東の空の方角を見てつぶやく。


「しかし小僧は何故このような事を?。分からん、小僧の考えが全く分からん。

 取敢えず、この小娘を城内の王の間に連れて行けばよいのだな」


 たった今、心が折れそうな、信じられない光景を目の当たりにし正直混乱している。

 この世界に住む者は自国の戦闘力は兵の数で決まると考えている者が殆どだ、でもラナ王国に住むの者であるカイ・テテラにとって自国の戦闘力は兵の人数差ではなく、単純にその国が使える魔法力量の差であると思っている。


 先程の貧乏貴族と思われる人族の男が使用した浮遊系の魔法は単純に考えて高位の魔法と推測され、使用には莫大な魔力を必要すると思われる。 

 マムラ王国は全種族間交流国家と名乗っている以上他種族達で国民が構成されいるのは間違いない。現に眼前に他種族が六名、人族が一名居る。


 種族別で個々生まれ持った魔力差があるが、その中での人族は魔力が最下位に位置している。


 そして先程の者が貧乏貴族であれ人族が高位魔法を使用した事からして、眼前にいる他種族達はそれ以上の高位魔法を使用する可能性があると思われる。

 これが意味する事は単純にこの国の魔法力量は自国を凌駕している可能性があると容易に想像出来た。

 今自国のラナ王国は全国民、このマムラ王国を相手に戦争をした場合、全国民人族で構成されいる自国の魔法力量で果して勝利出来るのだろうかと少し不安が押し寄せてくる。


 そんな臆した考えをしている事に気づいた使者の「カイ・テテラ」は自国内最強のラナ国王が単独で強国とされる魔族領の国一つを魔法一つで焦土にした光景を思い返し臆した心を奮立たせ勇気を得る。


 自分は敵わない相手だとしても、自国のラナ国王はこの世界において稀に見る魔法の才能を持つ天才児である。

 魔法を戦略的に行使する者の中で、この世界広し「リンテ・ラナ」国王その人の右に出る者は居ないっと少し弱気になった自分を奮立たせ、ラナ国王命を受けた使者の自分が、これ以上馬鹿にされる事は、自国のラナ国王陛下を馬鹿にしている行為であるという事を、この者達に知らして威厳を保たなければならないと考え毅然とした態度を示す。


 幸いこの国の者は皆外交に置いての常識や使者に対する扱いの教育を受けていないそんな低俗で力だけがあるそんな者達であると勝手に推測し、この中で一番脆弱である人族にのみ矛先を向け罵声を浴びせる。


「この国は無礼者揃いか!あの先程の人族の貧乏貴族の男もそうだが、私を小娘等と侮辱発言をする、そこの人族の男と言い、私を侮辱する事は我国ラナ国王陛下を侮辱する行為であると恥を知れ!。


 私は我国「魔法戦術国家、ラナ王国」国王で在らせられる「リンテ・ラナ」国王陛下より、御国「全種族間交流国家、マムラ王国」マムラ・シアキ国王陛下宛に、伝令クリスタルを届けるべく参上した使者である。


 この侮辱行為の報いは必ず受けてもらう、御国国王にこの事を伝え、あの先程の貧乏貴族の男とその従者の女、そしてそこの人族のお前にはそれ相応の処分を・・・」


 話の途中でダンは笑い出す。


「はははは、これは面白い。小娘、先程会った者の正体を知らぬのか?。

 そっかそっかこれは確かに面白い、この反応は滑稽で実に面白いぞ。


 儂も小僧に、相手の素性等調べる事と言われたが正直何と馬鹿らしいと事を言うのだと思っておったが、ここまで滑稽で面白い発言をする者を見ると少し哀れみの感情を持ってしまいそうだ。


 これを自分に置き換えてみると、儂は小僧にこう見られておったという事だと思うと滑稽過ぎて恥ずかしくなるわい。

 の~小僧の衛兵団隊長達もそう思うだろう」


 後ろに控えていた衛兵団隊長六人も矛盾点を見つけクスクスと笑ってしまう。

 そしてガオラスは実に馬鹿にしているのはどっちだと言いたげに、冷たい捕食者のような目を使者に一度向けたのち同意見であるとダンの方を向き唱える。


「ダン様、私も、今のこの使者様の発言、同意見で少しおかしな点を感じました。


 あ、すみません、ラナ王国の使者様の事を人族で脆弱である事を指し侮辱等は一切しておりません。

 ですが、あまりにも今の使者様の発言内容に、おかしな点がありましたのでそう思っただけです」


 今の自分の言葉に何か矛盾点やおかしな点があるか考えてみるが特にない。

 この世界において王命を受けれ使者として他国に訪れた際。王に会うまでは、それなりの取り扱われ方をされるものだ。

 あのような一介の貴族や眼前の人族で一般衛兵もしくは市民と思われる男が自分に対しあのような侮辱発言をする事の方がおかしいに決まっている。


 思いつくとしたら階級の見誤りで先程の男が貧乏貴族では無くもう少し高い貴族位である可能性は十分に考えられる。又は、あの後ろに従者のようにしていた女が貴族であり男が従者である可能もあるだろう。

 どちらにしても身分の差はたいしては無いので、先の発言内容や態度は無礼極まりない行動で、コチラが罵声を浴びせ抗議しても何ら問題は無いと結論付ける。


 考えても結果を導き出せないので、威厳を保ちつつ横柄な態度を崩さず尋ねる。


「何処が変だと言うのだ答えよ」


「お答えしてよろしいのですね、畏まりました。


 お答えする前に我国王陛下の方針で、来訪される如何なる方をも丁重に礼を尽くしもてなせと仰せつかっておりますので、以後私めが使者様の案内をさせて頂く事になると思います。

 先に私の名と職をお伝えさせて頂きます。


 私は全種族間交流国家、マムラ王国、王設マムラ王国衛兵団所属で衛兵団の隊長の任に就いております「ザンバ・ガオラス」と申します。


 では、先程の使者様のお話で、おかしな点は二点御座います。

 まず二点目ですが、先程の御方は、マムラ王国の国王陛下であるマムラ・シアキ国王陛下ご本人です。


 使者様が自国国王と同等の地位で扱うかのような発言でしたが、国王陛下であるマムラ国王陛下自ら対応をされた事は何ら無礼な行為ではないと思われます。

 その陛下が陛下御身に対し罰を与えると言うのは、あまりにも不自然で、とてもおかしいな事だと思われます。


 もう一点は、今この場において、人族の方は、使者様以外、誰も居りません。

 我々マムラ王国衛兵団隊長の任に就いている、獣人三名、昆虫人三名、そして我国の加護者様で在らせらる神族の方が一名しか、この場には居りません。


 私は匂いである程度、人数は把握出来ますが、この周辺に使者様以外の人族の方は居られないのですが?。もしかして私の探知出来ない方が見えておられるのでしょうか?。


 私にはこの二点がどうしても理解が出来ず先程疑問に思った次第です。

 まだまだ私達は勉強不足で知識不足だと痛感しました。

 不肖、知識のない我々に、使者様のそのお考えを少しご教授願えれば有難いのですが?」


 その発せられる言葉を聞き、みるみる使者の顔から血の気が引いていく。


「はははは、激高し少し赤くなっておった顔が、実に面白い、今度は顔が青白くなってきおったぞ。


 しかし、ガオラスとやら、お主も中々面白い。

 丁重に扱いながら相手を言葉で見事身動き取れ無くしおるとは、実に面白い。

 こうも虫けら以下の劣等種でも見方を変え少しだけ興味を持ち見ていると実に面白い物だ。

 

 さて、儂はこれからやる事があるから、その小娘とお前達には一時的に城内へ入れるようにしてやった、さっさと城に連れて行け、城内に入りまっすぐ進み階段を上がり四階王の間へその使者を入れて待たせておけ。

 その通路も障壁で覆い横に反れないようにしておいてやる。あとは王の間以外の扉は開かないようにしておくぞ、例外なく待機部屋もだ。


 小僧は忘れていなければ、今日中には戻って来るだろうから、早く連れて行け、そんな国民でもないその小娘はこれ以上視界に入れているのは目障りだ!。

 儂はこれから小僧の指示通り結界強度幅を調整し少し建物を移動させねばならぬからな、任せるぞ」


 そう言うと返答を聞かず、フワリと浮き上がり上空に上昇していった。


「では、使者様、我々が、我国、マムラ王国城へご案内させて頂きます。

 どうぞこちらへ、我国は現在改装中につき乗り物は走らせられません。

 よってココからは徒歩移動となっておりますのでご容赦ください」


 使者を真ん中に前後一名、左右二名づつの布陣で移動を開始する。

 使者であるカイ・テテラの目にマムラ王国の全容が飛び込んでくる。

 街道に木々を植樹するかのように所々残し他は綺麗に伐採し、これまた綺麗に成形され細工が施された石畳で整備舗装されている。

 建物全てゴシック様式で統一され、規則正しく正確に建てられ、一棟だけ歪に飛び出す事なく実に街そのものが芸術ではないかと思える程だ。

 城を目前の王城に架かる橋前に到着し更に息を飲む。もし自分がこの国の国民で貴族位であれば、確実に日がな一日、この橋の前まで来て城と橋を静観し、無駄に時を過ごすだろう。


 様々な国に暗殺者として潜り込んで生活をして他の者より他国を見た経験があるが、そのどの国でも城は豪華な造りだが、戦闘時に橋は大抵城に敵を近づけない目的で破壊したり跳ね上げ橋であれば引き上げたりするのだが、跳ね橋でないただの橋なので戦闘時前者で容赦なく破壊すると思われる。

 このマムラ王国は橋、欄干一つに至るまで豪華な細工等がされている。恐らく見えない橋の下にも手が込んだ細工がされているに違いないと思える程豪華な橋で、この橋建設だけで中堅の国の少し豪華な城が一つ建設出来るであろうと勝手に想像する。


 そして橋を通過しマムラ王国の城内に通される。


 床一面大理石と思われ、天井等には灯りを照らし出している魔法が数多く使用されている。しかもどれも橋で見たような魔法陣が浮き上がっている。

 本来キョロキョロ見渡すなどの行為はご法度だが、目だけで歩きながら廊下を見渡しながら進む。傷一つ無い城を支える立派な柱が何本も規則正しく立ち、中には天井を支える目的ではなくそこにあると美しいと言う理由で造られただけの天井にすら届いていない飾りの柱まであり、その柱、床、壁面、階段、廊下と、どれ一つとっても細やかな化粧細工等が施され、これを豪華絢爛と言わず何と表現したら良いのだと思いながら廊下をゆっくりと歩いている。


 使者は場違いにも程があると自身の靴に付着している土で、この立派な空間を汚してしまっている事が急に恥ずかしくなり、慌てて履いていた靴を脱ぎ、胸に抱きかかえ、身を極力小さくしながら城内を進む。


 案内している衛兵団の隊長達も城内入ってから動きが何処となく緊張しているようだ。

 使者はこの者達も恐らく城内に入った経験はあまり無いのだろうと察する。


 黙々と前を歩く衛兵の背中を見ながら階段を登り四階王の間前に到着する。

 本来此処で王の間横に併設されている来客用の待機部屋に通されるはずだが、衛兵は躊躇なく王の間の扉を開け、中に入っていく。

 これは本来あり得ない事だ、王が不在時に他国の者を王の間に入れてよいわけがない。


 このままではマムラ国王に対して無礼を働いたと言われ伝令の使命終えた瞬間屠られてしまい、場合によっては戦火の口火を切られてしまう可能性があると瞬時に判断し、この衛兵達の間違いを正し待機部屋へ案内する事を求め、拒否された場合は廊下で待機を申出ようと考え、先程関所前で見せた威勢の良さとうはなく凄く低姿勢で発言する。


「すみません、ココは王の間ですよね・・まず隣に併設されている待機部屋があると思うのですが」


 躊躇なく、返答が返ってくる。


「はい、あるとは思いますが、国の加護者様であるダン様がこの部屋の扉以外は開かないようにされているそうですので、これで良いのです」


 この返答は自分を貶める作戦だ。せめてこれ以上の失態を重ね自国の王に不利益な状況を作るべきではないので、今出来る回避行動を実行するしかない。もうこれ以上対応を誤り失敗する訳にはいかないのだ。


「なら、せめて廊下で待機させてください」


「駄目です。ココで待機するよう言われた以上、ココ以外で使者様を待機させる事は失礼にあたりますので、ご理解ください」


 ここのままでは確実に自国の対応不備を戦火材料にされかねない。

 かと言って無理に動けば敵対行動とみなされる危険性がある。


 あらゆる窮地を想定し、事前に自国の王から一箇所と一箇所を結ぶ簡易転移魔法が仕込まれた転移石三つ貰たされている。

 それら三つを城に案内されている最中にこのマムラ国外の北関所付近の森の中、橋の中腹付近、一階階段付近にを素早く視界に捉えられない速度で投げて仕込んで置いてある。これは一箇所に一度しか使用出来ない魔法だ。 今それの一階階段付近に転移してしまおうと考える。


 早速転移石の一つに飛ぶよう発動させ使用するが、自身の後ろを着いて来ていた昆虫人の衛兵の手の前に現れ出た。


「吃驚しました、使者様が急に私の眼の前に現れるとは思っていませんでした。


 もしかすると、この先程投げられていた石に魔法が仕込まれたのでしょうか?。


 すみません、先程案内中に何か高速で飛ばし仕込まれていたようなので全て回収させて頂いております。

 私の目はあの速さであれば捉えられ、そして私の指からは高速で糸を噴出させ物体を捕らえ回収させて頂きました。

 

 では回収させて頂いた、この三つの石はお返しします」


 複眼がキラリと光り、粘着質な糸に絡められた転移石三つを掌にそっと置いてくる。

 そして前方の獣人ガオラスがスタスタと近づき、顔を覗き込み少し先程とは違う口調で語りかけてくる。


「使者様、この部屋は我国王陛下が座する我々にとってとても神聖な「王の間」なのです。

 これ以上騒がれると我々も少し丁重におもてなす事に自信を無くしてしまいます!。

 ですので、我国マムラ国王陛下がお戻られになるまで、しばらく静かに最奥王の玉座前でお待ち願えますか」


 騒げばそれこそ足の一本食い千切り腕の一本へし折るぞというそんな目をしている。

 ココで指示に従わず、騒ぎ立てるのと身の危険であるの感じ、本来その様な位置で待つ事は許されないが、ココは指示通り従う方が身の為であると心に言い聞かせ、無言で頷きマムラ国王の帰りを待つのだった

 ・

 ・少しシアキがリムを連れオオサ帝国に向かった辺りまで時を戻そう。

 ・

 流石に飛行するとオオサ帝国上空にすぐに到着した。

 オオサ帝国はマムラ王国やフジイデ王国のような城は一切無い。

 ただ最高で四階建てのビルのような建物等が整然と建てられ建ち並んでいる。

 この世界で近未来的な都市は恐らくこのオオサ帝国の帝都が初めてであろうとシアキは思いながらその中の最上階部分が何かの攻撃を受け一部破壊された建物の上空を旋回しながら飛行している。


 この一部破壊された建物は、オオサ帝国でカミン・オオサ本人の隠れ部屋でシアキが打撃魔法を試した際の名残だ。

 恐らく今旋回している建物がこのオオサ帝国の城だとシアキは思いながら、このまま乗り込んでも良いが今日の目的は他国の関所を通過して紋章を貰う事を経験するつもりなのである。勿論今リムとシアキは魔聖素で体を覆っているので不正侵入者の束縛は受けていない。


 旋回し穴が空いた隠れ部屋の前で停止し室内を覗く。案の定この国の皇帝であるカミン・オオサが中でく部屋の中央に置かれている鏡のような物を除きながら何かをしていた。気配を感じたのだろうカミンは振り向き、目線が合うと驚いた表情を見せ固まっている。


「よ!カミン皇帝、お前の所に渡す融合魔法の件で来たんだが、一旦俺は関所を通って来るな。

 一度他国の関所を通り、許可紋章を貰って入国してみたかったんだ、少しだけ待っててくれ。


 それまでに、その部屋に融合魔法を施したお前が最も信頼のおける口の堅い者と、低位、下位でもいい魔法が生成出来る魔撃魔術師で口の堅い者を二~三人程度用意しておいてくれ、頼むぞ」


 返答を聞かずそのまま上昇し、辺りを見渡した後、フジイデ王国方面に飛んでいった。


「・・・・もう此処まで来てる時点で許可紋章は必要ないのでは・・」


 ポツリと言葉を漏らし、あの様子だとすぐ来る可能性があるので指示された通りの人材を誰にするか考える。


 融合魔法を施した者で信頼のおける口の堅い者として思い浮かぶのは、この国建国当時少し放浪していた際、他国のラナ王国が他国を滅亡させる程の戦争をしていた。その戦後すぐにその国に立ち寄り戦火に巻き込まれ負傷した者を自国の兵に改造する目的で何人か攫おうとしたが見事その国の民は戦火で見るも無残な姿となり息絶えており使い物になる体が殆ど無かったが、その中でも使えそうな、手足等を無くした瀕死の姉妹を見つけ、その場で治療と称し自身の融合魔法を使い、欠損した手足の代わりに其処らに在る木や鉄のパイプ等を融合させ助け、絶対服従を誓わせ側近として利用している者の顔を思い付く。

 この者達は丁度、指定された魔撃魔術師でもあり、低位ではあるが魔法を生成する事が出来る。

 機械の手足なので、それ以上の下位魔法を生成しようとすると何故か失敗すると嘆いていたので、本来は下位魔法迄生成出来る程の実力の持ち主達だ。

 口の堅さも折り紙付きの保障が出来る。だが、唯一の不安材料が残る。

 その姉妹にも自分が丸腰で一切その身を融合魔法で改造されていない素の人物であるという事や、この部屋の存在自体帝国国民の誰一人知る者はいない。

知っている者はこの世から消しているか、地下牢に拘束している。


 今までこの姿はただの一度も側近や国民の前に晒した事はないし、ましてやこの世界で自分の身を第一に考え建国後は一切自ら行動をしていないのだ。


 常に自分そっくりの魔素義体を使用し皇帝たる振舞を見せる為、側近達に罵声や、時には機械部分を全員の前で故意に破壊し罵ったりし、卑劣な対応を数々してきたので恐らく自分に対し相当の不満や怒りを覚えている事は確実だ。

 今まで不満を爆発させなかったのは自分が同じ体を改良した者で強者で恐怖の存在であると思わせ恐怖で反抗意思を抑え込めていた事は容易に推測できる。

 もしこの姿をその側近の姉妹に見せた際、恐怖の対象が無くなったと、心の拘束等の箍は外れ、今までの自分卑劣な行いに対して殺意を向けられる事は必然だ。


 だがマムラ国王の話を聞かなければ、その時点で命は無い可能性もある。

 どちらを選択しても命が危険に晒されるのは確実ではあるが、まだマムラ国王の指示に従っている方が生き残れると言うものだと割り切り気合を入れる。


 上の王座の間に居る自分そっくりの魔素義体に指示を出し、この隠し部屋に自分の右腕左腕としている側近姉妹の「アルシオ・ディ・サルザ」とその妹で「エルアルファ―・ディ・サルザ」を隠し部屋の中にいれた。


 姿を確認するや否や襲い掛かって来ると予想しいつでもこの部屋から脱出出来るようにと緊急脱出路の前で身構えていたが、予想に反して両者は生身のカミン・オオサを見て、ニコリと微笑み、大粒の涙を流した。


 そしてこれまた予想していなかった返答が両者から次々と返って来る。


「・・・皇帝陛下が生身の方・・!奇跡ですかこれは!あ~アルシオは今夢見心地です。

 この身を慈悲深い御心で救って頂いた方が、まさかまだ生身で居られるなんて何と言う軌跡、これからは生身の皇帝陛下にお仕え出来るのですね、私は」


「・・・皇帝陛下が生身の方だったです。うぅぐぅ感激です。これ夢ですか?。エルアルファ―は夢を見てるですか~」


 この予想しなていなかった反応にどうして良いか分からず狼狽えながら腰が抜けその場で座り込む。

 ヨタヨタと動き近くにあったソファーに座り少し放心状態のアルシオとエルアルファ―を眺める。

 心配していた殺意等は無く、逆に感謝してくれている事にカミンは驚き、何故こうなったのかを思考しようとした、丁度その時、室内にマムラ国王と一人の女性が忽然と現れた。


「いや~、実に面白くなかった、何も検査等無しで、ただポンって押すだけだった」


 急に現れた者を敵と判断し素早くアルシオとエルアルファ―はカミン皇帝を庇う姿勢を取り攻撃態勢を取る。

 それを見たリムがシアキの前で両手を広げ盾に徹する。


「リムそんな事しなくていい、お前が怪我したらどうする。俺の後ろで大人しく待っててくれ」


「はい、ご主人様」


 綺麗に頭をさげ、シアキの後ろへ移動し待機する。


「すまんすまん、ココにて急に現れたけど俺は敵ではない。

 カミン、お前からもちゃんと俺達が敵ではないって説明してやってくれ」


 その行動を見たカミンは生身で指示を出して果してアルシオとエルアルファ―両名が指示に従うであろうかと不安がよぎる。一度生唾を飲み込んだあと指示を出す。


「アルシオ、エルアルファ―後ろに下がれ。その者達は我オオサ帝国と取引しているマムラ王国の国王とその仲間だ。 今後は丁重に出迎え対応するように良いな」


 戦闘態勢を解除し両者は頭を下げ、カミンが座るソファーの後ろに移動し待機する。


「へ~結構生身でも様になってるじゃん。流石皇帝を長年やってるだけはあるな。俺も少し見習って偉そうに喋らないと駄目なのかな~って思ってしまったぞ。


 あ!そうだカミン皇帝、俺の拠点に風呂が出来たんだ、今度誘いに来るから一緒に入ろうぜ。

 結構これがいい出来なんだが、ただ広すぎて、一人では入ってもつまらないから、今度暇な日とか教えてくれよ。


 って今は時間がないんだった!人待たせてるんだった・・えっと指定した者は、そこの者達二名で良いのか?」 


「この者達は、信頼出来る者で口の堅く、魔撃魔術師で低位ランクの物は生成可能です。

 情けない話、私は自国ではこの二名しか信用出来る者がいないのだ。


 国内にはもっと良い人材は居ると思うが、口が堅いかと言われると裏切りそうなので申し訳ない」


 そのカミンが発する言葉を聞き後ろに待機している両名が感動して涙を流している。

 両者のステータスを確認し、魔撃魔術師を習得している事を確認し、名前が「アルシオ・ディ・サルザ」と「エルアルファ―・ディ・サルザ」で、カミン皇帝に命を救われ、絶対服従状態である事を確認する。


「そっか、お前もその二人に凄く信頼されているんだな。お前の言葉聴いて感激して泣いてるぞ。

 よし、じゃ~今からお前達に施された融合魔法を完全複写するからジッとしていろ。動くと失敗したら厄介だからな」


 早速手に無詠唱にしてある【レトロ調魔術書生成】で、縦二十センチ横十五センチ程度の表紙部分がレトロ調で、三百頁程ある中身が無地の分厚い本の魔術書を生成する。


【完全複写】魔法をオオサ帝国版にする為、条件を少し変更し新な【完全複写(オオサ帝国版)】に書き換える。

 「許可を与える者は、魔法生成者本人と任意の神族一名とする」から「許可を与える者は、オオサ帝国の皇帝とする」に変更する。

 あと追加条件を二つ追加する。

 「複写し対象に含まれる魔法の中で指定し想い得がいた魔法以外は複写しない」を追加。

 「完全複写魔法会得した魔法構造内容を理解していなくても魔術書再生成する事を許可する。 ただし、生成した物は自動的に魔導書変換され、生成回数は一生に付き一冊迄とする」を追加。

 「マムラ・シアキが術が施された者の魔法解除を願うと、全て無傷で元の状態に戻る」を追加。


 魔術書をカミン皇帝の後ろに控えている機械の腕をした者の体に当て【完全複写(オオサ帝国版)】魔法を発動させ[無機物と有機物を融合させる魔法のみ]と想い得がき【生成呪文】を唱える。


「我名において命ずる、我が欲する物を完全複写せよ【生体融合魔法】」


 唱え終ると凄い勢いで頁が捲れていく。約五割程の頁が消費された。生成した魔術書を中身を確認すると、魔法のランクは「AAA」が設定されていた。やはりこの魔法は規格外魔法なのだろうと思いながら、早速覚える。


 早速魔法を試す為、カミン皇帝に近づきニターっと笑い【生体融合魔法】を発動させる。


「我名において命ずる、我が欲する形となり発現せよ【生体融合魔法】」


 足元に自国の紋章の魔法陣が生成された。ココは使用者の所属国としているからあとで確認すればいいだろうと思いながらカミンとソファーに触れる。 ソファーとカミンの体が一体化していく。

 まるでソファーがカミンの体の一部のよう動いている。魔法を施されたカミンは、凄く驚いた表情をしながら、ソファーの足を器用に動かしながら後ずさりをする。実に滑稽な歩くソファー人が出来上がった。


 原理は分からないが実に楽しい魔法だと思いながら観察していると、控えていた、アルシオ、エルアルファ―両名が攻撃を仕掛けてくる。


 だが、二人の攻撃力では防御力の高い自分には傷一つ付けれないと分かっているので、攻撃の嵐の中、それを全て無視しカミンに話し掛ける。


「カミン!どうだ自分の魔法でソファーと融合した気分は?まぁ~これで魔法は使用可能だと立証できたな。 そして既に俺はその魔法を少しだけ進化させておいたぞ」


 そう言うとソファーと一体化していたカミンが元の状態に戻る。


「どうだ!無傷で元に戻れただろう。

 あとお前達騒がしいぞ。最初に俺は敵じゃないと伝えておいただろう。

 少し静かにしてろ。お前達も魔術師の端くれなら、魔術書生成後は実験すると言うぐらい覚えておけ」


 暴れていたアルシオ、エルアルファ―両名はカミンの無事を確認すると大人しくなった。

 実に面倒な奴らだと思いながら【生体融合魔法】の魔術書を魔導書に変え、二冊生成する。


「よし出来た、あと必要な魔法を生成してっと・・」


 早速【会得用魔法陣】の魔法の魔導書二冊生成し、おまけで【レトロ調魔術書生成】で空の魔術書を二冊生成する。


「よし全ての材料は揃ったので、アルシオ・ディ・サルザとエルアルファ―・ディ・サルザ、両者は俺の前に来てくれ。

 まず【会得用魔法陣】魔法を先に覚えてもらう」


 何故自分達の名前を知っているっと言う表情をし少し警戒し出て来なかったので、カミンが前に出るよう促し、渋々前に出てくる。


 手渡された魔導書が一瞬七色に輝く、受け取った物の中身を確認する。

 その中身の習熟度が高位習熟度を要する[A(-3)]ランクである事に驚愕する。

 マイナス表記は何を意味しているか分からない。

 そもそもこの様な高位の魔法を目にする機会などないので理解出来なくて当然と考える。


 だが一つ分かる事は、自分達は低位習熟度を要する「Z」の物しか生成出来ず、下位習熟度の魔法までしか発動する事がやっとという感じの習熟度しか要していないので、到底この様な物を覚えるのには習熟度が全く足りない事だけは分かる。


「すみませんが私では習熟度が足りず、これは覚えられません」


 実に正しい反応が返って来た。普通ならそうだが、自分が生成する物はその者に合わせ変化する。

 仲間で無い者に懇切丁寧に教え手の内を明かすなどまっぴらゴメンだと考えているので、少し苛立った表情をみせ覚えろと言う。


「良いか俺はお前達の魔術師の師でも、仲間でも、家族でも、ましてや同じ国民でもないんだ。

 懇切丁寧に俺が開発した魔法の特性特徴を何でお前達に語らなければならないんだ?。

 俺はそこまで、お人好しじゃないぞ。


 その魔導書のランクが習得可能な物じゃない、覚えて使用したら確実に魔素焼けで身を亡ぼすとか心配しているんだろうから1つだけ特別に教えてやる。


 魔導書のランク表記欄にマイナスがあるだろう。俺が持った場合は、マイナス表記は付かない。

 俺の魔導書はソレ自体で使用者に合わせ習熟度を変えるんだ。


 マイナス三って事はランクが三つ下がったという事を示している。

 それで低位習熟度に調整されたって事だ。ココまで説明してやっただけでも感謝しろ大サービスだ。

 これはカミン貸だぞ、あとで何かしら返してくれ。


 さ~さっさと覚えてくれ。

 それは使用方法等に制限を掛けているからその説明もしなきゃならないんだ、俺も暇じゃない。 自国民でない奴にこれ以上時間を割いてやる義理は無いんだ」


 分からない物や理解出来ない物を何とか最もらしい理由を付けて理解しないと安心できないのだ。

 案の定、今の言葉で納得したのだろう、裏を取る事なく早速覚えた。


 それを確認した後、シアキは【会得用魔法陣】の魔法を展開する。

 この魔法は使用者が所属している国の紋章を魔法陣としてだだ現すというシンプルな物だ。

 それなのにランクは高位習熟度を要する「A」なのだ。


「よし、お前達その魔法陣の中に入って、今から手渡す魔導書を覚えてくれ。


 あとカミン!今から【生体融合魔法】の魔法を、この二人に覚えさせるから許可してくれ。

 取り合ず、今は俺に向かって「許可する」とだけ言ってくればいい。あとで説明するから」


 訳が分からないがカミンは頷き「許可する」と発言する。

 会得用魔法陣内に入った両名に【生体融合魔法】の魔導書を手渡す。


 受取り中身を確認すると見た事も聞いた事も無い「AAA(-5)」と言うランクだ。

 魔導書の中身をカミンに見せたあとシアキに目線を戻す。

 本当に大丈夫なのかと問いたいがカミンは頷くだけで、眼前のマムラ国王の目は早くしろと無言の圧力を掛けてくるので魔導書の魔法陣に触れ覚える。


「よし終わったな、早速だが使用方法を教える。

 それはカミンが使う魔法と、ほぼ同じだ、体の欠損している部分と機械の手足又は無機物の物と融合させ、原理不明だが手足のように使えると言う魔法だ。


 そして使用方法だが、まず最初に【生体融合魔法】の使用方法だ。これは簡単だ呪文を唱えるだけで発動するようにしてある。

 呪文はこうだ「我名において命ずる、我が欲する形となり発現せよ【生体融合魔法】」だ。


 次に【生体融合魔法】の魔術書を一生に一冊限定だがお前達でも再生成する事が出来る。

 生成には特殊条件を幾つか満たさない限り再生成は出来ないぞ。

 また生成した物を第三者に覚えさせるにも特殊条件が必要だがら覚えておけ。


 まず再生成に必要な特殊条件を教える。

 条件は一つ、指定した専用の白紙の魔術書を使用しなければ再生成は出来ない。それがこれだ!」


 【レトロ調魔術書生成】で生成された、縦二十センチ横十五センチ程度の表紙部分がレトロ調で、三百頁程ある中身が無地の分厚い本の魔術書を見せる。


「これ以外の魔術書で再生成しようとしても生成は出来ないと覚えておけ。


 カミン皇帝、約束では直接【生体融合魔法】独占販売するってしていたが、この魔法を再生成出来るようにしてやったから、代わりに、この無地の魔術書を俺の国で販売してやるから、生成に必要な量買い付けに来い」


「ははは、見た事も無い魔法の習熟度だったから売って稼げるのに何故しないのだ?」


「本気で言っているのか?この世界最高位習熟度迄でランクが「AA」だぞ。

 それを凌駕する習熟度[AAA]のランクの魔導書に評価価値をお前ならどう付ける?。

 国家予算数百数千年分で一冊買えるか買えないか位に設定してもおかしくない代物だぞ。

 俺の開発した完全複写魔法で生成された物はみんなそんな習熟度だぞ。


 そんな金額の物をお前は約束通り定期的に買えるか?無理だろ。

 だから無地の魔術書を代わりに販売するんだ。これは習熟度「B」ランク品だからな、コレならお前の国でも捻出出来る位の金額設定位にして販売してやるって言ったんだ。


 その二人には特別にAランク品二冊とAAAランク品二冊をタダで覚えさせてやったんだぞ、少しは感謝しろよ。

 コレだけで国家予算の数百年分は軽く使う事になるだろ。


 まぁ~この無地の魔術書は習熟度「B」ランク品だが最低値よりは高く設定はさせてもらうぞ。

 白金貨数十枚か金貨数千枚って形で販売するつもりだ。

 お前の国でも決して手に入らない程の値段にはするから安心しろ」


 苦笑いをカミンは浮かべ、恐らく魔術書数冊で軽く小国の国家予算並は飛ぶと覚悟する。

 だが、事実ランク「AAA」品をの評価価値は計り知れないし、それらを定期的に購入するよりは、魔術書を必要量購入する方が断然安上がりだ。


「あとは【生体融合魔法】の魔導書を第三者に会得させる方法だ。

 これにも制限を掛けている。先程お前達が覚えた手順を覚えているか?」


 全員コクリと頷く。


「では、説明するぞ。まず最初に覚えた【会得用魔法陣】魔法を展開発動させる。

 これは無詠唱【会得用魔法陣】魔法を展開とでもイメージすれば展開される。

 そして覚えて置け、この国でカミンが認めた口の堅いカミンに忠義忠誠心のあるお前達2名にしか、俺はこの魔法を譲り与えない。


 その展開した魔法陣の中に覚えさせたい第三者を入れ、【生体融合魔法】の魔導書を渡す。

 カミン!ココでお前の出番だ、今度は魔法陣を生成したサルザ姉妹のどちらかに「許可する」と言え。


 これで会得条件は全て満たされる。


 どうだ、流れは理解出来たか?」


 全員コクリと頷く。


「よしお前達とカミンの両名が揃わないと【生体融合魔法】の魔法を第三者に会得させられないから覚えておけよ。


 では、二人共覚えた【生体融合魔法】の魔法を発動させて見せてくれ。

 但し絶対に物と融合はさせるな、あくまで発動させた状態で待機だ」


 アルシオとエルアルファは、頷き、ハモるように同時に呪文を唱え魔法を発動させる。


「「我名において命ずる、我が欲する形となり発現せよ【生体融合魔法】」」


 両者の足元にオオサ帝国の紋章で魔法陣が生成された。

 これで、発動時に魔法陣出現は所属国によって変更される事が立証できた。


「よし発動を途中停止させてみてくれ」


 両者は頷き発動を停止させると足元に展開していた魔法陣も同時に消滅した。


「よし途中停止も問題ないな、これで終了だ。

 あとお前達二人は魔力が元々足りないから、日に使用出来る【生体融合魔法】の限界を早い段階で把握しておけよ。

 今日俺が帰ったら、気絶するまで発動と途中停止を何回出来るかを後で調べておけ。


 それとカミン皇帝、これは俺からの友好の証だ、取っておけ」


 二冊の【レトロ調魔術書生成】で生成された、縦二十センチ横十五センチ程度の表紙部分がレトロ調で、三百頁程ある中身が無地の分厚い本の魔術書をカミンに向け放り投げ渡す。


「これは無地の魔術書?いいのか?」


「あ~友好の証だ、お前も約束は守ってオオサ帝国が魔素義体提供、機械融合技術魔法者育成の国として真面目にやれよ。

 あと、監視用の映像魔法は当分仕入れるが安くしてくれよ。


 それと、もし約束と違う事をしたら本気で攻め込みお前の国を磨り潰すからな。

 最後に、これ以上俺はお前の国に対してこの融合魔法に関してお前を助けるつもりは、今の所考えてないから自力で何とかしろよ」


「分かっている、こんな「AAA」ランク品を二冊も譲って貰ったからには約束は守る。

 本当に助かったマムラ国王感謝する。監視用の映像魔法を定期的に無料贈呈させてもらうよ」


「駄目だ無料は無しだ、それだと他国にお前を傘下に収めてる風に思われるだろ。

 そこは安値にしてくれればいい。じゃ~俺は少し用事があるからこれで帰るわ。リム帰るぞ」


 呼ばれたリムは駆け寄ってくる。そのままリムの手を握り自国の王の間をイメージ転移する。


「マムラ国王は本当に忙しく飛び回る奴だ。

 敵にならなくて本当に良かった、あのまま敵になってたらと思うとゾッとするな。

 しかし俺も大分肝が据わって来たか、マムラ国王のする事にあまり驚かなくなってきた自分が怖いな・・」


 驚かなくなってきてとボソリと呟く横でアルシオとエルアルファ―は目を点にして驚いていた。


 そして、マムラ王国、王の間で待機していたラナ王国からの使者であるカイ・テテラの前に突如シアキ達は現れる。

 突然現れた事には左程驚いた様子を見せない、眼前に立つ魔法職を生業にしているであろうローブ服とウィッチハットを被った使者に対して、シアキはつまらない奴と思いうのだった。


「さて、ラナ王国からの使者さん、今度はきちんと話しを聞かせてくれるか?。

 自国民でもないお前の下らん思い込みと侮辱行為満載の児戯に一回たっぷりと付き合ってやったんだ。

 俺は二回も付き合える程、お人好しじゃないぞ」


 使者に話させる気はないので、シアキはこの場で強い殺気を出す。

 この場に居たリム以外の者は全身に氷水を掛けられた様な悪寒を感じ身動きできなくなる。

 自国民である衛兵団隊長である者達も殺気に巻き込んでしまうっているが、今回は許せと心で謝る。


 そしてリムに念話を繋ぐ。


『リム、声を出すな、これは念話だ安心しろ。

 少し使者を利用してお前の奴隷の習熟度を上げようと思う、少し卑劣な扱いをするけど許してほしい』


 突然念話を繋いだためリムはその場で少し挙動不審な動きを見せたがすぐ順応する。

 そして使い方を教える前に、リムの心の声が駄々漏れで流れ聞こえてくる。


『(あ~シアキ様の声、ふふ、あ~凄い今私の中で鳴響いてた!。

 あ~やっぱりシアキ様は奴隷に優しいあ~シアキ様の横顔カッコいい。


 好き大好き好きですって言いたい、あの腕も足もその心も全部好きですって言えたら最高なのにな~。

 あ~どうしよう今私奴隷が考えちゃいけない事考えてたかも、どうしよう顔緩んでないかな~見られてる!。

 あ~絶対顔緩んでるの気付かれたのかも~あ~少し恥ずかしい)』


 この子は心では凄い女の子をちゃんとしていると初めて知る。

 このまま心の声が駄々漏れだと教えれば恥ずかしさのあまり悶え死にそうな勢いだ。どんどん赤面していっているので目線を使者に向け。さも聞いていなかったかを装い、念話を続ける。


『リム良いか!念話の使い方を教えるぞ。少しだけ俺と心の中で話している様にすれば話せる。

 考えは駄々漏れにはならない。ちゃんと俺を想像しそれに話し掛けないと駄目だぞ分かったか!』


『(えっとシアキ様を心の中で想い描いて話すっていつもの感じでいいのかな?)

 (取敢えずやってみないと)『はい、分かりましたご主人様』(・・あれこれで良いんだよね!どうしよう間違ってないよね)』


 間違ってないぞっと言いたい、最初から心の声が駄々漏れだとも言ってやりたい。

 そしていつもリムは自分の事を考え行動してくれているので、考えた事が駄々漏れになっているのだと気づく。

 ココは紳士的に余計な部分は聞かなかった事にしておいてあげるのが主人の務めだと頷いて見せる。


『よし、ちゃんと出来るたな。

 リム!今から二つだけやって貰いたい事がある。

 一つは今から俺がガオラスさんが使者に攻撃するように色々仕掛ける。


 その攻撃をしようとした瞬間、俺はお前を使者の前に移動させるから、腕一本で攻撃行動を止めてもらうぞ。

 二つ目は使者を丁重に扱い最後国の外に出るまで見送ってもらう。


 出来るかな?』


『(あ~ちゃんと出来るかな~でもシアキ様にいいとこ見せないと)『はい、出来ます。ご主人様』』


『ではこれで、念話終了だ-念話終了-』


 いかん、この子は心が駄々漏れすぎる。念話魔法を改良すれば敵の心の声を盗聴し使うには丁度良いが、仲間の心が駄々漏れなのは宜しくない。

 早急に仲間に使う念話魔法だけは少し改良し、駄々漏れ現象が起きないようにしようと考えるのだった。

--- 89話目のみの後書き----------------------------------------

89話目最後まで読んでくださりありがとうございます。

どうでしたか?楽しんで頂けたならうれしいですが。


---余談---

少しキャラ達の変化に気付いてくれてるといいんですが!。

う~ん・・・ドコがって言われそうですね。


では、次90話目で、お会いしましょう。

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