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---3--- 森 モンスター討伐と出会い??

 五階建て程のビルの高さの木々が生え、幹の幅はどれも軽自動車一台分はある木々が無数にそそり立っている、そんな巨大な森の中、雑草を掻き分け今シアキは歩みを進めている。

 森に侵入し数メートル程進んだ辺りから雑草の背丈が急に約一メートル弱になり、なかなか視界が利かなくて前方の見通しが悪くなり進みづらくなっている。


 今の所、武器に成りそうな物は一切見当たらない。

 この巨木の枝は直径で三十センチはあり、拾い脇に抱えて振り回せば、ドデカイこん棒として破壊力はさておき武器としては十分使えるだろう。


 そして何故、朽ちて落ちた枝を拾わないのかと疑問に思うはずだが、この森の地面には、不思議と落ち葉もなければ、朽ちて落ちた枝すら地面に落ちていないのだ。


 この森の巨木すべての枝の始まりは、地面から六メートル位の位置から枝が伸びている。 それより下には、何も無い、登る為の取っ掛かりも、窪みも、出っ張りですら一切無いのだ。

 幹に抱き付いて登るにしても巨大すぎる為出来ないので、シアキは、ドデカイこん棒になるであろう巨木の枝の採取は諦めて、幸い地面に無尽蔵に投げるのに程度良い小石だけは豊富にあるので、それを取敢えず両手に持ち、今雑草を掻き分けながら突き進んでいるのだ。


 もうこの森では投石による遠距離攻撃手段しか残されていない状態なのだ。 実に小石でモンスター倒せるのかと心細くなる様な武器と呼んでよいのか分からない小石があるだけだが、有るのと無いのとでは心細さは幾分和らぐものだ。


 森に入って数時間、要所要所で手に持つ小石を使って地面と巨木に矢印を刻みながらシアキは森を一直線に進んでいる。 寒さは動いているおかげもあり体はポカポカと熱をもっている。

 またシアキは歩みを進めながら、最悪目的地に今日中に到着出来ず森の中で野宿する可能性も考慮し、食料に成りそうなモノ、雨風モンスターの襲撃を凌ぐのに丁度良い身を隠せる場所、窪み、穴倉等を探してはいるが、今の所それらは一切発見出来ていない。


 少し不安を抱きつつも早くあの煙があった個所へ到着しなけばと思い、足場が多少悪くとも成るべく直線に進む事を意識し進んでいる。 何故シアキが直線で目的地方角に直進していると思っていると言うと、それはこれまで目印に刻んで来た印を必ず二点以上垂直に繋げ常に何度も後ろを振り返り方角を修正し確認しながら森の奥へ奥へと進んでいるからシアキは方角を見失っていないと思い込んでいるからである。


 だが、この森を構成している木々一本一本はそれ事態が巨大な一つの意思を持つモンスターの一部で、既に森から悪戯され完全に方角を迷わされている事にシアキは全く気付いていないのである。


 そんな状況に陥っている事に気付いていないシアキの前方の茂みから何者かが草を掻き分け動く音と気配を感じたシアキはこの森に入って初めてのモンスターとの遭遇だと直感し、慌てて足を止め身を低くし草に身を隠し息を潜めながら前方に全神経を研ぎ澄まし注視し、いつでも逃げられる態勢を整える。


 ガサゴソ、ガサゴソ、ガサゴソ、ガサ、ガサ、ガサ~。

 音を出していた主が前方の雑草を掻き分け姿を現す。

 角が四本生え、牙が二本、体長一メートル前後はありそうな体躯。 目が黄色。 全身白モフモフの毛に覆われた巨大ウサギがシアキの前方百メートル辺りに姿を現れた。

 巨大な体躯で見た目が凶悪な草食感がゼロな生物を目にしたシアキは今まで生きてきた常識が通用しない事を直感させられ、思わず小声で愚痴を吐く。


「まじかよ!デカ過ぎだろあれ!!まさに肉食系モンスターじゃん!!。

 あぁ~もうあれ絶対見た目から肉食だろ、ってウサギなのに牙とかおかしいだろ。

 あんなのとまともに戦ったら絶対死ぬ、もうここは来た道を逃げ戻るしかないな!」


 息を潜めた程度では気配や匂い音までは完全に消せる訳もなくシアキの位置や存在は既に感知されている。だって相手はウサギなのだ。 その巨大な耳で、姿を現す前にシアキの歩み進める音を敏感に察知されておりこうして会うべくして会っているのは当然と言ったら当然の結果なのである。

 そして姿を現した眼前の巨大ウサギモンスターと目線が重なるのをシアキは感じとり直感でこれは既に勘付かれていると理解するのだった。


 巨大ウサギモンスターは空気を吸い込み一拍後、シアキの隠れている方角に向けて鼻を鳴らした。


「ハッン」


 その行動は威嚇であり、コチラの位置は把握済みであると知らされたのだとシアキは確信する。


「完全に気付かれてるか!もうこれは逃げ出すタイミングをちゃんと見定めないとだな!」


 躊躇なくシアキは来た方角へ引き返す事を選択しゆっくりと体勢を来た方向へと向けようとした、次の瞬間、巨大ウサギモンスターはその巨体に見合わず軽快にシアキの頭上を跳躍し飛び越え、シアキは後方、退路を断たれてしまう。


「ま、まじかよ~なんだよその図体で、その跳躍力とか反則だろ~。

 火の魔法で応戦か!!いやガスバーナー程度の火力じゃ、あんな巨体を焼き尽くすとか無理だよな!。

 あぁ~本当に魔法全然役にたたね~。

 武器になりそうな物はこの拾った小石だけしかないし、どうすりゃいいんだよ」


 一応応戦するため心許ないが手持ちの小石をいつでも投げられる準備だけ整えながら巨大ウサギモンスターを真っ直ぐ見据えつつ一気に立ち上がる。


 その立ち上がる動作を確認したった巨大ウサギモンスターはシアキが敵であると認定するや、シアキ目掛けて跳躍力をいかした飛び蹴りを仕掛けててくる。


 巨体が迫って来る事にシアキは恐怖を感じ手持ちの小石を投げるのは無意味と悟り地面に小石を放り投げ捨て、ギリギリの間合いで巨大ウサギモンスターの横へと飛び退き、そのまま森の奥へ一目散に走り兎に角全力でこの場から離脱をするために逃走を開始する。

 それから何時間も巨大ウサギモンスターの飛び蹴り攻撃をギリギリの間合いで回避しながら只管に森の中を駆けシアキは逃げまわる。


「何なんだよ~もう追ってくるなよ~。

 攻撃は飛び蹴りのみの単調だから軌道が読み易くて避けるのは簡単だけどさ~、こうも何時間も逃げ回って走ってられね~っての。

 いい加減、あきらめてくれ~」


 流石に、レベル一の体力では持久力にも限界がある為、疲れが見え始めており息も上がってしまい、かなりシアキは追い込まれている。


「休憩~少し休憩させてくれ~持久走とか俺は結構苦手なんだよ~こんちくしょ~ハァハァハァハァ」


 そしてシアキの走る速度が徐々に衰えたてきた。その瞬間!!。

 巨大ウサギモンスターの飛び蹴りがシアキの背中を捉え、数十メートル程、土埃を巻き上げ縦方向に回転しながらシアキは吹き飛ばされてしまった。


 派手に吹き飛ばされたにも関わらず、シアキ自身ダメージを負ったと言う感覚は一切感じる事はなかった。

 それを不思議に思ったシアキは受けたダメージ量が気になりステータスを開き確認してみる。

 巨大ウサギモンスターの飛び蹴り攻撃にて受けたダメージは、たったの五であった。


 流石にあんな派手に蹴り飛ばされたので目を疑ったが、二度見をしても事実たったの五ダメージしか負っていない。

 その事実を知り逃げる事が馬鹿らしくなり、もう走って逃げる事を止めてこのまま素手で巨大ウサギモンスターと戦う事をシアキは決め、迫って来る巨大ウサギモンスターに向け少し肩で激しく息をしながら、ファイティングポーズをとる。


「ハァハァハァハァハァハァ~もう疲れた~とりあえず今迄無駄に走らされた分、一発殴らせろや~この巨大ウサ公め~かかってこいや~ハァハァハァハァハァ~」


 巨体が勢いよく迫って来る事にはまだ少し恐怖感は拭えないが、攻撃を食らったとしても左程ダメージは負わないと気持ちを奮い立たせ、冷静に飛び蹴りしてくる巨大ウサギモンスターの動きを捉える。

 そして絶妙な間合いで飛び蹴りをしてくる巨大ウサギモンスターの横へ素早く飛び避け、避けると同時に横腹辺りに全体重を乗せ拳を叩き付ける。

 幸い巨大な的なので一切目標は外す事なく綺麗に横腹に拳がめり込みメキメキとあばら骨が砕ける音がする。

 そしてそのまま殴りつけた方向にへ巨大ウサギモンスターは奇声をあげ数メートル先へと吹き飛んでいった。


「おおお!俺スゲ~。

 パンチ一発で、あばら骨を砕いた感覚がしたし、おまけにあの巨体を軽々吹き飛ばせたな~スゲ~。

 もしかしてこの辺のモンスターはやっぱり冒険の序盤戦って場所だから弱いのかもな?。

 いや、いやアイツがあの見た目と違って弱いだけなのかもしれないし決めつけは良くないな」


 自分の殴りつけた拳をグーパーしながら眺める。 普通なら殴った側も拳に激痛が走るものだが殴りつけた手は全く痛みを感じていない事に少し不思議と違和感を覚えるが、今はまた巨大ウサギモンスターが態勢を立直しまたコチラに飛び掛かってくるだろうと殴り飛ばした方角に体を向け再びファイティングポーズをとり身構え戦闘態勢を取る。

 ・

 ・・

 ・・・

 いくら待っても、巨大ウサギモンスターは殴られたダメージから復活し態勢を立直してまた飛び蹴り攻撃を仕掛けてくる気配はない。

 むしろ吹き飛んだ先で巨大ウサギモンスターはピクリとも身動きをしない。


「なんだ?もしかして死んだふり作戦か?。

 油断して近づいて来るのを待って飛び掛かってやろうってやつか?。

 頭を使いやがるウサ公だな」


 ダメージから復活して態勢を立て直し襲いかかてきても応戦できるギリギリの距離までシアキは近づき、巨大ウサギモンスターの状態を目視確認をする。


 そこには、見事に目から血の涙を流し、口からも大量の胃の内容物と血を吐き出して舌を生気なく外に出し、左横腹を殴ったその方向へ「く」の字に曲がり絶命している巨大ウサギモンスターの姿がそこにあった。


「?なんだ、もしかして死んでいるのか?。

 パンチ一撃で?なにこの見掛け倒しのモンスター、弱すぎだろ。

 パンチ一撃で討伐完了って、さっきの必死に逃げ回った体力と驚きを返しやがれ~。

 あぁ~もう疲れた~流石にもう休憩してもいいよな、もうこれ以上は走れんわぁ~」


 少し巨大ウサギモンスターを倒した事に安堵しシアキはその場に座り込み息を整える為休憩をする。

 だがこの森は休息等させてくれそうにない。

 また前方の草むらを何者かが掻き分け近づいてくる音がする。


 ガサ、ガサ、ガサ、ガサ、ゴソ、ガサゴソ、ガサゴソ、ザザザ~。

 新たにシアキの眼前に現れたのは、体長十センチ程の小さな目がクリクリした、牙も丸く少し出た程度のまさに可愛いイノシシ(ウリボウ)だ。

 カポ、カポ、カポ、カポと可愛らしい蹄の音を鳴らしながら草むらを掻き分け出てきた。


 その愛らしい姿を目にしたシアキはホッとする。

 さっきまでの殺伐とした気持がその可愛さで洗い流され癒される様な、そんな感覚が生まれイノシシ(ウリボウ)の姿を微笑ましく癒し系動物を愛でる気持ちでぼんやりと眺める。


 その可愛いイノシシ(ウリボウ)はシアキの存在に気付き、その場で立止り警戒する。

 休憩するシアキの横に、目から血の涙を流し、口から内容物と血を吐き出し、舌を生気なく外に出した「く」の字に折れ曲がり絶命している巨大ウサギモンスターの無残な亡骸を確認する。


 その光景を確認した可愛いイノシシ(ウリボウ)はシアキを敵であると認識し、すぐさま戦闘行動へ移行する。

 可愛いイノシシ(ウリボウ)は、後ろ足を数度蹴り上げ土埃をあげる動作をし鼻息をフンフンフンっと数度鳴らした後に突進攻撃準備行動をとる。


 カポ、カポ、カポ、カポ、カポ、カポ、カポ、カポと可愛い足音を立てながら、未だ息を整える為に巨大ウサギモンスター横で座り休憩をしているシアキに向かい突進してくる。


 こんな愛らしい小型犬並の体躯に突進され体当たりされてもダメージを受ける要素がないと考えたシアキは一切回避行動を考えずにそのまま休憩態勢を維持しながら迫ってくるその愛らしいモンスターを眺める。


 だがその考えが間違っていた事を数秒後シアキはその身に体感する。

 足にポンっと突進されたと感じた次の瞬間、高速移動する車にでも跳ね飛ばされたかのような強い衝撃を受けシアキは勢いよく吹き飛ばされてしまった。


「え~なんでやねん、あんな体躯で突進してこんなに吹き飛ばされるんだよ~ありえね~」


 衝撃はすごかったが痛みはさほど感じないが、気づけば数百メイトル程、一切地面に着く事無く吹き飛ばされ続ける。

 一本の巨木に背中を激突させた後、滑るように尻から地面に着地する。


「?い、痛てぇてぇてぇて~なんだよ~あんな可愛らしいやつが、なんでこんな距離を吹き飛ばせる力があるんだよ。

 普通巨大ウサギだろ~逆だろ~その攻撃力とかさ~本当に見た目に反しつ攻撃力が違いすぎるだろ~」


 愚痴を吐きつつほぼ痛みなど感じてはいないが、何故か条件反射的にぶつけた腰や頭や尻を擦ってしまう。

 そして衝突した巨木の上の方から何やら耳慣れたお約束パターン的な嫌なブ~ンという羽音がしてくる。

 その羽音を鳴らす生物の姿が予想出来たシアキは顔をぴくぴくと引き攣らせながらゆっくりと上を向く。

 そこで目にした生物は予想通りの蜂であったが、その体長だけは予想以上で、体長九十センチ~一メートル前後はあろうかと言うドデカイ体躯の蜂型モンスターであった。 それらがゆっくりした速度で、高度をどんどん下げシアキに向かって来ている。


「なんばそのデカさは~ありえねだろ~。

 あぁ~もう次から次と取り敢えず戦闘前にさっきのダメージを確認しておかないとだな」


 ステータスで先ほどのダメージを急いで確認する。

 小さなイノシシ(ウリボウ)に吹飛ばされて受けたダメージは、十五だった。


 何かの見間違いではないかと思える程の数字に少し思考が停止する。

 巨大なウサギが五で小さなイノシシが十五な事に、どうやってダメージ計算をしてら良いのか分からなくなる。


 ただ今判明したのは、この世界のモンスターは見た目から想像する予想ダメージ量と実際攻撃を受けて負うダメージ量は比例しないと言う事だけだ。


 もう出鱈目過ぎるじゃないかと愚痴り暴れたくなる気持ちを抱きつつ、現状そう言うものだと納得しステータスを閉じる。


 羽音がどんどん近づいてきているので慌てて降下してくるバカデカイ蜂と自分との距離を確認する。

 まだ少し準備出来る距離なので投石準備をする為に周辺の手頃な小石を掻き集め山を作り投石戦闘の準備を整える。

 同じ要領で別箇所に数ヶ所石の山を築き準備を整え終え、攻撃を開始する。

 第一投目は見事に片羽根に命中する。

 羽根が傷付くとボトリと簡単に落下し地面で羽根をバタつかせその場でぐるぐると暴れ回るのみで、立ち上がり地面を這い襲ってくる気配はなさそうなのでシアキは完全討伐は後回しで良いと考え、続けて降下してくる蜂の片羽根目掛けて石が当たって貫通させ六体を次々地面に落とす事に成功する。


 素早く第二陣がくる前にシアキは落とした蜂へ近づき顔と胴体付け根の薄い箇所を狙い思いっきり足で蹴り上げ蜂の頭を吹き飛ばす。 すると緑の体液が周辺に勢いよく舞い散る。


 それから数時間、投石して蜂を落としては蜂の頭を足で蹴り吹き飛ばすという単調な討伐戦闘を繰り返し、ようやく最後の一匹を落とし討伐が完了する。

 そして周りには数百数千いや無数の蜂の頭部と胴体が切り離された亡骸と転がり、蜂の体液が辺り一面の地面を緑色一色に染あげ異臭を放っている。


「うわ~流石にこの量はキモいな・・・。

 それにこの蜂の緑の体液、ものすごく臭さいし、・・もう、たまらん鼻がもげる。

 一旦此処から離れないとな、さて来た方向はっと・・・」


 方角確認をしているシアキの顔がみるみる青ざめていく。

 あの小さなイノシシに吹き飛ばされた際、一度も巨木に当たらず一直線に飛ばされていたはずなのに、今目線の先にはどこにも一直線になる様な木々の隙間は確認出来ず、無数の木々で隙間なく埋め尽くされている。前後左右背中を強打した巨木を背に一周して確認してみたが、木々に囲まれ、何処にも一直線に飛ばされたであろう個所の痕跡を見つける事は叶わず完全にシアキは目的地方面への方向感覚を見失ってしまった。

 現状シアキは森深くで完な迷子状態になってしまっている。


「マジか!方角分からなくなったぞ・・・・お~い、誰かいないか~道に迷ってしまったので、助けてくださ~い、誰か~居ませんか~」


 一応希望をもって助けを口にしたが、もちろん返答を返す者の応答は一切返ってくる事はなかった。


 途方に暮れ、ふと目線を下に向けると自分の影が妙に大きくなっている事に気付き上空からまた蜂が降下して来ているのかと思い顔を上げると、そこには蜂ではなく巨大な体長二メートル程ある蜘蛛が静かに忍び寄って来ていた。


 蜘蛛を確認するなりシアキの顔から血の気が一気に引き真っ青になり、大声で悲鳴をあげる。


「うわぁ~わわわぁ~、ク、ク、クモ~」


 シアキと言う人物は一般的に人種問わず嫌悪感を持つであろう「ゴキ」には、左程嫌悪感を持たず冷静に捕獲や退治が出来る。


 だがなぜか「蜘蛛」と言う生物だけは超が何個付くのかという位に苦手なのだ。

 体長二ミリと小さかろうとシアキは蜘蛛を見ると、全身の毛が逆立ち、毛穴が収縮し、足指をキュッと縮め、尻穴をキュッと強く閉じて身を固める程の大の蜘蛛嫌いなのだ。


「こ、こ、こっち来るな~」


 そう言い残しシアキは脇目もふらず全力疾走で逃げ出す。もう方向なんかどうでもいいとばかりに兎に角蜘蛛から一刻も早く離れる為に必死に走って逃走している。

 途中蜘蛛が追ってこないか、後ろを何度も確認したり、頭上にいないか確認したり、もう彼方此方確認しながら何度もコケたりし兎に角全力疾走し逃げた。

 そして逃げた先に小高い岩があったので、必死によじ登り周囲を見渡して蜘蛛が居ないかの確認を済ませた後そのまま頂上の座り込んで息を整える。


「ハァハァハァハァ~な、なんだよ、蜘蛛デカすぎだろ、あんなの聞いてないぞ」


 暫く岩の上で休憩しているとお腹が「グゥ~」と鳴る。


「あぁ~腹減ったな~何か食い物ないかな~このままだとヤバイぞ本当に餓死するぞ」


 食せそうな果実とかが無いか辺りをキョロキョロと見渡し何も無い事に落胆しながらもシアキはさっき倒した巨大ウサギモンスターをまた見つけ倒し周辺の草でも燃やして丸焼きにでもして肉を食べてしまおうかと一瞬考えるが、転生した初日にそもそもモンスターの肉が食べられるモノなのも分からない状態で、且、どんな感染症を引き起こすか分からないモノを空腹だからと口にして死亡するのだけは嫌だと思い止まり、モンスター肉を食すと言う事を却下する。


 幸い周りには、果樹とかはないが得体の知れないキノコはいっぱい自生している。 だがキノコは見た目に反して毒がある物が多いので知識無く食す事は毒により死んでしまう可能性が高いと判断しこれも却下する。


 先程倒した蜂はっと考えるが、あの体液の臭さは凄まじかったのと、空腹だからと言っても虫を食べると言う発想はシアキには無いので無論即却下された。


 あとは先程出会った蜘蛛を焼いて食べても・・・っとここまで考えた時点で、全身に寒気がはしったので考えを止めて却下される。


 そして考えても食べられる物が何も無い事が思考し結果として再認識すると余計に腹が空き「グゥ~」と再び腹が大きな音を立てて鳴る。

 数分間岩の上で体育座りの様に膝を抱え座り込みボ~っと眺めて過ごす。


「はぁ~、折角魔法も使える世界に来たのにどことも判らない森の中で飢え死にか~空でも飛べたらな~。

 そ!そだ!魔法あるんだし魔法で空飛べばいいじゃん。俺頭いいかも。試してみよう」


 魔法はイメージが大切だと、火を出した時に分かったのでシアキは立ち上がり鳥が空を飛ぶイメージをしながらその場でジャンプをしてみる。

 数回ジャンプしてみたが、全く飛ぶ気配も地面から数センチでも浮くという気配は一切なかった。


「はぁ~飛べないのか~やっぱり火しか魔法出せないのか~。魔法が万能じゃないのが残念すぎる」


 そして少し動いたせいで「グゥ~」っと再び腹が鳴る。

 立ち上がった事で少しだけ視線が上がり、上から見渡せる範囲が増えたので再度食べ物に成りそうな物が無いかと目を皿の様にして周囲を見渡す。


 前方に少し雑草が無くなり岩と砂地が見えている個所に、緑色の人型の様なサボテン(うちわサボテンの様な)みたいな物を見つけた。

 いやこんな森の中にサボテンが自生している事はおかしいのだが、シアキは空腹で冷静な判断できないので、知識としてサボテンは食える食料として認識している為か頭の中はもう「サボテンを食べる」「空腹満たす」「サボテンを食べる」「空腹満たす」と食欲を満たす事しか考えられない状態に成っている。


 空腹を満たす為、見つけたサボテンを貪るように食う事しかシアキの頭にない。

 元気よく岩を飛び降り、人型の様なサボテン(うちわサボテンの様な)みたいな物の下へと駆けだしていく。

 本当に食欲は凄いあれ程疲れ走るのが嫌だった筈なのに、あっという間に目的のサボテンの前に到着している。


「コレだけあれば空腹は十分満たせるぞ。 えっとたしか果肉が食べられるんだったよな、もぎ取って石で皮を剥いて果肉を食べるので良かったけか?・・あぁ~もういい兎に角一齧りしよう」


 四十センチ前後の人型の様なサボテン(うちわサボテンの様な)がシアキの眼前にある。

 早速その人型の様なサボテン(うちわサボテンの様な)みたいな物の、腕みたいな部分をへし折ろうとシアキは手を伸ばす。


「ヤメテ、ヤメテ、タベナイデ、ワタシ、オイシクナイ、アンゼン、テキイナイ、コウゲキシナイ、ダカラ、タベナイデ~」


 いきなりサボテンが言葉を話し食べないでと懇願してきた事にシアキは驚き後ろへ飛び退く。

 そうこのサボテンは意思があり少し喋れる系のモンスターだったのだ。


「なに!?喋った?サボテンが?」


「ワタシ、タベテモオイシクナイ、ダカラ、タベナイデ、オネガイ」


 必死に懇願しているサボテンに驚きつつもこの世界で初めて出会った知的生命体で少し知性は低そうだが、言葉を交わす事が出来る者が現れてくれた事にシアキは感動を覚える。

 空腹を満たす為に眼前の喋るサボテンを食べられるにしても、現状知性のある者からこの世の貴重な情報を聞き出さないのは得策ではないとシアキは瞬時に食べずにおくと結論を出す。

 そしてシアキは空腹に耐えながら喋るサボテンに話し掛ける。


「ご、ごめん、キミを食べない食べないから安心してくれ。まさかキミが喋れる知的生命体だと知らなかったんだ」


「ホント?タベナイ?ワタシアンゼン?」


「本当に知らなかっただけで故意にキミを食べたりしないから安心してくれ。

 ただ、少し教えて欲しい事があるんだ、キミが知っている事で構わないので、俺に少し色々教えてくれないかな?」


「アンゼンナラ、ワタシ、アナタニ、モノオシエル、イイ」


 サボテンの同意もあり早速シアキは二つ程質問をする。


「まず、キミの名前と種族を教えてくれないかな?。 また間違って同族さんを食べそうになったら今度こそ大変だからさ。

 あともう一つ俺みたいな容姿、所謂「人」が沢山生活してる村や町って知ってたら、その方角や行き方を教えてくれないかな?」


「ワタシ、セイレイゾク、ダイチノタミ、ナマエ、ナイ。

 アナタ、オナジヒト、タクサン、イルトコ、シラナイ、ガ、ヒトリ、デ、モリオク、セイカツシテル、ノ、シッテル」


 話せると言っても話が片言なので理解するのに頭で一旦整理する時間が掛かったが、この森の奥に一人で生活してる者が居ると言っていると理解出来少し希望が湧いて来た。


「この森の奥に一人で生活しているんだね。よかった~俺はその人に会いたいんだけど、道案内とか頼めないかな?。

 その・・・えっと名前がないと不便だな~キミは女の子?それとも男の子?どっちかな?」


「?ワタシ、ハナツケル、セイベツナイ」


「花って性別が無い?両性って事か?まぁ~一応花が咲くし、女の子として名前つけていいかな?呼び名が無いと会話しづらいし」


「ヒツヨウナイ、ケド、ツケテイイ」


 この意思あるサボテンは少しうれしそうなにしていると、そうシアキは感じとった。


「ん~サボテンってシャボテンとかとも言わなかったっけか!あんまり花とか興味無かったし記憶が定かじゃないけどまぁ~いいか!。

 なんか女の子ぽいのがいいよな、「シャボ」、「サボてん」「ボテン」、可愛い響きだしシャボにちゃんを付けて。これからキミの事を「シャボちゃん」って呼ぶね」


 シアキは自身のネーミングセンスが悪いと思いつつ、花に名前を付けて大切に話し掛けて育てる趣味は持ち合わせていないので仕方ない事だと自身のネーミングセンスの悪さについてはこれ以上考えるのは止め、このまま森を抜ければこの喋るサボテンとはサヨナラなので汚点を残さない為に最後は口封じとして圧し折って命を絶ってば何も問題はないと考えるのだった。

 そして名づけられたこの意志を持ち喋れるサボテンは、自身の名が「シャボちゃん」になったのだと理解し名前を気にいったと言う感じで嬉しそうに復唱する。


「ワタシ、シャボチャン、ワタシ、シャボチャン、ウンウン、ワタシノナ、ハジメテ、ウレシイ」


 シアキはサボテンが「シャボちゃん」と言う名に満足そうに何度も言っている姿をみてホッとする。


「で、話を戻すね。

 例えばシャボちゃんを土から掘出して、俺がシャボちゃんを抱えるて、その森の奥に居るって言う人の所までの道案内を頼むのは出来るかな?」


 シャボちゃんはシアキの掘起すという言動を聞き慌てて言葉を返す。


「ツチ、ホリカエス、ダメ、ダイチナイト、ダメ、ホリカエス、ゼッタイイヤ」


「うーん。大地って土に埋まってないといけないのか」


「チガウ、ダイチニ、シャボチャン、ツイテナイト、シンジャウ、ダイチナイト、ダメ」


「周辺の土も付けて運べば問題ないとか?」


「ワカラナイ、アルケル、シャボチャン、ハ、スコシアルケル、アルイテ、アンナイスル」


「お!歩けるのか~それは助かる。では、シャボちゃん先に歩いて俺を案内してくれるかな。

 あと、なんか食い物とかあるとこ知らない?途中で何か食べられる果実とかある所も教えて欲しいんだが、そんな箇所知らない?」


「シラナイ、シャボチャン、ショクジダイチカラトル」


「ですよね~。植物は太陽の光と大地から水分や栄養をとるんだよなな。ほんと腹減ったし喉乾いた~」


「スイブンナラ、スコシ、テイキョウ、デキル、クチアケロ」


 水分なら提供出来ると言い、シャボちゃんは人であれば手先部分をシアキの口元へ運び差し込む。

 シアキの口の中に濾過された少し粘り気のある水分が注がれた。

 すごくさわやかな感じが口いっぱいに広がりのどの渇きは癒された。


 シアキはそっとステータスを確認する。

 少しではあったがシャボちゃんの体液は、精神力と体力を回復させる効果があるようだ。


「ありがとうシャボちゃん、のどの渇きだけでも潤せて助かったよ。

 じゃ~シャボちゃん、道案内よろしく頼むね」


 シャボちゃんは土から、埋まっている足をお風呂から上がるかのように抜き出てくる。

 そして体長が六十センチ前後になった。


 数時間、シャボちゃん先導で森を歩き道案内をしてくれ、しかもその道案内は完璧だ。

 一切モンスターに合わない様に安全なルートを選び進む能力があるようだ。

 そしてなによりその歩く姿に癒される。 体長約六十センチ前後の丸みのある体で、規則正しく両手を振って前方をトコトコ歩く姿はすごく可愛い光景だ。


 歩いている最中幾度も大きな音を出し鳴り続けたシアキのお腹が「グゥ~」っと、今まで一番大きい音を立てて鳴った頃、何処からか食欲を刺激する良い匂いがしてきた。

 匂いのする方をクンクンと匂いを嗅ぎ、案内をしてくれているシャボちゃんに尋ねる。


「もしかしてこの近くにその人が居るって箇所があるのか?シャボちゃん?」


「ソウダヨ、モウスグ。

 デモ、ワタシハ、アソコニハ、イキタクナイ。

 シアキ、ハ、ヤサシイ、ワタシ、ニ、ナマエクレタ、コウゲキシナカッタ、スキ。


 デモ、ホカノ、シュゾク、ワタシヲ、テキ、トシテ、スグ、コウゲキ、シテクル。

 ホカノ、シュゾク、キライ、ダカラ、イッショ、ニ、イキタクナイ」


 シャボちゃんは、これより先は行きたくないそうだ。


 でも案内してもらっている間、色々話をし少し打ち解けた。

 安全なルートを選べるこの能力のおかげで、ここまでモンスターに合うことなく来られた。

 もうすっかりシアキはシャボちゃんを森の安全ルートで動き回れる良き仲間のモンスターとしてみている。


「シャボちゃん、もう俺はこの森内でシャボちゃんの事を仲間だと思ってる。

 どうせその人が居る個所は少し立ち寄って情報を仕入れるのを終えたらその足でこの森を出ようと思ってるからさ、シャボちゃんには森を抜ける最後の時迄一緒に行動して、また安全なルートを進みながら楽しく行きたいと思ってるんだ。 だからシャボちゃんがアソコへ行きたくないならさ、しばらくこの周辺で待っててくれると俺は嬉しいんだが、どうだろう?」


「ウンウン、ワカッタ、シャボチャン、ガ、シアキ、ノ、ナカマ。

 ナラ、マツ、ソコヲ、マッスグイッタトコロ。

 ココデ、ショクジシテ、ネテ、マツ、ナカマ、ノ、シアキ、デテクルマデ、マッテル」


 待ってもらう約束をし、言われた通りシアキは雑草を掻き分け前進していく。

 いやもう匂いのする方へ、する方へと、歩みを進めている。


 すると森の中に、そこだけ直径六百メイトル程の円形状に木々が全く生えていない空間に出る。

 日差しが綺麗な光の柱のように斜めに降り注いでいる。

 その空間、中央に目をやるとログハウス風で煙突のある家が一軒あった。


 美味しそうな匂いはその家から漂ってきている。

--- 3話目のみの後書き----------------------------------------

3話目最後まで読んでくださりありがとうございます。

どうでしたか?楽しんで頂けたならうれしいですが。

---余談---

書いてたら、緑のちょこちょこ健気に歩くシャボちゃんを想像してしまい急遽、敵にして一番すごいマヒ戦闘シーンをと考えていたのですが、あまりにもかわいい姿を想像をしてしまい仲間にしてしまいました。


シャボちゃんの回を作ってみたいです


こんな事で、かわいいのかと共感できないかもですが、私の中ではものすごくかわいいものが膨らんでしまいました。 お許しを・・・


では、次4話目で、お会いしましょう。

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