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---16--- ラフェルの負傷 そしてシアキは・・・

 少しだけラフェル寄りに時を遡る。


 今、ルルが獣人族の幼い姉弟獣人達を治療し終わった。

 そして獣人族の幼い姉弟獣人達の微笑ましいやり取りをラフェルはシアキの少し後方で笑顔で眺めている。

 この幼い姉弟獣人達の行動を見て全員心を癒されている。


 そんな心の癒しの最中に、とんでもない光景がラフェルの眼に飛び込んでくる。

 魔素を蓄積させた矢がシアキの左蟀谷目掛け飛んできて命中したのだ。

 戦闘時で常に周囲の気配感知を行い気を張っている状態であれば矢を感知し、この程度の速度であればシアキの蟀谷に当たる前に移動し手掴みにて簡単に阻止する事も可能であるのだが、今は戦闘時ではなく平時で周囲の気配感知はせずに眼前の自身にとって最も心和む癒され時間を満喫していた為、シアキの左蟀谷に矢が当たると言う信じがたい行為を視界に捉えるまで反応する事が出来なかった。

 その事にラフェルは刹那の時間で後悔しつつ瞬時に戦闘態勢に移行...いや一瞬で怒りが沸騰しブチキレている。

 矢が射られた方角に向きつつ横目でシアキが負傷していない事を瞬時に把握し少し安堵しながら矢を射り放った者が森の中を駆けて草木が不自然に揺れ動いているのを目視で確認するや凄い形相で飛び出し森の中へと駆け入る。

 数メートル入った辺りで河原からシアキが自身の名を呼ぶ声が微かにだがラフェルの耳に届いたが、もうラフェルは冷静に言葉を返せない程に怒りが頂点に達しており森の木々が避けるのを待たず俊敏な動きで縫う様に自ら避けドンドン森奥へと進んでいく。


「森~シアキさんを攻撃したあの腐れ劣等種を河原・・・いや森の外へ絶対に逃がすなぁ~河原側の木々を密集させてしまえぇ~」


 いつもの口調では考えられない程にラフェルは今自分の言葉が汚い言葉になっている事に気付いてすらいない。


 そして森はラフェルの指示に対しての返答を返す為、移動するラフェルの視界に映ると思われる範囲の巨木を同時に肯定の合図として三回揺らして見せた後、河原方面の木々を密集させる。


 全体的に木々が動いた事でラフェルは矢を射った盗賊が動いて出来た不自然な草の揺れを見失ってしまう。


「誰が河原や森の外へ逃げるかってんだ。

 それに何がモリだ!モリに話し掛けてその通りに行動するって思ってるのかアホだなあの魔族は!、やっぱり魔族ってのは知性が低くて力押しで暴れるしか能がない連中ばかりなんだろうな、誰が捕まるかってんだ俺の隠密能力を舐めるなよ」


 矢を射った盗賊は聞こえるか聞こえないかの囁き声で罵声を吐きながら身を隠くせる森の奥へ奥へと必死に気配を消し態と移動で揺れる草木の動き増やす様に不規則な動きで直走り進む。


 もうラフェルは冷静さを欠いており気配感知を使用せず目視のみで盗賊が態と揺らした草木の不自然な動きに合わせ後を追っている。

 またラフェルの瞳の色がいつもの淡い緋色ではない、強膜(白目部分)が真紅の様に真っ赤になっている。

 因みに魔族の中には怒りや感情の高ぶりで瞳の色を変化させる者が存在し、ラフェルはその変化する方の種族である。

 他の瞳の色が変わる魔族でも真紅にはならない。 この色は王族家のみが発現させる瞳の色で、且つ、ラフェルは“能力向上”と言う特殊能力発動時にも瞳の色が変わる。

 だが残念な事にラフェルの習熟度はまだまだ低く現段階では左程能力向上効果は得られない。 今得られる事は「少しだけ防御力を高められる」「身体的に爪を三センチ程伸ばし鋭利にさせられる」「少しだけ視力が良く成る」「少しだけ聴力が良く成る」「少しだけ性格的に攻撃性が強く成る」っとかなり微妙な感じである。

 そして今ラフェルは普段の可愛らしい表情からは想像もつかない程の鬼の形相となっている。


 自身の走る風圧も加わり完全に目標が動いた痕跡をラフェルは見失う。

 また冷静さを欠いているので気配感知を実行すると言う選択肢は頭にない。

 目標を失った事でラフェルは(ようやく)く足を緩めその場に立ち止まり周囲を目視のみで見渡しながら思考を巡らせる。


 森にお願いをして森に惨たらしく殺害させるか?、又は、盗賊の行く手を行き止まりにさせて簡単に追い詰めて捕まえ惨たらしく殺害するか?、将又、盗賊の進路を自身の眼前まで誘導させて捕まえて惨たらしく殺害するか?、或は、盗賊の四方八方の木々で塞がせ脱出経路を断ち野垂れ死にさせるか?、等等々思考を巡らせたが、やはり自身で捕まえ惨たらしく殺害しないと全然気が晴れないとの結論に至り(ようやく)周囲の気配感知を実行すると言う選択肢が生まれ、早速気配感知を実行する。


「・・あの腐れ劣等種!人の分際で気配を消してこそこそ逃げてやがってぇ~あぁぁぁムカつく、ムカつく、ムカつくぅ~。

 わ、私の、私の、選りにも選って私の大切な、大切なシアキさんに向けて負傷させようとしやがってぇ~絶対に許さない、ゆるさない、ユルサナイ、絶対に殺してやる、ころしてやる、コロシテヤル、見つけ次第殺してやるぞ~。

 ど、どこだ、どこに行きやがったぁぁ~出てこい腐れ劣等種ぅ~・・」


 息継ぎせずに叫んだラフェルは息継ぎを忘れていた事に気付いた身体が強制的に息を吸い込み酸素を取り込んだ事で少しだけ冷静さを取り戻す。


「・・あぁぁ~もう駄目だ駄目だ少し冷静にならないと見つけられるものも見つけられない、それにこれだとまるで私が悪者みたいじゃない...はぁぁ~ふぅぅ~はぁぁ~ふぅぅ~はぁぁ~……」


 意識的にラフェルは数回深く深呼吸をし更に冷静さを取り戻していく。

 また冷静になると、ふと、シアキが森を出る前にルルが森に知性を与え術の反動で眠気に襲われ森の中で寝てしまった件に対して激怒していたのを急に思い出しラフェルは頭を抱えて少し苦悶する。


「あぁ~思わず一人で飛び出すんじゃなかった~うぅぅぅ~今頃シアキさんきっと怒ってるよぉ~。

 どうしよぉ~勝手に行動した奴とは行動を共に出来ないって言われてお留守番を命じられちゃうかな~...。

 で、でも、好きになった人がいきなり攻撃されたら誰だって考えるよりも先ず体が勝手に動いちゃう...って!こんな言い訳をシアキさんに面と向かってなんて恥ずかしくて言える訳ないじゃない。


 はぁ~今からシアキさんと顔を合わせるのが少し憂鬱だよ~...。


 うぅぅ~これもあの矢を射った腐れ劣等種のせいよ、絶対見つけて惨たらしく殺してやる、そして戻ってシアキさんに勝手に一人で行動した事をちゃんと謝ろっと!。

 ...よしそうとならば早くあの腐れ劣等種を見つけ出さないと。


 森さんお願いがあるの、少しだけ木々を動かさず静かにしててもらえるかな?」


 その言葉に反応し眼前の木一本が、肯定の合図として三回揺らされる。

 ゆっくりと動いていた巨木は嘘の様に動きを止める。


「ありがと~森さん、これなら動かない木々は除外出来る、よし集中集中...・・」


 早速ラフェルは瞼を閉じ全神経を研ぎ澄まし周囲の生体反応を感知していく。

 幾ら盗賊が巧妙に己の気配を消しても人族では生体反応迄の偽装も欺瞞魔法も使えないので気配感知の上位能力である生体感知が使用出来るラフェルの感知から逃れる事は出来ない。

 因みに森の木々は一本一本それ自体が動くモンスターなので微弱ではあるが生体反応を有しており、且つ、ラフェルの生体感知能力の習熟度はまだ低く精度もあまり良くないので動く対象が多いと頭の中で整理が追い付かなくなるのである。

 一応ルルとの修行で習熟度を上げてはいるが現在のラフェルの習熟度では対象を完全に識別出来る感知可能な範囲は半径二百メートル前後迄である。

 またこの生体感知能力は、生命反応を巧妙に偽装、又は、欺瞞魔法や術を施さない限り感知から逃れる事は不可能である。

 だが欠点として負の生命量を糧にし生命を維持する種族に対しては感知の精度は著しく落ち発見する迄に時間を要したり、或は、一切感知する事が出来ない事もある。

 ・

 ・・

 ・・・

 今現在矢を射った盗賊はと言うと地形も相まって魔族であるラフェルの目視範囲から完全に逃れ、森奥へと逃げ込み多少なりとも距離を取る事に成功している。

 だが、如何せん人の体力では全速力で移動し続ける事は体力的に無理である為、距離が取れた今だからこそ体力を少しでも回復させておこうと盗賊は考え気配を消した状態のまま巨木に背を預け肩で息をしつつ携帯飲料を飲み休憩している。

 またラフェルは意識を集中させて感知した森に生息する大小様々なモンスターと思われる生体反応を脳内で懸命に精査し盗賊の生体反応を探している。

 数秒後、矢を射った盗賊を発見、現在どんな行動を取っているのかラフェルの脳内で鮮明な映像として認識された瞬間、眉間にみるみる皺が寄る。


「!み、見つけたぁ~あの腐れ劣等種~まだ逃げているなら慈悲で身体を真っ二つに引き割いて殺してもいいかなって思ったのにぃ~逃げもせず木に凭れて何か飲んで休憩してるだなんて許せない、あぁぁ~今すぐあの腐れ劣等種の手足を一本一本圧し折り手足を引き千切って全身の皮を剥ぎ全身を焼いて杭を全身に打ちつけて腸を引き摺り出し、もうあらゆる苦痛を味合わせ惨たらしく殺したい・・」


 対象がまだ必死に逃げているどころか休憩している事実を知りラフェルは怒りでまた冷静さを欠き、我を忘れまた汚い言葉を吐き棄ててる。

 そしてラフェルの脳裏にまた鮮明に弓がシアキの蟀谷に命中する悍ましい情景が鮮明に蘇り更なる強烈な憤怒心を覚える怒りが頂点を突き抜けるのだった。


「・・もう何なんだあの腐れ劣等種!。

 今まで生きてきて生まれて初めて私が本気で好きになって結婚しても良いと思えたシアキさんに向けて劣等種と言う分を弁えず矢を射って負傷、いや殺害しようとした癖にぃ~、あぁぁぁ~もう考えただけで腹が立つ、もぅ~ムカつく、ムカつく、ムカつく、ムカつく、ムカつく、ムカつく、ムカつく、ムカつく、ムカつく、ムカつく、ムカつく、ムカつく、ムカつく、ムカつく、ムカつく、ムカつく、ムカつく、ムカつく、ムカつく、ムカつく、ムカつく、ムカつく......」


 眉間と鼻にこれでもかと皺を寄せラフェルは凄い形相で「ムカつく」を連呼しながらその場で地団太を踏み砂埃を舞い上げる。


「・・はぁ~はぁ~はぁ~もう自力で捕まえるとかどうでもいい、もう予定変更する。

 森~今すぐあのシアキさんに攻撃をした腐れ劣等種の四方八方塞いで閉じ込めて捕まえて、そしてそこに一本道を繋いで私を案内してぇ~。

 絶対にあの腐れ劣等種だけは許さない、早く!森!早く繋いで!」


 その言葉に反応し眼前の木一本が、肯定の合図として三回揺らされる。

 森は森奥で休憩している盗賊の四方八方を木々で隙間なく囲う。

 そしてラフェルの眼前の木々達が左右に分かれ、道を作り盗賊を囲っている木々へと繋ぎ一本の道が完成する。 休憩中突如閉じ込められた盗賊は状況が飲み込めずアタフタしている。 その姿をラフェルは目視で捉える。


「見つけたぞぉぉ~この腐れ劣等種ぅ~・・」


 盗賊を見るなりラフェルは大声で汚い言葉を浴びせる。 先程取戻した少しの冷静さはもう怒りで微塵も吹き飛んで冷静さを欠いている。

 盗賊は自身が居る場所に続く一本の道の先に居る、凄い怒りの形相をした魔族の姿を目視で捉え目を丸くする。


「・・絶対にお前だけは許さない、許さないからな~劣等種の人の分際でよくも~、よくも、よくも、よくも~、私の大切な人に向けて矢を射りやがって~。

 しかも逃げもせずのんびりと休憩をしやがって~絶対に許さない、許さないからな~覚悟しろ~ありとあらゆる苦痛を味あわせて殺してやるかならな~」


 そう宣言した後ラフェルは上体を低くし短く息を「ふぅ~」と吐きながら、まるでバネが力を貯めるように全身に力を込める。

 絶対の補食動物が今から飛びかかってくる、そんな恐怖を既に盗賊は味わている。

 盗賊目掛けてラフェルは一気に加速し飛び出し駆け出す。

 もの凄い速度で凄い怒り狂った魔族が自分目掛けて迫って来るのを目視した盗賊は、そのあまりの恐怖に後ずさりし、何かに躓き尻餅を搗き転倒する。

 数行後ラフェルは盗賊の眼前手前で綺麗に停止し、凄い形相で見下ろし睨み付ける。 盗賊はその余りの恐怖に耐え切れず失禁してしまった。


 その失禁行為を目視したラフェルの心の中に合った殺意が一気に「汚い!」に塗り替えられ少し冷静さを取り戻す。 そして刹那の時間で現状の立場関係を考え、まるで自身が盗賊を狙う悪党で眼前の盗賊が逃げ惑う善人ではないかと思ってしまう。


「...き、き、汚いな!何漏らしてんのよ~。

 はぁ~もうそんな事されたら私がまるで悪党みたいじゃない!。

 一応あなたは死を覚悟して悪事に手を染めた盗賊で悪党なんでしょ?。

 あぁ~もう何だろ~一気に怒りが萎えちゃったじゃない。

 もういいや、取り敢えずあなたはさっき犯した重罪を継ぐなう為に大人しく此処で真っ二つになって死んでしまいなさい」


 告げるやラフェルは盗賊のお漏らしを踏まない様に気を付けながら少し前に出て右手を高々と振り上げる。

 盗賊はその行為を見て死を悟る。 だがまだ一つ一時的にではあるがこの場から眼前の魔族(ラフェル)を退散させ時間を稼ぐ方法が残されているので、盗賊は腰に付けた巾着袋の中から小さな粉二袋を取り出し、今にも右手を振り下ろそうとしている眼前の魔族(ラフェル)に袋を見せつける。

 袋の中身は()()()()()が開発した“光の粉”と言う闇属性の者のみにある効果を発揮させる粉が入っている。

 因みに他種族が粉に触れても吸い込んでも一切何の効果も発揮される事はない。


 有効対象種族は、全ての闇属性の者。

 有効効果は、闇属性の者の皮膚に触れた粉、一粒一粒が小爆発し爆発で皮膚に火傷と裂傷を負わせる。

 副次効果は、遅延低位麻痺効果が五分後に発動し強制付与される。

 低位麻痺効果発動後三分以内に低位治癒魔法一回か低級治癒魔法なら最低三回、又は、低位麻痺無効化が見込める魔法や術を使用し適切な対処を行わないと中位麻痺効果が発動する。

 中位麻痺効果の発動後三十秒以内に中位治癒魔法一回か下級治癒魔法なら最低三回、又は、中位麻痺無効化が見込める魔法や術を使用し適切な対処を行わないと高位麻痺効果が発動する。

 高位麻痺効果が発動後三秒以内に高位治癒魔法一回か中位治癒魔法なら最低三回、又は、高位麻痺無効化が見込める魔法や術を使用し適切な対処を行わないと高位麻痺効果が付与され麻痺で動けなくなってしまう。


 この光の粉は善悪関係なく闇属性の者のみを狙って作られた極めて卑劣な魔法道具であるが所詮魔族に光の粉を使用した所で、負った傷は数時間もすれば全回復するし麻痺効果も略々低位で阻止され、仮に高位段階まで付与されたとしても半日程度で効果から脱する代物である。

 勿論麻痺中に致命を負わされ絶命すると言う可能性はあるが魔族の認識としては“光の粉”は唯の激痛を伴う足止め魔法道具とされている代物だ。


「それ以上動くな!俺に近づくな!。少しでも動けば光の粉をばら撒くぞ」


 その言動を聞きラフェルは、まだ王位継承争いが勃発する前、王宮で幼かったラフェルは王族家だけが閲覧可能な彼方此方虫食いの様に破れたボロボロな文献に、昔魔族と神族間で起きた戦争中に光の粉と言う魔法道具が使用され、魔族の殆どが光の粉と言う魔法道具の効果を侮り激痛を負い地に倒れ苦しんでいる隙に神族達により多くの同胞が殺害されたと書かれた実に読み取り辛い古い文献を見た記憶が蘇る。

 同時に振り下ろそうとしている右手を上げた状態で止め盗賊を睨み付ける。


 刹那の時間でラフェルはこの場で光の粉を使用されても相手は神族ではなく唯の脆弱な人族である、仮に激痛で地に倒れてしまうとしても、その倒れる前に激痛に耐え眼前の劣等種を殺害した後、激痛に耐えながら自身の治癒力と回復系の魔法を使用してその場数分回復に専念し河原へ戻れば問題ないと判断する。


「確かにその魔法道具の影響で私は一時的に全身に激痛を負うでしょうが、私は魔族ですよ?そんな痛みが我慢出来ないとでも?。

 別にやりたきゃ勝手にやりなさい、無駄な足掻きをしてより一層私の怒りを増長させただけと知り後悔しながら死になさい」


 ひるまないラフェルの姿を見て盗賊はもう使用する他選択肢は残されていないと理解し躊躇する事なく手に持っている“光の粉”が入った袋の口紐を解き内容物を勢いよく中空に散布する。

 粉が散布され周囲に充満する前にラフェルは一応眼球は傷付けるのは宜しくないと判断し瞼をぎゅっと硬く閉じ、同時に体内に入れると流石に治癒時間が長引く可能性があると思い息を止め口も硬く閉じる。


 そして露出する部分と服の間から光の粉が入り込み、皮膚に付着する。

 付着後コンマ十秒で小爆発が始まる。


 光の粉は激痛が伴うと言う意味はこの小爆発が原因だとラフェルは瞬時に理解すると共に吸い込む肺で小爆発が起き、魔族の治癒力をもってしてもこれは地に倒れ数分のた打ち回り苦しむ事になると判断する。

 また凄い激痛ではあるがこの程度なら耐えられる痛さなのでラフェルは取り敢えず粉が充満していない個所まで盗賊を引き摺り出してそこで殺害ししようと考え、激痛に耐えながら盗賊の生体反応を頼りに手探りで逃げようと動こうとした盗賊の頭部を鷲掴みにし粉が充満していないであろう入ってきた道の方角目掛け放り投げる。

 視界が効かない中で的確に頭を鷲掴みにされた事で己の死を悟り恐怖が極限に達した盗賊は見事に気を失ってしまうのだった。


 盗賊を放り投げ終わったラフェルは続いて自身も粉が充満していない一本の道へと駆け出て、小爆発が消えたので安全な個所まで出られたと判断するや薄っすらと瞼を開け状況を確認しつつ森に向けお願いをする。


「森さんお願い。

 粉がこっちに来ない様に木を密集させて、出来れば全て私の反対方向へ粉が流れる様にしてくれるかな」


 眼前の木一本が、肯定の合図として三回揺らされる。

 森はお願いされた通りに粉が充満している個所を木々で隙間なく完全に囲い。

 次いで風の流れを木々の道で制御し粉を全てラフェルの反対側へ吹き流す。


「ありがとう助かったよ森さん」


 感謝を述べつつ目線を自身の身体へと向け状況を確認する。

 露出する個所全てに小爆発によって負ったと思われる無数の裂傷と火傷を確認。

 確認するまでもなく顔、手、足、体、ありとあらゆる個所から少し動く度、風が身体に当たる度に激痛が走るので同じ負傷をしているのだとラフェルは理解する。

 全身傷だらけなので服の内部に血液が付き凄く気持ち悪いく憂鬱な気分になったが唯一シアキから貰った服に一切傷が一つも付いていない事が確認出来たのでラフェルはホッと(安堵)し、少しだけ憂鬱な気分は晴れ余裕が生まれた。

 もしこれで服までボロボロになってたら自分で自分の感情を制御が出来るか自信がなかったので、事前に服に防護の加護をしくれたルルに対し感謝する。


 次にラフェルは傷だらけの姿をシアキに見られた時の事を考え、これは確実に怒られてしまうと思い、また憂鬱な気分となる。


「くぅ~しかし結構、痛いものですね。

 この光の粉って物の傷は細かい傷だから少し動いただけで激痛が走りますね。

 さてどうしましょう~こんな姿をシアキさんが見たら・・」


 一応傷の状況から見てこの程度なら数時間もすれば綺麗に完治するとラフェルは思うが、人族一人を相手にこれ程時間を要するのは可笑しいのでは?とルルに指摘され、内容を聞いたシアキが心配になり緊急事態に陥っていたのではと判断し自身のステータス内容と言う情報を特殊の力を使用し確認さてしまい負傷した事実を知られ、それ自分が隠そうとした事をシアキに追求され怒られ拠点留守番を言い渡されるかも知れないとの考えに至り一旦思考を止める。


「・・この傷まみれの恰好で戻ったら確実にシアキさん怒るよ~最悪お留守番決定になるよ~あぁ~考えたくない、考えたくない、考えただけで憂鬱になる。

 はぁ~誤魔化し通すなら完全回復まで待ったないとだけど、数時間は流石に怪しまれるしどうしたら良いの~シアキさんにこんな傷如きで心配させれないよ~。

 ・

 ・・

 ・・・っあ!そうだ。

 あの腐れ劣等種に説明させて、シアキさんの怒りを少しでも緩和させて、ルルちゃんと協力してこれ位の傷は大した事のない事だって説得すればいいんだよ。

 よしそれまではあの腐れ劣等種は生かしてシアキさんの所へ連れ帰らないと」


 因みにこの時点で光の粉を受けてから二分経過している。


 生きて連れ帰ると決めたラフェルは放り投げた盗賊の方へ歩み気絶している事を確認し怒りを覚える。


「気絶してるだなんて本当にムカつく、まぁ~下手に逃げられるよりは運び易くなったからこれはこれでいいのかな」


 躊躇なく盗賊の毛を鷲掴みにし少し引き摺った途端、頭部に痛みを覚えた盗賊は覚醒し自身が引き摺られているのを確認するや立ち上がろうともがき暴れだす。

 不意に暴れられたので傷を負っている手に激痛が走りラフェルは態勢を少し崩しそうになる。


「もう、何暴れてるのよ。傷に障るでしょ~大人しく引き摺られてなさい。

 もぉ~喋れればいいから、これ以上暴れられて手間かけさせられるのは御免だからその無駄に動く足は圧し折っておいた方がいいかもね」


 一切の躊躇もなくラフェルは盗賊の両足を次々に踏みつけ圧し折る。

 ポキっポキっと乾いた音が二回する。

 我が身に起きていると理解するまで盗賊は呆然と在らぬ方向に向いた自身の足を見る。 数秒後足に熱を感じたかと思うと激痛が脳天を突き抜け盗賊は大声で悲鳴を上げる。


「ぐぎゃ~あ゛、あ゛じが~ぁ゛~あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛~」


「うぅぅ~痛い...ほんとうるさい、静かにして!。

 耳の中も傷付いてて響いて結構痛いんだからね、うぅぅ~痛い。

 たかが両足を圧し折られただけでしょ。

 今私はあなたのせいで全身傷だらけで激痛に襲われてるんだからね、黙っていられないならその顎も砕くからね。

 本当に盗賊やってるんだから死を覚悟し生きてるんでしょ、本当に往生際が悪いのよあなた」


 両足を圧し折られたので多少ジタバタしてはいるが立ち上がろうとしない分、先程より楽に引き摺って行けるとラフェルは満足感を得ながら盗賊をズルズルと引き摺っていく。


 今度は毛を引っ張られる頭部への痛みに加え、両足からの激痛が加わり盗賊は何とかして引き摺られるのを阻止しなければと考え、髪の毛を鷲掴みにするラフェルの手を振り解こうとまだ動く両手で強く握り揺さぶる。

 盗賊に負傷している手を掴まれ意図しない激痛が走ったラフェルは思わず掴んでいた手を放してしまう。


 因みにこの時点で光の粉を受けてから三分半経過している。


「痛い!手も傷だらけなんだから触らないでよ、全くどれだけ痛いと思ってるのよ。 もうその両手...いや触られると痛いし肩を粉砕して腕を動かせない様にした方がいいよね・・」


 両足から発せられる激痛で意識が朦朧とする中、盗賊は必死に痛みを堪えながらラフェルに向け弱々しく声を上げる


「モウ、イタ、イノハ、ヤメテ、クダ、サイ、イタイ、ノハ、ヤメ、テクダサイ」


「もううるさい、本当に何度も言わせないで。

 もしあなたがこれだけの傷負ったら痛さで気絶か痛みで即死も有り得るのよ。

 そんな状態の私が今あなたを河原まで運ばなきゃいけないんだか大人しくしてなさい全く」


 両足同様、一切の躊躇なくラフェルは両肩を踏みつけ両肩を粉砕させる。

 ベキっ、ベキっと乾いた音がする。

 盗賊は両肩に熱を感じ次に足に続き凄まじい激痛を感じ悲鳴を上げる。


「ぐぎゃ~あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛~」


 悲鳴を上げ体を左右にくねらせのた打った後、盗賊は痛みの許容範囲を超え気を失った。

 気絶した事に静かに成り鼓膜の振動もなくなったので(ようや)く痛みから解放されラフェルはホッと(安堵)する。


 因みにこの時点で光の粉を受けてから四分となる。


 痛みで感情もいつもの冷静さを取戻してきたので、あとは盗賊をこのまま引き摺って河原に戻るだけなので運び易くする為に一旦自身が取得している低級治癒魔法を両手に対し一度使用し癒す。

 数回、手を握ったり開いたりし感触を確かめる。

 低級なので傷はふさがり見た目は治った様に見えるが、包皮一枚下は負傷したままなので流石に物を握ると先程よりは痛みは和らいでいるが鈍い痛い走る。

 だが十分我慢出来る痛さである。


「うんさっきより痛みは鈍くなった、あとは河原に出る前に見えてる部分だけ治癒させておかないとだな~、よしさっさと運んじゃお」


 低級治癒魔法で先程より握るのが楽になった事を確認したラフェルは再度盗賊の髪の毛を鷲掴みにし河原方面へとズルズルと引き摺り始める。

 そして数歩歩いてラフェルは気付く、河原はどっちだったかと?。

 本来ならここで森の中を迷って終わりなのだが今はこの森は仲間なので冷静にラフェルは森に問い掛ける。


「森さん、お願い。シアキさんが居る河原手前まで道を作ってもらえますか?」


 その言葉に反応し眼前の木一本が、肯定の合図として三回揺らされる。

 合図後森は河原方面に向かって木々を左右に分かれさせ新たな一本道を作り上げる。


「ありがと~森さん」


 そしてラフェルは何も気付かず再度歩き出そうとして足が縺れて、ふらつく。


「あれ?何?足が縺れる?なんで?」


 そう、なぜ足が縺れるのか、それは光の粉の副次効果である遅延低位麻痺効果が発動した為であるとラフェルは気付いていない。

 因みに光の粉の副次効果に関する記述は文献の破れた個所に書かれてい事で、魔族にとって歴史上恥ずべき汚点なので、戦争終了後副次効果を知る魔族をその時の王が秘密裏に殺害を命じ知る者全てを根絶しにし唯一事実を知る者を王のみとしてこの恥ずべき情報を後世に隠匿継承と言う形で前王から現王に口伝えるのが慣例と成っている。

 よって副次効果の事実を知る者は限られており、王位を継いでいないラフェルは勿論の事、魔族の殆ど誰もこの副次効果が存在している事を知らない。


「どうしよ~もしかしてこの劣等種が何か時間差で麻痺効果が発動する魔法を仕込んでたとかかなこれ?。

 でも人族が仕込める魔法だし効果も左程強くないから集中すれば歩けなくはないけど流石に麻痺だから多少なりとも力が入れ難くなってるな~。

 はぁ~はぁ~結構この劣等種無駄に重い・・」


 ふらふらと用意された道を外れてばかりいるラフェルに合わせて道を変化さつつ、木々でふらついているラフェルの体を支えてあげる。


「ごめんね~ありがと~森さん。 ちょっとふらふらしちゃったね。

 はぁ~流石にこの状態で引き摺るのはしんどすぎるかも、ここが坂なら、こいつを転がして進めるのにな~はぁはぁはぁ~」


 森がラフェルの「坂」と言う文言に反応する。

 一本の木があり得ない程くねって曲がり半円を作る。

 そして木々達が同じように形状を変えそれを連ねて滑り台の様なものを作り出す。

 そして一本の木が蔦を伸ばし下げ、盗賊の首に巻き付けを器用に持ち上げ滑り台の中に放り込む。

 そして河原目掛けて滑っていく。


「すごい森さんすごい。ありがと~助かる。 それシアキさんの元へ出るの?」


 その言葉に反応し眼前の木一本が、否定の合図として一回揺らされる。


「そっか~じゃ~手前で落としてくれたのかな?」


 その言葉に反応し眼前の木一本が、肯定の合図として三回揺らされる。


「ありがと~気が利くね。森さんは偉いね~。

 私も滑りたいけど、この傷だと滑ると痛そうだね。

 ははは、流石に私は滑るのはやめとくね」


 木々が大きな葉をその滑り台の上に落と段差を埋め始める。


「ははは、ありがと~。段差埋めてくれたのね。

 でもそれでも滑ったら体中痛そうだから歩いて外まで出るね。

 少し支えれる壁を木々を密集させて作ってくれると助かるかも」


 その言葉に反応し眼前の木一本が、肯定の合図として三回揺らされる。

 木々を密集させ一列の木の壁を作りだし一本道を形成してくれる。


「ありがと~壁伝いに歩かせてもらうね~」


 ふらふらと作られた壁に寄り、壁伝いに歩いていく。

 まさに酔っ払いが壁伝いに歩いているそんな状態だ。


「ははは、凄いふらふりゃだ~。 ありぇ?ことびゃもしゅこしふぇんかも」


 自身の変化に慌ててラフェルは立ち留まり、低級治癒魔法で体内に向け三回連続で掛けて治療を試みる。


「あ~あ~あ~ふぅ~呂律回らなかった~流石に焦った~。

 あと低級治癒魔法を数回使えるって所かな。


 本当に失敗したな~弱い相手を侮るなってシアキさんに言われてたのに、森を出て早々この有様になるなんて...。

 はぁ~、数時間もすれば治るって言っても凄く怒っちゃうだろうな~ヤダな~。

 はぁ~、きっと怒って拠点に帰れって言われちゃうだろうな~ヤダな~。

 はぁ~、シャボちゃんとお留守番組になっちゃうのはヤダな~。

 もうこれは今の内に見えてる部分だけを治癒しておく方がいいかも。

 この劣等種にシアキさんが気を取れている間にルルちゃんと色々相談して何とかシアキさんを説得しないとな~...」


 ブツブツと呟きながらラフェルは使用限度と思われる回数分の低級治癒魔法を連続発動させ露出する大半の部位を何とか治癒させ終える。

 使用限界回数の問題で残念ながら耳裏周辺は治癒させる事は出来ず激痛が残る。


「う!耳裏までは治せなかったか~仕方ない、これは髪で隠せば何とか誤魔化せるかな」


 そっと髪を持ち上げ耳を隠す。その行為だけで激痛が走る。

 数回治癒魔法を使用したお陰で痛みは鈍化し普通に歩いても問題ない程度には回復する。 だが服の下は未だ傷だらけなのでラフェルは森を抜けるまでは極力振動を与えな様にゆっくりと歩くのだった。

 そして数分歩くと一本道が終わりを告げ、先程の両足を圧し折り両肩を粉砕し気絶した状態の盗賊地面に横たわっていた。


「ありがとね、森さん、壁凄く助かったよ」


 地面に横たわる盗賊の髪の毛を躊躇なくラフェルは鷲掴みにし持ち上げる。


「森さん、河原側に密集させた木をどかせてくれる」


 その言葉に反応し眼前の木一本が、肯定の合図として三回揺らされる。

 合図後、河原側に密集され壁と成っていたラフェルの眼前の木々がまるで扉を開くかの様に左右に移動し視界が開ける。


 河原を確認したラフェルは無意識下でゴクリと生唾を飲み込み小さく「よし」と声を上げた後、鷲掴みにした盗賊を引き摺る引き摺りながら森を出る。

 前方に盗賊達が横一列で両手を頭の上に置き膝立ちしている前に助けた獣人達と一緒に座って待っているシアキの姿を発見する。

 そしてラフェルは引き摺ってきた盗賊を一箇所に集められている盗賊達の横に捨て置きシアキの下へと歩みを進める。


 服の下が傷だらけである事をラフェルは無意識的に悟られない様にと歩いている為、自分では普段通りに歩けているつもりなのだが、傍から見れば何か物を股に挟んで歩いている様なぎこちない歩き方と成っている。

 そしてシアキの前に到着したラフェルは頭を綺麗に下げて謝罪を口にする。


「シアキさん勝手に一人で飛び出しちゃってごめんなさい。

 あとお待たせしました」


 顔上げ辺りを見渡しルルの姿を探すが何処にも居ない。

 相談する相手がいないのは困ると思いラフェルはシアキにルルの所在を尋ねる。


「あれ?シアキさん、ルルちゃんが居ませんが、何処に行ったんですか?」


 問い掛けられたシアキはラフェルと無言で数秒目線を合わせる。

 目線を合わせられたラフェルは無意識下で目線を外す。その目線の動きでラフェルが何か隠し事をしているとシアキは見抜く。 そして先程歩み寄って来るラフェルの歩き方が妙に可笑しかった事が気になり問い掛ける。


「ラフェル、ルルの事はさておき、何んだかさっき歩き方が可笑しかったが何かあったのか?」


 その問い掛けを聞きラフェルはそんな些細な動きの変化をシアキは気付き見破ったのかと知り自分の事をそれ程注意深く見ていてくれた事に嬉しさを覚えると同時にこの後ルルが居ない状況下で事実を教えた際の事を考え憂鬱な気持ちになる。

 そしてまだシアキの発言に疑問符が付いているように感じたラフェルはルルが戻って来るまでシアキに事実を話さず時間を何としてでも稼がねばと考え返答を返す。


「な、何言ってるんですか?あれが私の普通の歩き方じゃないですか!。 それよりもルルちゃんは何所に行ったんですか?」


 明らかに最初に吃音気味に成ったので明かに何か隠していると断定する。

 そしてシアキはラフェルと目線を合わせながら言葉を掛ける。


「ラフェル、隠し事は無しにしようよ、それに焦って噛んだのは...。

 はぁ~まぁ~いいやラフェル、俺達はもう仲間だよな?もう一度質問を替えて聞くよ。

 さっき森の中に入って何かしら不測の事態でも起きたのか?。ちゃんと答えてくれ?」


 この質問に嘘で答えるとシアキは緊急事態と判断するとラフェルは感じ取る。

 緊急事態と判断した際、シアキは自分の状態を能力を使って確認する。

 先程の事態がどれ程まで詳しく分かるかは不明だが、事実を隠していた事を追及され怒られて最悪拠点に今すぐ帰されと言われ、今後はシャボちゃんと拠点でもお留守番組となる可能性が濃厚となる。

 またラフェルの中では正直に話しても同じ結果と成る事しか思えないでいる。

 そして短い期間ではあったがこれで皆と一緒に行く冒険はここで終わりになり、拠点でシャボちゃんとお留守番しシアキとルルの帰りを待つ生活を送る事を受け入れるしかないのだと諦める。

 自分の行動はそれだけの事をしたのだと覚悟を決めラフェルは重い口を開く。


「シアキさん怒らないで聞いてください。

 そこの盗賊を捕まえる際にですね・・その、ですね、ちょっと光の粉を浴びてしまって・・その・・全身に怪我を負ってしまい・・そのせいで先程歩くのが少し変だったんです。

 ただ傷は数時間もすれば綺麗に完治しますので何も心配はいりません」


 今からシアキから何してんだ!そんな無茶する奴は連れてけない拠点に戻れと言われるか、もういい今すぐ拠点でシャボちゃんと留守番してろと言われるかとラフェルはどんな言葉が発せられるのかと考えながら瞳をぎゅっと閉じ、反応、いや言動を待つ。


 語られた内容、いや、怪我を全身に負ったと聞きシアキは自分の耳を疑った。

 慌てて、シアキはラフェルに断りも入れずステータスを開き状態を確認する。

 心配する程の負傷による数値の著しい減少は見らないが備考欄に低位麻痺効果低級治癒術により一時無効化中、火傷全身多数、裂傷全身多数と掲載されているのを確認する。


「な!低位麻痺効果が一時無効化中で火傷全身多数で裂傷全身多数だと。


 ルル~戻ってこい!!。

 そんな盗賊はどうでもいい、早く、兎に角早く戻ってこい!!。


 ……全身火傷と裂傷ってどうすればいい。

 まず冷やすのが先か、って川、川に飛び込む・・・。

 いや傷から雑菌が体内に入り感染症になるか、これは危険すぎる。


 ……どうする俺治癒魔法とか使えないしどうしたらいい。

 か、回復薬だ!。 回復薬はもう無いのか、お前ら持ってないのかこら~。

 有るなら出せ、無くても出せ、出さないと殺すからなお前ら。

 あとこんな目に合わせた奴は絶対後で殺す」


 覚悟を決めていたが、予想と違う言葉が次々と聞こえてくるのでラフェルはそっと瞼を開けると自分の為に、若干混乱状態に陥り慌てふためき右往左往しているシアキの姿が目に飛び込んでくる。


「シ、シアキさん本当に大丈夫ですよ。

 この程度なら本当に数時間もあれば、綺麗に完治しますから。

 そんなに慌てなくて大丈夫です、大丈夫ですから、兎に角落ち着いてください」


 その発言は、もうシアキの耳には届いていない。

 盗賊達はそんな傷は魔族ならすぐ治るではないかと思う。

 だがもう先程向けられていた形相よりさらに怖い、いやもう怒りが頂点に来ているそんな凄い形相をシアキから向けられている。

 これはあの魔族が連れて来た、仲間の盗賊が触れてはいけない逆鱗に触れ、この男を怒らせていると盗賊全員確信する。


 もしここで、魔族だからすぐ回復するだろう等と意見しようものなら確実に屠られる。

 そう盗賊全員は意見が一致しているので、言われるまま素直に手持ちすべて回復薬を差し出す。


 必死に盗賊から回復薬を出させ、かき集めている。

 その姿を見ていたラフェルの乙女心がキュンキュンする。

 回復薬を抱えられるだけ抱え、負傷しているラフェルの下へシアキは駆け寄る。

 数本地面に落とし割ってしまう。


「ごめん、数本割ってしまった。 これだけあれば、何とかルルが戻るまで耐えられるか?。

 ってそんな事を聞いても分からんよな、でも無いよりはましだろ?。

 よし今から、傷口に掛けるからな、染みるかもだが我慢してくれ」


 その慌てるシアキの姿をラフェルは愛おしそうに愛でる気持ちで見つめ、本当にシアキさんらしいですねっと思い、少し揶揄いたくなった。


「シアキさん、それ今の私に浴びせたら皮膚が焼けて毒になりますって言ったらどうします?」


 回復薬が毒になるかもとちょっとした悪戯的な嘘を吐いてみた。

 発言を聞き、シアキは目をこれでもかと見開き凄く驚いた表情を浮かべ固まる。

 その表情と行動を見たラフェルは凄く乙女心がキュンキュン刺激され今すぐシアキを抱きしめてあげたいという気持ちに駆られる。

 因みに耳の中は傷を負ったままなのでシアキが大声で叫ぶ度に鼓膜が振動しラフェルは激痛を覚えているが、こ激痛はシアキから与えらえると思うとラフェルは何故かこの激痛さえ痛み愛おしく感じてもいる。


「え!あう!え!ゴメン・・・。 やっぱり魔族には毒になるのかコレ?あぶね~もう少しでかけるとこだった。

 すまん、ちょっと待てろ確か毒薬とか持ってる奴が居たはずだから取って来る」


 そう言い盗賊の方へ向かおうとするシアキの手を握り行くのを阻止する。

 なぜ止めるっと不思議そうにシアキはラフェルを見つめる。


 止めるのは当り前だ、そんな物を持ってこられ、浴びせられたり飲まされたりしたら本当に毒を負ってしまうのだから。

 どう言い訳しようかと少し困った表情をしていると、シアキが、更に混乱状態に拍車がかかる。


「ラフェル!く、苦しいのか?そうなのか?っちょ、ちょっと待ってろ、すぐにルルを呼び戻すからな、もう少しだけ我慢しろよ。


 ルル~もう早く戻ってこい!。 早く戻ってくれ、ラフェルが大変なんだ~ルル~戻ってこい!!」


 大声でルルに戻ってこいと真剣な表情で叫ぶシアキの姿を間地かで見ていると、本当に数時間もすれば綺麗に完治する事が何だか申し訳なくなってくるラフェルであった。


「ぃ!っつ...あのシアキさん本当に落ち着いて聞いてください」


「ん?どうした!駄目だぞ、遺言何か聞きたくないぞ。

 兎に角、ガンバレもう少しだから。

 ルル~早く戻ってこい!!」


 もうシアキの中では、自分は今にも死にそうで遺言を伝える程の瀕死状態なのだとラフェルは悟る。

 これはもう何を言っても通じないと判断しルルが戻るのを一緒に待つ事にする。


「本当にシアキさんらしいですね。 分かりました、ルルちゃんを一緒に待ちましょう。

 それにそんなに慌て無くても平気ですよ。 ほら喉乾きますよそんなに慌ててると」


「ん?...喉が渇く?あぁ~火傷してるもんな喉乾くよな水か水飲むか。

 って!あぁ~でも荷物はルルしか取り出せないし、もぉ~ルルは何してんだ」


 もうシアキは何が何やら分からない状態になっているので返答が少し変である。

 水筒なら盗賊の所持品に有りすぐ目に付く個所に転がっているが、それすらシアキの眼中に無く把握出来ていない。

 ・

 ・・

 ・・・

 暫らく待っていると、ルルが森の中から片足が無い盗賊を首根っこを持ち、引き摺って出てきた。

 その姿をシアキは確認するや否や両手を振りながら大声で呼ぶ。


「ルル~早く来てくれ~。 ラフェルが、ラフェルが、大変なんだ!

 そんな奴もうそこら辺に投げとけ、どうでもいいから。

 早く。兎に角早くラフェルの所に来てくれ」


 凄い慌てぶりのシアキを見て唯事ではないと察知し急いで対岸のシアキの下へルルは飛んでくる。

 同時に盗賊達が集まっている個所目掛けて捕縛した盗賊を投げている。


「何?どうしたの。 そんなに慌てて~何があったの~?」


 取り敢えず慌てている様子から何があったのかを確かめる為に理由を尋ねつつ森に入った時との変化が無いか周囲を見渡し目視確認と感知を同時に済ませる。

 森に入ったのは数十分程度なので、左程変化は見受けられない。


 変わってる個所は、盗賊と盗賊の死体が一箇所に纏まっている。

 助けた獣人の子達はキョトンとしている。

 何故かラフェルは軽傷程度の負傷を負っており、周囲に回復薬が大量に置かれている。


「兎に角、ラフェルが重症なんだ。

 今、ラフェルが光の粉を浴びて、低位麻痺効果が一時無効化中で火傷全身多数で裂傷全身多数って状態なんだ。


 ルル早くラフェルを治療してやってくれ。

 俺は治療系の魔法が使えないし回復薬が毒になるそうなんだ。

 このままだと、このままだとラフェルが…」


 狼狽えるシアキから目線を外しルルは目線をラフェルに向ける。

 目線を受けたラフェルはシアキに一度目線を向け目線を戻し首を横にゆっくり振って見せる。

 その行動で、これはシアキが完全暴走状態なのだとルルは理解する。

 特に魔族のラフェルにとって感知した負傷は軽傷程度で数時間もすれば完治するような焦る必要ない負傷で緊急性皆無と判断したルルは悪戯心に火が付く。


「え!それは大変じゃない。 まずシアキは~そのローブのフードを被って~そこに立ってて~」


 言われるままの行動をシアキは取る。 その姿を見たルルは笑いが込み上がると同時にシアキが完全に我を忘れているとのだと実感する。


「シアキ、あのねラフェルちゃんは~もう駄目かもしれないよぉ~。

 でも助かる方法があるよ~今すぐラフェルちゃんにキスしてあげてね~」


 言い終えると、またシアキは言われたままの行動を取ろうとする。

 迫りくるシアキの顔から慌ててラフェルは離れる。 まだ全身服の下は傷だらけなので急に動くと激痛が走るのでラフェルは苦悶の表情を浮かべる。


「う・・痛い。 ルルちゃん、シアキさん今、冗談受け付けない状態なんだから。

 あ!うぅ痛い急に動くとまだ痛いんだからお願い。

 今シアキさんを正気に戻せるのルルちゃんだけなんだからお願い、冗談はやめて~」


 魔族であるラフェルが痛がっているので、ちょっと悪戯をしすぎたかとルルは反省する。

 そして本当にキスをしようと再度ラフェルに迫ろうとしているシアキを慌てて制止する。


「あ!駄目、今キスしたらラフェルちゃん本当に死んじゃうよ~。

 シアキ、今すぐラフェルちゃんから距離を取って早く!」


 キスをしようと迫っているシアキはルルから発せられた「死んじゃうよ」という言葉に強く反応し、面白いようにピタっとその場に静止すると後ろに飛び退きラフェルから離れる。


「全くシアキは絶賛暴走中だね~。 治癒が終わるまで~暫らくそこで~黙って待機していてね~。


 でもラフェルちゃ~ん、回復薬が毒になるとかって~嘘が言えるんだから~ちゃんと説得すればよかったのじゃな~い。


 あと~ラフェルちゃんを~こんな目に合わせた盗賊が誰か~教えてくれる~?。

 あ!まぁ~これはいいや~どうせシアキがやるだろうし~。


 しっかし光の粉か~また懐かしい物でやられたもんだね~。

 一応シアキの言う通り~全身治癒させちゃうからね~じっとしててね~」


 そう言い、ラフェルに向かい手を(かざ)し力を行使する。

 緑色の淡い光がラフェルの体を包む。

 傷口が少しだけ弱い熱を持ったような感じがし痛みが消え傷が癒えていくのを感じる。

 そして数秒で光は消え、治療は完了する。


「はい終わり~。 どう?ちゃんと動けるかな~」


 手を握ったり開いたり、飛んだり屈伸をしたりし体の調子を確かめる。

 全く問題ない。 寧ろ冒険前の寝起きの体の様だ。


 でも折角、新しい衣装で気分良く冒険に出たのに、服の裏地面に自分の血が付いてベトベトなのですこし気持ち悪い。

 その事で、少し気分が憂鬱になって少し暗い表情でルルに答える。


「全く問題ないですよ。 全快です、ありがと~ルルちゃん。  はぁ~」


 そのラフェルの一言を聞き、今にも泣き崩れそうな状態で立っているシアキが口を開く。


「本当によかった~。 本当に吃驚したんだからな~全身火傷に全身裂傷って本当に死ぬんじゃないかって思ったぞ。 兎に角間に合ってよやかった」


「ホント心配しすぎだよ~シアキは~。

 他種族ならまだしも~ラフェルちゃんは魔族だから~これ位じゃ死なないって~」


「そうですよ。

 それに「これ位の傷なら数時間で回復します」って先程言いましたがシアキさん覚えていますか?。

 全然聞いていませんでしたよね、シアキさん?。

 まさかここまで心配させちゃうとは思っていませんので、本当に心配をかけてしましって御免なさい。

 ・・・はぁ~」


 最後に一拍置いて小さな溜息を吐いたのをルルは見逃さなかった。

 そっとラフェルの耳元で小声で問い掛ける。


「どうしたの~?ラフェルちゃん。 なんだかまだ表情が~暗いけど~?」


 その問い掛けに少しラフェルは苦笑いを浮かべながら答える。


「少し服の裏地に傷を負った際に出た血がベットリ付いてて折角貰った服が汚れて気持ち悪くて、少し気分的に憂鬱なの」


「あぁ~それ分かるよ~折角だし着替えに行く?」


 そのルルの提案に満面の笑みで答える。


「はい、着替えたいです」


「分かった~じゃ~戻ろっか~。 

 シアキ~ラフェルちゃんの服が血で汚れちゃったから~予備の服に着替える為に~ちょっと私達今から拠点に戻ってくるね~。

 戻って来るまで少しだけ待っててね~。

 あとそいつらの処分は~シアキに任せるよ~」


 そう言い残しシアキの返答を待たず二人は消え去った。


「え!ってもう居ないし。仕方ない二人が戻るまで待つとするか。


 エラルちゃんに、ジュダラくん。

 また少し俺と雑談してくれないか俺の仲間が着替えに戻ったので、また色々話しを聞かせてくれないか?」


 獣人の姉弟はその問い掛けを聞き嬉しそうに頷き、シアキの横に座る。

 二人の着替えが終わり戻ってくる迄の間、再びシアキは助けた獣人の姉弟達と雑談しながら待つ事になるのであった。

 そしてその雑談の中で、シアキにとって重要な情報を聞き出す事に成功するのである。

--- 16話目のみの後書き----------------------------------------

16話目最後まで読んでくださりありがとうございます。

どうでしたか?楽しんで頂けたならうれしいですが。

---余談---


どうでしたか?ラフェルの変貌・・・。


では、次17話目で、お会いしましょう。

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