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これから憎まれる英雄

作者: yellow

 白く細い指が、男の傷口に触れる。

「あなた」

 目を腫らして彼を見つめる壮年の女は、つぶやくように言った。男は何も言わず、ただその手をそっと退けた。この書斎から逃げるように、軍帽を右手で正して扉へ向かった。

「結末は目に見えているわ」

 女が叫ぶ。縋るように。涙に涸れた声で。

 男の後ろ姿は静かに頷いた。わかっている、と。

「私でなければ、誰がこの国を救うのだ」

 男はドアノブに手を掛けた。

「民衆の欲望には終わりが無いのよ!」

 それでも縋った。

「今は救国の英雄、貧しい民衆の命を守ったメシアよ。でも彼らの目は、やがて、変わる。わかっているでしょう? それなのに、それなのに……!」

「もういい」

 男は、ただ、優しく言った。

「それで十分だよ」

 そして、扉を開いた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 今生の別れになるかもしれない出発の瞬間読まさせて頂きました。ありがとうございます。
2014/10/15 22:37 退会済み
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