お着替え
服の描写って難しい。
私たちは服屋を探し、都市を散策していた。シンさんとの取引のあとアサシンダガーの売却も行おうとしたのだが、残念ながら募集しているプレイヤーはいなかった。
服屋を探していると、服のマークがついている看板を見つけた。全体的に白い色の建物で、外から店内が見える形になっている。店内を覗くとたくさんの服が飾ってあった。
「たぶんここかな?」
「じゃあ入る」
入店すると、若い男性が出迎えてくれた。
「いらっしゃいませ、本日はどのようなご用件でしょうか」
「服を買いたいのですが……」
「服の購入には三種類の方法があるのですが、お聞きしますか?」
ただ、ウィンドウを開いて購入するだけではないのだろうか。
「あ、はい、お願いします」
「一つ目の方法が、すでに店の方で販売している物を購入して頂くもの、二つ目に他のお客様が作った服を購入する方法です」
二つ目の他のお客様とはプレイヤーのことだろう。
「そして最後にお客様自身で作っていただく方法です」
作ると言ってもそんな技術はないのだが……。
「自分で作るというのは、どのようにしてやるんですか?」
「はい、お客様が作りたい衣装を思い浮かべ、この水晶玉に触れていただければ、イメージを読み取りこちらで服を仕立てさせて頂きます。ただ自分で作ることのできる服はお一人様、三着までとなっています」
なるほど……。自分の着たい服が作れるのか。しかしそうなると、どんな衣服にしようか悩む。
「どうせだから自分で考えた服装がいいよね」
「なっちゃんはどんな服にする?」
「私は黒を基準にした服にしようかと思ってる、どんなのかは秘密」
見てからのお楽しみと……。
「私も黒にする……」
「あ、料金はどれくらいになるの?」
「3000Gになります」
意外と安い。
「準備ができましたら、水晶玉に触れてください」
「私からでやっていい?」
「うん」
ナツが水晶玉に触れると、中に衣装のようなものが見え、すぐに消えた。
「次はわたし」
同じように触れるとさっきと同じ現象が起きた。
「イメージして頂いた衣服はすぐ出来上がるので少々お待ちください」
現実なら数週間かかりそうなものだが、そこはゲームと割り切る。
店内の商品を眺め時間をつぶしていると、先ほどの店員に話しかけられた。どうやら完成したようだ。
「こちらが商品になります」
ウィンドウが開き、目当ての服が入っていた。3000Gを渡し商品を受け取る。服を受け取った私たちはすぐに試着室に行き、着替えることにした。
私の衣装は、膝丈十センチの黒いスカートに白いシャツと紺色のブレザー、首元には黒いリボンが付いている。
試着室から出るとナツもちょうど着替え終わったようだった。ナツの格好は黒いレザーパンツに黒いジャケット、そしてコートを羽織っており、全身真っ黒だった。極めつけは額に巻いてある長いハチマキである。全力疾走したら風でなびくだろう。もちろん色は黒だ。
「似合ってるよ」
「うん、そっちも」
お互いに照れながら言う。
「そろそろ出る?」
「服も買ったしね、ちょうどいいしそろそろログアウトしようかな」
「ん、わかった、じゃあまた明日」
「うん、またあしたー」
私たちのVarious World一日目が終了した。
まだ一日目なんですよねー。